未払いの残業代請求する前に知っておきたい正しい計算方法について
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宮城県仙台市は観光地として有名な街であると同時に、ビジネスがさかんな街でもあります。そのため、サービス業に従事している方も多くいらっしゃいます。
サービス業界では残業代の未払い問題が深刻になっていますが、そもそも残業代はどのようにして計算されているのかをご存知でしょうか。「知っている」という方もいらっしゃるでしょうが、「興味を持ったことさえない」というような方も多いのではないでしょうか。
残業代請求を行うためには、自分に支払われるはずだった残業代がいくらなのかを計算し、正確に把握する必要があります。そこで、今回は、残業代の計算方法について解説します。
1、残業代はどうやって計算する?
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(1)法定労働時間とは
残業代を計算する前に、まずは「法定労働時間」について知っておきましょう。法定労働時間とは、労働基準法で定められた労働時間のことで、1日8時間・週40時間と定められています。
各事業者は、原則として、この法定労働時間を上回らないように就業時間を設定しなければなりません。そして、各事業者は「法定労働時間」を超えて労働者を働かせた場合は、本来の時給に加えて、基礎時給の25%を上乗せした割増賃金を支払う義務があります。 -
(2)法定内残業と法定外残業
したがって、残業代を計算するときは、残業時間が法定労働時間を上回っているときとそうでないときとで分けて考えることが必要です。
たとえば、就業時間が9時~17時、休憩時間が1時間の会社で、18時まで残業した場合は、働いた時間が法定労働時間内におさまっているので、「法定内残業」になります。一方、就業時間が9時~18時、休憩時間が1時間の会社で19時まで残業した場合は、働いた時間が8時間を超えているため、18~19時の1時間は「法定外残業」となります。時給が1000円で働いているとすると、残業代は前者では1000円、後者では1250円(1000円の25%増)となるのです。 -
(3)基礎賃金の計算
残業代を計算するには、「基礎賃金」がいくらになるのかを知らなければなりません。基礎賃金とは、基本給から家族手当・通勤手当・別居手当・子女教育手当・住宅手当・臨時に支払われた賃金・1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(限定列挙)を差し引いたものです。この金額に基づいて、残業代を算出します。
2、変形労働時間制での残業代の計算方法
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(1)変形労働時間制とは
所定労働時間は1日8時間、1週間で40時間であることは先述した通りですが、これには例外があります。それが「変形労働時間制」という制度です。
この制度は、「一定期間」の労働時間が週平均で40時間以下であれば、1日8時間、1週間40時間を超えて労働させることが可能になるものです。
サービス業界の中には、1年のうちのある特定の時期だけ忙しいという業種や、月末月初が決まって忙しくなるという業種もあります。所定労働時間を繁忙期には長く、逆に閑散期には短くすることで、全体として労働時間を短くできるのです。 -
(2)変形労働時間制での残業時間
変形労働時間制では、労働者を法定労働時間より長く働かせることが認められているため、残業時間の考え方は通常の場合と異なります。変形労働時間制で残業が発生するのは、以下の3パターンです。
①1日の所定労働時間を8時間以上に定めた場合は、その定めた時間を超過したとき。
所定労働時間が8時間未満の場合は、通常通り8時間を超えたとき。
②1週間の労働時間を40時間以上に定めた場合は、その定めた時間を超過したとき。40時間未満の場合は、通常通り40時間を超えたとき。
③対象期間(1ヶ月や1年など)において労働時間の総枠を超えた場合
3、このケースは残業に含まれる?
ここまで残業時間を把握して残業代を算出する方法について解説してきましたが、そもそもどのような業務が残業として労働時間に含まれるのかを正しく把握されている方は少ないと思います。
そこで、ここでは残業ではないように扱われることが多くても、実は残業になるケースについてご案内します。
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(1)始業前に朝礼や清掃などを行った時間
朝一番に朝礼や清掃を行っている会社も多いでしょう。しかし、その朝礼が始業前に行われており、かつ参加が強制されている場合には、残業の一種として労働時間に含まれます。
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(2)持ち帰り残業をした時間
上司に命令されて帰宅後に自宅で仕事をした場合、持ち帰り残業として残業代の支払い対象となります。また、上司からその日のうちには絶対に終わらないような量の仕事を翌朝までに行うよう命令されてやむをえず自宅に仕事を持ち帰った場合なども、黙示の命令があったとみなして残業として労働時間に含まれる余地があります。
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(3)着替えの時間
会社で指定されている制服がある場合や、作業服に着替えなければ事実上仕事ができない場合は、始業前・終業後に着替えをしている時間も労働時間にあたります。たとえば、始業時間が9時で、制服・作業服に着替えるために8時45分に出社しなければならない場合、15分は労働していることになるのです(帰りにも同じ時間がかかるなら、合計で30分)。
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(4)研修への参加や練習が強制されている時間
「業務に必要な技能や知識を身につけるため」と称して、終業後に研修やセミナー、懇親会などへの参加が会社から強制されている場合、これらの時間は残業したものとして労働時間にあたります。もっとも、事実上の強制にとどまる場合には、「強制」的なものであったことが具体的な事情から明らかにされなければなりません。
また、美容師など専門的な技能が要求されるサービス業では、終業後に先輩などから指導を受けたり、カットの練習を行ったりすることがあると思います。しかし、たとえ会社側から指導を受けたり練習をしたりするようにはっきりと言われていなくても、黙示の命令があったとして残業と認められる余地があります。 -
(5)開店前の準備・閉店後の後片付けの時間
始業前に商品を陳列するなどお店を開ける準備をしたり、終業後に閉店後の後片付けやレジの締め作業をしたりしている場合は、これらの時間も労働時間にあたります。これらの時間も、労働者は会社の指揮命令下に置かれていると考えられるからです。
4、まとめ
残業代を計算するのは、難しいものです。毎日決まった時間に働いている場合はまだわかりやすいのですが、シフト制になっていて就業時間が不規則になっている場合は、残業代の計算が難しくなりがちです。変形労働時間制が採用されている会社では、さらに計算が複雑になるでしょう。
しかし、残業代が一部でも未払いになっている場合、計算を面倒がっていると消滅時効が成立してしまい、会社側に請求したくても請求できなくなってしまうことも考えられます。そのため、残業代が正しく支払われているか計算してチェックする必要があるのです。
「残業代の計算が複雑でよくわからない」という場合は、ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスまでご相談ください。給与明細や雇用契約書などの労働条件に関する資料と、タイムカードなどの残業時間を示す証拠資料をお持ちいただければ、労働問題に詳しい弁護士が残業代を計算いたします。計算した結果、もし未払い残業代があれば、会社側との交渉も当事務所で行いますので、安心してお任せいただければと思います。
泣き寝入りしてしまう前に、ぜひ一度、ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスへご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています