法改正で特別養子縁組制度が利用しやすく! 改正で変わった点は?
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令和2年4月から特別養子縁組制度が大きく変わったことは、ご存じでしょうか?
特別養子縁組制度は、実の親との関係を絶ち、養親と親子同様の関係を成立させる制度です。特別養子縁組は、このような強い効力をもつため、厳格な要件のもとでのみ認められてきました。しかし、厳格な要件がネックになり、特別養子縁組が利用できなかったケースも少なくなかったため、成立要件が緩和されることとなったのです。
仙台市においても、一定の要件を満たせば養子縁組里親などとして登録できる「里親制度」を設けています。養子縁組里親になることを検討している方にとって、特別養子縁組制度の改正は大きな意味を持つものでしょう。
本コラムでは、特別養子縁組制度が改正によってどのように変わったのか、ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスの弁護士が解説します。
1、特別養子縁組制度とは
まず、特別養子縁組とはどのような制度なのか、普通養子縁組との違いも含めてご説明していきます。
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(1)特別養子縁組とは
特別養子縁組は、養子となる子どもの生みの親と法的な親子関係を解消し、養親が親子関係を結ぶ制度です。生みの親である実親が、子どもを監護することが困難、または不適切であるといった事情がある場合において、一定の要件を満たした場合にのみ認められます。
特別養子縁組は家庭裁判所の審判で成立し、成立すると子どもと実親との親子関係はなくなります。そして養親との間に養親子関係が生じ、その養子縁組関係は基本的に離縁することはできないものになります。戸籍についても実親の名前は記載されず、養子の続柄は「長男(長女)」などと、実子と同様の記載になります。
原則として、夫婦そろって養親になる必要があり、年齢についても夫婦の一方が25歳以上で他方が20歳以上でなければならないとされています。 -
(2)特別養子縁組と普通養子縁組の違い
日本には、特別養子縁組のほかに、普通養子縁組の制度があります。
特別養子縁組と普通養子縁組の大きな違いは、普通養子縁組では養子と実父母との親族関係は終了しないという点です。そのため普通養子縁組をしたときには、養子の戸籍上には養親だけでなく実親の名前も記載され、続柄も「養子(養女)」と記載されます。
また普通養子縁組は、当事者の同意によって離縁することも可能です。
特別養子縁組は養親と養子が、実の子と同様の強固な親子関係を築く関係になるため、普通養子縁組よりも厳格な要件のもとで認められうる制度であることが分かります。
2、法改正で特別養子縁組はどのように変わった?
特別養子縁組では厳格な成立要件が必要であるがゆえに、「利用しにくい」といった指摘も少なくありませんでした。
そこで特別養子縁組の成立要件を緩和する改正法が成立し、令和2年4月1日に施行されました。改正のポイントは、以下の2点です。
なお、施行時点で特別養子縁組の審判が継続していたときには、改正前の民法と家事事件手続法が適用されるのでご注意ください。
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(1)養子の上限年齢引き上げ
改正前は、特別養子縁組が可能な養子の年齢は、原則として家庭裁判所への審判申立時に「6歳未満」であることが必要とされていました。ただし例外として、6歳に達する前から養親候補者が引き続き養育していた場合には、8歳未満まで対象になりうるとされていました。
養子の年齢が低年齢に限られていることによって、特別養子縁組ができる対象児童が限定的との課題が生じていました。
改正によって、養子の上限年齢は15歳未満まで可能と変更されました。また、15歳に達する前から養親候補者が引き続き養育してきた場合のほか、やむを得ない事由によって15歳までに特別養子縁組の申し立てができなかった場合には、養子の上限年齢は18歳に達するまでと変更されています。
なお養子の上限年齢が引き上げられたことによって、養子自身の意思についても重視されるように変更されています。審判のときに15歳に達している養子については養子の同意が必要とされ、15歳未満の養子についてもその意思を十分に考慮しなければならないとされています。 -
(2)縁組手続きの合理化
改正前は、養親候補者が特別養子縁組の申し立てをしなければなりませんでした。また、実親による子育てが著しく困難または不適当であることなどについて、養親候補者が裁判所に主張・立証しなければならないとされていました。
そのため、養親候補者は実親と対立するケースが生じやすいにもかかわらず、基本的に縁組のためには実親の同意を得ることが要求されるという、負担の重い状況が生じていました。
また、実親が特別養子縁組に同意しても審判確定までは撤回可能だったため、養親は「いつ同意が撤回されるか分からない」という不安を抱きながら、試験養育しなければならない状態に置かれていました。
このような問題を解消するために、特別養子縁組手続きを合理化し養親の負担を減らす内容の改正がなされました。
では次の章で、手続きの詳細を詳しくみていきましょう。
3、改正後の特別養子縁組手続きの流れ
特別養子縁組は、養親となる夫婦の住所地の家庭裁判所に「特別養子適格の確認の審判」と「特別養子縁組の成立の審判」の2つの審判を申し立てます。
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(1)特別養子適格の確認の審判(第1段階の審判)
特別養子縁組の第一段階の手続きは、「特別養子適格の確認の審判」です。
この審判では、実親による養育状況と実親の同意の有無などが判断されます。
なお、実親の同意は基本的に必要ですが、下記の事由がある場合は、不要になることもあります。- 実親が意思表示できない
- 虐待・悪意の遺棄がある場合
- その他養子となる子どもの意思を著しく害する事由があるとき
第一段階の手続きに関しては、児童相談所長が申立人または参加人として主張・立証することができます。そのため養親候補者だけでなく、児童相談所長も審判の申立人になることができます。
なお養親候補者が「特別養子適格の確認の審判」を申し立てるときには、次にご説明する「特別養子縁組の成立の審判」も同時に申し立てなければならないとされます。また、手続きにかける時間を減らすために、2つの審判を同時に行うことも可能とされています。
実親は第1段階の審判には関与しますが、第2段階の審判には関与しません。
また実親が第一段階の審理の期日に行った同意は、2週間経過後は撤回できなくなります。 -
(2)特別養子縁組の成立の審判(第2段階の審判)
第二段階の手続きは「特別養子縁組成立の審判」です。
審判の申し立て者は、養親候補者です。この審判では、6か月以上の試験養育期間を考慮して養子と養親のマッチングを判断します。試験養育がスムーズに進めば、無事に特別養子縁組が成立します。
第一段階の審判で特別養子の適格があると判断された後に、試験養育ができるようになったことにより、実親の養育状況の変化や同意の撤回によって養子縁組ができなくなるというリスクがない状態で、子どもを試験養育することができるようになりました。
4、特別養子縁組に関してお悩みのときには
改正によって利用しやすくなった特別養子縁組ですが、養子縁組を結ぶにあたり実親とトラブルが生じるなどの困難に直面することもあることでしょう。また養子縁組をすれば養子と養親間に相続権が発生するので、相続対策の必要が生じる可能性もあります。
特別養子縁組を結ぶうえで、トラブルやお悩みを抱えている場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士は、裁判所に提出する書類の作成や相続などの法律問題のアドバイスなどを行うことができます。また、実親ともめているなどトラブルになった場合は、弁護士が代理人として交渉にあたることも可能です。
一日でもはやく、安心して新しい家族の一歩を踏み出すためにも、法の専門家である弁護士のサポートを受けることが得策でしょう。
5、まとめ
今回の改正によって、養子の年齢が原則として15歳まで引き上げられることになりました。また、特別養子縁組のための裁判所の手続きについても、合理的かつ養親候補者の負担を軽減できる内容に変更されています。養親になることを希望される方にとっては、今回の改正は朗報といえるでしょう。
ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスの弁護士は、特別養子縁組を含めた親子問題や相続問題などを解決できるよう全力でサポートします。特別養子縁組に関してお悩みの際には、ぜひお気軽にご相談ください。
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