連帯保証人と保証人の違いとは? 未納家賃の請求を受けた場合の解決策
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賃貸アパートやマンションなどを借りる際に、不動産会社から「連帯保証人が必要」と求められることがあります。
仙台市では、市と協力関係にある不動産会社によって保証会社をあっせんする「仙台市民間賃貸住宅入居支援制度」を用意しています。家賃支払い能力が十分にあったとしても保証人を用意できない人が利用できるのはもちろんのこと、連帯保証人を依頼されていて困っている場合などには、このようなサービスを紹介してあげるのも一案です。
しかし、親族や友人・知人などから「連帯保証人になってほしい」と依頼されると、断るのは難しいかもしれません。ところが、あまり考えず気軽に請け負っていると、後々のトラブルを招くおそれがあります。
また、連帯保証人とよく似た用語に「保証人」がありますが、権利において異なる面もあるため注意が必要です。
本コラムでは「連帯保証人と保証人の違い」に触れながら、賃貸住宅の家賃滞納について連帯保証人が負う義務や支払いトラブルを解決する方法について、仙台オフィスの弁護士が解説します。
1、連帯保証人と保証人の違い
賃貸住宅の契約時などには「連帯保証人」や「保証人」といった用語が登場しますが、これらを「言い回しが違うだけで同じもの」と考えてはいけません。
連帯保証人と保証人は、基本的には同じ義務を負うものですが、認められた権利の範囲が異なります。
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(1)連帯保証人とは
債権・債務の関係において、主債務者と連帯して支払いや返済の義務を負うのが「連帯保証人」です。
債権者としては契約の当事者となる主債務者と同様に請求が可能であるため、非常に重い責任が課せられる存在だといえるでしょう。 -
(2)保証人とは
「保証人」も、債権・債務の関係でいえば、主債務者と同様に支払いや返済の義務を負うものです。
主債務者の債務を保証する、という立場においては連帯保証人と同じでしょう。 -
(3)検索の抗弁権と催告の抗弁権
連帯保証人と保証人は、いずれも「主債務者の債務を保証し、支払いや返済の義務を負う」という点でほぼ同じ存在です。
ただし、保証人には認められて、連帯保証人には認められない権利があります。
それが「検索の抗弁権」と「催告の抗弁権」です。
検索の抗弁権とは、債権者から請求を受けた際に、債務者に決済する資力があり、支払いをすることも容易だと証明できた場合は、「主債務者に支払い能力があるので支払わない」と主張する権利をいいます。
たとえば、支払い能力があるのに何らかの事情で借り主が「家賃は支払わない」と主張した場合、請求を受けた保証人は「ちゃんと支払いできるはずだから、借り主に請求してくれ」と抗弁することができます。しかし、連帯保証人には認められていません。
次に、催告の抗弁権とは「まずは主債務者に請求してほしい」と主張する権利です。
債権者が主債務者を飛び越えて請求した場合には「まずは主債務者へ」と主張するものですが、検索の抗弁権と同様に、連帯保証人にはこれが認められていません。
検索・催告の抗弁権がないという点を踏まえると、連帯保証人と保証人は同じような義務が発生するものの、連帯保証人のほうがより重たい義務を負っているといえるでしょう。
2、借り主の代わりに家賃の支払いを求められた!
賃貸住宅の家賃支払いが滞ると、賃貸借契約に従って連帯保証人が支払いを求められます。
果たして、連帯保証人には支払いの義務が発生するのでしょうか?
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(1)連帯保証人には支払いの義務が生じる
連帯保証人は、主債務者と連帯して債務を負う存在です。
主債務者が支払いを拒んだ、または支払い能力がない場合には、連帯保証人が連帯してその債務を果たす義務を負います。
家賃支払いが滞った場合に、物件の大家や不動産会社が連帯保証人に支払いを求めるのは正当な権利なので「代わりに支払わなければいけないなど聞いていない」といった反論は、基本的には認められません。 -
(2)裁判・差し押さえを受けるおそれがある
連帯保証人が支払いを拒んだ、または連帯保証人にも支払い能力がない場合は、債権者である貸主は、裁判所の手続きを利用して支払いを求めることになるでしょう。
裁判所が支払いするよう判決を下すおそれは高く、支払いをしない・できない場合は財産や給料の差し押さえを受けるおそれがあります。 -
(3)求償権によって借り主に請求可能
連帯保証人は主債務者と同じように家賃支払いの義務を負うことになりますが、その負担をすべて連帯保証人だけが負うわけではありません。
債権者からの請求で連帯保証人が債務を支払った場合、連帯保証人は「求償権」に基づいて、主債務者にその支払い分を請求可能です。
ただし、債権者への支払いの前後に、主債務者へ代わりする旨を通知しなければ求償権の範囲が制限される場合があるという点には注意が必要です。
3、連帯保証人を解除してもらいたい! 支払いが難しい場合の解決策
連帯保証人が負うべき責任を詳しく理解しないまま連帯保証人になってしまった場合は、「連帯保証人を解除してもらいたい」と思いなおすこともあるでしょう。
ましてや、債権者から連帯保証人としての支払いを求められている状態であれば、なおさら解除を強く求めたいはずです。
基本的に、連帯保証人は債権者の許可がない限り解除できず、債権者がこれを認めることはまず期待できません、
ただし、一定の条件を満たすケースでは、連帯保証人の解除ができる可能性があります。
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(1)連帯保証人の解除が認められる可能性がある条件
連帯保証人の解除が認められる可能性があるのは、重大な事実誤認や脅迫行為などがあった場合に限られます。
具体的には、次のようなケースです。
●保証の意思確認がない
連帯保証人になることを認めていないまま、無断で印鑑を押されたり、書類を代筆されてしまったりした場合は、契約無効を主張することが可能です。
●契約内容に勘違いがあった
契約の内容自体を勘違いしていた場合は、錯誤があったものとして、契約無効を主張できる可能性があります。ただし、連帯保証人自身に、何らかの落ち度があった場合は、錯誤の主張が認められるのは難しい0でしょう。
●詐欺や脅迫によって連帯保証人になった
民法第96条に基づき、契約の取り消しを主張することができます。
●未成年者が連帯保証人になっていた場合
未成年者が連帯保証人になってしまった場合は、取り消しすることが可能です。ただし、一定の状況に該当する場合は、取り消しが認められないため注意が必要です。
これらに該当するからといって必ずしも解除が認められるわけではありません。まずは、事実を立証する必要があります。 -
(2)支払いが難しい場合の解決策
家賃の滞納額が膨らんでしまった状態で支払いを求められると、いくら連帯保証人だからといわれても支払いが難しいこともあるでしょう。
連帯保証人として負うべき支払額が大きくなってしまい支払いが難しい場合は、債務整理を視野に入れておくのもひとつの解決策です。
債務整理といえば、消費者金融などからの借金が膨らんでしまった場合の解決策というイメージがあるかもしれませんが、連帯保証人としての債務も対象となります。
債務整理には、任意整理・個人再生・自己破産の3つの方法があります。- 任意整理
債権者と債務者の間で、将来支払う利息などをカットし、月々の支払額を軽減する手続きです。 - 個人再生
裁判所に再生計画案を提出して認められると、債務が5分の1程度に減額されることがある手続きです。 - 自己破産
財産を処分して支払いにあてるなどで、債務をゼロにできる手続きです。
どの方法で解決するべきなのかの判断は、債務整理の対応実績が豊富な弁護士に相談してアドバイスを求めるのがベストです。
- 任意整理
4、弁護士への相談で解決が期待できる
連帯保証人として賃貸住宅の滞納家賃の支払いを求められてしまいお困りであれば、弁護士への相談をおすすめします。
弁護士は代理人となれるため、債権者や主債務者である借り主との交渉を任せることができます。契約自体に問題がある場合は、弁護士が証拠をもとに事実を証明し、適切な主張をすることで連帯保証人の解除がかなう可能性もあるでしょう。
また、返済額が大きすぎて支払いが難しく債務整理の手続きをとる場合は、弁護士に依頼することで、どの手続きを利用して債務整理をすすめるのかを相談できるだけではなく、実際の手続きの一切を任せることができます。
弁護士が代理人として受任した旨を通知した時点で、債権者からのわずらわしい連絡・督促もストップするので、精神的な負担は大幅に解消されるでしょう。
5、まとめ
連帯保証人は、債権者と同じく支払いの義務を負います。
賃貸アパートやマンションの賃貸借契約において連帯保証人となった場合、家賃支払いが滞ってしまえば連帯保証人がその支払いの責任を負います。
あとになって「そんなことは聞いていない」、「支払うだけのお金がない」と抗弁しても支払いの責任を免れることは困難なので、連帯保証人としての契約は慎重に判断しましょう。
もし、すでに親族や友人・知人などの賃貸借契約において連帯保証人となっており、滞納家賃分について支払いを求められてお困りであれば、ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスにご相談ください。
連帯保証人の解除が認められる可能性や債務整理による解決について詳しくアドバイスし、トラブル解消に向けて全力でサポートします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています