夫が失業したことを理由に離婚することはできる? 法定離婚事由とは?
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報道によると、宮城県における新型コロナウイルス感染症の影響による解雇は、2020年7月時点で増加傾向にあるそうです。こういった社会情勢をふまえ、仙台市では新型コロナウイルス感染症の影響で失業された方を対象に求人を募集するなど、就業をサポートする取り組みを行っています。
もし失業された方が一家の大黒柱だった場合、失業はご自身だけでなくご家族に大きな影響を及ぼすことになります。失業による影響として、直接的に家計が苦しくなる経済的な影響があるほか、ストレスや不安、家事分担の不満などから夫婦の関係がうまくいかなくなることもあることでしょう。
では、配偶者の失業を理由として離婚することはできるのでしょうか。
本コラムでは、配偶者の失業を理由とした離婚は可能なのかについて、ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスの弁護士が解説します。
目次
1、失業したときに利用できる制度
まず配偶者の失業という苦境を乗り切るために、利用できるいくつかの制度をご紹介します。
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(1)雇用保険の失業等給付
失業日前2年間の間に、雇用保険の被保険者期間が通算して12か月以上あるときには、ハローワークで手続き行うことで、失業給付を受けられる可能性があります。
倒産や解雇により失業を余儀なくされたケースなどでは優遇処置が設けられており、失業日前1年間の間に、被保険者期間が通算して6か月以上ある場合は給付を受けることができます。
手続きの詳細は、お住まいの地域のハローワークなどでご確認ください。 -
(2)国民健康保険料の免除制度
夫が失業しても妻が健康保険組合に加入しているようなケースでは、失業した夫を被扶養者として申請することを検討できるでしょう。しかしそれ以外の場合では、失業すれば基本的に国民健康保険に加入しなければなりません。
仙台市では、勤務先の倒産や解雇などによって失業した方については、国民健康保険に関する保険料を、一定期間軽減する制度が設けられています。
制度の対象となるのは、雇用保険受給資格者証に記載のある離職時年齢が65歳未満で、一定の離職理由に該当する方とされています。ただし、特例受給資格者証および高年齢資格者受給証の交付を受けている場合は、対象になりません。 -
(3)国民年金保険料の軽減制度
健康保険と同様に、社会保険である国民年金についても保険料の軽減制度があります。
失業によって国民年金保険料が納められないときには、申請することによって、保険料の全額または一部の免除が受けられる可能性があります。
保険料が納められない状況であったとしても、未納のままにしていると不利益を受ける可能性もあるので、区役所に相談すると良いでしょう。 -
(4)市県民税の減免制度
仙台市においては、やむをえない理由で失業して所得が激減してしまったような場合、一定の条件に該当すれば、減免申請をすることで個人市県民税の減免が受けられる可能性があります。
市県民税の減免が認められるための詳しい要件などについては、市役所で確認する必要があります。
2、「失業」は離婚の理由として法的に認められる?
さまざまな制度を利用することで経済的な苦境は改善できる可能性がありますが、夫婦関係を修復できなければ、離婚を考えることになるでしょう。
では、夫の失業を理由とした離婚は可能かについて、みていきましょう。
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(1)合意すれば離婚できる
たとえば、夫の失業が原因となり妻が離婚を切り出した場合、夫が合意するのであれば離婚をすることができます。離婚は、基本的には当事者同士が納得し合意できれば、どのような理由を原因とするかに関わらず成立するためです。
たとえ話し合いがうまくいかず家庭裁判所の調停によって解決を図った場合でも、調停で双方が合意すれば調整成立となり、離婚することができます。
裁判では、離婚原因が何であるかが大きな問題となります。 -
(2)「失業」は法定離婚事由に該当しない
裁判では、最終的に判決によって離婚の可否が決まります。
裁判において、判決で離婚が認められるためには、民法で定める法定離婚事由に該当する必要があります。そのため「失業」が法定離婚事由に該当するかどうか重要なポイントになりますが、民法において「失業」は、法定離婚事由として直接的に定めてはいません。
つまり、単に「失業」のみを理由として離婚を求める裁判を提起したとしても、離婚が認められる可能性は低いといえます。
ただし、法定離婚事由に該当すると判断できる理由がある場合や、他の事情と合わせて「婚姻を継続しがたい重大な事由がある」と判断されるようなケースでは、離婚が認められる可能性もあるでしょう。
では、どのような事情が法定離婚事由となるのでしょうか。次の章で具体的にみていきましょう。
3、離婚が認められる「法定離婚事由」とは?
民法では、次の5つを法定離婚事由として定めています(民法 第770条)。
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(1)不貞行為があるとき
不貞行為とは、婚姻関係にある夫婦の一方が配偶者以外の第三者と性的な関係をもつことをいいます。いわゆる不倫や浮気のことと捉えられますが、二人で遊びにいっている、キスをした、頻繁に連絡をとっている、という状況だけでは、不貞行為には直ちに該当しないと判断されることが多いため注意が必要です。
相手の不貞行為によって婚姻関係が破壊したことが証明できる場合は、法定離婚事由に該当します。 -
(2)悪意の遺棄があったとき
「悪意の遺棄」とは、正当な理由がないにもかかわらず、同居・協力・扶助義務を果たさないことをいいます。具体的には「家を出たまま帰らない」、「家から追い出す」、「生活費を渡さない」などのケースが該当する可能性があります。
「失業」によって収入がないため生活費が渡せないというケースは、直ちに悪意の遺棄に該当するわけではありません。ただし、会社への再就職が容易であるにもかかわらずあえて働かない、身勝手な理由で自発的に仕事を辞める、などの行為によって生活を困窮させるといった事情などがあれば、悪意の遺棄に該当する可能性が高まります。 -
(3)3年以上生死不明であるとき
配偶者が3年以上生死不明であるときは、法定離婚事由に該当します。ただし、連絡が途絶えているだけで生存していることがわかっているときや、住民票などから居場所がわかるような場合は、直ちにこの理由に該当しません。
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(4)強度の精神病にかかり回復の見込みがないとき
相手方が強度の精神病にかかり、意思の疎通も難しく回復の見込みがないと判断された場合は、夫婦関係の継続を強制できないとして、離婚が認められる可能性があります。
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(5)その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき
(1)~(4)の理由に直接該当しないものの、夫婦関係が修復できないほど破綻し夫婦生活の継続が困難であるといえるときには、離婚が認められる可能性があります。
具体的には、「長期間の別居」「DV(ドメスティックバイオレンス)」「性の不一致」「過度の浪費」「アルコール・薬物依存」などの事由が該当する可能性があります。
失業した相手にこのような事情があるときは、裁判によって離婚が認められる可能性がありますが、それぞれの事案の個別具体的な事情によって、該当するかどうかの判断は変わります。
ご自身のケースが該当するかについて自己判断せずに、弁護士に相談することをおすすめします。
4、離婚成立までの流れ
離婚は、基本的には「協議」→「調停」→「裁判」の流れで進めることになります。
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(1)夫婦間における協議
離婚は、相手との協議で合意できれば成立します。そのため離婚を決意したときは、基本的に夫婦で話し合いをします。双方が離婚に合意し離婚届を提出すれば、協議離婚が成立します。
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(2)離婚調停
協議がまとまらないときや、相手が話し合いに応じないような場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立てる方法があります。
離婚調停では、調停委員が当事者双方の意見を聞いて条件面などの調整を行います。しかし基本的に調停は話し合いで解決を図る手続きなので、裁判官の判断のみで調停離婚が成立することはありません。必ず、当事者が合意する必要があります。
合意できない場合は、裁判による解決を検討することになります。 -
(3)裁判
裁判は、調停を経たうえで、夫婦の一方が裁判所に離婚を認める旨の判決を求めて提起することによってはじまります。審理では、双方の主張を確認したうえで争点と証拠の整理が行われます。そして最終的に、判決によって離婚が成立するかの判断が下されます。
5、まとめ
配偶者が失業したことを理由とする離婚は、相手が納得すれば成立しますが、離婚を拒否して裁判になった場合、失業だけを直接的な原因として離婚を認めてもらうことは難しいことがあります。
ただし、他の事情も加味することで法定離婚事由に該当する可能性もあるので、弁護士に相談することをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスでは、経験豊富な弁護士がしっかりとお話を伺ったうえで、最善の解決に導けるよう全力でサポートします。
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