夫の両親がまさかの毒親! 義両親が原因で離婚を考えたときの注意点
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仙台市役所が公表している「仙台市統計書(令和3年版)」によると、令和2年における離婚件数は1642件でした。このなかには、「義母や義父が毒親だったから離婚に至った」という事案もあるかもしれません。
毒親が与える悪影響は、自分の子どもだけにとどまらないことが多数あります。自分の息子や娘の配偶者に対しても毒親ぶりを発揮し、それが原因で離婚に至るケースもゼロではありません。
今現在も、「旦那の義両親と関わりたくない」「関わりが絶てないのであれば、旦那と離婚したい」などとお悩みの方がいるはずです。
本コラムでは、毒親の定義だけでなく、夫の義両親が毒親だった場合、離婚して慰謝料を請求することはできるのかについて、ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスの弁護士が解説します。
1、あなたの義父母は毒親?
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(1)毒親とは?
「毒親」という言葉は、1989年にアメリカの著名な医療関係コンサルタント・グループセラピストが著書のなかで用いたことが世界で初めてといわれています。法的・医学的に定義されているわけではありませんが、「子どもに悪影響を与える親」という意味合いで日本でも広く用いられるようになっています。
毒親と呼ばれる親の代表的な行動は、育児放棄や肉体的・精神的な虐待、過干渉でしょう。過干渉は他人の目に付きにくく、親の監護下にある間は表面化しにくい一面があります。
過干渉タイプの毒親は、本来は子どもの自由な意思に基づくものであるべき結婚や結婚後の生活にも干渉し、コントロールしようとします。たとえば、子どもが連れてきた異性を頑として認めず、結婚の話そのものを破談にしたり、結婚後も過干渉をやめず離婚に至らせたりするケースは少なくありません。 -
(2)義父母は毒親かを確認するポイント
結婚する前から配偶者の親が毒親であることを見抜くことができればよいのですが、現実的には難しいでしょう。特に配偶者の親が過干渉タイプの毒親であることは、結婚してから初めて気づくことが多いものです。
もしあなたの配偶者の親が以下のような行動をしていたら、いわゆる毒親である可能性があります。まずは配偶者と話し合ってみてはいかがでしょうか。- ひたすら配偶者の親であることを強調し、あなたに対しても絶対的な存在として振る舞う
- あなたやあなたの家族に対してモラル・ハラスメントを行う
- あなたたち夫婦の行事だけでなく日常や子育てに至るまで、しつこく口出しして自分の価値観を押し付ける
- 自分が口出ししたことにあなたが従わないと、露骨に不快感を示す
- あなたや配偶者よりも、親である自分自身の都合や世間体を最優先とする
- 孫(あなたと配偶者の子ども)に対して、虐待とも思えるような躾をする
- 配偶者から精神的に子離れできていない、あるいは配偶者自身も親離れできていない
毒親は、あなたの自分に対する反発を認識すると、常人では思いもよらない報復行動に出る可能性があります。それはときとして暴行やありもしない事実の流布など、エスカレートすることがあるかもしれません。
もし、義父母の言動に身の危険を感じるほどの明らかな異常性が見られる場合は、早急に警察や弁護士などと事案を共有し、対策を講じておく必要があります。
2、配偶者の毒親が原因で離婚を考える前に、見極めるべきこと
毒親と呼ばれる方々に対する即効性のある対策・治療法は、まだ確立されていません。そもそも毒親と呼ばれる方々自身、自らの言動によって悪影響が生じていることを自覚できないという一面もあります。
そのようななかで義父母が毒親であることがわかり、このままでは結婚生活がままならないと感じた場合、まず相談すべきは義父母の子どもでもある配偶者であるかもしれません。あなたたち夫婦に対する義父母の言動についてどのように感じているのか見極める必要があります。
それに応じて、あなたが離婚に進むべきか否かが分かれるところでしょう。
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(1)夫が義父母に対して否定的な場合
義父母の振る舞いについて、配偶者があなたと価値観を共有しているのであれば、配偶者と離婚せずに今後の改善に向けた展望を持つことができます。
まずは、配偶者から義父母に対して過干渉などの言動を控えるよう説得することから始めます。これが功を奏しないようであれば、いよいよ義両親から距離を置くことを検討した方が良いでしょう。
物理的に距離を置くことが最善の策となるかもしれません。- 義父母と同居している場合は、夫婦で別居する。
- 別居していても義父母が押しかけてくる場合は、転居する。
- もちろん転居先の住所は教えない。役所に依頼して住民票の閲覧制限をかけておくなど、転居先を探せないようにする。
- 電話やメールも一切応じない。
- 勤務先や子どもの学校に押しかけてくるなど悪質な場合は、警察に相談する。
身の危険を感じるときは、遠慮なく警察や弁護士に相談してください。
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(2)夫が義父母の問題を何も改善しようとしない場合
配偶者の人生では、幼少期の人格形成の段階から義父母が存在しています。つまり、もし義父母が客観的に毒親であったとしても、子どもである配偶者自身が「親の言動は普通だ」と認識している可能性もあり得ます。
残念ながら、配偶者の人生においてあなたと義父母の存在を比較すると、後から登場したのは間違いなくあなたです。もし、義父母の言動について違和感を訴えたとしても、そもそもあなたに対して違和感を持ち改善に向け何も行動しないばかりか、義父母への恭順を強いてくる可能性があります。また、配偶者自身、義父母の言動に違和感を持っていたとしても、遺産相続など将来的な自己利益の都合から、あなたを犠牲にしてでも自分の親に従うことを選ぶこともあるでしょう。
配偶者の協力を得られない場合、事態の改善を図ることは非常に難しいといわざるを得ません。残念ながら、あなたが配偶者の毒親と縁を切るためには、別居、あるいは離婚するということも視野に入るでしょう。
3、配偶者の毒親を理由に離婚できる? 慰謝料請求は?
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(1)夫の合意が得られない場合は法定離婚事由が必要
結婚同様、離婚もまた、その理由に関係なく夫婦間の合意さえあれば自由にできます。言い換えれば、原則的には合意を得られないときは離婚できないということです。
しかし、相手のせいで結婚生活の継続が難しいと考えている状況であるにもかかわらず、その原因に拒まれて離婚できないという状況は、あまりにも理不尽です。そこで、民法第770条では裁判により相手方に対して一方的に離婚の訴えを求めることができる「裁判上の離婚原因」を定めています。
それが「法定離婚事由」と呼ばれるものです。以下のとおり、夫婦間で起きた下記5つのうちどれかひとつでも該当する場合は、その原因を作った側の有責配偶者が離婚を拒んでも、離婚が認められることが期待できます。- ①配偶者による不貞行為
- ②配偶者による悪意の遺棄
- ③配偶者が3年以上の生死不明
- ④配偶者が強度の精神病かつ回復の見込みなし
- ⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由
つまり、基本的に、「配偶者自身」が離婚原因を作っていなければ、なかなか裁判上の離婚原因があるとは認められません。あなたと結婚した相手は、配偶者の親ではなく配偶者自身であるためです。
毒親は必要以上に世間体や時代錯誤な価値観を重視する傾向があります。毒親の言いなりになっている配偶者に対して、離婚を申し出たとしても拒否されてしまうこともあるでしょう。それでも、一般的には、配偶者の親が毒親であるという理由だけでは簡単には離婚が認められません。
ただし、義父母の言動による影響に言及して、夫婦関係を維持することが不可能になったものとして離婚を認めた裁判例は一応過去にもあります(名古屋地裁岡崎支部 昭和43年1月29日判決)。
しかし、離婚はあくまでも、当事者である夫婦間の関係性が重視されます。 -
(2)慰謝料は請求できる?
慰謝料とは「相手方の不法行為により受けた精神的苦痛に対する損害賠償金」であり、離婚の場面では、原則として、「夫婦一方のうち、離婚の原因を作った方が相手方つまり配偶者が支払うもの」として問題となります。
したがって、たとえ義父母の言動が離婚に至るひとつの原因だったとしても、原則として、離婚に伴う慰謝料は義父母ではなく配偶者に対して請求することになります。ただし、義父母から精神的または肉体的損害を実際に受けていた場合においては、別途損害賠償の請求を義父母に対して直接行うこともできるでしょう。
4、まとめ
もし毒親の義父母と縁を切ることを決意した場合は、夫による協力の有無にかかわらず、まずは弁護士に相談・依頼することをおすすめします。冷静な第三者から、意見を聞いてみることも必要です。
また、あなたが義両親と接触しなくても、弁護士はあなたの代理として義父母との交渉を行うことができます。毒親である義父や義母との関係を絶つために、夫と離婚することを決意した場合も同様です。
義父母が毒親であることが原因で離婚するときは、配偶者と比べて孤立してしまうケースは少なくありません。決してひとりで悩まず、離婚問題に対応実績が豊富なベリーベスト法律事務所 仙台オフィスの弁護士までご相談ください。
仙台オフィスには、女性弁護士も在籍しております。「まずは、義両親のことで少し相談してみたい」という状況でも構いません。毒親への対処や離婚に向けて一歩前進したいときは、ぜひお気軽にお問い合わせください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています