旦那が盗撮で逮捕されるとどうなる? 家族としてとるべき対応は?
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スマートフォンや小型カメラの普及により、いつでもどこでも、手軽に撮影ができるようになり、盗撮事件は非常に身近な犯罪となってきています。仙台市内でも、2018年11月、JR仙台駅のエスカレーターで女性のスカート内を盗撮した疑いにより、38歳の男性が逮捕されるなど、盗撮事件の報道が取り上げられるようになっています。
ある日突然、旦那さんが盗撮の疑いをかけられ逮捕されるという事態は、決してありえないこととは言い切れません。働き盛りの旦那が、逮捕され帰ってこないとなれば、この先どうなるのかと不安になることでしょう。適切な対応を知っていれば、家族を早く助けることができます。
盗撮行為の罪状や、逮捕された際に家族としてとるべき対応などについて弁護士が説明します。
1、ひとつではない? 盗撮行為で問われる罪
盗撮行為が犯罪であることは、誰もが知るところでしょう。では具体的に、どのような法令に違反する行為で、どのような罪に問われうるのでしょうか。
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(1)迷惑防止条例違反
盗撮行為で逮捕されるケースで、もっとも多いのが迷惑防止条例違反による逮捕です。
迷惑防止条例は「住民の平穏な生活を守るため、他人へ迷惑をかけるさまざまな行為を禁止する」目的で、各都道府県で制定されている条令です。都道府県ごとにその内容や罰則も多少違います。宮城県においては「迷惑行為防止条例(昭和42年宮城県条例第29号)」として制定されています。
宮城県の迷惑防止条例、第3条の2において、公共の場所や公共の乗り物における「卑わいな行為」を禁じており、この中に盗撮行為も含まれます。具体的には、「人の下着等を撮影し、又は撮影する目的で写真機、ビデオカメラその他これらに類する機器を向け」ることもしくはそのような機器を「設置すること」を禁じています。よって、実際に撮影されていなくても、機器を設置しただけで罪に問われる可能性があります。
違反した場合には、6ヶ月以下の懲役、あるいは100万円以下の罰金という刑罰が科されることになります。 -
(2)軽犯罪法違反
軽犯罪法第1条23号において、窃視(のぞき見)の罪が規定されています。条文では「正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者」は「拘留(こうりゅう)または科料(かりょう)に処する」とされています。盗撮行為は、この「窃視の罪」に該当するとされています。
「拘留(こうりゅう)」とは、1日以上30日未満の期間で拘束される刑罰、「科料(かりょう)」は1000円~1万円未満の範囲で金銭を徴収する処罰です。 -
(3)その他の刑法
盗撮が行われた状況によっては、刑法に該当する犯罪となる可能性があります。
●住居・建造物侵入罪
他人の住居内部を盗撮した事件では、他人の私有地に侵入して撮影している可能性があります。この場合、住居侵入罪が成立する可能性もあります。
これは刑法第130条で規定する住居侵入等にあたるため「3年以下の懲役」または「10万円以下の罰金」に処される可能性があります。住居そのものだけでなく、庭などに侵入することでも住居侵入罪は適用されることがあります。
また、盗撮目的で、倉庫の更衣室などに侵入した場合も、建造物侵入罪として刑法第130条が適用されることがあります。
●児童ポルノ法違反
盗撮対象が18歳未満だった場合は、いわゆる「児童ポルノ法」違反に問われる可能性もあります。児童ポルノ法の正式名称は、「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」です。
同法第7条において、児童ポルノを所持することを禁じています。児童ポルノとは、簡単に言うと、児童のわいせつな姿態の写真などを指します。裸でなくとも、下着や性器を強調した姿も対象となりえます。
条文では、「自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持した者」は「1年以下の懲役」または「100万円以下の罰金」に処するとされています。自分が撮影したものではなくても、基本的には18歳未満の児童の裸や下着などの画像を携帯電話やパソコンに保存しているだけでも処罰の対象となります。
児童ポルノに該当する、児童のわいせつな姿態を盗撮することは、児童ポルノの製造にあたるとされ、刑罰としては、「3年以下の懲役」または「300万円以下の罰金」が科されます。
2、旦那が盗撮で逮捕! いつ帰って来る?
盗撮で逮捕される場合は、犯行がその場で露見したとき、またその直後を取り押さえられる現行犯逮捕が多いようです。しかし、後から被害届が提出され捜査が行われた結果、後日、逮捕状による通常逮捕が行われることもあります。
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(1)警察での取り調べ
逮捕された場合、警察署の留置所などに身柄を拘束されることになります。
取り調べ中に被疑者が供述した内容は供述調書として書面にまとめられ、被疑者が署名することによって裁判で証拠として扱われます。もしも身に覚えがないことであれば、決して真実と異なる供述をしてはなりません。
警察(司法警察員)においては、逮捕された時点から48時間以内に書類及び証拠物を検察官に送らなければならないなどと刑事訴訟法において定められています。その時点で、疑いが晴れたら釈放されることがあります。引き続き取り調べが必要であると判断された場合は、検察官へ引き渡されます。 -
(2)検察への送致・勾留請求
警察による取り調べに加え、検察官による取り調べも必要と判断された場合、警察から検察へ身柄を引き渡すことを「送致」といいます。
検察においては24時間を上限として取り調べを行い、引き続き身柄を拘束して捜査を続ける必要がある場合は、裁判所に対し「勾留(こうりゅう)請求」を行います。勾留が不要と判断されれば、釈放となります。
しかし、勾留が認められると10日間身柄を拘束されます。捜査不十分として延長請求がなされると最長で20日間(逮捕日から数えると23日間)に及びます。 -
(3)起訴・不起訴の決定
検察官は、勾留の最終日までに、起訴するかどうかが決定します。起訴された場合、裁判が行われることになります。身柄釈放を許可する保釈が裁判所で認められなければ、基本的には、判決が下され結審となるまで身柄の拘束が続くことになります。
一方、不起訴が決定されれば直ちに釈放されます。なお、起訴されなかった場合、必ず不起訴であるとは限りません。略式手続き、処分保留といった処分になる場合もあります。
略式手続きとは、検察官が「略式起訴」と呼ばれる請求をした上で、公判手続きはとらず、簡易裁判所において100万円以下の罰金か科料(かりょう)を課すものです。不起訴が妥当ではないものの、執行猶予を含め懲役刑では厳しいと判断される盗撮事件が対象になるでしょう。
財産刑が科されますから、たとえ刑務所に服役することがなくても「有罪」であり、前科にはなります。
3、盗撮で逮捕された旦那を早く助けるためには
旦那が盗撮で逮捕されたとなるとパニックになってしまうかもしれません。しかしそのようなときにこそ、家族として、少しでも早く日常を取り戻すためにできることがあります。
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(1)逮捕後72時間がカギ
前述のとおり、長期拘束を避けるためには、「逮捕から48時間」さらに「送致から24時間以内」の釈放を目指す活動が必要となります。しかしこの間、家族は被疑者と面会することはできません。
しかし弁護士であれば、逮捕段階から、何回でも、時間の制約がなく、警察官の立ち会いなしに、被疑者と面会することができます。
家族が逮捕されたときは、できるだけ早く弁護士に連絡することをおすすめします。早期にご主人と弁護士が話し合うことができれば、被疑者自身を不利にするような発言をしないよう、アドバイスすることもできます。また、逮捕されたことによって、被疑者は警察官などに囲まれて、恐怖や不安によって精神的に追い詰められることもあるでしょう。
被疑者の味方である弁護士が、直接コミュニケーションをとり、今後の見通しなどを伝えることで精神面への負担を減らすこともできます。さらに、家庭や職場への連絡を担いつつ、どのような事件だったのかの整理などを行うことも可能です。 -
(2)弁護士を介して示談交渉を行う
事実を認めているとき、長期にわたる身柄の拘束や起訴を回避するためには、「被害者との示談」に向けてすぐに行動を起こす必要があるでしょう。
刑事事件における「示談成立」とは、多くのケースで加害者が被害者に対して謝罪と損害賠償を行い、被害者は加害者に対して「罪を許す」ことを意味する「宥恕(ゆうじょ)」を行うことを目指します。
示談成立が早ければ早いほど、被疑者の将来に大きなメリットをもたらします。たとえば、示談成立時に告訴しないことなどを約束して入れることができれば、逮捕されない可能性が高まります。また、逮捕されたとしても、示談が成立していれば、検察への送致や起訴に至らない可能性が高まるほか、万が一起訴されたとしても、減刑を考慮する材料になると期待できます。
盗撮は「性犯罪」ですので、被害者と当事者の家族の多くが、加害者や加害者の家族との接触を望みません。無理に示談を進めると、被害者の処罰感情がむしろ高まってしまう危険性もあるでしょう。第三者である弁護士に示談を依頼することで、スムーズな解決を目指すことができます。 -
(3)家族の逮捕を知ったらすぐに弁護士へ
旦那が逮捕されたと知ると、まずは事実確認を、などさまざまな考えが頭をめぐることでしょう。しかし、少しでも早く事件を解決し、日常を取り戻すためには、弁護士にすぐ相談することがもっとも近道となります。
弁護士に相談することは、本人や家族にとって最善策を選択する機会となると同時に、捜査がスムーズに進む手助けにもなります。弁護士があいだに入ることによって職場への連絡も回避できるかもしれません。
なお、盗撮が事実でないならば「無実の証明」をする必要があるでしょう。その場合も弁護士の助けは不可欠です。早い段階で弁護活動を開始することが、将来への影響を最小限にとどめることにつながります。
4、まとめ
盗撮という行為は、スマートフォンさえあれば誰でもどこでも犯行可能な犯罪となりました。状況次第で迷惑防止条例、軽犯罪法、住居侵入罪などといったさまざまな法令に違反する可能性があります。
もし家族が逮捕されたとなれば、冷静な気持ちではいられないことと思います。しかし、逮捕後は時間との闘いです。長期の拘束を回避するためには、逮捕後72時間以内の釈放を目指し、すぐにでも弁護士に相談することが、何よりも重要です。
「旦那が盗撮事件で逮捕された!」「容疑がかかっている……」というときは、ベリーベスト法律事務所・仙台オフィスで相談してください。弁護士の専門知識と豊かな経験が、きっと家族の助けになることでしょう。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています