熟年離婚を決めたら知っておきたい! 離婚後の生活費や年金はどうなる?

2020年06月05日
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熟年離婚を決めたら知っておきたい! 離婚後の生活費や年金はどうなる?

平成30年度における、宮城県の人口1000人あたりの離婚率は1.59で、全国では31位だったそうです。宮城県内でみてみると、離婚率が一番高いのは大崎圏で1.67ですが、仙台都市圏も1.61と、宮城県全体の平均値を超えていることがわかります。

何年も夫婦として過ごしているうちに、相手に対する不満が募ることもあります。子どもたちが一人前になるまでは……と、我慢してきた後に待ち受けているのが夫の定年です。それまでは、昼間不在であったため適度に息抜きができていた妻も、一日中一緒に過ごすとなると苦痛に感じ、熟年離婚を考える要因になるとも言われています。

その一方で、熟年離婚の場合、生活費や老後の年金、財産分与などについて不安を感じている方も多いでしょう。この記事では離婚するために必要なことや離婚の手順、お金の問題などについて、仙台オフィスの弁護士が解説します。

1、離婚成立のために必要な条件

離婚を成立させるためには、夫婦の両方が離婚に同意している必要があります。どちらかが離婚を拒否している場合、離婚を請求するには民法第770条に規定されている、5つの法定離婚事由のいずれかに該当する必要があります。
ここでは、法定離婚事由について解説します。

  1. (1)配偶者に不貞行為がある(民法770条1項1号)

    不貞行為とは、配偶者ある者が自由な意思に基づいて配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをさします。つまり、不倫や浮気があった場合です。相手に不貞行為があったことを立証することができれば、裁判では離婚が認められることが多いです。
    たとえば、ホテルの現場へふたりで入る写真や不倫相手とのメールのやり取り、受信・着信履歴などが証拠として考えられます。

  2. (2)配偶者が「悪意の遺棄」(民法770条1項2号)を行う

    夫婦間には同居義務、協力義務、婚姻費用分担義務がありますが、このいずれかを正当な理由なく果たさない場合を「悪意の遺棄」と言います。
    生活費を渡さない、愛人宅などから戻らないなど、婚姻関係を壊す行為が続く場合は「悪意の遺棄」が行われているとして、離婚請求が可能です。

  3. (3)配偶者の生死が3年以上不明(民法770条1項3号)

    3年以上にわたり配偶者の生死が確認できない場合は、離婚を請求できる可能性があります。しかし、当該原因に関する最近の判例はないようです。

  4. (4)配偶者が強度の精神疾患を患っており回復の見込みがない(民法770条1項4号)

    精神疾患を患っている配偶者に対して、可能な限りの介護などをしてきたが回復の見込みがなく、これ以上協力して生活を送ることが難しい場合で、かつ相手の離婚後の生活が保障されている場合に、裁判上離婚が認められることがあります。

  5. (5)婚姻関係を継続しがたい重大な事由がある

    これまでにあげた4つの事由に当てはまらないものの、夫婦関係の修復が著しく難しくなるような行動を相手がしていた場合に、適用される離婚事由です。

    具体的には、次のようなケースで、認められる可能性があります。

    • 長期間の別居
    • 暴言や暴力に長年耐えてきた
    • 借金を繰り返すなどお金のトラブルが絶えない
    • 長期間にわたり性交渉を拒否されてきた
      など

2、熟年離婚を決めたら確認しておきたいお金のこと

熟年離婚の場合、子どもは独立しているケースも多いため親権などが問題になりにくい一方で、お金にまつわる問題がトラブルになることが多いでしょう。年金や財産分与について、事前に確認しておくことが大切です。

  1. (1)年金分割

    婚姻期間中に支払った厚生年金や共済年金など、年金の保険料納付記録は分割することが可能です。分割方法は、「合意分割制度」「3号分割制度」のふたつがあります。

    「合意分割制度」の場合、案分割合は法的に決められていません。夫婦間の協議、または裁判所の決定により確定します。まずは、「年金分割のための情報通知書」をお近くの年金事務所に請求することをおすすめします。

    「3号分割制度」は、平成20年4月にスタートした制度です。平成20年4月以降に配偶者が支払った厚生年金保険料は、例外なく2分の1ずつ分割されます。

    会社員や公務員(第2号被保険者)に扶養されている、20歳以上60歳未満の方(第3号被保険者)に適用される制度です。

    しかし、平成20年3月以前の対象期間を含めて離婚分割の分割改定請求を行った場合でも、同時に3号分割請求したものとみなされます。すなわち、平成20年4月以降の対象期間について、保険料納付記録は2分の1に(3号分割)、それ以前の期間については合意分割されることになるのです。したがって、いずれの方法で請求しても結果が大きく変わることはないと言えます。

    なお、年金分割の請求は、原則として離婚後2年間しかできません。この点は、注意が必要です。

  2. (2)財産分与

    財産分与は、婚姻期間中の貯金や不動産など、夫婦で保有しているプラスの財産と、住宅ローンや借金などのマイナスの財産が対象です。退職が近く、退職金がもらえる可能性が高い場合は退職金も財産分与に含まれます。
    ただし、個人が独身時代から保有していた預貯金などは、特有財産であることを証明すれば、分与の対象にはなりません。

    他にも、

    • 自動車
    • 生命保険金
    • 私的年金

    などが財産分与の対象となります。

    これらの情報、たとえば、預金ならば銀行名や支店名、口座番号などの情報を前もって取得しておくことが肝要です。

    財産分与には主に、次にあげる3つの種類があります。

    • 貢献度に応じ公平に分ける「清算的財産分与」
    • 生活に困窮する側を補助する「扶養的財産分与」
    • 離婚による慰謝料の「慰謝料的財産分与」


    清算的財産分与の場合、分割の割合は、それぞれの収入にかかわらず原則として2分の1ずつとされています。つまり、一方が専業主婦(主夫)であり収入がゼロだったとしても、均等に分割されます。

  3. (3)有責行為に対する慰謝料

    相手側に不貞行為があった場合やDV、モラハラを受けていた場合は、肉体的精神的に苦痛を受けたとして慰謝料請求を行うことができます。性格の不一致に関しては相互責任となりますので、一般的には請求することが難しいでしょう。

    なお、慰謝料が請求できる期間は、次のとおり定められているので注意が必要です。

    • 有責行為がおきたときから20年以内
    • 有責行為がおきた事実を知ったときから3年以内


    つまり、有責行為があったという事実を、行為があったときから20年以上たって知った場合や、有責行為があったことを知りつつ3年以上放置してしまった場合は、慰謝料を請求することはできません。

  4. (4)離婚後の生活費

    離婚後は、どのように生活を立てていくのか、経済的に自立できるよう算段をしておくことが欠かせません。財産分与の額、年金額の試算に加え、場合によっては離婚後の生活を見すえて働き口を探しておくことも重要です。現在、収入がない方は、公的扶助なども調べておきましょう。

3、離婚の手順

続いて、離婚手続きの進め方と熟年離婚で特に念入りに話し合うべき点を確認していきましょう。

  1. (1)協議離婚

    まずは夫婦で離婚について話し合いを行います。夫婦の同意があれば「協議離婚」として離婚届を提出することができます。
    熟年離婚の場合は、以下の内容に関しては、具体的に取り決めをすることが特に重要です。

    • 財産分与
    • 年金分割
    • 慰謝料請求


    協議で決めた内容は、「離婚協議書」として書面にまとめ、公正証書にしておくと良い場合があります。口頭で約束してしまうと、後々、協議内容について認識の齟齬(そご)が生じた場合、言った言わないのトラブルに発展する可能性があります。

    離婚協議書は、話し合いの内容について争いが生じた場合に、有力な証拠となりますし、公正証書にしておけば、金銭が合意どおりに払ってもらえない場合に強制執行手続きへの切符になります。

  2. (2)離婚調停

    話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所の調停手続きを利用します。
    家庭裁判所に調停申立書と戸籍謄本を提出することで、離婚調停を申し立てることができます。離婚調停では、夫婦の間に調停委員が入ってくれるので、顔を合わせることも回避することが可能で、冷静に話し合いが進められます。

    調停が成立すると「調停調書」が作成され、当事者宛てに届きます。これをもって離婚届を提出することが可能です。この場合は離婚届に相手の押印、署名が不要です。なお、届け出は調停成立後10日以内に行うことが定められています。

    また、年金分割の割合を決めた場合は、この時点で年金事務所などに問い合わせし、年金分割の請求手続きを行いましょう。

  3. (3)離婚裁判

    離婚裁判を行うには、離婚調停の手続きを経ることが必要です。そのため、調停が不成立となった場合にのみ、離婚訴訟が進められます。
    裁判で合意に至れば和解離婚が成立し、和解調書が作成されます。合意に至らない場合には、裁判官の判決によって離婚の成否が決まります。

4、熟年離婚で弁護士に相談するべき場合とは?

熟年離婚を考えている場合は、まず弁護士に相談することをおすすめします。
特に次のような理由がある場合は、できる限り早く相談することで、離婚までの道のりが短くなることが期待できます。

●相手が離婚に応じない
熟年離婚の場合、不満が蓄積された結果、離婚を切り出すケースが多く、離婚を切り出された側が驚き、話し合いを拒否することも考えられます。
当事者間では話し合いが進まず、離婚ができないまま、ずるずると年月が経過してしまうこともあるでしょう。

そのような場合は、第三者である弁護士を介して話し合いを求めることで、相手が応じることが期待できます。また、年金分割といった金銭的な請求は、遠慮してしまい思うように要望ができないこともあるでしょう。弁護士は法的な根拠に基づき、あなたの代理人としてしっかりと権利を主張します。弁護士は離婚が成立するまで、心強いパートナーになります。

●別居している場合
別居している場合、相手の状況がわからないことに加え、わざわざ会って話し合いをすることに大きなストレスを感じ、離婚を切り出すのをためらう方も少なくありません。
弁護士は、あなたの代理人として配偶者と交渉することが可能です。直接顔を合わすことなく、離婚を成立させることができます。

●DV・暴力などを受けている場合
長年にわたり、家庭内暴力などに悩まされているケースでは、相手が離婚に応じてくれないばかりか、暴力が激しくなるなどの被害も予想されます。こういった場合は、正常な判断ができず離婚を諦めてしまうことも考えられます。
しかし、我慢し続けることは得策でありません。まずは、弁護士や仙台市が開設している相談センターに相談することをおすすめします。仙台市は、ホームページ上にDVの相談窓口一覧を掲載しているので参考になるでしょう。

DVシェルターなどに避難した上で、保護命令を出してもらうことができれば、相手に対するけん制になります。離婚の話し合いや調停は、弁護士が代理人として対応するので、相手と接触せずに離婚を成立させることができます。

5、まとめ

本コラムでは、熟年離婚をする上で押さえておきたいポイントを解説しました。

年金分割制度などが整備されたこともあり、熟年離婚も増えていますが、なかなか切り出せず悩む方も多くいらっしゃいます。また、離婚はしたものの、具体的な取り決めを行っていないために、離婚後に再度顔を合わせての話し合いが必要になるケースもあります。
離婚後の話し合いは、さらに複雑になることもあるので、離婚前にしっかりと取り決めをしておくことが大切です。

離婚は、感情も絡む複雑な問題です。おひとりで悩まず、ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスにご相談ください。仙台オフィスの弁護士が、しっかりとお話を伺った上で、離婚の成立にむけて尽力します。

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