残業代請求するなら知っておくべき内容証明郵便の書き方や注意点について弁護士が解説

2018年12月04日
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残業代請求するなら知っておくべき内容証明郵便の書き方や注意点について弁護士が解説

東北地方の中で人口がもっとも集中している都市のひとつである仙台市では、さまざまなビジネスが展開されています。美容室やアパレル・スーパーなどの店舗も軒を連ねていますが、それらの業界で問題となっているのが、サービス残業が多く発生していることです。

残業代を支払ってもらうためには会社側と交渉をしなければなりませんが、交渉を始めるにあたり必要になるのが、内容証明郵便です。内容証明郵便とはどのようなもので、なぜ必要になるのでしょうか。

1、どうして残業代請求に内容証明郵便が必要なのか

  1. (1)内容証明郵便とは

    内容証明郵便とは、相手方に郵送した文書の内容を郵便局が証明してくれるサービスのことです。具体的には、相手方に送付した文書と同じものを郵便局内で保存しておくことで、いつ誰がどんな文書を誰宛に郵送したかが記録されるものです。

    これにより、ある文書を確かに郵送したということを第三者に対しても証明できるようになるため、本当に郵送したかどうかを疑われた際の有力な証拠となります。

    ただし、内容証明郵便を送るだけでは、その文書が本当に相手方に配達されたかどうかまでは証明してもらえません。そこで、「配達証明」というサービスをオプションにつけておくことで、相手方に届けられた事実も記録し、後から証明することが可能になります。

  2. (2)内容証明郵便には時効の完成を遅らせる効果がある

    実は、残業代が請求できる期間には時効があります。その期間内に残業代を請求しなければ、もらえるはずの残業代を請求できなくなってしまうのです。そして、内容証明郵便によって残業代を請求すると、時効の完成を遅らせることができます。

  3. (3)残業代請求の時効はたったの2年

    労働基準法第115条では、「賃金の請求権は2年間行使しなければ時効によって消滅する」と規定されています。ここでいう「賃金」には残業代も含むと考えられているため、残業代請求権もたった2年で消滅してしまうのです。
    そして、内容証明郵便によって残業代を会社に請求すると、ひとまず時効が「停止」します。この「停止」から6ヶ月以内に、裁判を起こす「裁判上の請求」などを行うことで、時効を「中断」させ、消滅時効の完成を妨げることができます。

2、内容証明郵便を送る際のルールと注意点とは

残業代請求を行う際にはほぼ必須となる内容証明郵便ですが、書き方には厳格なルールがあります。初めて内容証明郵便を利用する人にとっては、このルールが少々煩わしく思えるかもしれません。しかし、相手方に一日でも早く送り届けるためにも、内容証明郵便の正しい書き方を覚えておきましょう。

  1. (1)内容証明郵便の書き方のルール

    内容証明郵便を作成する際には、以下のルールに従って書く必要があります。

    ①字数と行数
    内容証明郵便では、1行に書ける文字数と用紙1枚に書ける行数が以下のように決まっており、このうちいずれかのルールに従って記入することが必要です。

    <横書きの場合>
    ・1行あたり20文字以内
    ・用紙一枚あたり26行以内
    あるいは
    ・1行あたり13文字以内
    ・1枚あたり40行以内
    あるいは
    ・1行あたり26文字以内
    ・1枚あたり20行以内

    <縦書きの場合>
    ・1行あたり20文字以内
    ・用紙1枚あたり26行以内

    ②使用可能な文字とその数え方
    内容証明郵便で使える文字は、ひらがな・カタカナ・漢字・数字・句読点および一般的な記号です。アルファベットなどの外国の文字に関しては、固有名詞の場合のみ使用できます。また、文字数え方にも独特のルールがありますので見ていきましょう。

    • ④などといった、記号と文字が組み合わさった文字は一つで2文字として数える。
    • 「」のような二つセットの記号は、二つ合わせて1文字として数える
    • (1)などの序列を表す記号は、全体で1文字として数える。


    以上のように細かなルールが多くあるため、記入の際は、専用の用紙を用いて記入したり、ワープロを使用して文章の体裁を整えてから印刷したりして、できるだけミスが出ないよう工夫をした方がいいでしょう。

  2. (2)内容証明郵便を送付する際に注意すべきこと

    また、内容証明郵便を送付する際には、以下のような点にも注意が必要です。

    • 郵便局によっては受け付けてもらえない場合があること
    • 長期間の保存に耐えられる用紙を使用すること
    • 同じものを3部用意すること(送付用、自分の保管用、郵便局の保管用)
    • 封筒は封をしないこと
    • 1枚に収まらない場合は1部ごとに綴じること
    • 綴じたつなぎ目に契印すること

3、業種ごとの内容証明郵便の書き方

内容証明郵便に記載すべき項目が業種ごとに変わるようなことは基本的にはありません。しかし、やはりその業種ならではの問題もあるため、内容証明郵便を利用して残業代請求を行うときには、注意すべき点も異なります。

  1. (1)美容師の内容証明郵便の書き方

    美容師は、下積み時代には接客のみならずさまざまな業務をこなさなければなりません。新人のうちは閉店後に店内の清掃を任されたり、新人研修に参加させられたりすることもあります。また、腕を磨くためにヘアカットの練習も欠かせないでしょう。

    しかし、清掃や研修参加、自主練習を会社側から強要されている場合は、それらを行っている時間は残業時間であり、残業代の支払い対象となります。そのため、内容証明郵便には各業務が残業に当たる旨をきっちり記載して残業代を請求していくことが必要です。

  2. (2)アパレルに勤務する方の内容証明郵便の書き方

    アパレルの場合は、勤務形態がシフト制で勤務が不規則になりがちで就業時間が把握しづらいことがあります。その上、バーゲンセールの時期などは品出しや入荷といった業務が増え、就業時間内では仕事が終わらず残業が発生しやすい傾向にあります。

    アパレル業界では、閉店後の日報の作成やレジの締め作業などが欠かせませんが、それらを終業後に行っているケースも非常に多く見受けられます。それらの作業を行っている時間も残業時間となるため、内容証明郵便にはその旨を明示して残業代を請求しましょう。

  3. (3)スーパーに勤務する方の内容証明郵便の書き方

    スーパーでも、アパレルと同様にセールの日には多忙になりやすく、ギリギリの人員で業務を回していることも相まって長時間労働を強いられる傾向があります。

    始業前に開店準備をしたり、終業後にお店の後片付けやレジの締め作業をしたりするケースや着替えを行うケースも多く見られます。そのため、これらの時間を残業時間として残業代を請求していくことを明示しましょう。

4、まとめ

内容証明郵便を利用すれば、時効の完成を少しでも遅らせることができるので、その分証拠集めや会社側との交渉に時間を費やすことができ、より多くの残業代を回収できる可能性も高まります。

しかし、未払い残業代問題を素早く解決するには、弁護士に依頼するのが一番の早道です。残業代が支払われずにお困りの方は、ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスへご相談ください。

相手方との交渉を促すために必要な内容証明郵便を準備する際にも、当事務所の弁護士がサポートいたします。内容証明郵便は自分の名前で送ることもできますが、弁護士の名で送付すれば、残業代請求に対するこちらの本気度が会社側に伝わり、交渉にも応じてもらいやすくなります。内容証明郵便の書き方や送付の仕方についてアドバイスが欲しい方も、遠慮なくベリーベスト法律事務所 仙台オフィスまでご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています