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知っておきたい短時間正社員制度とは? 導入方法やメリットを解説

2020年09月03日
  • 一般企業法務
  • 短時間正社員制度
知っておきたい短時間正社員制度とは? 導入方法やメリットを解説

仙台市が令和1年に公表した「仙台市経済の概況」によると、市内に本社を置く中小企業の割合が非常に高く、平成28年(2016年)の調査では99.6%にのぼったそうです。

中小企業の場合は特に、優秀な人材を長期的に確保することが、会社の明暗を左右するといっても過言ではありません。
しかし「育児や介護で長時間働くことは難しい」、「スキルアップのためには仕事中心の生活はできない」といった労働者側の制約によって、優秀な人材を正社員として雇用できなかったり、離職を阻止できなかったりというケースも少なくないものでしょう。

このような課題の解決策のひとつとして、「短時間正社員制度」を活用する方法があります。
本コラムでは、「短時間正社員制度」について、ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスの弁護士が解説します。

1、社員の生産性も向上? 短時間正社員制度の概要

まず「短時間正社員制度」の概要を説明します。

  1. (1)短時間正社員制度とは

    通常フルタイムの正社員は、原則として法定労働時間に定められている1週間・40時間を限度に、所定労働を行います。
    「短時間正社員制度」とは、フルタイムの正社員よりも短時間の所定労働時間を設定しながらも正社員として雇用する制度です。

    「短時間正社員制度」は、育児や介護に限らず幅広い多様な事情に対応できるので、短時間勤務を希望する労働者を確保し活用できる制度といえます。

  2. (2)短時間正社員の労働条件

    正社員とは多義的な用語ですが(法律上の定義もありません)、本稿では、短時間正社員とは次のような労働条件のもとで雇用されるものと定義します。

    • 期限の定めのない労働契約を締結
    • フルタイム正社員と比較して1週間の所定労働時間が短い
    • 同種のフルタイム正社員と同一の時間賃率、賞与・退職金を適用
    • 社会保険を適用
  3. (3)短時間正社員制度で解決しうる8つの課題

    短時間正社員制度では、主に次の8つの人材活用における課題の解決が期待できます。

    【子育て期間における社員の離職防止】
    育休期間が終わっても、子どもが大きくなるまでは短時間勤務にしたいと考える社員は少なくありません。

    現在でも育児介護休業法という法律があり、3歳に満たない子どもを養育する労働者のため、1日の所定労働時間を原則6時間とする措置を講ずることを義務付けています(同法23条、同施行規則74条1項、2項、3項)。しかしながら、法が要求しているのは3歳までの間の措置ですので、そのような制約なく所定労働時間を短縮することができる短時間正社員の制度は、育児に力を入れたい人材の確保に役立ちます。

    【介護を行う社員の離職防止】
    少子高齢化が進展する現状では、介護に直面する社員も増加するものと考えられます。

    育児介護休業法は、常時介護を必要とする状態にある対象家族の介護を行う労働者に対し、3年以上の期間における所定労働時間の短縮等の措置を講じなければならないとしています。しかし、「常時介護を必要とする状態にある対象家族の介護」という制約があるため、このような制約なく所定労働時間を短縮することができれば、短時間正社員の制度は介護と仕事の両立を促進できるので、離職防止につながることが期待できます。

    【社員の自己啓発やボランティア活動などの時間の確保】
    社員のプライベートの時間を確保することで、仕事へのモチベーションを維持できる可能性があります。結果として、生産性が上がることが期待できるでしょう。また、フレキシブルな労働環境を準備することにより、多用な人材の確保につなげられる可能性もあります。

    【休職からのスムーズな職場復帰】
    心身の健康を害し休職した社員が職場復帰する際に、いきなりフルタイム勤務に戻せば心身への負担も重く再発につながりかねません。短時間正社員制度を活用することで、正社員という安定した状況で、徐々に心身を労働環境に慣らしていくことができるようになります。

    【正社員の新たな確保】
    就業意識の多様化が進む近年では、優秀な人材であってもフルタイムでは勤務したくないという考え方をもっている労働者も増えています。短時間正社員制度は、このような人材についても正社員として新たに確保することを可能にします。

    【高齢者の活用】
    改正高年齢者雇用安定法への対応のほか、専門性や生産性を有している優秀な高齢者の活用や、モチベーション向上にもつながると考えられます。

    【パートタイム労働者のモチベーション向上】
    意欲や能力の高いパートタイム労働者を短時間正社員として雇用することで、パートタイム労働者全体のモチベーション向上につなげられます。また定着率の向上も見込めるでしょう。

    【無期労働契約への転換】
    労働契約法の改正により、有期労働契約が通算5年を超えて更新されたときには、労働者からの申し込みにより無期労働契約に転換するというルールが設けられました。転換対象の社員に時間的な制約があるときなどには、短期正社員制度が有益な選択肢となります。

2、短時間正社員制度を導入するメリットとは?

短時間正社員制度は、労働者にとってはワークライフバランスの実現や、正規雇用のために処遇の改善につながるなどのメリットがあります。一方、企業側にとっても、次のようなメリットがあります。

  1. (1)意欲・能力の高い人材の確保

    短時間正社員制度を導入することにより、時間的な制約があっても意欲や能力の高い人材を確保することが可能になります。

  2. (2)生産性の向上

    短時間正社員の制度は、パートタイムの労働者などに将来的にステップアップできる期待を与えることができます。そのため労働者全体のモチベーションが向上し、会社全体の生産性の向上につながることが期待できます。

  3. (3)社員の満足度の向上による定着

    短時間正社員制度という選択肢が増え、プライベートの時間を有意義に使うことができれば、社員の満足度も向上するでしょう。この会社で働き続けたい、と感じる要素が増えれば、社員の離職防止にもつながります。

  4. (4)労働関係法令などの改正への円滑な対応が可能

    高年齢者雇用安定法や労働契約法の改正によって、企業側に求められるルールも変化しています。短時間正社員制度を導入すれば、このような改正にも円滑に対応することが可能になるでしょう。

3、短時間正社員制度の導入の流れ

短時間正社員制度を導入するためには、次のような手順で進める必要があります。

  1. (1)「どのような役割を期待するのか」を明確にする

    まず、会社側で短時間正社員にどのような役割を期待するのかを明確にする必要があります。
    具体的には、短時間正社員の「職務内容など」「適用期間」「労働時間」などの設定が必要です。

    たとえば育児や介護のための短時間正社員であれば、フルタイム正社員への復帰を念頭において設定します。一方、高齢者やパートタイム労働者に適用する短時間正社員であれば、企業の人材活用方針を踏まえた上で設定を考えるなど、柔軟な対応を検討することが必要です。

  2. (2)労働条件を検討する

    労働条件は、前述した短時間正社員制度の労働条件を満たす必要があり、基本的にはフルタイム正社員と同じ基準のもとで、人事評価や賞与を考えます。月給を例にあげると、基本給をフルタイム正社員への支給額から労働時間に比例して減額する内容とします。

    教育訓練についても、同じ職種や職位のフルタイム正社員と同等の機会を与えるよう配慮が必要です。

  3. (3)将来的なフルタイム正社員への復帰・転換を検討する

    育児や介護などのための短時間正社員であれば、通常フルタイム正社員に復帰することを前提とします。

    また短時間正社員として新たに採用した労働者やパートタイム労働者であれば、時間的な制約がなくなったときにはフルタイム正社員へ転換できるようなルールの構築を検討します。

  4. (4)制度の導入・周知

    短時間正社員制度を導入する場合は、対象者だけではなく会社全体に広く周知します。

    ●利用対象者
    制度導入の「目的」「内容」「利用の際の事務手続き」「留意点」を周知します。
    ●管理職
    上記に加えて、適正な人事評価といった、職場マネジメントにおける留意点を周知します。
    ●その他の社員
    周囲の社員には制度導入の「目的」「内容」を周知し、短時間正社員についての理解を求めることが大切です。

    なお、労働契約法 第7条で、労働契約の成立について下記のとおり規定しています。

    労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件 によるものとする


    短時間正社員制度も例外ではありません。
    また、就業規則に明文化しておくことで、トラブルを未然に防ぐことができるでしょう。

  5. (5)具体的な考え方

    たとえば、女性の多い職場で、妊娠や育児をきっかけに離職する従業員が多く、なかなか経験のある社員を育成できないと悩んでいる会社を想定します。

    この場合、短時間正社員制度を導入する目的としては、育児をしつつフルタイムの正社員として復帰してもらうこととなります。

    次に育児をするために、どれだけの期間、どれだけの時間を短縮して働いてもらうかを決定します。
    この点について、育児介護休業法は、3歳に満たない子どもを養育する労働者のため、1日の所定労働時間を原則6時間とする措置を講ずることを義務付けています(同法23条、同施行規則74条1項、2項、3項)。このような法の要求を踏まえることは当然です。

    これに加えて、3歳以上の子どもでも親の監護が必要な場合が多いですから、この要求に応えられるような制度にする必要があるでしょう。たとえば、子どもが小学校に入学するまで期間を延ばす、保育園の場合には所定労働時間を6時間、小学校の場合には所定労働時間を7時間とすることなどが考えられます。

    そして、同制度の目的はあくまでも「正社員としての復帰」ですので、正社員としての仕事が短縮した所定労働時間内にできるものであることが必要です。
    たとえば、短縮した所定労働時間を5時間と定めても、この時間では正社員としての職務経験が十分つむことができなければ、正社員としての復帰という目的は果たせなくなります。

    以上のとおり、短時間正社員制度の導入にあたっては、その目的に照らし、その職務内容の質と短縮する労働時間、期間を考える必要があります。

4、短時間正社員制度の導入における注意点

労働者にとっても、会社側にとってもメリットがある制度ですが、労働条件をしっかりと策定するのはもちろんのこと、パートタイム労働者や契約社員とのすみわけなどを明確にし、労働者が納得して働けるよう留意することが求められます。

なお、2020年4月1日には、パートタイム・有期雇用労働法が施行され、労働者派遣法も改正されています。(なお中小企業に関しては、パートタイム・有期雇用労働法は2021年4月1日に施行されます)。
これらの施行によって、同一企業内における正規雇用労働者と非正規雇用労働者(契約社員・パートタイム社員、派遣社員など)の間の不合理な待遇差が禁止されます。

したがって、短時間正社員制度の導入においても、同一労働同一賃金に反しない内容で労働条件などを設定するように注意が必要です。

5、まとめ

「短時間正社員制度」は、自社にとって貴重な人材を確保し定着させるためには、有益な制度です。導入にあたっては、柔軟な制度設計がポイントになることに加え、法改正に対応した内容であるかといったチェックが非常に重要です。また、新しい制度を導入する際は、予期せぬトラブルが生じやすいものです。

ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスでは、企業の顧問弁護士サービスを展開しています。企業法務の知見が豊富な弁護士が、制度の導入に関するアドバイスやチェックはもちろんのこと、企業が抱える法律が絡む困りごとの相談に柔軟に対応します。
まずはご相談ください。ご連絡、お待ちしています。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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