離婚時の財産分与に車は含まれるのか|財産分与の対象になる基準とは

2021年10月26日
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離婚時の財産分与に車は含まれるのか|財産分与の対象になる基準とは

仙台市が公表している「仙台市統計書令和2年版-2.人口」によると、令和元年に仙台市内で離婚が成立した件数は1813件でした。男女の年齢で見ると、男性と女性ともに30代から40代での離婚が多いことがわかります。

年齢を重ねた夫婦が離婚をする場合には、離婚時の財産分与が争点になることが多い傾向にあります。婚姻期間中に夫婦で築いた財産が多いほど、財産分与の対象財産も増えていくため、夫婦でもめる原因となるのです。

特に、収入が多い方の場合は、保有する資産の種類や額も多くなります。車やブランドの時計など、資産価値が高いだけではなく、愛着のある財産を保有している方も少なくないでしょう。適切に財産分与を行わなければ、大切な財産を手元に残しておくことができなくなってしまいます。

今回は、離婚時の財産分与のうち車にフォーカスをあて、財産分与に関する疑問をベリーベスト法律事務所 仙台オフィスの弁護士が解説します。

1、車は財産分与の対象になる?

車は財産分与の対象になるのでしょうか。まずは、財産分与の基本的な考え方と財産分与の対象になる財産について説明します。

  1. (1)財産分与とは

    財産分与とは、婚姻期間中に夫婦が協力して維持・形成してきた財産を、離婚時に清算をする制度のことをいいます。

    財産分与は、財産の維持・形成に対する貢献度に応じて分けることになりますが、基本的には、夫婦の貢献度は等しいものと考えられています。そのため、収入差などにかかわらず、財産分与の対象となった財産を2分の1の割合で分けるのが原則となります。

    もっとも、夫婦の一方が特別な努力や能力によって財産の維持・形成をしたという事情がある場合には、例外的に財産分与の割合が修正されることがあります。高額所得者の方については、このような個別事情がある場合も少なくないので、慎重に検討したうえで適切な主張をすることが重要です。

  2. (2)財産分与の対象となる財産

    財産分与の対象になる財産は、夫婦が婚姻期間中に夫婦の協力によって維持・形成した財産です。このような財産を「共有財産」といいます。共有財産にあたるかどうかは、夫婦の協力によって維持・形成した財産であるかどうかがポイントになりますので、当該財産の名義が、夫婦のどちらであるかは問題にはなりません。

    共有財産の代表的なものとしては、婚姻後に夫婦の協力によって維持・形成した、預貯金、不動産、有価証券などがありますが、次のような財産も共有財産に含まれます。

    ① 車
    夫婦が婚姻後に購入した車については、原則として財産分与の対象となります。車の名義が夫または妻のいずれであっても共有財産にあたります。
    他方、夫または妻が婚姻前から乗っている車や親からの相続によって得た車などは、夫婦の協力とは無関係に取得したものですので、財産分与の対象にはなりません。このような財産のことを「特有財産」といいます。

    車が共有財産にあたる場合には、車の価値をどのように評価するかが問題になります。財産分与における車の評価は時価によって行いますので、ディーラーや中古車販売店で車の査定をしてもらう必要があります。
    ただし、購入してからある程度年数が経過している車は、財産価値がないこともありますので、その場合には財産分与の対象から外して、車をどちらが取得するかを取り決めることになります。

    ② 高級時計・宝石など
    時計やアクセサリーなどの動産は、資産価値が低い場合、財産分与で問題にはならないことがあります。しかし、高級ブランド時計や宝石などを多数所有している場合は、問題になる可能性があります。

    時計や宝石などは、夫婦で一緒に使うものではなく、どちらか一方が専用で使うものといえます。もっとも、それらを購入するための原資は、婚姻後に夫婦の協力によって維持・形成された現金や預貯金ですので、専用で使用する高級時計や宝石であっても財産分与の対象になります。
    高級時計や宝石が財産分与の対象に含まれる場合には、その金額でもめることのないように、査定や鑑定などを行うことによって、当該資産の価値をしっかりと評価すること重要です。

2、車を売却するしかない? 財産分与の方法

車が夫婦の共有財産として財産分与の対象になる場合には、どのような方法で分ければよいのでしょうか。具体例を交えつつ、財産分与の方法について説明します。

  1. (1)現物分割

    現物分割とは、財産分与の対象財産をそのまま夫婦で分ける方法です。
    たとえば、夫婦の共有財産として、預貯金100万円と車(評価額100万円)がある場合、夫は車を取得し、妻は預貯金100万円を取得します。

    例示したものは、財産の構成を単純化したものであるため簡単に見えますが、実際には、さまざまな財産が財産分与の対象に含まれますので、2分の1の割合できれいに現物分割できるという事例は少ないです。

    夫婦の共有財産として、預貯金50万円と車(評価額100万円)があった場合を例に考えてみましょう。夫が車を取得したいと考えた場合、妻は預貯金50万円しか取得することができないため、取得額に差額が生じてしまいます。妻が少ない財産分与でも納得すればよいですが、納得が得られない場合には、代償分割を検討することになります。

  2. (2)代償分割

    代償分割とは、現物分割では公平な分割ができない場合に、どちらか一方が現物を取得する代わりに、他方に対して代償金という金銭の支払いをすることによって調整する方法です。

    再び、預貯金50万円と車(評価額100万円)があるケースで考えてみます。
    共有財産を2分の1ずつ分けた場合には、それぞれ75万円の財産を取得することになります。しかし、夫が車の取得を希望した場合、妻は50万円の預貯金しか取得することができず、25万円不足することになります。
    このような場合は、夫が自らの財産から25万円を代償金として妻に支払うことによって調整を行い、公平な財産分与を実現します。

  3. (3)換価分割

    離婚後、夫婦のどちらも車を利用する予定がないという場合には、車を売却した上で、売却して得られた現金を分けるという方法もあります。これを換価分割といいます。
    換価分割は、売却で得られた現金を分けるだけなので、車の評価額でもめることも少なく、分割も容易であるため、車が不要な場合にはおすすめの分割方法といえるでしょう。

3、注意したい車の名義

財産分与の対象になるかどうかの場面では、車の名義がどちらであるかは問題にはなりません。しかし、実際に分与する場面では、車の名義がどちらであるかによって気を付けなければならないポイントがあります。

  1. (1)財産分与によって車の名義変更が必要になる

    財産分与によって、所有名義人が変更になる場合には、名義変更の手続きが必要になります。車の名義変更をする場合には、普通乗用車であれば運輸支局、軽自動車であれば軽自動車検査協会において行います。

    なお、普通乗用車の場合は、次のような書類が必要になります。

    • 自動車検査証
    • 新旧所有者の印鑑証明書と委任状
    • 新旧所有者の印鑑
    • 譲渡証明書
    • 新所有者の車庫証明書
    • 新所有者の住所を証明する書面
    • 申請書と手数料納付書
    など


    必要書類からもわかるとおり、車の名義変更には相手の協力が必要です。離婚後に名義変更の手続きを行おうとすると、相手の協力が得られないなどの理由でなかなか手続きがうまく進まないこともあります。そのため、車の名義変更が伴う場合には、離婚前に手続きを済ませておくと安心です。

  2. (2)ローンが残っている場合の注意点

    車を購入する際に自動車ローンを利用しており、現在もローンが残っている場合には、注意が必要です。

    ローンが残った状態だと、車の所有権はディーラーやローン会社になっていることが多いため、夫婦の合意では車の名義変更を勝手に行うことができません。

    また、銀行のカーローンの場合には、夫婦どちらかの名義になっていることが多いですが、ローン借入時の条件として、「ローン完済まで名義変更を行わない」といったことが定められていることがあります。そのため、銀行の承諾なく勝手に名義を変更した場合には、条件違反を理由に一括返済を求められることもありえます。

4、協議離婚の場合も弁護士へ相談するべき理由

協議離婚であれば、当事者だけで進めることも可能ですが、離婚自体に争いがなく単純に離婚するだけの事案を除き、弁護士に相談をすることをおすすめします。

  1. (1)適切な離婚条件の取り決めが可能

    結婚生活が短く、分与する財産もないような場合は問題が少ないですが、それ以外のケースでは、離婚をするかどうかだけでなく、親権、養育費、慰謝料、財産分与、年金分割などさまざまな事柄を取り決める必要があります。

    特に高額所得者の夫婦の場合には、養育費や財産分与の金額も一般的な夫婦よりも高額になる傾向にありますので、適切な離婚条件を決めておかなければ、経済的に大きな不利益を被ることがあります
    弁護士であれば、個別具体的な事情を踏まえて適切な離婚条件を提案することができ、相手とも論理的に交渉を行うことが可能です。

  2. (2)離婚協議書の作成をサポート

    協議離婚は、離婚届に必要事項を記載して市区町村役場に届け出れば成立するので、離婚協議書の作成は必須ではありません。しかし、離婚後のトラブルをできる限り防止するためにも離婚協議書を作成することをおすすめします。

    離婚協議書は、書籍やインターネットでひな形を入手することによって当事者でも作成することは可能です。しかし、それらは一般的なケースを想定したものであり、個別具体的な事案においては、その内容を修正しなければならないことがほとんどです。特に金銭のやりとりが発生するケースにおいては、ひな形をそのまま利用するのは得策とはいえません。

    弁護士であれば、将来のトラブルを防止するという観点から、適切な離婚協議書を作成することが可能です。離婚協議書を公正証書にするという場合にも弁護士がサポートします。

5、まとめ

所得が多い方の場合、高級車を複数所有していることも少なくありません。このようなケースでは、車の財産分与が問題になる可能性があります。
財産分与においては、どのような財産を対象とするのか、対象となった財産をどのように評価するのかによって、最終的に手元に残すことができる金額が大きく異なってきます。そのため、少しでも有利な内容で財産分与を行うためには、弁護士のサポートが不可欠といえます。

離婚における財産分与でお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスまでお気軽にご相談ください。離婚問題の対応実績が豊富な弁護士が、最善の結果が得られるよう徹底的にサポートします。

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