呼気検査を拒否すると逮捕されるって本当? 罪状を弁護士が解説
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平成30年7月、猛暑の影響もあってか宮城県内の飲酒運転の逮捕者が29年7月と比較すると3倍を超えたことが宮城県警の調べでわかりました。さらに、8月25日に行われた仙台西道路での大規模検問では1晩に2人も摘発されたとのことです。
飲酒運転による痛ましい事故はあとを絶ちません。警察も飲酒運転撲滅に力を入れているため、飲酒運転を取り締まるために検問が行われています。それでも、検問の呼気検査を拒否したいと考える方も一定数いるようです。
そこで今回は、ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスの弁護士が呼気検査を拒否したらどうなるのかについて、くわしく解説します。
1、呼気検査ってなに?
呼気検査とは、飲酒運転をしているかどうかを検査するために検問などで行われるアルコール検知の検査です。呼気検査は、検問だけでなく巡回中のパトカーに停止させられて行われることもあります。
通常、いきなり呼気検査が行われるのではなく、まずは警察官が「息を吐いてください」といって警察官に向けて息を吐き出せさせたり、会話をしたりして飲酒の可能性があるかどうかを判断します。その後、飲酒の可能性があると判断されると、呼気検査を求められます。
呼気検査の手順は、例えば、以下のとおりです。
- 風船を膨らませる
- 風船内の空気のアルコール濃度を測定器で測る
この際、アルコール濃度が0.15mgを超えていると、飲酒運転で逮捕されることがあります。あなた自身が「しっかりしている」「大丈夫」と認識していたとしても、関係ありません。
2、呼気検査を拒否して問われる可能性がある罪とは?
道路交通法第67条3項には次のように規定されています。
道路交通法第67条3項
車両等に乗車し、又は乗車しようとしている者が、第65条第1項の規定(飲酒運転を禁止する規定)に違反して車両等を運転するおそれがあると認められるときは、警察官は、次項の規定による措置に関し、その者が身体に保有しているアルコールの程度について調査するため、政令で定めるところにより、その者の呼気の検査をすることができる。
簡単にいうと、警察官が、飲酒運転をしている可能性があると判断すれば検査を行えるということです。
そして、検査を拒否した場合についても、道路交通法第118条2項に規定されています。
道路交通法第118条2項
第67条第3項の規定による警察官の拒否を拒み、又は妨げた者は、3月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
つまり、呼気検査を拒否すると、道路交通法違反となり、処罰される可能性があるのです。
呼気検査は「警察官が飲酒運転の恐れがある」と判断した時点で、行うことができるので、実際にお酒を飲んでいなくても運転者は受ける義務があります。実際に平成22年12月、山口県で飲酒検問を回避しようとした上に、呼気検査を拒否した男性を道路交通法違反で現行犯逮捕された事例もあります。
また、呼気検査を拒否する際に、警察官に暴力を振るったり暴言を吐いたりすると「公務執行妨害」で現行犯逮捕される可能性もあります。平成18年6月、熊本県でふらつき運転をしている自動車を運転していた男性に呼気検査を求めたところ、男性が警察官の首を締めたため公務執行妨害の現行犯で逮捕されました。
警察官の態度が気に入らない、急いでいるなどの理由で呼気検査を拒否すると逮捕されて前科・前歴がつく可能性があることを忘れないようにしましょう。
3、呼気検査を拒否した場合の量刑とは
では、呼気検査を拒否した場合の量刑、そして飲酒運転で有罪となった場合の量刑を確認してみましょう。
まず、呼気検査を拒否した場合ですが、前述の道路交通法第118条2項によって、「3月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」と規定されています。
公務執行妨害として有罪になったときは、刑法95条で「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する」と規定されています。
では、飲酒運転の量刑は、酒酔い運転の場合は「5年以下の懲役又は100万円以下の罰金」で、酒気帯び運転の場合は「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。
酒酔いで逮捕されれば、違反点数は35点で免許取り消し、なおかつ3年間は免許を取得することができません。酒気帯び運転の場合は、呼気1リットル中のアルコール濃度が0.15mg以上0.25mg未満は「違反点数13点で90日の免許停止」となります。さらにアルコール濃度が0.25mgを超えた場合は、違反点数が25点で、免許取り消しとなり、2年間は免許を取得することができません。このように飲酒運転は運転資格に大きな影響を与えることになります。
4、逮捕後の流れは? 裁判になることもある?
呼気検査を拒否して、道路交通法違反で逮捕された場合の流れを解説します。
まず、逮捕されたら48時間以内に検察官に身柄を送致されます。その後、24時間以内に勾留するかどうかを検察が判断し、裁判所に勾留請求を行います。裁判所が勾留請求を認めると、引き続き留置所などで身柄を拘束されたまま取り調べなどを受けることになります。
逃走や証拠隠滅の危険性がないと判断されれば勾留されず身柄は解放されることもあるでしょう。ただし、勾留されないからといって無罪放免になったわけではありません。日常生活を送りながら、検察からの呼び出しに応じる形で捜査が進められることがほとんどです。
勾留期間は原則として10日で、そのあと必要であればもう10日延長できます。最大で20日の勾留期間の中で、検察官が起訴するのか不起訴にするのかなどを判断します。ここで、不起訴になれば、裁判は行われず前科もつかないことがほとんどです。しかし、起訴されると刑事裁判が行われ、有罪か無罪かを問われることになります。
日本では、刑事裁判での有罪率はおよそ99.9%と非常に高く、刑事裁判が行われたら、ほぼ有罪になる可能性が非常に高い傾向にあります。
呼気検査を拒否して逮捕された場合は、逮捕後すぐに弁護士に依頼して、最善の方法を話し合うことをおすすめします。
5、まとめ
検問などで呼気検査を拒否すると道路交通法違反となるだけでなく、公務執行妨害で逮捕される可能性もあります。特に、お酒を飲んでいるにもかかわらず、呼気検査を拒否すると呼気検査拒否容疑だけでなく、酒酔い運転や酒気帯び運転の容疑でも逮捕される可能性が高まります。他方、お酒を飲んでいなかったとしても、警察官が「飲酒をしている恐れがある」と判断すれば、呼気検査に応じる義務があります。お酒を飲んでいてもいなくても、呼気検査を求められたときは、素直に応じるのが無難です。
万が一、呼気検査を拒否して逮捕されてしまった場合は、逮捕後早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。起訴されると有罪になる確率が非常に高いので、起訴される前に対策したほうがよいでしょう。特に逮捕されてしまった場合、逮捕から勾留が決まるまでの最長72時間の間は、家族でも面会が制限されます。その際はベリーベスト法律事務所 仙台オフィスへ相談してください。自由な接見が許されている弁護士に依頼することで、素早い対応を行うことができます。
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