【前編】露出で逮捕されるとどのような罪に問われる? 罪を軽くするには?
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平成30年7月、宮城県気仙沼市のファミリーレストランで陰部を露出した男が逮捕されました。体の一部を公共の場所等で露出するとその行為態様によって、軽犯罪法違反,各都道府県の迷惑防止条例違反,公然わいせつ罪などの犯罪が成立する可能性があります。
露出行為は、屋外で行われるイメージが強いかもしれません。しかしながら、インターネット上で性行為などをリアルタイム配信する行為も、検挙対象となることはご存知でしょうか。
パソコンやスマートフォンのアプリなどを使えば、今や誰でも簡単に動画配信ができます。実は、家族が露出行為に手を染めていた、という可能性もないとは言い切れないかもしれません。ここでは、露出行為の罪状、逮捕後の流れとあわせて弁護士が解説します。
1、露出で問われうる罪状と量刑
露出をすると、どのような罪に問われ、どのような刑罰を科されるのでしょうか。実際に露出をした場所や露出部位によって、問われる罪が異なりますので、注意が必要です。
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(1)軽犯罪法違反
嫌がらせの意図をもって尻やももなどを露出する行為は、軽犯罪法違反として検挙される可能性があります。
軽犯罪法第1条第20号には「公衆の目に触れるような場所で公衆に嫌悪の情を催させるような仕方でしり、ももその他身体の一部をみだりに露出した者」を罰すると規定されています。有罪となった場合、1日以上30日未満の期間、刑事施設に拘束する「拘留(こうりゅう)」もしくは1000円以上1万円未満の範囲で金銭を徴収する「科料(かりょう)」に処されることになります。
なお、軽犯罪法違反では、住所不定の場合や、警察の出頭要求に応じない場合などは逮捕状が発行される可能性があります。もちろん、現場で犯行直後を取り押さえられる現行犯逮捕は可能です。 -
(2)迷惑防止条例違反
露出は「迷惑防止条例違反」の容疑として逮捕される場合もあります。「条例」は、国の定める刑法とは別に、地方自治体によって制定する法規です。「迷惑防止条例」とは、公衆に著しく迷惑をかける不良行為などを防止し、住民生活の平穏の保持を目的とする条例の総称です。禁止事項や罰則も自治体により多少異なります。
宮城県では「迷惑行為防止条例(昭和42年宮城県条例第29号)」として制定されており、公共の場所や公共の乗り物において人を著しく羞恥させ、または人に不安を覚えさせるような行為を「卑わいな行為」として禁じています(同条例第3条の2)。露出行為もこれに含まれると判断されるでしょう。
迷惑防止条例違反に該当する露出の場合、「6ヵ月以下の懲役」または「50万円以下の罰金」が科せられます。さらに、常習の場合では「1年以下の懲役」または「100万円以下の罰金」となります。 -
(3)公然わいせつ罪
人が多く集まる場所、公道や公共の場所で性器を露出させた場合、「公然わいせつ罪」(刑法第174条)に問われるケースが多いでしょう。
まず「公然」とは、「不特定多数の人が認識できる状態」のことを指します。その状態で、性器を露出したり全裸になったり、性行為をした場合には、公然わいせつ罪が成立します。過去の判例によると、「わいせつ」とは「いたずらに性欲を興奮または刺戟せしめかつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの」とされています。(昭和26年5月10日最高裁判例)
何をもって「わいせつ」とするかの判断は、人によって、また時代によっても違い、しばしば議論になっています。ここまでは大丈夫だろうと自己判断できるものではありません。なお、インターネット上で、自慰や性行為、全裸となる様子をリアルタイム配信する行為も、「不特定多数の人が認識できる状態」であるため、検挙対象となります。
露出は、被害者や目撃者による通報や取り押さえにより、現行犯逮捕となるケースも多いです。一方で、露出の発覚の状況によっては、「誰も見ていなかった」など特定の被害者がいないケースもありえます。しかし、公然わいせつを摘発することで法が守ろうとしているものは、健全な秩序や健全な性風俗です。告発などにより、露出行為を繰り返していることが警察に認知されれば、特定の被害者がいなくても「公序良俗に反する」として、捜査が行われ、逮捕状が請求される可能性はあります。
有罪となれば、「6ヶ月以下の懲役」もしくは「30万円以下の罰金」または1日以上30日未満の期間、刑事施設に拘束する「拘留(こうりゅう)」もしくは1000円以上1万円未満の範囲で金銭を徴収する「科料(かりょう)」に処されることになります。
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