再婚禁止期間とは? 期間中に再婚する方法や妊娠した場合の注意点
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仙台市が公表している仙台市統計書によると、平成30年の1年間に仙台市では1697組の夫婦が離婚しています。
離婚後に再婚を検討している女性は、法律上の再婚禁止期間があることに注意しなければなりません。しかし、再婚相手の子ども妊娠しているような場合は、できるだけ早く再婚したいと思うものでしょう。そういった問題を解決するためには、再婚禁止期間の制度の趣旨や例外などを理解しておくことが大切です。
本コラムでは、再婚禁止期間についてベリーベスト法律事務所 仙台オフィスの弁護士が詳しく解説します。
1、再婚禁止期間とは?
まず「再婚禁止期間」について、理解を深めておきましょう。
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(1)再婚禁止期間は100日間
再婚禁止期間とは、「法律によって再婚が禁止されている期間」をいい、民法第733条1項で次のように規定されています。
【第733条1項】
女は、前婚の解消又は取消しの日から起算して100日を経過した後でなければ、再婚をすることができない。
つまり女性は、離婚(婚姻の解消)または婚姻の取り消しから100日以内は再婚が禁止されているということです。
なぜ女性だけに、このような制限があるのでしょうか?
また100日以内という日数には、どのような意味があるのでしょうか?
これらの疑問を解消するカギとなるのが、平成28年の「民法の一部を改正する法律」で改正された規定です。 -
(2)再婚禁止期間に関する法改正の背景
再婚禁止期間は、法改正があるまでは、明治時代に制定された民法にもとづき「6か月」とされていました。しかしこの規定の合憲性が争われ、平成27年に最高裁判所で「6か月」という再婚禁止期間の制限は一部違憲であるという判決が出されました。
この判決では、簡単にいえば「再婚禁止期間は、女性が出産した子どもについて、法律上の父親が誰であるか分からなくなるリスクを避けるために設けられている制度であり、6か月間は長すぎる」と判断されたのです。
そして、最高裁の判決を受け、民法で定める再婚禁止期間を「100日以内」に変更する法改正がなされました。 -
(3)なぜ100日間に変更されたのか
再婚禁止期間は、男女差別をするものではなく、女性は子どもを出産する可能性があるために規定されているものです。
100日という期間が設定された理由は、民法の父親を推定する規定にあります。
民法第772条では、「結婚してから200日経過後に生まれた子ども」と「離婚後300日以内に生まれた子ども」は婚姻中に懐妊したものと推定することが規定しています。
たとえば、再婚禁止期間がなかったと仮定して、ある年の1月1日に離婚して、同年2月1日に再婚したとする例で考えていきましょう。
この場合に、同年9月1日に子どもが生まれたとすると、子どもは離婚後300日以内に生まれているので前婚の夫の子どもと推定されます。しかし同時に、再婚してから200日経過後に生まれているので、再婚した夫の子どもとも推定されてしまいます。
つまり、元夫と現夫のどちらにも、父親の推定が及ぶことになってしまうのです。
子どもの父親の推定が二重に及びうる期間は、離婚後100日以内なので、その期間が再婚禁止期間として定められています。
2、出産すれば再婚禁止期間は適用されない?
再婚禁止期間は、子どもの法律上の父親が誰であるか明らかにすることを趣旨として設けられています。そのため趣旨に反しないケースでは、再婚禁止期間の規定の適用は受けないことがあります。
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(1)再婚禁止期間の例外規定
改正後の民法では、再婚禁止期間の規定を適用しないケースを、次のように定めています。
- 女性が離婚(または前婚の取り消し)ときに妊娠していなかった場合
- 女性が離婚(または前婚の取り消し)後に出産した場合
ただし、これらのケースに該当するとしても、事実を証明しなければ再婚禁止期間中の婚姻届は受理してもらえません。
具体的には、婚姻届に加えて「民法第733条第2項に該当する旨の証明書」として、次のいずれかについて医師が診断し作成した書面を提出する必要があります。- 離婚した日より後に妊娠していること
- 離婚した日より一定の時期において妊娠していないこと
- 離婚した日より後に出産したこと
したがって離婚後に出産したようなケースでは、再婚禁止期間中であっても、医師の証明書とともに婚姻届を提出すれば受理され再婚することができます。
もっとも、再婚禁止期間中に出産したときには元夫の子どもである推定が及ぶので、再婚予定の相手の子どもであるときには推定を覆す手続きが必要になります。 -
(2)再婚禁止期間が適用されないケース
なお、次のようなケースの場合、基本的に、再婚禁止期間の適用は受けないとされています。
●前婚と同じ相手と再婚する場合
前婚と後婚の夫が同一人物であれば、法律上の父親の推定が二重に及んでも問題ないためです。
●夫が3年以上行方不明かつ裁判上の離婚が成立している場合
配偶者が3年以上生死不明であれば法定離婚事由に該当するものとして、裁判離婚が成立することがあります。このような状況であれば、すぐに再婚して子どもが生まれても、客観的に元夫の子どもでないことが明らかと考えられるためです。
●妊娠できないことが明らかである場合
女性が妊娠しないことが明らかであるときには、父親の推定の問題は生じないため、再婚禁止期間は適用されないことがあります。たとえば、閉経している、子宮を全摘出しているなどのケースが考えられます。
3、元夫以外の男性の子どもを出産したときの対処法
再婚禁止期間である離婚後100日以内に出産した子どもについては、基本的に法律上は元夫の子どもと推定されてしまいます。そのため推定を覆すための手続きが必要になります。
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(1)嫡出否認の手続き
元夫と子どもの父子関係を否定するためには、元夫に「嫡出否認の調停」を申し立ててもらう必要があります。
嫡出否認の調停を申し立てられる期間は、元夫が子どもの出生を知ったときから1年以内に限られます。調停は当事者間による話し合いで合意を目指す手続きのため、当事者間で父子関係について争いがあるようなときには調停は不成立となります。
調停不成立となったときには、「嫡出否認の訴え」を家庭裁判所に提起することができます。 -
(2)親子関係不存在確認・強制認知
再婚禁止期間中の出産であっても、妊娠したであろう時期に「元夫と長期間別居していて会うことがなかった」、「元夫が海外赴任中だった」など実際には婚姻の実態がなかったことが明らかな場合は、元夫の子どもであるという推定は及ばないことがあります。
推定が及ばないときは、嫡出否認の手続きによることなく元夫との父子関係を裁判上で否定することが可能です。
具体的には、子どもや子どもの母親が元夫を相手として「親子関係不存在確認の手続き」を行います。
「親子関係不存在確認の手続き」は「嫡出否認の手続き」とは異なり、出生後1年を経過しても可能で、元夫が申立人になる必要もありません。
4、離婚・再婚問題は弁護士に相談を
離婚の際には、財産分与や慰謝料といったお金の問題など、さまざまな事柄を解決していかなければなりません。そして離婚だけでなく、再婚や子どもの問題などが加われば、ご自身だけで対処することは大きな負担となることでしょう。
そういったケースでは、早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士は、ご相談者の方の代理人として、相手方と話し合いを進めることができるので、元夫と顔を合わせることなく協議を進めることが可能です。特に、嫡出否認の手続きについては、元夫の協力は不可欠です。しかし、感情面が絡む問題でもあるため、想定外のトラブルに発展してしまうことも懸念されます。
離婚・再婚問題は、こじれてしまうと解決まで時間を要するだけではなく、精神的な負担も大きくなるものです。弁護士であれば、双方の関係性に配慮しながら適切な助言、サポートを行い、少しでもスムーズな解決に導けるよう対応することが可能です。
5、まとめ
本コラムでは、再婚する場合に注意するべき「再婚禁止期間」について解説しました。
離婚後に、再婚を検討している場合は、原則として離婚後100日間待つか、必要な証明書の届け出が必要です。ただし、再婚予定である相手との子どもを妊娠しているようなケースでは、再婚禁止期間や法律上の父親の推定が及ぶかどうかなどは、切実な問題になることでしょう。
離婚・再婚問題でトラブルやお悩みを抱えている場合には、ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスへご連絡ください。仙台オフィスの弁護士が、しっかりとお話を伺った上で、状況に応じた適切なサポートを行い、1日でも早く新しい生活がスタートできるよう全力でサポートします。
お一人で悩むことなく、ぜひお気軽にご相談ください。
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