現住建造物等放火罪とは? 放火未遂でも逮捕されて罪に問われる?
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- 現住建造物等放火罪とは
宮城県警察が公表する「刑法犯認知・検挙状況(令和5年中) 」によると、令和5年に宮城県内で発生した放火事件の認知件数は9件でした。前年同時期の放火事件数と比較すると、5件減少しています。
放火罪は、不特定多数の人の命や身体、財産に対して被害を及ぼす犯罪であるため、態様や発生結果によっては死刑もあり得る重い犯罪です。特に「現住建造物等放火罪」は、放火事件のなかでも重い刑罰が科されます。
本コラムでは、現住建造物等放火罪の罰則や放火未遂の罰則などについて、ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスの弁護士が解説します。
1、現住建造物等放火罪とは?
放火とひとくちにいっても、ケースごとに問われる罪は異なります。
現住建造物等放火罪は、『現に人が住居に使用している建造物など』や『現に人がいる建造物など』に火をつけて放火した場合の犯罪類型です。
放火の罪には、現住建造物等放火罪以外にも、非現住建造物等放火罪、建造物等以外放火罪という類型がありますが、現住建造物等放火罪は、人の生命や身体に対して危険が及ぶという点で、特に重く処罰される犯罪です。
このように、現住建造物等放火罪は、重大な犯罪であることから、刑事裁判となった場合には、裁判員裁判の対象事件となります。
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(1)現住建造物等放火罪の成立要件
現住建造物等放火罪が成立するのは、①~④の要件を満たした場合です。
① 人が住居に使用している、または人がいる建物等への放火
現住建造物等放火罪は、現に人が住居に使用し、または、現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船、鉱坑(こうこう)への放火について成立します。
『現に人が住居に使用』とは、放火当時、人が日常生活の場所として日常的に使用しているという意味です。そのため、放火の時点でたまたま建物内に人がいなかったとしても、そこが日常生活の場として使用されていれば、現住建造物等放火罪が成立します。
また、この場合の『人』とは犯人以外の者を指すため、犯人の家族も含まれます。
たとえば、犯人がひとり暮らしをしている自身の家に放火した場合は、非現住建造物等放火罪となりますが、同居する家族がいる家に放火した場合は、現住建造物等放火罪に問われることになります。
② 放火行為
放火行為とは、目的物を焼損させる危険性がある行為のことをいいます。対象となる目的物に火をつける行為だけではなく、媒介物に火をつける行為についても放火にあたります。
たとえば、人の住む建物に火をつける目的で隣接する物置などに火をつけたというケースでも、建物に対する放火であるとして現住建造物等放火罪が成立する可能性があります。
③ 焼損させる
学説上の争いはあるものの、焼損とは火が媒介物を離れて独立して燃焼を継続する状態になったことと解されています。つまり、放火した対象物が燃え続けている状態であれば、焼損させたといえるでしょう。
④ 故意
故意とは、簡単にいえば「わざと」目的物に放火して、焼損させた場合のことをいいます。「わざと」ではなく、「不注意で」目的物を焼損させた場合、失火罪という別の犯罪になります。 -
(2)現住建造物等放火罪の法定刑
現住建造物等放火罪の法定刑は、死刑または無期懲役もしくは5年以上の懲役です(刑法第108条)。
木造建築の多い日本では、わずかな火元であっても重大な結果を及ぼすおそれがあるため、このような重い法定刑が定められています。
2、未遂でも現住建造物等放火罪に問われる?
刑法第112条は、現住建造物等放火罪について、たとえ未遂であったとしても罰すると規定しています。
そのため、未遂だったとしても、死刑または無期懲役もしくは5年以上の懲役という法定刑が適用されることになります。未遂の場合は、その刑を減軽することができるとされていますが、刑が減軽されるかどうかについては、あくまでも裁判所の裁量に委ねられているため必ず減軽されるわけではありません。
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(1)未遂になるケース
現住建造物等放火罪で未遂となるのは、目的物に放火をしたものの、焼損させるに至らなかった場合です。焼損とは、前述したように火が媒介物を離れて独立して燃焼を継続する状態を指します。
たとえば、新聞紙に火をつけて建物に放火をしようとした場合には、火が新聞紙を離れて建物の天井などに燃え移り、独立して燃え始めれば焼損にあたり、現住建造物等放火罪の既遂となります。
逆に、建物を燃やす意図があったとしても、新聞が燃えただけであったり、取り外しができる畳などが燃えたりしただけであれば、現住建造物等放火罪の未遂になると考えられるでしょう。
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3、逮捕された場合の流れ
現住建造物等放火罪に該当する行為をしてしまった場合には、たとえ未遂であったとしても逮捕される可能性は高いといえます。
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(1)逮捕
現住建造物等放火罪は、一般的には人に隠れて放火するため現行犯逮捕になることは少なく、後日行われる捜査によって犯人が特定され、逮捕状の交付を受けて逮捕されます。
逮捕されると、まずは48時間を上限として警察による取り調べを受けます。その後検察へ送致され、24時間を上限として検察官による取り調べを受けることになります。
逮捕によって身柄を拘束することができる期間は最大で72時間と定められているため、さらなる身柄の拘束が必要と判断された場合には、後述する『勾留』という手続きが行われます。 -
(2)勾留
72時間に達した後も、引き続き身柄拘束をして捜査を継続する必要があると判断された場合は、検察官が裁判官に勾留請求を行います。勾留請求が認められた場合には、10日間を限度に引き続き身柄を拘束されることになります。
なお、勾留は延長することが可能です。勾留延長が認められた場合、さらに10日間延長されることになるため、逮捕後の取り調べ期間も含めると最大で23日間にわたり身柄拘束を受けることになります。
検察官は、勾留期間が満了するまでに事件を起訴するかどうかの判断を行います。検察官が事件を起訴した場合は刑事裁判の手続きに進みますが、不起訴になった場合には釈放され前科がつくこともありません。
そのため、不起訴を獲得することは、非常に重要となります。 -
(3)刑事裁判
起訴された場合には、刑事裁判が開かれます。刑事裁判では、公開の法廷で審理が行われ、有罪か無罪か、有罪である場合にはどの程度の刑を科すかを判断されることになります。
なお、すでに述べたとおり、現住建造物等放火罪はその重大性から未遂であっても裁判員裁判の対象事件となります。
4、刑事事件を起こしたら弁護士に相談するべき理由
ご家族やご友人が現住建造物等放火罪の嫌疑で逮捕された場合や、事件を起こしてしまい逮捕されるのではと不安を感じている場合は、すぐに弁護士に相談しましょう。
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(1)早期に示談を成立させることが重要
現住建造物等放火罪は、たとえ未遂であったとしても、被害者に何らかの損害を与えているのが通常です。そのため、被害者への謝罪はもちろんのこと、燃えた物や建物の損害を金銭的に賠償して被害者に許してもらう示談交渉を進めることが大切です。
刑事事件において、被害者との間で示談が成立しているという事情は、起訴・不起訴を判断する際や、起訴された後の量刑を考える際に重要な要素となります。少しでも有利な処分を望むのであれば、早期に被害者と交渉し示談を成立させることが重要です。
しかし、通常被害者は犯人に対して強い怒りや恐怖を感じています。加害者側のご家族や関係者が直接交渉を行うのは得策とはいえず、新たな火種にもなりかねません。そのため、被害者との示談交渉をスムーズに進めるためには、弁護士に依頼をして行うべきといえます。 -
(2)逮捕期間中に面会できるのは弁護士だけ
逮捕後72時間は、家族であっても被疑者との面会が認められないため、逮捕された場合にはたったひとりで厳しい取り調べに対応しなければいけません。
身柄を拘束されるという非日常的な状況に置かれると不安が高まり、早く釈放されたいという一心から、自分の認識とは異なる発言をしてしまうリスクもあります。供述調書が作成されてしまうと、後日それらを覆すことは非常に困難です。
弁護士であれば、逮捕後すぐに面会をすることができます。
弁護士から、取り調べのアドバイスや今後の手続きの流れについて説明を受けることができれば、落ち着いて取り調べに対応することができるでしょう。
刑事事件は、逮捕後72時間の対応が非常に重要です。もし、すでに逮捕されているという状況であれば、ご家族の方は早急に弁護士へ依頼することをおすすめします。
5、まとめ
現住建造物等放火罪は、裁判員裁判の対象になる非常に重い犯罪です。
「むしゃくしゃしていた」「騒ぎを起こしたかった」など、安易な気持ちで行為に及んでしまったとしても、重い刑罰が科される可能性があります。
ご自身が現住建造物等放火罪の嫌疑を受けている場合や、ご家族やご友人が現住建造物等放火罪で逮捕されてしまったという場合には、お早めにベリーベスト法律事務所 仙台オフィスまでご相談ください。
当事務所は、仙台市青葉区にオフィスを構えていますが、泉区や太白区、宮城野区、若林区にお住まいの方からのお問い合わせも随時受け付けております。
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