業績悪化で業務委託契約を解除したい場合に確認しておくべきポイント
- 一般企業法務
- 業務委託契約 解除
新型コロナウイルス感染症の影響などから、日本各地の会社の業績悪化が懸念されています。宮城県も例外ではなく、宮城県庁が令和2年9月に公表した情報によると、宮城県の経済の動向も悪化しているそうです。
会社の業績が悪化したときは、コスト削減に向けてさまざまな取り組みを検討することになります。今まで業務の一部を外部に委託していたような場合には、業務委託契約を解除することも視野に入れることになるかもしれません。
本コラムでは、業務委託契約の解除方法や注意点について、ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスの弁護士が解説します。
1、業務委託契約には2種類の契約形態がある
業務委託契約の解除を検討するときには、まずは契約の内容について理解を深めておく必要があります。
-
(1)業務委託契約とは
業務委託契約とは、業務の一部を外部の個人や法人などに委託する契約です。発注者と受注者には、雇用関係はありません。
業務委託契約を締結した当事者は、原則として契約書に記載された内容にそって権利や義務を負います。したがって契約書に解約条項や違約金条項があれば、基本的にその内容にそって解除することになります。しかし契約書の解除条項に当てはまらない解除の場合には、法律の規定で解決を図る必要が出てきます。
ここで注意しなければいけないのは、業務委託契約という名称の契約は、民法その他の法律に直接は定められてはいないという点です。そのため業務委託契約は、一般的には、実質的には民法上の「請負契約」または「(準)委任契約」のどちらかに該当することが多いです。 -
(2)請負契約
請負契約とは、受注者が委託された業務の完成を約束して、発注者は成果物に対して報酬を支払うことを約する契約のことをいいます。
請負契約の場合、受注者は仕事を完成させる義務があることがポイントです。そのため、もし後日、成果物に欠陥が生じたときには、発注者は契約不適合責任(2020年4月の改正民法施行前は「瑕疵(かし)担保責任」でした)を受注者に追及することができることがあります。
契約不適合責任があった場合は、一定の条件を満たしていれば修補請求や契約解除などの解決策をとることができます。
つまり発注者側からの解除は、契約不適合責任を追及できる場面などで法律的にも認められる可能性があるといえます。 -
(3)(準)委任契約
準委任契約とは、受託者に法律行為以外の業務に関する行為の遂行を求め、委託者は労働期間に対して報酬を支払うことを約する契約のことをいいます。
準委任契約では、受託者には仕事を完成させる義務はありません。そのため契約不適合責任は追及できません。ただし受託者には、「善管注意義務」という義務が生じます。善管注意義務を簡単にいうと、通常期待される程度の注意を払う義務という意味になりますが、どの程度の義務が生じるかについては個々の事案ごとに異なります。
受託者が善管注意義務を怠った結果、委託者は損害賠償や契約解除をすることが認められることがあります。
2、中途解約は損害賠償請求されるリスクもある
請負契約や準委任契約において、法律上解除が認められているケースや、契約書に定めた解除条項に該当する事由が生じたケース以外で中途解約する場合、発注者側が損害賠償責任を負わなければならないことがあるので注意が必要です。
-
(1)請負契約における中途解約
請負契約では、請負人が仕事を完成していなければ、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除ができると、民法第641条で規定されています。
したがって、請負契約を中途解約することによって、仕事の成果物を受け取れないばかりか損害賠償をしなければならない可能性も生じます。そのため、中途解約するかの見極めが重要といえるでしょう。 -
(2)準委任契約における中途解約
準委任契約では、委任者と受任者の双方がいつでも契約を解除することができます(民法 第651条 第1項)。
したがって、業務委託契約の内容が準委任契約であるときには、業績不振を理由として受任者との契約を解除することに問題はありません。
ただし、その解除が「相手方に不利な時期に解除したとき」や「委任者が受任者の利益をも目的とする委任を解除したとき」に該当した場合、やむをえない事由がなければ損害賠償責任が生じる可能性があります。
中途解約する場合には、このようなリスクがあることもふまえておかなければなりません。
3、業務委託契約の解除方法
契約満了を待たず、業務委託契約を解除する際には、できる限り相手方と話し合いながら進めることがトラブルを防ぐ方法になります。業務委託契約の解除を進める方法としては、「解約通知」と「解約合意書」がポイントになります。
-
(1)解約通知を相手方に送付
解除の意志を明確に相手方に伝えるために、「業務委託契約解除通知」を作成して相手方に送付することがあります。口頭で通知をすることもできますが、書面を送付することで、後に「解除の表示をした、してない」といったトラブルを未然に防ぐことができます。
通知の送付には、日本郵便で取り扱う内容証明郵便を利用するなど、証拠が残るようにしておくとよいでしょう。
通知書には、解除の対象となる契約や契約解除の日付などのほか、解除の意思、理由などを記載します。解除の理由については、できる限り明確に記載します。相手方にとってみれば、理由なく解除されたとすれば納得できないものです。納得できないまま話し合いを進めてしまえば、トラブルが生じる可能性も高まります。
また、解約条項や法定解除理由に該当するケースでは、解除理由を明確にすることで相手方に損害賠償請求権がないことを明らかにできます。
なお、解約通知はいきなり相手方に送るのではなく、話し合いをした上で送付する方が穏便に進むケースが多いです。 -
(2)契約解除合意書を作成
契約解除について合意がとれた場合は、「契約解除合意書」を作成して双方で取り交わしておくとよいでしょう。
「契約解除合意書」があれば、後から解除について双方で意見が食い違うようなことも起こりにくくなり、トラブル防止に役立ちます。
4、弁護士に依頼するメリットとは
業務委託契約の解除に関して弁護士に依頼すると、次のようなメリットがあります。
-
(1)相手との話し合いを任せることができる
弁護士は、依頼者の代理人として相手方と話し合いを進めることができます。
会社の担当者などが解除する相手方と直接話し合っても、うまく解決できないこともあります。その点、弁護士は交渉に慣れており、客観的な立場で冷静に相手方と話し合うことができます。
弁護士に話し合い任せることができるのは、企業の担当者の負担を減らすことにもつながります。 -
(2)文書などのチェックを依頼できる
弁護士には、契約書や解約通知書、合意書などの文書のチェックを依頼することができます。したがって法律的に問題がなく、今後生じうるトラブルを防止するような文書を作成することができます。
-
(3)トラブルに法的解決も含めて対応できる
業務委託契約の解除をめぐってトラブルになってしまい、話し合いで解決できないときには、裁判所を利用した法的解決を図る必要が生じることもあります。弁護士は、そのような場合でも豊富な知識と経験に基づき、最善の対応策を講じることが可能です。
5、まとめ
本コラムでは、業務委託契約を解除する際の注意点について解説しました。
業務委託契約の解除を検討する場合は、まず契約書を確認することが大切です。そして契約書から「請負契約なのか」、「委託契約なのか」などを判断して、解約条項なども確認しておきます。その後、相手方と話し合い、「契約解除通知」や「合意書」などの書面で証拠を残しておけば、後のトラブルを予防する効果が得られる可能性が高くなります。
ただし、これらの対応には法的知識と正確な判断が求められるため、弁護士へ相談するのが得策です。
ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスでは、業務委託契約の解除など企業法務にまつわるご相談を受け付けています。会社の規模やニーズにあわせた顧問弁護士サービスも展開しておりますので、ぜひご活用ください。
企業法務の経験豊富な仙台オフィスの弁護士が、貴社のために全力でサポートします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています