自爆営業とは?違法なケースや強要された場合の対処方法
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過剰なノルマを課して自腹で商品を購入させる自爆営業は、ブラック企業特有の文化と思われがちです。しかし、事業規模を問わずさまざまな企業でも自爆営業を強要していたことが明るみに出つつあります。
欲しくない商品等を強制的に購入させられる自爆営業は、果たして合法なのでしょうか。
本コラムでは、自爆営業の概要や法律面での問題、そして自爆営業を強要されたときの対処法をベリーベスト法律事務所 仙台オフィスの弁護士が解説します。


1、自爆営業とはどのような行為?
自爆営業とは、企業が従業員に対して自社製品等の購入を強制するものです。営業目標を達成するなどの名目で、立場を利用して商品購入を個々の従業員に強要します。
自爆営業には、会社が強制的に購入させるパターンと、従業員が過剰なノルマを達成できずに自主的に購入するパターン、ノルマ未達成のペナルティとして給与から商品代金を天引きするパターンなどがあります。
自爆営業として購入する商品は、自社製品とは限りません。取引先の商品を購入させることによって、付属する自社製品の販売ノルマを達成しようとするケースがあるようです。
いずれにしても、自爆営業の多くがノルマ達成の目的などによって行われています。場合によっては、実質的には強要されている状態にもかかわらず、「営業社員の自主的な協力」として扱われているケースが少なくないという実態があります。
2、自爆営業が違法になるケース
強要された自爆営業のうち、特に以下のようなケースは、労働基準法や刑法に違反している可能性があります。
ただし、どのケースも企業側が強要した事実が必要です。特に依頼されていない、もしくは無言の強要もない状況下で自主的に購入したものについては、違法にならないと考えられます。
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(1)購入しなければ解雇するなどと脅されて購入した:強要罪など
解雇や減給など自身に不利益になることを示唆して、製品の購入を強要すると強要罪などに該当する可能性があります。
強要罪(刑法第223条)
生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴力を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、3年以下の懲役に処する
解雇や減給は従業員の財産に害を加えるものと考えられます。また、売り上げのためなどの大義名分で、会社側は商品の買い取りなどを求めてきますが、従業員は購入する義務はありません。すべての自爆営業が、強要罪になるとは限りませんが、悪質なケースでは有罪判決が下る可能性もあるでしょう。
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(2)過剰なノルマのペナルティとして商品在庫を買い取らせる:労働基準法違反
企業が従業員に対してノルマを課すことは違法ではありません。しかし、ノルマの未達成を理由にペナルティを課す行為は労働基準法に違反する可能性があります。
労働基準法第16条
使用者は、労働者の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない
つまり、ノルマを達成しないからといってペナルティを課すことは違法とされているのです。
さらに、労働基準法第16条では罰則が定められていて、企業側が有罪になると 6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処されます。 -
(3)商品代金を給与から天引きされた:労働基準法違反
商品代金を現金ではなく、給与から天引きすると労働基準法に違反する可能性があります。
労働基準法24条1項
賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない
通貨には、法定通貨だけでなく、ビットコインなども含まれる可能性がありますが、会社の製品はさすがに通貨とはみなされないでしょう。
つまり、商品を給与とみなすことも、ノルマ未達成のペナルティとして一方的に給与から天引きすることも違法なのです。労働基準法第24条違反になると、30万円以下の罰金になる可能性があります。 -
(4)違法行為を受けたとき、商品代金の返金は可能?
自爆営業は、企業側の強制であれば違法となりえます。まずは、自爆営業を強要する本人などではなく、本社等に掛け合えば返金できる可能性があるでしょう。
返金を求める方法は、たとえば以下の方法です。- ①企業に任意で交渉する
- ②専門機関への相談
- ③法的手段に訴える
ただし、どのケースでも、強制された証拠、自腹を切った証拠を確保するべきです。上司の独断で自腹を強制されている場合は、本社等に相談することで解決策が提示される可能性もあります。会社全体が自腹営業を強要している場合は、外部機関への相談を試みましょう。
お問い合わせください。
3、自爆営業を強要された場合の対処方法
会社から自爆営業を強制されたとき、即座に断れることがベストな対応方法です。しかし、大手企業でも自爆営業が横行している事実があるとおり、簡単に断れるものではありません。ここでは、自爆営業を強要された場合の対処法を説明します。
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(1)自爆営業の証拠を確保する
自爆営業をやめさせるためには、上席、もしくは外部機関に相談することが効果的になりえます。その際は自爆営業の証拠を求められることがあります。証拠の例が下記のとおりです。
●商品等の購入を強制した証拠
商品の購入が強制だったことを示す証拠が必要です。上司の脅すような言動があった場合は、その音声データやメール等が有効になります。給与からの天引きやペナルティなどが就業規則等に記載されていればそれも証拠となります。
●商品を購入した証拠
命じられたとおり実際に商品を購入したということがわかる証拠です。商品のレシートや、大量の商品の現物などが証拠となります。
●給与から天引きされたことがわかるもの
振り込まれた給与が減額されている場合は、給与が減額されていることがわかる銀行口座の明細や給与明細、元の給与がわかる雇用契約書や就業規則を用意しましょう。 -
(2)上司や本社等に相談する
自爆営業が会社ぐるみでなければ、上司や本社等に相談しましょう。常識的な企業であれば、違法な自爆営業が横行している事実を放置しないはずです。
ただし、会社ぐるみで自爆営業を黙認している、もしくは自爆営業を推奨しているのであれば会社側への相談はほぼ意味がありません。場合によっては不利な立場へ追い込まれます。まずは外部機関に相談してください。 -
(3)労働基準監督署等に相談する
労働基準監督署や労働局などの機関は、企業が違法な行為をしていないかどうかを監視する機関です。労働者や市民からの通報や相談により、企業側に違法な行為が確認されると指導などを行います。また、度重なる指導に従わず、違法な行為が繰り返される場合、労働基準監督官は逮捕する権限も有しています。
ただし、労働基準監督署は違法な行為が確認できた場合のみ指導などを行います。自爆営業の証拠が少ない、明確ではないなどのケースでは積極的に関与できない可能性があります。
また、返金や慰謝料を請求する場合などの「代理人」にはなれません。代理人として交渉してもらうには弁護士へ依頼する必要があります。 -
(4)弁護士に相談する
自爆営業を断れない、過去に大量に購入した分の返金を求めたいと考えている方は弁護士への相談をおすすめします。自爆営業の返金を求める場合、重要になるのは「強制されたかどうか」です。自爆営業の強制がある場合、商品代金の返金を求めるべきです。
違法かどうかはケース・バイ・ケースで判断が難しいため、違法性を判断するためにまずは弁護士に相談しましょう。違法な自爆営業であれば、返金交渉などの手続きが代行可能となります。直接交渉して返金されなければ、労働審判や訴訟などの手続きへの移行を検討するべきです。
また、自爆営業を強要してくるような企業は、残業代の未払いなど他の労働問題を抱えていることが少なくありません。請求できるものがあれば、弁護士に相談することで取り戻すことができる可能性があるでしょう。
4、まとめ
企業の従業員に対する自爆営業は、強制していれば違法となりえます。悪質なケースでは強要罪に問われる可能性もあるため、泣き寝入りをせず対策することが重要です。
自爆営業を強制されたら、強制された証拠と購入した証拠、給与から天引きされた証拠などを確保して、適切な機関に相談しましょう。
強要された自爆営業の被害をはじめとした、労働問題について悩んでいるのであれば、ひとりで悩まず、ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスへご相談ください。きちんとヒアリングをして状況を確認した上で、最適な対策をアドバイスします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています