会社に残業代請求しても負けるのはどのようなケース? 仙台オフィスの弁護士が解説!

2019年05月17日
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会社に残業代請求しても負けるのはどのようなケース? 仙台オフィスの弁護士が解説!

平成30年9月、仙台市が雇用した非常勤嘱託職員112名に対する、約500万円の残業代未払いが発覚しました。未払い額はさらに増える可能性があるそうです。このケースのように、本来支払われるべき残業代が支払われていない方はいらっしゃるのではないでしょうか。

未払いの残業代を請求しようとしても、場合によっては裁判に負ける、もしくはほとんど支払ってもらえないケースもあります。そこで、どのようなケースで支払われないのか、残業代請求を成功させるために必要な事項などについて、仙台オフィスの弁護士が紹介します。

1、残業代請求が認められないケースとは?

残業代は労働基準法などの法律で定められています。正当に支払われていなければ、会社側は支払わなければなりません。しかし、請求が認められないケースがあります。まずはあなた自身が該当していないか確認する必要があるでしょう。

  1. (1)時効を過ぎている

    残業代の請求には時効があります。労働基準法第115条によって、賃金や災害補償その他の請求権の時効は2年間と定められているのです。したがって、会社側が時効を援用すれば、基本的に、2年までしかさかのぼって残業代を請求することができません。時効完成を回避したい場合は、まずは、残業代請求について記載した内容証明郵便を会社側に送付したいところです。

  2. (2)労働基準法上の「管理監督者」である

    労働基準法では「管理監督者」に対して、労働時間や休日、休憩の規定は適用されないとしています。労働基準法における管理監督者に該当する場合は、深夜労働を除く残業代の請求を行っても認められません。

    労働基準法における管理監督者にあたるかどうかは、次のような事情などにより判断されます。

    • 労務管理を含めて、会社の重要事項や経営方針の決定にどのように関与しているか
    • 出退勤や休日などの勤務態様について、裁量権を有しているか
    • 基本給や役職手当、賞与などが一般の労働者に比べてふさわしい待遇であるか


    ただし、会社側が「管理者だから」と形式的に主張しているだけでは、労働基準法における管理労働者にはあたらない可能性があります。実態によっては雇用契約書上で管理者と記載されていたとしても残業代が認められる可能性があります。わからない場合は弁護士などに相談したほうがよいでしょう。

  3. (3)基本給に残業代が含まれている

    雇用契約を締結するにあたって、「30時間分の残業代を基本給に含む」と定められている場合において、1ヶ月の残業時間が30時間に満たない場合は、該当月の残業代の請求は認められないケースがあります。

    もっとも、定められている時間以上の残業をした場合は、残業代請求が認められるのがほとんどです。

  4. (4)みなし労働時間制・裁量労働時間制である

    特定の職種においてみなし労働時間制や裁量労働制が採用されているケースです。たとえば「1日8時間労働したものとみなす」と規定されている場合は、たとえ10時間勤務しても2時間分の残業代の請求は認められません。システムエンジニアや研究員など労働時間管理になじまない職種に適用される裁量労働時間制では、法定労働時間を超えて勤務しても残業代は支払われません。

    ただし、労使協定により1日の労働時間の上限が規定されている場合や、賃金に見合わない長時間の残業をしている場合など、残業代の請求が認められる場合があります。また、みなし労働時間制や裁量労働制の導入には厳しい条件があります。単に職種名をもって制度の適用が認められるわけではありませんので,改めて確認してみましょう。

  5. (5)年俸制である

    年俸制の契約でかつ一定時間の残業代が含まれている場合は、残業代請求が認められないことがあります。ただし、設定されている時間を超えて残業している場合や契約に残業代が含まれていない場合などは、残業代の請求が認められることがあります。

2、残業代請求は証拠集めが重要

未払いの残業代を獲得するためには、残業代が未払いである証拠を集めることが重要です。残業代請求の立証責任は労働者側にあるので、証拠がなければ認められる可能性がとても低くなります。

残業代請求をするために必要な証拠には、主として、次のようなものが考えられます。

①労働契約の内容を示す証拠

  • 就業規則や賃金規定
  • 雇用契約書


②既払金を確認するための証拠

  • 給与明細


③残業した時間を示す証拠

  • タイムカード
  • シフト表
  • 残業指示書
  • 業務日報や営業日報
  • 手書きの勤務時間表や日記などの備忘録
  • 会社の電話、FAX、メールなどの発信記録
  • 会社のパソコンの利用履歴
  • 上司が残業指示を送ったLINEやメールなどの記録
  • 家族に対して毎日送っていた「帰るよ」メールやSNSの履歴

3、残業代を請求するにはどうすればいい?

必要な証拠を集めたら、例えば、次のような手順で請求を行うことがあります。

  1. (1)弁護士などの専門家に相談する

    まずは、残業代を請求できるケースに該当するかどうか、専門家に相談してみましょう。たとえ会社側が、上記「1、残業代請求が認められないケースとは?」で記載した事情など理由に支払いを拒んでいたとしても、実態が異なるケースでは残業代請求が認められる可能性があります。

  2. (2)内容証明郵便を送付して会社側と交渉する

    会社側が支払うべき残業代を計算して、内容証明郵便を送付しても無視される場合がありますが、配達証明付きにして送り、さらに6ヶ月以内に訴訟提起などをした場合には、時効完成を回避できます。

  3. (3)労働審判・裁判

    交渉を続けても残業代の支払いが行われない場合は、裁判所に労働審判などの申し立てをします。労働審判は原則3回以内で審理されますので、訴訟に比べて早期に解決することができます。
    審判結果に対して納得できない場合は、当事者は異議の申し立てができます。異議の申し立てがあった場合は、裁判に移行します。
    労働審判を経ず、すぐに裁判に移行することも可能です。裁判で残業代請求が認められたときは、未払い分の残業代とは別に、付加金が認められることがあります。

4、残業代請求を成功させるには弁護士に依頼を

法律知識が少ない労働者が個人で会社側と交渉しても、請求が認められる可能性は低いでしょう。勤務中の会社であれば、降格や左遷などのパワーハラスメントを受けるリスクもあります。また、会社を退職している場合は、証拠集めがとても難しくなります。

そのような場合は、会社との交渉前から弁護士に依頼することをおすすめします。弁護士に依頼するメリットとして、次のようなことがあります。

  1. (1)証拠集めがスムーズにできる

    弁護士であれば、法的観点から有効な証拠集めについてアドバイスできます。また、雇用契約書やタイムカード、給与明細などの証拠書類がなくても開示請求によってそろえることが期待できます。

  2. (2)残業代の計算が正確にできる

    残業代を請求するためには正確に残業代の計算をする必要があります。しかし、どこまでが残業時間にあたり、割増率はどれくらいになるかなど、計算は複雑でわかりにくいものです。弁護士であれば正確に計算することができます。

  3. (3)早期に解決することができる

    弁護士は法的根拠と有効な証拠に基づき、会社側と交渉することができます。スムーズに交渉を進めることで、労働審判の申し立て前に、会社側から残業代を支払ってもらえることも期待できます。

5、まとめ

今回は、未払いの残業代請求が認められないケースや残業代請求に有効な証拠は何か、残業代請求の方法などを紹介しました。

残業代を支払ってもらうことは、労働者の正当な権利です。しかし、残業代請求には時効があるので、早期に対応する必要があります。弁護士に依頼をすれば、仕事に支障が出ないようにスムーズに対応してもらえ、迅速にトラブルを解決することができるでしょう。

未払いの残業代があるかもしれず、請求すべきかとお悩みのときは、ベリーベスト法律事務所・仙台オフィスで相談してください。残業代請求に対応した経験が豊富な仙台オフィスの弁護士が全力で残業代の獲得をサポートします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています