息子が仙台市営地下鉄南北線で痴漢? 逮捕後の流れと、家族が知っておくべきこと
- 性・風俗事件
- 息子
- 痴漢
平成30年に、宮城県内で痴漢や盗撮など卑わいな言動を警察が認知した件数はおよそ474件でした。仙台市内では仙台市営地下鉄南北線が通勤通学で多く利用されており、痴漢行為等がおきやすい状況にあると考えられます。実際に、平成29年には、南北線で男性が女性の下半身を触る事件が発生しています。
痴漢行為は、成人だけでなく20歳未満の未成年者も起こす可能性がある犯罪です。ここでは、未成年の子どもが痴漢行為で逮捕された場合の流れや、家族がやるべきことを解説します。
1、少年事件の手続きの流れ
仙台市内で、未成年の息子が警察に逮捕された場合の、手続きの流れについて説明します。日本では、20歳未満の未成年が事件を起こした場合は、少年法などの規定に基づき、手続きが進みます。
-
(1)少年事件の仕組みとは
20歳未満の少年が起こした事件は、下記の主として3種類に分類され、それぞれ異なった手続きが行われます。
●触法少年(14歳未満)
14歳未満の少年が罪を犯した場合は、刑事責任能力がないため、刑罰を受けることはありません。基本的には、逮捕や勾留など身柄の拘束も行われません。原則として児童相談所を中心とした手続きが進められます。ただ、状況によっては家庭裁判所で審判が開かれることがあります。
●犯罪少年(14歳以上20歳未満)
犯行時に14歳以上20歳未満の少年は、犯罪少年と言われることがあり、警察によって逮捕される可能性があります。また、逮捕された後は状況によって勾留されることもあります。
●ぐ犯少年(20歳未満)
すでに罪を犯しているのではなく、これから罪を犯す可能性がある少年を「ぐ犯少年」と呼ぶことがあります。基本的には、14歳未満の場合は児童相談所に通告され、14歳以上18歳未満の場合は家庭裁判所か児童相談所、18歳以上は家庭裁判所に処分が委ねられます。 -
(2)逮捕
14歳以上で未成年のご子息が、仙台市内で痴漢をはたらいた場合は「犯罪少年」になります。つまり、警察に捜査されて逮捕される可能性があるということです。
痴漢の逮捕は、その場で逮捕される現行犯逮捕と、しかるべき捜査と手続きを踏んで後日に逮捕される場合などがあります。地下鉄南北線で乗客や駅員等にその場で捕まった場合は基本的に「現行犯逮捕」です。防犯カメラなどの映像から本人が特定されて逮捕状を持った捜査官が自宅などを訪れた場合は、後日に逮捕されるケースになります。
どちらの逮捕でも、逮捕後およそ48時間は、警察によって取り調べを受けます。その期間は、警察署内の留置場などに身柄を拘束されて、家族との面会は制限されます。その後、検察官に事件が引き継がれ、検察官による面談が行われます。
痴漢行為のうち、逮捕後72時間の取り調べののち、身元がしっかりしていたら勾留されずに釈放され、その後の処分を待つことになるケースもあります。例えば、ご家族と同居しているケースなどです。 -
(3)勾留
検察官に送致されたのち、疑われている事実を否認している、犯行が悪質である、逃亡の可能性がある、証拠隠滅の恐れがあるなどのケースでは「勾留が必要」と判断される可能性があります。「勾留(こうりゅう)」においては、留置場や拘置所などに原則10日、最大20日間身柄が拘束されたまま引き続き取り調べなどを受けます。
-
(4)家庭裁判所での手続きと家族の役割とは
未成年が起こした事件は、「全件送致主義」と言って、基本的に、すべての事件が家庭裁判所に送致されます。家庭裁判所は、まず観護措置を行うのか釈放するのかを検討します。少年事件では、事件の重大さだけでなく、証拠隠滅の恐れや、家庭環境などを総合的に考慮した上で、観護措置の必要性などを判断します。
観護措置が決定すると、原則2週間、状況によっては最悪8週間の身柄拘束が続くこともあります。少年鑑別所では、子どもが更生し、社会復帰するために必要な調査やテストなどが行われます。家族としては、再犯しないように、更生できるように家族のサポート体制、受け入れる環境を整えることが重要です。 -
(5)少年審判による処分の内容
少年事件では、成人の刑事裁判のかわりに、家庭裁判所で「少年審判」が開かれます。少年審判は、刑事裁判とは異なり非公開で行われます。処罰を下すのではなく、教育的視点で校正を目指した判断を行う場所です。
罪の重さだけではなく、更正できるのか、再度罪を犯す可能性があるのか、反省しているのかなどの観点で処分が決定されます。具体的には、以下のような処分が出されることになります。
●不処分
罪を犯したことが確かではない場合、様々な教育的働きかけにより少年に再非行のおそれがないと認められた場合などのケースでは、処分は必要ないと判断されることがあります。
●保護観察処分
保護観察処分は、自宅で生活しながら保護司などの定期的な面談・指導を受けて更生を図る処分です。保護観察官や保護司から日常生活などについて指導を受けることになります。
保護観察期間は1年程度であることが多いです。
●少年院送致
自宅で日常生活を送りながら更生することが難しいと判断されると、少年院に収容されます。少年院に入所すると、その間基本的には自宅に帰ることはできません。
●検察官送致
重大な事件の場合など特別な事情がある場合は、家庭裁判所で判断された結果、検察官にもう一度送致されて、成人事件と同様の手続きで刑事手続きが進められることがあります。
2、大学生の息子が痴漢容疑で逮捕された場合の弁護士の選び方
次に、子どものための弁護士の選び方を説明します。未成年が起こした事件の場合、弁護士による弁護活動だけでなく、再犯しないための環境づくりが重要です。その点に着目して弁護士を選択しなければなりません。
-
(1)少年事件の弁護士の選び方
弁護士に依頼する場合、基本的に国選弁護士や私選弁護士に依頼するかを選択することになります。大学生のご子息が痴漢で逮捕されると、ご家族は突然のことに驚いてしまい、最適な選択ができなくなるものです。まずは国選弁護士と私選弁護士の違いを理解した上で、ご子息と家族にとってベストな選択をしましょう。
国選弁護士とは、基本的には、「勾留」が決定した時点で、資産が50万円以下などの条件が当てはまるケースで頼むことができる弁護士です。ただし、国選弁護士は自ら特定の弁護士を選定することはできないため、少年事件の取り扱い実績がない弁護士が担当になる可能性があるでしょう。また、勾留前に依頼することはできないため、勾留回避のための弁護活動を依頼することはできません。
それに対して、私選弁護士とは全額自費で報酬を支払う弁護士のことで、依頼するタイミング等に制限はありません。痴漢の場合は、逮捕される前の段階で依頼することもできます。南北線で痴漢をして取り押さえられたけど、警察がまだ到着していない、通報されていないなどのケースでは、逮捕前に依頼することで早急に被害者と示談を済ませ、前歴を残すことなく解決できる場合も一応あります。
また、逮捕後は、勾留前に私選弁護士を依頼することで身柄拘束を回避、もしくは少なくするための弁護活動に速やかに取りかかれます。また、国選弁護士と異なり、自分で少年事件の実績がある弁護士を選択可能な点も私選弁護士のメリットと言えるでしょう。 -
(2)少年事件で前科はつく? 家族がとるべき行動とは
20際未満の未成年者が起こした少年事件では、基本的にいわゆる「前科」がつくことはありません。ただし、前歴は残ります。前歴とは、事件の容疑者(被疑者)として、警察などの捜査機関によって捜査された履歴のことをいいます。
逮捕されて勾留や観護措置などの身柄拘束が長く続くと、学校や会社の不在期間が長くなり、悪影響は避けられません。大学の場合は、他の教育機関と比較すると不在の影響が及びにくいものの、事件が学校側に露見すると退学を余儀なくされる可能性は否定できません。 -
(3)痴漢事件で弁護士を選ぶ際のポイントとは
したがって、少年事件では子どもの生活への影響を最小限に抑えるため、とにかく早く弁護活動を開始すること、本人が更生するための環境を整えることが重要です。成人・少年問わず逮捕されてから72時間以内の対応が重要と言われています。また、少年事件は成人事件とは異なる教育的視点から、本人の環境を整えなければなりません。
そのためにも、ご子息の痴漢事件の弁護士を選ぶ際は「早く対応できる」、「少年の刑事事件の経験の有無」などを基準に考えることをおすすめします。
3、まとめ
未成年の子どもが痴漢で逮捕された場合、ご家族にできることは、逮捕後の処分を軽くするために、なるべく早く弁護士に依頼することです。
弁護士とともにサポート体制を整えて、再犯を防ぐ環境をつくり、検察官や裁判官等に伝えることが大切です。ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスでは少年事件の弁護も対応しています。事件が発覚したら、なるべく早くご連絡ください。少年事件に関する知見や経験がある弁護士が真摯に対応します。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています