路上ライブは違法なのか? 法的な問題点と逮捕される可能性

2023年04月24日
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路上ライブは違法なのか? 法的な問題点と逮捕される可能性

アマチュアのミュージシャンやダンサーなどにとって「路上ライブ」は、ファン獲得やデビューを目指すための大切な機会になっています。

記憶に新しいところでは、令和元年7月に仙台駅前でおこなわれた路上ライブの様子が動画投稿サイトやSNSで拡散されたことがきっかけとなり、大阪出身の5人組ロックバンドが一躍有名になりました。

仙台の街は、駅前からアーケード街が長く続くため、路上ライブをしやすい構造をしています。しかし、騒音などの問題から店舗・住民とトラブルになり、通報を受けて臨場した警察官から演奏をやめるように注意されることもあるようです。

では、路上ライブは何らかの法律に違反するのでしょうか? 本コラムでは「路上ライブ」の違法性について確認していきます。

1、路上ライブは違法になる?

音楽やダンスなどのストリートパフォーマンスは、通行人の目に留まりやすいだけでなく、ファンとの距離感も近いのが魅力です。
現在活躍しているミュージシャンやパフォーマーのなかには、もともと路上ライブを中心として活動していたストリート出身者も多いので、路上ライブは有名になるための登竜門のような位置づけになっています。

しかし、安易に路上ライブを開催するのは危険です。状況次第では違法となり、摘発されてしまうおそれがあります。

  1. (1)無許可の場合は違法になるおそれが強い

    路上ライブをおこなう場所が、人が行き交う歩道であれば、その場所は「道路」にあたります。
    楽器やスピーカーを置く、観客が長時間立ち止まるなど、道路の一部を占拠した状態になるので、ライブに興味がない一般の歩行者にとっては障害です。

    道路交通法第77条1項は、道路を使用する際はその場所を管轄する、警察署署長による許可を受けなければならないと定めています。この規定を受けて宮城県では、「道路に人が集まるような方法で演奏などをする」場合は、宮城県道路交通規則第22条にもとづく許可が必要です。

    所轄の警察から許可を受けないまま路上ライブを開催すると、道路交通法や道路交通規則の違反になります

    では、道路・歩道でなければ問題ないのかといえば、そうともいえません。
    店舗の軒先や施設の敷地でライブなどを開催するには管理者の許可が必要です。無許可で立ち入れば建造物侵入罪に問われる危険があります。

  2. (2)警察官の制止を無視した場合も違法になる

    近くに住宅やマンションなどがある場所で路上ライブをおこなうと、近隣住民からの通報を受けて警察官が駆けつけることがあります。
    警察官の制止を無視して、歌声や楽器の音などを異常に大きく出すなどし、静穏を害して近隣に迷惑をかけると軽犯罪法1条14号違反にあたります。

2、路上ライブをするための許可

路上ライブを安全に開催するためには、違法にならないように「許可」を取り付ける必要があります。では、誰に、どのような許可を申請すれば路上ライブが認められるのでしょうか。

  1. (1)道路使用許可が必要

    道路を使用する際は、道路交通法や道路交通規則にもとづく「道路使用許可」が必要です。
    道路使用許可を受けるには、使用する予定の道路を管轄する警察署の交通課に、所定の申請書や使用場所の見取り図などを提出します。

    許可の申請を受けた警察は、交通の妨害になるおそれがないと判断した場合、原則として使用を許可しなければなりません(道路交通法77条2項1号)。
    しかし、歩道の一部または全部をふさいでしまう路上ライブでは、交通の妨害になるのは明らかです。この条件に照らすと、路上ライブを含めてほとんどの申請が許可できないことになります。警察は、警備員や交通誘導員などを配置するといった条件(道路交通法77条2項2号)を付すことで許可を下しているのが現状です。

  2. (2)自治体・商店街などの許可が必要になることもある

    法律上の「道路」にあたらない場所については、その場所の管理者に許可を受ける必要があります。

    公園など自治体が管理している場所なら、自治体が規定する公園使用許可を受けることになるでしょう。ただし、地域独自の祭事など風習や文化にもとづく使用や、学校教育など公共性が高い使用でなければ自治体の許可を得るのは難しいかもしれません。

    店舗の軒先なら店舗の管理者の許可を得るだけなので、特に行政上の許可は要しないはずです。
    ただし、商店街・アーケード街は組合を結成しているケースが多く、組合によっては路上ライブなどを一律で禁止しているところもあります。
    法律にもとづく禁止ではないので、路上ライブを開催することで、直ちに違法となるわけではありませんが、民事上の問題を生じることもありますから、現場で一般市民とのトラブルを避けるためにも許可を取っておくべきです
    もちろん、許可する・許可しないという判断は管理者に委ねられているので、許可を得られなかった場合はその場所で路上ライブをするのは避け、別の場所で開催するよう検討すべきでしょう。

3、無許可で路上ライブをすると逮捕される?

道路使用許可などを得ないまま路上ライブの開催に踏み切ってしまうと、法律の考え方に照らせば違法ということになります。
では、違法な状態で路上ライブを断行してしまうと、警察に逮捕されてしまうのでしょうか?

  1. (1)いきなり逮捕される可能性は低い

    無許可で路上ライブをしたからといって、いきなり逮捕されてしまう可能性は低いでしょう。現実的な問題として、よほど動員数の多いケースでない限り、路上を完全に占拠してほかの交通に大きな支障を与えることはないはずです。

    また、路上ライブには道路使用許可などが必要であることを知らないミュージシャン・パフォーマーも少なくありません。通報を受けて警察官が駆けつけてきたとしても、まずは道路使用許可などの有無の確認を受けたうえで『演奏をやめるように』と注意を受けて済まされるのが一般的です。
    現場警察官の指示に従って演奏を中止し、観客を解散させれば、逮捕や処罰を受けることはほとんどないといえるでしょう。

  2. (2)注意をきかず繰り返すと逮捕される危険もある

    たとえ悪質性が低いとしても、違法であることを指摘されて注意を受けたのに演奏をやめなかったり、再三の注意を受けているにもかかわらず路上ライブを繰り返したりしていると、逮捕される危険があります。
    『路上ライブくらい、大丈夫だろう』と思うかもしれませんが、道路使用許可を受けずに道路を使用する行為は、道路交通法第119条2の定めによって3か月以下の懲役または5万円以下の罰金が科せられる犯罪行為です。

4、刑事手続きの流れ(逮捕された場合・逮捕されなかった場合)

無許可の路上ライブで警察に摘発されると、その後はどうなるのでしょうか。詳しくみていきましょう。

  1. (1)逮捕された場合の流れ

    警察に逮捕されてしまうと、警察の段階で48時間以内、検察庁に身柄を引き渡された段階で24時間以内の身柄拘束を受けます。
    さらに、必要に応じて10日間、延長を含めると最長20日間の勾留による身柄拘束を受けたうえで、検察官が起訴・不起訴を判断します。
    起訴されると刑事裁判が開かれ、裁判官が有罪判決を下せば刑罰が科せられます。

    これは逮捕を伴う刑事事件で想定される一般的な流れですが、交通事件では検察庁に身柄を引き渡されるまでに釈放されるケースが多数です。
    交通事件の容疑者の多くが、定まった住居や家族、職業をもっていて逃亡の危険が少ないこと、本人の身柄拘束を続けなくても証拠が十分に確保できているといった理由があります

  2. (2)逮捕されなかった場合の流れ

    逮捕されなかった場合でも、刑事手続きを免れるわけではありません。
    警察による取り調べなどの捜査が終わり、この時点で釈放されたとしても、検察官へ捜査書類と証拠品が引き継がれます。これがニュースなどでもよく耳にする「書類送検」です。

    書類送検された場合も、逮捕を伴う事件と同じく検察官による捜査や取り調べが進められ、起訴・不起訴が判断されます。
    起訴されれば刑事裁判が開かれ、有罪判決を受ければ刑罰が科せられるという点も同じです。

    逮捕や勾留による身柄拘束を受けないという意味で、書類送検された事件のほうが軽い処分だと感じる人もいるかもしれません。
    しかし、逮捕された・されないの違いは、単に捜査の方法が強制か、それとも任意かの違いでしかないので、軽重の差はありません。書類送検された場合でも、起訴されれば刑罰を受けて前科がついてしまうおそれがあります。

5、まとめ

道路使用許可を受けないまま路上ライブを開催すると、道路交通法や道路交通規則の違反になります。
表現の機会として、またはファン獲得のチャンスとして路上ライブを行いたい、続けたい、と考えるアーティストの方は少なくないと思います。重要な表現の場でもあるからこそ、違法にならないために正しく許可を取るなどの手順を踏むことが必要です。
万が一、通報などによって摘発されてしまった場合や、トラブルに発展してしまった場合のサポートは、経験豊富な弁護士に依頼することをおすすめします。

ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスには、刑事事件の対応実績が豊富な弁護士が在籍しています。路上ライブが原因で刑事事件に発展してしまった場合は、ぜひご相談ください。
少しでも早く解決するよう、親身になってサポートします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています