仕事優先ばかりで家庭を顧みない旦那と離婚するには? 弁護士が解説
- 離婚
- 離婚
- 仕事優先
- 旦那
旦那(夫)が仕事優先で家庭を顧みない状態が続くと、「この人と結婚している意味はあるのだろうか」などと不満がつのり、離婚を考えるケースがあります。旦那が仕事優先だと、妻に育児や家事の負担が偏ってしまいますので、そうなるのもやむを得ないかもしれません。
しかし、仕事優先という理由だけで、離婚をすることができるのか、また、仕事優先の旦那と離婚する際には、どのような準備を進めておけばよいのか、離婚に関する疑問は尽きないでしょう。
本コラムでは、仕事優先で家庭を顧みない配偶者と離婚する方法について、ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスの弁護士が解説します。
1、仕事優先で家庭をおろそかにする旦那と離婚できる?
1章では、「仕事優先で家庭を顧みない」という理由で配偶者と離婚することはできるのか、解説していきます。
-
(1)旦那が離婚に合意していれば離婚は可能
夫婦が離婚する際には、まずはお互いの話し合いで離婚をするかどうか、離婚する際の条件などを決めていきます。このように話し合いにより離婚する方法を「協議離婚」といいます。
協議離婚では、夫婦双方が離婚に合意すれば離婚することができますので、どのような理由で離婚をするのかは問われません。そのため、「旦那が仕事優先で家庭を顧みない」という理由が離婚理由であったとしても、夫が離婚に同意してくれるのであれば離婚は可能です。
なお、当事者間の話し合いでは解決できないときは、家庭裁判所に離婚調停の申立てをすることになります。離婚調停は、裁判所の手続きですが、基本的には協議離婚と同様に話し合いの手続きですので、相手の同意があれば、離婚理由を問われることなく離婚することができます。 -
(2)離婚の合意がなければ法定離婚事由が必要
夫が離婚に応じてくれないときは、協議離婚や調停離婚の方法では離婚することができません。この場合には、最終的に家庭裁判所に離婚訴訟を提起して、裁判所に離婚の可否を判断してもらうことになります。
その際には、以下のような法定離婚事由に該当する事情がなければ、裁判所に離婚を認めてもらうことができません。<離婚が認められる法定離婚事由>- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 回復の見込みのない強度の精神病
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
「家庭よりも仕事優先」という理由だけでは、上記の法定離婚事由のいずれにも該当しませんので、裁判での離婚は難しいでしょう。もっとも、その他の事情も踏まえれば離婚が認められる可能性もありますので、諦める必要はありません。詳しくは、第2章で説明します。
2、離婚が認められるケース・認められないケース
夫が離婚に合意してくれなかったとしても、法定離婚事由に該当する事情があれば離婚は可能です。以下では、離婚が認められるケースと認められないケースについて説明します。
-
(1)仕事優先の旦那との離婚が認められるケース
離婚が認められるケースとしては、以下のケースが挙げられます。
① 仕事上のストレスを妻への暴力や暴言で発散している
夫が仕事優先の場合、仕事の人間関係やノルマなどで多大なストレスを抱えていることが少なくありません。そのようなストレスを家庭内での暴力や暴言により発散している場合には、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当し、離婚が認められる可能性があります。
② 仕事で十分な稼ぎがあるにもかかわらず生活費を渡さない
夫婦には、扶助・協力義務がありますので、夫が働いて生活費を稼いでいるのであれば、家族が生活していくために必要な生活費を渡す必要があります。十分な稼ぎがあるにもかかわらず生活費を渡さない、自分の趣味やギャンブルにお金を使ってしまい生活費が足りないなどの状況であれば、「悪意の遺棄」に該当し、離婚が認められる可能性があります。
③ 仕事を口実に別の異性と不倫をしていた
仕事が忙しいなどの理由で休日も外出しているケースでは、実は、仕事を口実に別の異性と不倫をしている可能性もあります。配偶者以外の異性との間で性交渉を行った場合には、「不貞行為」に該当し、離婚が認められる可能性があります。 -
(2)仕事優先の旦那との離婚が認められないケース
以下のようなケースでは、仕事優先であったとしても離婚は難しいといえます。
① 仕事が忙しくて自宅に帰る余裕がない
夫が自宅に帰らない日が多かったとしても、仕事が忙しくて自宅に帰る余裕がないという理由であれば正当な理由とみなされる可能性は高くなります。
夫婦には、同居義務がありますので、正当な理由なく同居に応じないことは、「悪意の遺棄」に該当しますが、家族を養うための仕事が多忙という理由では、離婚は難しいでしょう。
② 仕事に余裕があるときは家族サービスをしてくれる
仕事を理由に家事や育児を一切手伝わない場合には、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当し、離婚できる可能性があります。
しかし、仕事が忙しい中でも家事や育児に協力してくれたり、休日は家族のために時間を割いてくれたりしている場合には、離婚をするのは難しいでしょう。
3、旦那が不倫をしていたら慰謝料請求の検討
旦那が不倫をしている場合には、離婚時に慰謝料請求をすることができます。
-
(1)不倫慰謝料を請求するには証拠が重要
仕事が忙しいことを口実にして妻以外の女性と不倫をしていることがあります。配偶者以外の異性との間で性交渉を行うのは、「不貞行為」に該当しますので、法定離婚事由になるだけでなく、不倫をした旦那に対して、慰謝料請求をすることが可能です。
ただし、「不倫をしたのだから慰謝料を支払って」といっても「不倫なんかしていない」などと否定されてしまうケースがほとんどです。そのため、相手の不貞行為の証拠を準備してから不倫慰謝料を請求することが重要といえます。 -
(2)不倫相手の女性に対しても慰謝料請求が可能
夫が不倫をしていた場合には、不倫相手の女性に対しても慰謝料を請求することができます。
ただし、2人に対して慰謝料請求ができるとはいっても、慰謝料を二重に受け取ることが難しくなります。たとえば、慰謝料の相場が200万円の事案で、旦那からすでに慰謝料200万円の支払いを受けている場合には、不倫相手の女性から重ねて慰謝料の支払いを拒否されることがあります。
4、仕事優先の旦那に離婚を切り出す前に考えておくべきこと
仕事優先の旦那に離婚を切り出す前に、以下のことを考えておくとよいでしょう。
-
(1)不倫・DVなどの証拠収集
離婚を有利に進めるためには、相手の有責性を基礎づける十分な証拠を確保しておくことが重要になります。不倫やDVがあったとしても、事実を認めず争ってくるケースも珍しくありません。
そうなった場合には、離婚や慰謝料を請求する側において、旦那の有責性を立証していかなければならず、そのための証拠が不可欠となります。
夫に離婚を切り出してからでは、自分に不利になる証拠はすべて処分されてしまうおそれがありますので、離婚を切り出す前からしっかりと準備することが大切です。 -
(2)希望する離婚条件についての検討
離婚時には、以下のような離婚条件の取り決めが必要になります。
- 親権
- 養育費
- 慰謝料
- 財産分与
- 年金分割
事前準備せずに離婚を切り出しても、希望する離婚条件が決まっていなければ話し合いが進まず、時間を無駄にしてしまいます。
また仕事優先の夫だと離婚の話し合いにも時間を割いてくれない可能性が高いでしょう。スムーズに話し合いを進めるためにも自分が希望する離婚条件についてはあらかじめ取りまとめておく必要があります。 -
(3)離婚後の住まいや生計の確保
離婚後は、自分だけで生活をしていかなければなりません。パートや専業主婦だった方は、仕事を探すなどして生計を確保する必要があります。
また、離婚で自宅を出ていくことになれば、次の住まいを探さなければなりません。早期に離婚をまとめるためにも、離婚後の仕事や住まいは早めに確保しておくようにしましょう。 -
(4)一人で対応するのが不安なら弁護士に相談
離婚に関する手続きをすべて一人で対応できるのか不安を感じている方は、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士であれば、代理人として相手と交渉を行うことができますので、ご自身の精神的、時間的負担を軽減しながら、より有利な条件で離婚できる可能性が高くなります。仕事優先の夫との離婚が認められるかどうかも、弁護士であれば正確に判断することができますので、今後の離婚手続きの見通しも明確になるといえるでしょう。
5、まとめ
夫が仕事優先で家庭を顧みず、結婚生活にさまざまな不満が積もれば、離婚に至ることもあるでしょう。
仕事優先という理由だけでは裁判離婚までは難しいですが、その他の事情も合わせれば離婚が認められる可能性もあります。
仕事優先の配偶者との離婚を決意しつつも、どのように行動したらよいかお悩みの方は、まずはベリーベスト法律事務所 仙台オフィスまでお気軽にご相談ください。現在の状況から可能な手立てがあるか、最適な離婚条件はどのようなものなのか、一緒に考えていきましょう。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています