自転車でも飲酒運転はダメ? 問われる罰則と逮捕される可能性
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仙台市では、平成31年1月1日に「仙台市自転車の安全利用に関する条例」が制定されたことに伴い、自転車の運転をする際に飲酒運転などの危険な運転をしないように呼びかけています。
自転車は免許制ではないし、自動車ほど危ない乗り物ではないのだから少しくらい飲んでも平気だろう……。このように考えるかもしれませんが、自転車の飲酒運転も罰則の対象であり、逮捕される可能性もあるのです。
本コラムでは、自転車の飲酒運転が法律ではどのように扱われているのか、そしてどのようなケースにおいて逮捕される可能性があるのかについて、ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスの弁護士が解説します。
1、自転車でも飲酒運転は禁止されている
飲酒したあとに車両を運転することは、道路交通法 第65条で禁止されています。
「車両」とは、道路交通法 第2条第8項において「自動車、原動機付自転車、軽車両およびトロリーバス」と定められており、自転車はこのうち「軽車両」に該当します。
よって、飲酒したあとに自転車に乗れば、道路交通法違反として検挙の対象となります。
ただし、自転車を押して歩く場合は「歩行者」とみなされます。つまり、飲酒をしたあとに自転車を動かす場合でも、自転車に乗ってペダルを踏んでいれば飲酒運転とされ、自転車を押して歩道を歩いているならば、飲酒運転とはみなされないと考えてよいでしょう。
なお、サドルにまたがったりペダルに足をかけたりしている状況でも運転とみなされる可能性があるので、注意が必要です。
2、飲酒運転の基準と行政処分
飲酒運転は「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」に分けられます。よく似た名前で紛らわしいため、違いを確認しておきましょう。なお、自転車は免許制ではないため、行政処分の対象にはなりません。
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(1)酒気帯び運転
呼気から規定量を超えるアルコールが検出された場合は、「酒気帯び運転」とされます。本人の認知力・判断力などとは関係なく、呼気中に含まれるアルコール量の数値のみで判断します。
呼気1リットル中のアルコール濃度が0.15gm以上0.25mg未満の場合は「免許停止」、アルコール濃度が0.25mg以上の場合は「免許取り消し」の行政処分が科されます。 -
(2)酒酔い運転
アルコールからの影響の受けやすさ、つまり酔いやすさは個人差が大きいものです。
呼気に含まれるアルコール量に関係なく、「アルコールの影響により車両等の正常な運転ができない状態」で運転した場合、「酒酔い運転」とされます。
具体的には、ろれつが回っていない、まっすぐ歩けないなど、本人の認知力や判断力や身体能力が著しく低下していると推察される状況であると、「酒酔い運転」とみなされるでしょう。
極めて悪質な状況下で車両を運転していることを意味し、事故の危険性も高まるため、酒酔い運転をすると無条件で「免許取り消し」の行政処分が科せられます。
3、飲酒運転の罰則
では、自転車で飲酒運転をした場合、どのような罰則を科せられる可能性があるのでしょうか。
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(1)自転車の酒気帯び運転は注意のみ
酒気帯び運転の罰則は「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」と規定されています(道路交通法 第117条の2の2)。ただし同条2の2第3号において、「軽車両を除く」と明記されているため、自転車の酒気帯び運転においては懲役や罰金が科されることはありません。
もちろん、酒気帯び運転が発覚すれば注意を受けます。 -
(2)自転車の酒酔い運転の罰則は自動車と同様
酒酔い運転をすると「5年以下の懲役または100万円以下の罰金」に処せられることになります。非常に危険な状態で運転しているとみなされるため、行政処分と同様に酒気帯び運転よりも厳しい罰則が規定されています。
なお、罰則に軽車両の除外が規定されていないため、自転車の酒酔い運転にも適用されます。 -
(3)死傷事故を起こした場合の罰則
少しくらいの飲酒はバレないだろう、と考えるのは早計です。
事故を起こして人を死傷させれば刑事罰が科せられます。
また、刑事罰以外に、民事責任として損害賠償を請求される可能性もあります。
被害者に重い怪我を負わせたり、障害が残ったりした場合のほか、万が一亡くなってしまった場合には、賠償額が数千万円単位になることもあるのです。 -
(4)自転車運転者講習の受講を命じられる
平成27年6月1日の改正道路交通法の施行により、自転車の運転に関して3年以内に2回以上「危険行為」を繰り返すと、都道府県公安委員会から「自転車運転者講習」を命じられます。
仙台市の場合、個別的指導を含む3時間の講習で、受講手数料は5700円です。また、受講の通知から3か月以内に受講しなかった場合は、5万円以下の罰金が科せられます。
対象となる危険行為は、以下の14項目です。- 信号無視
- 酒酔い運転
- 一時不停止
- 歩道での歩行者妨害
- 制動装置不備の自転車の運転(ブレーキがない、ブレーキ性能が不良)
- 安全運転義務違反
- 通行禁止道路(場所)の通行
- 歩行者用道路での歩行者妨害
- 歩道通行や車道の右側通行等
- 路側帯での歩行者の通行妨害
- 遮断踏切への立ち入り
- 左方車優先妨害・優先道路車妨害
- 右折時、直進車や左折車への通行妨害
- 環状交差点安全進行義務違反
4、自転車の飲酒運転で逮捕される可能性はある?
自転車の危険運転は、社会問題として注目されており、警察も取り締まりを強化しています。
そのため、飲酒して自転車に乗っているときに警察に呼び止められ、しっかりと止まって質問に答えましょう。
警察を振り切って逃げるようなことをすれば、逮捕される可能性も一応あります。特に飲酒運転に関しては、時間を稼ぐことで呼気のアルコール数値を下げると思われるので、厳しく追及される可能性があります。
警察の捜査に素直に応じており、事故を起こしていない状態であれば、自転車の飲酒運転によって逮捕されるケースは、まれといえるでしょう。
5、自転車の飲酒運転で逮捕されたら弁護士に相談を
逆にいうと、自転車の飲酒運転で逮捕に至るということは、相当に泥酔しており危険であるか、警察の心証が極めて悪い状態であると予想されます。
また、人身事故を起こした場合は逮捕されるリスクは高まるほか、たとえ逮捕を免れたとしても在宅事件として起訴される可能性はあるため、早急に弁護士へ相談してください。
なお、人身事故の場合は刑事責任だけではなく、民事責任にも問われる可能性があるので、もはや自身の力だけで事態を収束させることは難しいと言わざるを得ません。
被害者がいる場合は、早急に弁護士に示談交渉を依頼するのが良いでしょう。示談とは、事件の当事者間で事件を解決することを指します。被害者に対して加害者が謝罪と賠償を行うことを約束し、その代わりに被害者は加害者を許し厳罰を望まないとする「宥恕(ゆうじょ)文言」を示談書において示してもらうことを目指します。
示談交渉は、加害者が直接行うと、新たなトラブルに発展することも少なくないため、弁護士を介して行うことをおすすめします。
第三者である弁護士を通じて謝罪の意を伝え、適切な示談金の提示によって折り合いをつけることが最善の策といえるでしょう。
6、まとめ
今回は自転車の飲酒運転について、法的根拠や罰則、逮捕の可能性を中心に解説しました。
自転車は気軽に利用できる便利な乗り物ですが、人身事故は多く発生しており、危険性を有している点は忘れてはいけません。ましてや飲酒をした状態で運転すれば、なおさら危険性は高まります。逮捕されれば、罰則を受ける可能性があることも知っておく必要があるでしょう。
自転車の飲酒運転で逮捕されてしまった場合や、人身事故を起こしてしまった場合は、早急に弁護士へ依頼し、必要なサポートを受けることをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスの弁護士が、早期の身柄釈放や被害者との示談交渉など、事態の早期収束にむけて迅速に対応します。
まずは、ご相談ください。
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