再婚しても養育費をもらい続けることはできる? 再婚と養育費の関係
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仙台市は、平成30年10月から12月に行われた「仙台市ひとり親家庭生活実態調査」の結果をホームページ上で公表しています。調査結果によると、「養育費の支払いを現在受けている」と回答した母子家庭は34.1%、父子家庭は8.6%でした。
養育費は、収入や子どもの人数などによって決められますが、取り決め後に経済的な状況が大きく変化することも少なくありません。たとえば養育費の支払いを受けていた側が再婚すれば、経済的な面は大きく好転するケースも多いでしょう。
では、このようなケースでも、元配偶者から養育費をもらい続けることはできるのでしょうか。
本コラムでは、「再婚しても養育費をもらい続けることはできるのか」をテーマに、ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスの弁護士が解説します。
1、養育費は誰のためにある? 金額の変更はできる?
まず、「養育費が誰のためのお金なのか」を理解した上で、養育費の金額を変更することができるのか、という点について確認していきます。
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(1)養育費は子どものため
法律上、親は経済的に自立していない子どもに対して、扶養し養育にかかる費用を負担する義務があります。
これは、たとえ離婚をして、親権がなくなったとしても変わりません。そのため離婚をした場合は、子どもと生活する側(監護親)に対して、子どもと生活を共にしない親(非監護親)が養育費の支払義務者として養育費の支払いを行うことになります。
養育費は、一見すると別れた配偶者に金銭を支払っているように感じるかもしれませんが、親子間の扶養義務に基づいて発生する「子どものためのお金」です。 -
(2)養育費の金額の変更における考え方
養育費の金額は、取り決め時の父母の収入や生活水準などに応じて定められ、毎月定期的に支払われることが多いでしょう。
基本的には、養育費の金額は父母双方の合意のもとで取り決めたものであるため、変更することができません。しかし子どもが自立するまで長期間にわたって負担すべきものであるため、取り決め時とは事情が大きく変化することも少なくありません。
たとえば支払い義務を負う非監護親が失業し無収入になったり、転職によって収入が減少したりした場合には、非監護親側からしたら、現状の支払額を減額させる必要性が生じているといえます。
他にも、取り決め時には子どもが公立高校に進学するか、私立高校に進学するかわからず公立高校進学を前提に取り決めたが、その後子どもが私立高校に進学し学費が大幅に増加した場合などは、監護親側から増加分の学費の支払いを求める必要性が生じているといえます。
そういったときに、父母が事情について話し合い、合意ができれば養育費の金額を変更することはできます。話し合いで合意ができなければ、家庭裁判所に調停を申し立て、裁判所の関与の下、双方の合意で養育費の額が変更されることになります。調停でも解決できない場合は、裁判官が審判をすることにより解決を図ることになります。
2、再婚後も養育費をもらい続けることはできる?
養育費は、親子関係から生じる「子どものためのお金」です。
そのため、親権を有し子どもと生活している監護親が再婚しても、子どもと離れて暮らす非監護親との法律上の親子関係や扶養義務に変わりはなく、養育費を非監護親からもらい続けることができます。
しかし、監護親の再婚にあたり子どもと再婚相手が養子縁組をした場合は、非監護親が支払い義務を負っている養育費の減額や免除が認められる可能性が高いといえます。
3、子どもと再婚相手が養子縁組した場合の養育費
では、監護親の再婚相手が子どもと養子縁組をした場合に、なぜ非監護親が支払い義務を負っている養育費の減額、免除が認められる可能性があるのでしょうか。
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(1)養子縁組とは
まず、養子縁組とはどのような制度なのかを理解しておく必要があります。
養子縁組を簡単に説明すると、「血縁関係にない親子に、法律上の養親子関係をつくる制度」といえます。養子縁組をした場合、養子は縁組をした日から嫡出子の身分を取得するとされます。そのため養親と養子の間には、通常の親子関係と同様に、扶養義務や相続権が生じます。 -
(2)再婚相手に生じる扶養義務
再婚するときは、「婚姻届」を提出することによって再婚相手と法律上の夫婦関係が生じることになります。しかし、元配偶者との間に生まれた子どもについては、「婚姻届」を提出しただけでは再婚相手との間に法律上の親子関係は発生しません。
そのため再婚しても、再婚相手は子どもを扶養する義務を負いません。
一方で、再婚相手と子どもが養子縁組をしたときは、再婚相手と子どもとの間に法律上の養親子関係が生じ、再婚相手は扶養義務を負うことになります。
この場合、子どもとの養子縁組には子どもの養育を全面的に引き受けるという暗黙の合意が含まれていることを理由に、養親は第一次的な扶養義務者となり、監護権のない実親の扶養義務は第二次的なものになります。 -
(3)養子縁組したときの養育費
このようにみていくと、親権を有する監護親との再婚相手と子どもとが養子縁組をした場合には、非監護親から養育費をもらい続けることは原則としてできないという結論につながります。
ただし、非監護親が養子縁組の存在を知りながら、または、養子縁組の有無を問わず、子どものためを思って養育費の支払いを任意に継続する場合もあります。このような場合には、再婚相手と子どもが養子縁組をしたとしても、監護親は、今までどおり養育費の支払いを受けることができます。
4、再婚を隠して養育費をもらい続けるとどうなる?
親権を有する監護親が再婚したとしても、再婚相手と子どもが養子縁組をしていなければ、元配偶者に扶養義務があるため、養育費をもらい続けても基本的には問題ないでしょう。
一方で、監護親が資力のある相手と再婚し、再婚相手と子どもが養子縁組をした場合、元配偶者は二次的な扶養義務を負うにすぎないため、養育費の減額や免除を求められる可能性は高くなります。
その場合であっても、元配偶者に再婚及び再婚相手と子どもが養子縁組をした事実を隠していれば、養育費をもらい続けることはできるかもしれません。しかし、面会交流などで再婚の事実が相手に伝わったり、名字が変わったことなどから事実が判明したりすれば、本来であれば減額、免除がされていたはずであるとして、既に支払った養育費の返還を求められることは十分想定されます。
基本的には、養育費の返還請求は認められません。なぜなら、既に支払われた養育費分のお金を子どものために使えると思って監護親が使い尽くしたのに、それを翻して返還させることは、子どもにとって酷な結果となるためです。
しかし、監護親が再婚し、子どもが再婚相手と養子縁組をしていたことを隠して養育費を受け取っていたのであれば、養育費の返還が認められる可能性があります。そもそも非監護親が養育費減額、免除の申立てをすることができない状態を作出しておきながら養育費をもらうことは相当ではないためです。
5、養子縁組をしなければ、養育費をもらい続けることができる?
監護親の再婚相手と子どもが養子縁組をした場合に、非監護親から養育費の支払いを受けることができなくなるのであれば、そもそも再婚相手と子どもの養子縁組をしなければよい、と考えられる方もおられるかもしれません。
しかし、再婚相手が裕福であり、子どもが再婚相手と同居して父親同様の役割を果たしている場合には、非監護親の養育費支払い義務は軽減される可能性はありますが、再婚相手と子どもの養子縁組を進めるメリットはあります。
養育費変更の合意をしない限り、基本的には、非監護親から従来どおりの養育費の金額を受け取ることはできますが、再婚を機に元配偶者から養育費減額を求められる可能性はあります。
6、まとめ
本コラムでは、「再婚しても養育費をもらい続けることは可能か」をテーマに解説していきました。
再婚しても、再婚相手と子どもが養子縁組しないときには、養育費の支払い義務は元配偶者にあります。そのため基本的に、再婚しても養育費をもらい続けることは可能と考えられます。一方で、再婚相手と子どもが養子縁組をした場合は、再婚相手が扶養義務を負うため、元配偶者が負担していた養育費が免除される可能性があります。
ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスでは、養育費の問題でお悩みの方を、経験豊富な弁護士が全力でサポートします。元配偶者と直接会いたくないという場合は、弁護士が代理人として交渉することも可能です。おひとりで悩みを抱え込まず、ぜひお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています