突然の慰謝料請求! 裁判所からの呼び出しを無視したらどうなる?

2020年08月18日
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突然の慰謝料請求! 裁判所からの呼び出しを無視したらどうなる?

仙台地方裁判所で、平成30年中に新受した民事事件の件数は約1068件だったそうです。
民事訴訟では、原告が受けた精神的苦痛に対して被告に慰謝料の支払いを求める内容の訴訟も少なくありません。なかには、不貞行為(不倫・浮気)による慰謝料請求もあるでしょう。

慰謝料を請求する訴訟が提起されると、裁判所から訴状や口頭弁論期日への呼び出し状などが送達されます。
ある日突然、このような訴状や裁判所の呼び出しが届いたときは、驚くとともに、何とか回避できないか、無視しても大丈夫なのでは……と考えるかもしれません。しかし、そのまま無視してしまえば大きなリスクが生じかねません。

本コラムでは、慰謝料請求された方に向けて「裁判所の通知を無視したらどうなるのか」についてベリーベスト法律事務所 仙台オフィスの弁護士が解説します。

1、慰謝料はどのようなときに発生する?

慰謝料とは、一般的に、被害者が受けた精神的苦痛に対して相手方に請求する損害賠償金のことをいいます。
慰謝料は、主に次のようなケースで請求される可能性があります。

  1. (1)不貞行為(不倫)による慰謝料

    たとえば、交際相手が既婚だと知りながら不倫関係になってしまったケースでは、交際相手の配偶者から慰謝料を請求される可能性があります。
    不貞行為をしたとしても、自身が独身であれば、慰謝料を支払う義務はないと考えるかもしれません。しかし不貞行為は、あなたと既婚である交際相手が共同して行ったと解釈されます。そのため、交際相手の配偶者は、不倫相手に対しても精神的苦痛に対する慰謝料請求が可能とされています。

    また、慰謝料は夫婦間でも請求することが可能です。そのため、不貞行為を理由として、自身の配偶者から慰謝料請求をされる可能性もあります。

  2. (2)離婚慰謝料

    離婚の原因が不法行為に該当し、自身が原因をつくった場合は、離婚時や離婚後に慰謝料請求をされる可能性があります。
    前述した不貞行為だけではなく、DV(ドメスティックバイオレンス)なども慰謝料請求の対象となりえます。

  3. (3)刑事事件や交通事故における慰謝料

    刑事事件をおこしてしまい、被害者がでた場合は刑事責任に問われるだけではなく、民事事件として被害者から慰謝料を請求されるケースもあります。また、示談交渉のために、慰謝料を支払うこともあるでしょう。
    また、交通事故をおこし、被害者が死傷した場合にも慰謝料が発生します。

2、慰謝料請求の流れ

慰謝料請求は、主に次の3つの方法によって行われます。

  1. (1)当事者間での慰謝料請求

    慰謝料請求の方法は特に定めがないので、口頭で請求される可能性もあります。
    ただし口頭での請求は証拠が残りにくいため、内容証明郵便を使って請求されることも少なくありません。
    内容証明郵便には法的な強制執行力はないので、たとえ内容証明郵便届いた慰謝料請求を無視したとしても、直ちに強制執行されることは基本的にはありません。
    しかし請求者は、裁判を見据えている可能性や、慰謝料の消滅時効を中断させることを目的としている可能性もあります。
    そのため、内容証明郵便が届いた場合はすぐに開封し、内容をしっかりと確認してください。そのうえで、できるだけ早期に弁護士に相談するとよいでしょう。
    当事者間でのやりとりの時点で弁護士が請求相手と交渉を進めれば、裁判の回避が期待できるほか、慰謝料の金額についても交渉できる可能性が高まります。

  2. (2)調停による慰謝料請求

    当事者間の話し合いで合意に至らない場合や請求を無視してしまった場合などには、調停を申し立てられる可能性があります。
    調停は、調停委員という第三者を間に入れて話し合いで解決を目指す手続きです。

    調停の申し立てが行われると、家庭裁判所から呼び出し状などが郵便で届きますので、決められた期日に出席することになります。
    なお、調停の場合は、相手と顔をあわせることを回避することも可能です。

  3. (3)裁判による慰謝料請求

    調停でも話し合いがまとまらなかった場合や、調停を欠席した場合は、訴訟を提起されることもあるでしょう。

    慰謝料請求の民事訴訟が地方裁判所に提起された場合には、主に次のような流れで裁判が進みます。
    なお、慰謝料の請求額が140万円以下であるときには、基本的には簡易裁判所で取り扱われます。

    ステップ1:訴状が送達される
    裁判所に慰謝料請求の訴訟が提起されると、裁判所は被告に「訴状」と「口頭弁論期日への呼び出し状」や「答弁書催告状」などを特別送達で送付します。
    特別送達は郵便局員が手渡しするものなので、不在であれば不在票がポストなどに入れられます。特別送達の不在票が入っていれば、早期に受け取るようにしましょう。
    中身を確認したら、答弁書を作成して期日までに裁判所に提出します。

    ステップ2:第1回期日
    「口頭弁論期日への呼び出し状」にある期日に、裁判所で訴状と答弁書などの取り調べが行われます。第1回期日に限っては、答弁書を提出しておけば、被告がその内容を主張したものとして取り扱ってもらえます。そのため、答弁書を事前に提出していれば、特に出席しなくても不利益は生じません。

    ステップ3:続行期日
    2回目以降は、原告と被告双方が主張を記した書面や証拠を提出して、争点の整理が進められます。
    たとえば不貞行為による慰謝料請求の裁判では、証拠を元にした不貞行為の事実確認や精神的苦痛の程度などが争点になりやすいでしょう。
    争点整理の間に、裁判官から和解の勧告を受けることもあります。この時点で和解が成立すれば、判決と同様の効力を持つ和解調書が作成されます。

    ステップ4:当事者や証人の尋問
    争点に関する主張・立証が煮詰まったときには、当事者や証人の尋問が行われることがあります。

    ステップ5:判決
    尋問終了後に最終の弁論期日が開かれ、その後裁判官によって判決が言い渡されます。民事訴訟の判決では、当事者が出頭する必要は特にありません。
    判決が確定すれば、判決書が作成されます。
    判決内容に不服があるときには、控訴手続きを行うこともできます。

    なお、判決で慰謝料請求が認められたときには、不払いなどがあると判決にもとづいて強制執行がなされる可能性があります。強制執行がなされると、不動産や預貯金、給与などが差し押さえられる可能性があります。

3、裁判所の通知を無視したらどうなるのか?

裁判所から慰謝料請求に関する訴状や呼び出し状が送達されているのに、無視していたらどのような事態になるのでしょうか?
民事訴訟では、被告が争わなければ原告の請求を認めるのが原則です。

裁判所は、第1回期日を欠席し答弁書も提出しない被告は、原告の請求に反論できないものと捉えるので、原告の請求を全面的に認める判決を言い渡されることがあります。これを「欠席判決」といいます。

そのため、訴状などが届いているのに答弁書を提出せずに無視していれば、欠席判決で原告の請求どおりの慰謝料請求が認められてしまう可能性が高くなります。
したがって、裁判所からの通知があれば、無視をせずに早期に弁護士に相談するといった対応をとった方がいいでしょう。

4、慰謝料請求を早期に弁護士に相談すべき理由とは

「不倫相手の配偶者から慰謝料を請求する旨の内容証明郵便が届いた」「慰謝料請求の訴状が届いた」といった場合には、可能な限り早い段階から弁護士に相談すべきといえます。

  1. (1)交渉で早期に解決できる可能性が高くなる

    慰謝料を請求する内容証明郵便が届いたときに弁護士へ相談すれば、弁護士が相手側と交渉を行います。弁護士は、状況に応じた適正な金額を提示できるので、相手側の合意も得やすくなることもあります。また弁護士が関与することで、相手側が不当な要求は通らないよう対応してもらうことも期待できます。

  2. (2)裁判所に提出する書面などの作成を任せられる

    訴訟を提起された場合には、答弁書など裁判所に提出するためのさまざまな書面を作成しなければなりません。弁護士に依頼すれば、書類作成などの事務手続きを一任することができます。時間や手間をかけることなく、的確な書面を提出することできます。

  3. (3)有利な判決を得るための対策がとれる

    裁判では、的確な主張や証拠の提出を行わなければ、有利な判決を得ることはできません。
    弁護士は、どのような主張や証拠が有利になるのかを熟知しています。
    また早期から弁護士に相談していれば、証拠を収集するなどの時間を十分に確保できるので、裁判で有利な判決を得られる可能性が高くなります。

  4. (4)精神的な負担を軽減できる

    不倫相手の配偶者から慰謝料請求をされた場合などは、当事者間で顔をあわせることが精神的に大きな負担となるでしょう。
    弁護士は、ご相談者さまの代理人として交渉ができるほか、裁判に出席することも可能です。したがって早期から弁護士に相談すれば、相手側と直接顔をあわせずに解決を図ることも可能になるので、精神的な負担を大幅に軽減できるでしょう。

5、まとめ

裁判所から郵便が届いたら、誰しも不安になるでしょう。無視すれば、請求相手の主張が全面的に認められる可能性があります。また、判決で認められた慰謝料を支払わなかったときには、給与の差し押さえなどの強制執行を受ける可能性もあるのです。
裁判所から通知を無視することは、事態を悪化させるだけといえます。そのため、裁判所から通知が送達されたときには無視をせずに、しっかりと内容を確認してください。そのうえで、すぐに弁護士へ相談することが大切です。

ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスの弁護士は、ご相談者にとって最善の解決方法を一緒に考えていきます。慰謝料を請求されてお困りの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています