痴漢でも犯行後日逮捕されることはありえるのか? 仙台オフィスの弁護士が解説
- 性・風俗事件
- 痴漢
- 後日逮捕
東北地方の中心都市として発展してきた仙台は人口も多く、その分さまざまな犯罪も起こっています。痴漢などもそのひとつで、企業が対策のために護身術教室を開くまでになっています。
いわゆる後日逮捕とは、犯罪の現場で逮捕される現行犯逮捕でなく、後日、逮捕される場合をいいます。法律上、「後日逮捕」という言葉はありません。電車で痴漢行為を働きながら、その場では逮捕されなかったため安心していたら、後日、証言を集めて逮捕状を携えた警察官が自宅に逮捕にやってくる場合などはその典型です。
ここでは痴漢で犯行の後日逮捕されてしまう不安がある方向けに、逮捕の一連の流れから、身体を拘束される期間、早期解決に向けた方法などについて、仙台オフィスの弁護士が解説します。
1、痴漢で後日逮捕されることはある?
痴漢は、都道府県の定める迷惑防止条例違反、または刑法上の強制わいせつ罪などに該当しうるため、これに違反した場合は逮捕され、裁判を経て刑罰を受けます。なお、迷惑防止条例は法律ではなく条例なので、各都道府県により罰則が異なります。
仙台市がある宮城県の迷惑防止条例によると、痴漢として逮捕され、有罪となったときに受ける罰則は、同法第17条で「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」と規定されています。
以下では、痴漢で後日逮捕される可能性について説明していきます。
-
(1)逮捕にはおよそ3種類ある
逮捕は「現行犯逮捕」と「通常逮捕」、さらに「緊急逮捕」に分けられます。通常、逮捕する際は、裁判官の出した令状による「通常逮捕」が原則です。
逮捕令状は警察が捜査を行い、罪を犯したと疑われ、かつ、逮捕する理由や必要が十分にあると裁判官が判断した場合に発行されます。一般に逮捕というと、ほとんどの逮捕はこの令状による逮捕です。
一方、現行犯逮捕は、その場で犯罪が目撃された場合、あるいは犯罪のすぐ後で時間がそれほど経過しておらず、犯人性が明らかな場合に、その場で身柄を拘束されることをいいます。また、現行犯逮捕ができる者は警官だけに限りません。一般の人でも、犯行が明らかな被疑者の身柄をその場で拘束することを認められます。つまり、犯行現場で身柄を取り押さえられたケースは「現行犯逮捕」となります。
さらに緊急逮捕は、重大事件において急を要する際に認められる逮捕方法ですので、痴漢のみで緊急逮捕されることはないと考えてよいでしょう。 -
(2)痴漢での逮捕は現行犯逮捕が多い
痴漢での逮捕は現行犯逮捕が多数を占めます。これは、痴漢事件が被害者や目撃者の証言や証拠が決め手になることが多いためです。
電車の中で取り押さえられ、そのまま警察に引き渡されるケースなどです。 -
(3)痴漢で後日逮捕されてしまう可能性は?
痴漢でも後日逮捕される事例はあります。痴漢で後日逮捕されるのは、以下のようなパターンです。
●防犯カメラの記録
駅構内やお店などの防犯カメラの映像から犯人を特定して捜査を進められた結果、犯行後日に逮捕される場合があります。
●乗車記録
被害者の訴えから、防犯カメラの映像と交通系ICカードの乗車記録を照らし合わせて、痴漢の被疑者を特定したうえで、犯行後日逮捕されることがあります。
●被害者や周囲の供述
現行犯逮捕できない場合でも、被害者や周囲にいた方たちの証言によって捜査が始まり、そこから後日になって逮捕となる場合があります。
2、痴漢で後日逮捕されたときの流れ
痴漢で後日逮捕されてしまう場合、どのような方法で逮捕され、どのくらいの期間身体を拘束されるのか気になることでしょう。以下に逮捕の流れを解説します。
-
(1)逮捕の方法
犯行後日、逮捕するときは、警察官が被疑者の自宅へ訪問するなどして、逮捕状を見せてから逮捕します。
逮捕状は、裁判官に請求して発行され、逮捕令状が出るまでの期間は、事件によって異なります。 -
(2)拘束される期間
警察がいつ自宅にやってくるかは、わかりません。では、逮捕されてから身体を拘束される期間はどのくらいになるのでしょうか?
痴漢で後日逮捕されると、取り調べが始まります。逮捕後は留置場などへ収監され、まず48時間拘束されます。さらに取り調べが必要だと判断された場合、検察官へ送致され、最長24時間の拘束を受けます。
さらに身柄を拘束することが必要だと検察官が判断した場合は、検察官は裁判官に「勾留(こうりゅう)」を請求します。裁判官がそれを認めると10日間勾留され、さらに延長が必要だと判断されると追加で10日間勾留されます。
したがって、逮捕されてから最長で23日間もの間、身体を拘束される可能性があるといえるでしょう。また、勾留されたまま公判請求(起訴)されてしまったときは、保釈手続きが認められない限り、基本的には、裁判が終わるまで身柄の拘束は続くことになります。
3、早期解決に向けて
前述したように、痴漢で後日逮捕されてしまうと、起訴か不起訴かが決まるまでの間だけでも最長23日間にわたって身柄拘束される可能性があります。当然その間、学校や会社を休み続けなければならないため、これほど長期間身体を拘束されると、今後の社会生活に大きな影響が出ることは避けられません。
そこで、勾留期間を短くし、早期の釈放を目指すための方法として考えられるものを紹介します。
-
(1)意見書を提出する
勾留請求は検察官から裁判官に対して行われます。そこで、被疑者の依頼を受けた弁護士などが「証拠を隠滅したり逃亡したりするおそれがない」などという意見書を検察官や裁判官に提出します。この意見書を提出することにより、勾留請求を回避、もしくは却下してもらうことで釈放される可能が高まります。
-
(2)勾留に対する不服申し立てをする
勾留が決定された後であっても、裁判所に不服申し立てを行えば釈放されることがあります。
-
(3)被害者と示談する
痴漢は被害者がいる犯罪のため、被害者に反省の意を伝え、謝罪を受け入れてもらえた場合、早期の釈放につながる可能性があります。検察官は、被害者の処罰感情を非常に重視するためです。
したがって、被害者と示談が成立しているかどうかがとても重要なポイントとなるでしょう。
しかし、これらのいずれの方法も逮捕されている本人が行うことは難しいものです。たとえば示談をしようにも、加害者本人や加害者の家族が行おうとしても拒否される可能性が高いと考えられます。そのため、まずは刑事事件に対応した経験が豊富な弁護士に依頼したほうがよいでしょう。
4、まとめ
今回は痴漢容疑で後日逮捕されてしまったときの一連の流れ、拘束される期間などについて解説しました。満員電車などで通勤していると、自分では痴漢をした覚えがなくても誤解されて、後日逮捕されてしまうことがあるかもしれません。
身に覚えがない冤罪の場合はもちろん、犯行を認めている場合でも、早期に釈放されるに越したことはありません。
早期釈放へ至るためにはさまざまな方法がありますが、まずは弁護士へ依頼するのが確実な方法です。痴漢行為をしてしまった、もしくはそのような言いがかりを付けられて思わず逃げてしまったなど、いつ逮捕されるかわからないという不安がある方は、まずは法律や刑事事件を熟知している弁護士へ相談してみましょう。
ベリーベスト法律事務所・仙台オフィスでは、痴漢事件に対応した実績が豊富な弁護士が適切な対応を行います。お気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています