再婚したら相続はどうなる? 連れ子の相続権は? 再婚者が抑えておくべきポイント

2021年02月25日
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再婚したら相続はどうなる? 連れ子の相続権は? 再婚者が抑えておくべきポイント

仙台国税局が公表している「令和元年分における相続税の申告事績の概要」によると、宮城県の被相続人数(死亡者数)は2万5202人でした。そのうち、相続税の申告書の提出に係る被相続人数は、1445人だったそうです。平成30年度のデータと比較しても、どちらの数字も大きな変動はないことから、宮城県内では毎年一定数の相続が発生していることがわかります。

近年は、離婚する夫婦の数が増えている一方、再婚をするケースも珍しくなくなりました。再婚の際、どちらか一方に子どもがいるというケースもあるでしょう。実子であれば特に悩む必要がないことでも、連れ子がいて再婚をしたときには気になることもあります。相続も、そのひとつではないでしょうか。また、再婚相手との間に子どもが生まれたときには、連れ子との関係も気になるところです。

今回は、連れ子がいて再婚した家庭の相続に関して、ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスの弁護士が解説します。

1、離婚・再婚すると相続権はどうなるか?

再婚相手が亡くなった場合や、離婚後に元配偶者が亡くなった場合、配偶者(元配偶者)の相続権はどうなるのでしょうか。まずは、相続の基礎知識と離婚・再婚後の配偶者の相続権について説明します。

  1. (1)相続の基礎知識

    人が亡くなったときには、相続が開始します(民法第882条)。相続においては、亡くなった方のことを「被相続人」、被相続人の財産を相続する方のことを「相続人」といいます。

    相続が開始したときに、誰が相続人になるのかということについては、民法で規定されており、以下の順位に従って相続人になります

    1. ●配偶者(常に相続人となる)
    2. ①被相続人の子ども(第1順位)
    3. ②被相続人の直系尊属(第2順位)
    4. ③被相続人の兄弟姉妹(第3順位)


    たとえば、配偶者と、第1順位から第3順位までの相続人が同時に存在するときには、配偶者以外は第1順位の相続人が優先され、第2順位以下の相続人には、当該相続においては相続権がないことになります。

    事例でいうと、配偶者と子どもが一人いる被相続人が1000万円の預貯金を残して亡くなった場合、配偶者とその子ども一人にそれぞれ500万円が相続されますが、被相続人の父、兄には1円も相続がなされないということとなります。

  2. (2)離婚・再婚後の配偶者の相続権

    前述したとおり、配偶者は常に相続人となり相続権が認められます。したがって、再婚であるかは関係なく、法律上の夫婦であれば、被相続人の配偶者には相続権が認められます。他方、離婚をしたときには法律上は他人同士になるので、元配偶者であったとしても相続権はありません。

    なお、再婚にあたって、籍を入れず事実婚として夫婦生活を続けているケースもありますが、事実婚の場合は法律上の夫婦ではないので、配偶者としての相続権は認められません。

2、再婚後の子どもの相続権

再婚であっても法律上の夫婦であれば相続権は認められますが、子どもには相続権はあるのでしょうか。再婚にあたって再婚相手に連れ子がいる場合、再婚後に再婚相手との間に子どもが生まれた場合、親権を有する元配偶者に引き取られた子どもがいる場合にわけて解説します。

  1. (1)再婚相手の連れ子の相続権

    民法第887条1項では、「被相続人の子は、相続人となる」と規定しています。ここでいう「子」とは、被相続人の実子または養子のことをいいます。

    ここで注意したいのは、再婚をしただけでは再婚相手の連れ子は実子ではないので、当然には、被相続人の「子」に該当しないという点です。そのため、再婚相手の連れ子には、原則として相続権はありません

    再婚相手の連れ子に相続権を認めたいのであれば、後述する養子縁組の手続きをとる必要があります。

  2. (2)再婚後に生まれた子どもの相続権

    再婚後に再婚相手との間に生まれた子どもについては、被相続人の実子になりますので、被相続人が死亡したときには、その遺産を相続することができます。

  3. (3)親権を有する元配偶者に引き取られた子どもの相続権

    再婚をしたものの、元配偶者との間に子どもがいて、その子どもが親権を有する元配偶者に引き取られているという場合は、その子どもに相続権はあるのでしょうか。

    この場合であっても、元配偶者との間にできた子どもは被相続人の実子であることに変わりはないため、当然に相続権を取得することになります。そのため、離婚にあたって、被相続人の親権が失われたとしても相続権に影響はありません

3、再婚相手の連れ子と養子縁組したら相続権はどうなるか?

再婚相手に連れ子がいて再婚する場合は、再婚にあたって、連れ子と養子縁組をすることも少なくありません。前述したように養子縁組をした連れ子には相続権があります。では、再婚相手の連れ子と養子縁組をすることが、相続に関してどのような影響を与えるのでしょうか。詳しくみていきます。

  1. (1)養子縁組とは

    養子縁組とは、血縁関係のない者同士の間で、法律上の親子関係を生じさせる手続きのことをいいます。養子縁組には、普通養子縁組と特別養子縁組の2種類がありますが、再婚にあたって一般に利用されるのは、普通養子縁組です。

    普通養子縁組は、一定の要件を満たし、養子となろうとする方と養親となろうとする方との合意があれば、市区町村役場に養子縁組届を提出することだけで成立します実親との親子関係も存続します

    一方、特別養子縁組の場合は、まずは家庭裁判所に請求を行う必要があり、一定の要件を満たした場合に家庭裁判所から決定を受けることで成立します。また、実親との親子関係は断ち切ることになり、存続しません。

  2. (2)養子縁組と相続権

    養子縁組によって、法律上の親子関係が生じることになりますので、被相続人が亡くなったときには、被相続人の子どもとして遺産を相続する権利が生じます。相続にあたっては、養子と実子との間で優劣関係はありませんので、被相続人の実子と相続する財産の割合は変わりません

    たとえば、被相続人に再婚相手と、再婚相手の連れ子、再婚相手との間に生まれた子どもがおり、連れ子とは養子縁組をしていたというケースでは、各自の相続割合は以下のとおりとなります。

    • 再婚相手(配偶者):2分の1
    • 再婚相手の連れ子(養子):4分の1
    • 再婚相手との子ども:4分の1


    血のつながっている再婚相手との子ども(実子)と、血のつながっていない連れ子(養子)の相続分は異なると思いがちですが、法律上は養子縁組により血のつながっている実子と同様の相続分が与えられることとなります。

    再婚相手の連れ子と養子縁組をしたものの、後に実子が生まれたため、血のつながった実子により多く自分の遺産を相続させたいという方がおられるかもしれません。しかし、一度養子縁組をすると、それを解消するには養子(養子が15歳未満の場合は、離縁後にその法定代理人となる人)が合意するか、裁判で離縁の請求が認められない限り困難です。そのような場合には、後述のとおり、弁護士が遺言書の作成に関与することにより、血のつながった実子により多くの自分の遺産を承継することができます。

    なお、普通養子縁組には、養子は実親との間の親子関係を解消させる効果はありませんので、養親との間の親子関係と、実親との間の親子関係の二つが併存します。その結果、実親、養親のいずれの遺産に対しても相続権を有することになります。

    他方、特別養子縁組の場合は、養子は実親との親子関係が断ち切られるため、養親の遺産に対して相続権を有するものの、実親の遺産に対しては相続権を有しません。

  3. (3)相続税とみなし実子

    民法では、養子の人数に制限を設けていませんので、理論上は何人であっても養子にすることが可能です。しかし、相続税法上、法定相続人に含めることのできる養子の人数については一定の制限があります。

    このような制限がなされた理由としては、相続税法上、3000万円と600万円に当該相続人の相続人の数を乗じて算出した金額を、遺産に係る基礎控除額と規定されています。つまり、法定相続人の人数が多いほど、控除される金額が多くなるという税制上のメリットを多く受けることができるため、相続税回避の目的で養子縁組がなされることを防止する点にあります。

    ①制限される養子の人数(相続税法第15条2項)
    法定相続人に含めることができる養子の人数は、以下のとおりです。なお、この制限はあくまでも相続税計算上の措置に過ぎず、民法上の養子縁組の効力や相続権を否定するものではありません。

    • 相続人に被相続人の実子がいるとき:1人
    • 相続人に被相続人の実子がいないとき:2人


    すなわち、相続税法上、被相続人に2人以上養子縁組をしていても、2人のみを法定相続人として基礎控除額を計算することになります。

    ②実子として扱われる「みなし実子」
    上記のとおり、養子の人数については一定の制限がありますが、以下の養子については相続税の課税上は実子とみなして、養子の人数制限には含まれません(相続税法 第15条3項)。

    • 民法の特別養子縁組により養子となった者
    • 被相続人の配偶者の実子で被相続人の養子になった者(結婚相手の連れ子が実子であった場合)
    • 特別養子縁組による連れ子を有している人と結婚し、その連れ子と養子縁組をした場合のその連れ子(結婚相手の連れ子が特別養子縁組による連れ子であった場合)
    • 被相続人の養子が相続開始以前に死亡しているか、欠格・廃除により相続権を失ったことにより、代わって相続人となった直系卑属

4、再婚家庭の相続対策

再婚家庭では、家族関係が複雑になることがあるため、相続が発生したときは注意が必要です。予想できるトラブルに対しては、事前に対策を講じておくことが有効な手段となります。

  1. (1)養子縁組をする

    連れ子にも遺産を相続させたい場合は、養子縁組をしておきましょう。再婚をしただけで、連れ子に相続権があると誤解しているケースもありますが、ここまでご説明したとおり連れ子は当然には、相続権がありません。忘れずに、養子縁組の手続きをするようにしてください。

  2. (2)遺言書を作成する

    元配偶者との間に子どもがいて、再婚相手との間にも子どもがいるときには、どちらの子どもも等しい割合で相続人になります。

    しかし、自分の遺産を承継するときには、自分と長い間同居していた再婚相手との相続人に、自分がより愛情を有している相続人に、自分の面倒をより見てくれた相続人に、家系・家業を継いでくれる相続人に、より多くの財産を承継したいと考えることもあるのではないでしょうか。

    遺言書を作成することにより、より多くの財産を承継したい相続人に、より多くの財産を承継することができます。また、遺言を公正証書で作成したり、遺言執行者を定めたりすることにより、自分が亡くなった後も、より確実に遺言の内容通りに相続を実現することができます。

    しかし、元配偶者との子どもが、親権を有する元配偶者と同居していた場合、再婚相手との間の子どもと元配偶者との間の子どもには面識がないことが多いでしょう。再婚相手との子どもが、被相続人が亡くなったことによりはじめて親が再婚であったこと、元配偶者との間に子どもがいることを知ることも少なくありません。被相続人が亡くなった後に、今まで交流のなかった子ども同士で、遺産の分け方についての話し合いをすることは非常に難しいので、残される家族のためにも遺言書を作成しておくと良いでしょう。

    ただし、相続人には、遺留分という最低限度の遺産の取得割合が保障されているので注意が必要です。遺留分を侵害するような内容の遺言書を残してしまうと、逆にトラブルになってしまう可能性があるので、遺言書を作成するときは、他の相続人の遺留分にも配慮した内容で作成する必要があります。また、遺言執行者として適切な人を選任しなければ、せっかく作成した遺言が水泡に帰す危険性もあります。

    自分が亡くなった後に、実子と養子の間でトラブルが生じることを未然に防ぐためにも、遺言書を作成する場合には、弁護士に相談することをおすすめします。

5、まとめ

元配偶者との間に子どもがいて、再婚した夫婦の場合、初婚同士の夫婦に比べると相続関係が複雑になることがあります。しかし、適切な相続対策をとることで、将来の相続トラブルは回避できるでしょう。また、すでに相続問題に直面している場合は、なるべく早い段階で弁護士に相談し、対策を講じることが大切です。

再婚にあたって遺産相続についてお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスまでお気軽にご相談ください。遺産相続問題の解決実績が豊富な弁護士が、しっかりとお話を伺い、最善の対策をアドバイスします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています