地主の相続で注意するべきこととは? 4つの注意点と相続のポイント
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宮城県仙台市は78630haを有し、課税対象になる民間の土地は約4割あるとされています。
多くの土地を代々受け継ぐいわゆる「地主」の家系の方は、相続対策に悩まれることも少なくないでしょう。多くの土地を相続する際には、その分の相続税を支払わなければならない可能性があります。また財産が多いことによって、相続人間のトラブルが深刻化したり、借地人とのトラブルが発生したりと通常の相続よりも複雑な問題が生じる可能性もあるでしょう。
本コラムでは、地主の相続はどのような点に注意すべきかについて、ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスの弁護士が解説します。
1、地主の相続における4つの注意点とは?
先祖代々の土地を引き継ぐ地主の相続では、主に次のような注意点があります。
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(1)遺言書を作成しておく
複数の不動産を有する地主の相続では、相続人が相続財産を正確に把握することが難しいケースがあります。また、誰がどの不動産をどれだけ相続するのかについて、相続人間で行う遺産分割協議でもめてしまうこともあります。
そのため生前に遺言書を作成し、財産目録で相続財産を明らかにした上で相続人への具体的な分配を定めておくようにしておきましょう。
遺言書は主に、自筆証書遺言と公正証書遺言の方式があります。
自筆証書遺言は、簡単に作成できるイメージがありますが、法に準じた形式で書かれていないと無効になる恐れがあります。弁護士などに相談しながら自筆証書遺言を作成するか、公正証書遺言の方式で遺言書を作成しておくと安心でしょう。 -
(2)相続税の納税資金も確保する
地主の方は、多くの不動産を所有しているケースが多いため、平均的な家庭よりも資産全体としては豊かであるといえます。しかし資産の大半が不動産で構成され、預貯金はそう多くないケースも少なくありません。しかし、不動産の相続にかかる相続税は基本的に現金で支払わなければなりません。そのため、相続人が大きな負担を背負う可能性があります。
なお相続税は基本的に、相続財産の総額が、基礎控除額を超えた場合に、納税の義務が生じます。基礎控除額は、次の計算式によって求めることができます。3000万円+(600万円×法定相続人の数)
相続人に納税の義務が生じることが見込まれるときには、相続税の負担も考慮した対策が必要です。
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(3)節税対策をとる
相続時には、相続財産の評価額に応じた相続税の負担が生じる可能性があります。すなわち相続財産の評価額を少なくすればするほど、節税につながることがあります。
相続人に不動産を生前贈与して、被相続人の相続財産を減少させるといった節税方法もとられることがあります。
しかし贈与の内容によっては、贈与税や不動産取得税の負担が生じて、かえって税負担が増えるリスクがあるので注意が必要です。
また、所有する土地にアパートなどの建物を建築して賃貸経営を行うことにより、相続財産の評価額を少なくすることも検討できます。
不動産は固定資産税評価額をもとに算出されるため、相続税の評価額が抑えられる可能性があるためです。借家権割合分や借地権割合分を減額して算出するので、不動産の所有権を有していても納税額を抑えることが期待できます。
反面、節税対策として始めた賃貸経営がうまくいかなければ大幅な損失をかかえるリスクがあります。
節税対策として何が効果的なのかは、保有している土地の立地や状況など、それぞれのケースによって異なります。専門家に相談した上で節税対策を検討することが必要でしょう。 -
(4)不動産の活用方法を考える
代々受け継がれた土地などは「自分の代で手放すわけにはいかない」などと思い、収益性がないまま固定資産税の負担を続けていることも少なくないものです。
しかしそのまま相続人に不動産を引き継いでしまえば、相続人にとって負の財産ともなりかねません。
したがって所有の不動産の活用方法について、先を見据えて考えておくことが大切です。
たとえば自宅や有効活用できる可能性がある不動産などは残しておき、収益が見込めない不動産は納税資金確保のために売却して現金化しておくなどの方法が考えられます。
2、相続のために土地を売却すべきかの検討ポイント
相続対策として所有する不動産を売却すべきか迷ったときには、次のようなポイントで検討するとよいでしょう。
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(1)借地権付きの土地(底地)
所有する土地に他人の借地権が設定されているような場合には、一般の市場では需要が少なく収益性も低いとされます。また借地権付きとはいえ、土地所有者の相続税の負担もあります。
このような土地に関しては、借地権者に買い取ってもらうなど売却することも選択肢となるでしょう。
なお、土地の売却の際には、借地権者の権利にも注意する必要があります。 -
(2)自宅の広い敷地
相続税の課税においては、「小規模宅地等の特例」という制度があります。
この特例は、被相続人の居住用宅地など対象となる土地を相続したときには、特例を受けられる土地については大幅に相続税を減税するというものです。
そのため特例を受けられない広い土地を所有している場合には、検討ポイントになるでしょう。
たとえば自宅の敷地が広く一部は活用されていないようなケースでは、特例を受けられる自宅用の敷地と、それ以外の土地に分筆して売却することが考えられます。
また思い切って自宅を処分して、特例を受けられるような不動産に住み替えることも一案でしょう。 -
(3)築年数が古く賃貸ニーズの低いマンションなど
築年数が古く、空室の多いマンションなどを所有している場合には、収益率が悪い物件として検討ポイントになるでしょう。立地がよければ、リノベーションなどで収益を上げることができることもあるかもしれませんが、立地的に将来的な収益が見込めない場合などには、早期に売却して現金化しておくこともひとつの選択肢といえます。
3、不動産の共有状態は避けるのがベスト
不動産を相続する場合、相続人が共有して保持すればよいと考えるのは得策とはいえません。
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(1)不動産の共有の問題点
ひとつの不動産を複数の相続人で共有すると、相続人のひとりが「収益などを検討すると売却した方がよい」と考えたときでも、他の相続人の同意を得なければ売却できなくなります。
そればかりか共有持ち分によっては、賃貸に出したりして活用することもできなくなります。
このように不動産の共有では、意思決定の自由が阻まれ不動産が活用されないままになってしまうリスクがあり、それがきっかけとなりトラブルに発展することも少なくありません。
また共有者の相続が繰り返されたときには、さらに複数の共有者で共有する状態になり、権利状態が不明確になるリスクもあります。 -
(2)不動産の共有状態を避けるためには
複数の不動産を所有する地主の相続であれば、「遺言書」を作成しておくことが大切です。遺言書では、どの不動産を誰が相続するのかを指定して、共有状態にならないように記載します。
もし被相続人が遺言書を残さずに亡くなってしまったようなときには、遺産分割で不動産の共有状態を解消することが可能です。
遺産分割においては、不動産を売却して代金を共有者で分け合う「換価分割」という方法があります。また、ひとりの相続人が不動産を取得する代わりに、他の相続人に対して代償金を支払う「代償分割」という方法もあります。
遺産分割は相続人全員の話し合いで合意して決める必要がありますが、協議が調わないときには、家庭裁判所に申し立てることもできます。
4、地主の相続に関してお困りのときには
地主の相続では対象財産が多く、相続税の試算なども複雑になるため、税理士などの専門家へ相談するのが得策といえます。また、対象財産を調査しておくことや、法的に有効な遺言書の作成しておくことは、残された親族がトラブルにならないためには非常に大切です。弁護士に相談しながら、相続対策を進めていくことをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所では、弁護士だけでなく税理士とも連携をとりながら相続問題をワンストップで解決できるサービスを展開しています。
地主で相続にお困りの方は、ぜひベリーベスト法律事務所にご相談ください。
5、まとめ
本コラムでは、地主の相続では、どのような点に注意すべきかについて解説していきました。
地主の相続は、通常の相続と比べて、土地などが多くを占めるケースが多く、相続自体が複雑になりがちです。相続税の納税なども見据えた上で、相続人への分配を考える必要があるでしょう。
ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスの弁護士は、地元に寄り添いながら、全国ネットワークという事務所の強みを活かし、税理士などと連携しながら相続問題の解決を図ります。仙台市内だけではなく、宮城県全域や近隣県からのご相談もお受けしていますので、お気軽にご相談ください。
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