明け渡し訴訟とは? どのようなときに検討するべきなのか
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仙台市統計書(令和3年版)によると、令和2年(2020年)に仙台高等裁判所が受理した民事・行政事件は1257件でした。
アパート・マンションなどの賃借人に契約違反が見られる場合、オーナー(賃貸人)は賃貸借契約を解除できます。しかし、契約解除後も賃借人が立ち退かないようであれば、裁判所に明け渡し訴訟(明渡訴訟、明渡し訴訟)を提起することを検討することになります。
今回は賃貸物件の明け渡し訴訟について、提起すべきケース・手続きの流れ・訴訟後の強制執行の概要などを、ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスの弁護士が解説します。
1、賃貸オーナーが明け渡し訴訟を検討するべきケース
賃借人に契約違反行為が認められる場合、オーナーは賃貸借契約を解除して、建物の明け渡し訴訟を提起することができます。では、明け渡し訴訟の提起を検討すべきなのは、どういった場面なのでしょうか。具体的に解説します。
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(1)家賃を滞納している賃借人が立ち退かない場合
家賃の滞納は、賃貸人・賃借人間の信頼関係を破壊するものとして、賃貸借契約の解除事由に当たります。
裁判例の傾向をみると、おおむね3か月以上の家賃滞納が発生すると、賃貸人による契約解除を認めるケースが多いようです。
そのため、ひとつの目安として賃借人がすでに3か月以上家賃を滞納しており、今後も回収の見込みがないと思われる場合には、賃貸借契約を解除して退去を求めることを検討できるでしょう。
もし賃借人が自発的に退去しない場合には、裁判所に明け渡し訴訟を提起して解決を図ることになります。 -
(2)賃借人による迷惑行為が見られる場合
賃借人が、他に居室している入居者との間で度々トラブルを起こす、共用部分に物やごみなどを放置するなど、迷惑行為を起こしている場合、管理規約および賃貸借契約の違反に該当する可能性があります。
悪質な入居者がいると、他の入居者が出て行ってしまうなど、賃貸物件の経営に悪影響が生じるかもしれません。そのため、迷惑行為が続く場合は入居者との賃貸借契約は速やかに解除し、賃貸物件から立ち退いてもらうことが得策です。
ただし、迷惑行為をする入居者は退去を拒否することが予想されるので、裁判所に明け渡し訴訟を提起することも視野に入れた対応が求められます。 -
(3)居室が第三者へ無断転貸されている場合
マンションやアパートなどの賃借人が、居室を第三者に無断転貸することは、賃貸借契約の重大な違反行為に該当します。民法上も、賃借物の無断転貸は、賃貸人による契約解除事由とされています(民法第612条第2項)。
明け渡し訴訟の提起を検討できるケースといえますが、転貸しただけにとどまり、貸主に対する背信的行為がなければ、契約を解除することはできないとした判例があることにも注目するべきでしょう(最高裁 昭和28年9月25日)。
そのため、まずは弁護士にご相談いただき、明け渡し訴訟を提起することも視野にいれた対応が可能か検討することをおすすめします。
2、明け渡し訴訟の手続きの流れ
裁判所に、賃貸物件の明け渡し訴訟を提起する場合の大まかな流れを確認していきましょう。
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(1)裁判所への訴訟提起・訴状の送達
賃貸物件の明け渡し訴訟を提起するには、裁判所に必要事項を記載した訴状を提出する必要があります。
【記載するべき必要事項】- 当事者に関する氏名・住所などの基本情報
- 裁判所に求める判決主文の内容(請求の趣旨)
- 請求を根拠づける事実(請求原因)
たとえば、賃貸借契約の解除に基づく建物明渡請求訴訟の場合は、訴状に次のような内容を記載します。
<催告による解除の場合>- ① 賃貸借契約の締結
- ②『①』に基づく建物の引き渡し
- ③ 賃貸借契約に係る債務不履行(or解除事由)の発生
- ④ 相当期間を定めた債務の履行(or解除事由の治癒)の催告
- ⑤ 相当期間の経過
- ⑥ 賃貸借契約を解除する意思表示
<無催告解除の場合>- ① 賃貸借契約の締結
- ②『①』に基づく建物の引き渡し
- ③ 賃貸借契約に係る無催告解除事由の発生
- ④ 賃貸借契約を無催告解除する意思表示
原告が裁判所に提出した訴状は、裁判所から被告に対して特別送達されます。
併せて裁判所は、原告・被告の双方に「期日呼出状」を送付し、第1回口頭弁論期日の日程を案内します。
なお、被告側も裁判所の指定した期限までに、原告の訴状に対する反論を記載した答弁書を作成することになります。 -
(2)口頭弁論期日における主張・立証
明け渡し訴訟のメインパートともいえる「口頭弁論期日」は、裁判所の公開法廷で開催されます。
口頭弁論期日において、原告は明け渡し請求権の存在を基礎づける事実(訴状に記載した事実)について、証拠を元に立証する必要があります。
そのため、第1回口頭弁論期日が来る前に、原告は裁判所に対して十分な証拠を提出しておくことが大切です。
一方で、被告側は、原告の主張する事実が存在しないことを反証するか、または明け渡し請求権の発生を妨げる事実を立証してくるでしょう。いずれかの反証・立証が成功すれば、被告の勝訴となります。
原告が勝訴して、明け渡しを命じる判決を得るためには、被告の反論をつぶせるような主張・論理構成を検討して臨まなければなりません。 -
(3)明け渡しを命じる判決
裁判所は、口頭弁論期日における原告・被告双方の主張・立証を公平に検討して、明け渡し請求を認めるかどうかにつき判決を言い渡します。
第一審判決に対しては「控訴」が、控訴審判決に対しては「上告」がそれぞれ認められており、これらの上訴手続を経て判決が確定します。
また、控訴・上告の期間はいずれも判決書の送達を受けた日から起算して2週間です。この期間内に控訴・上告が行われない場合にも判決が確定します。
3、判決で明け渡しが命じられても、賃借人が立ち退かない場合はどうする?
確定判決は、原告・被告の双方を法的に拘束します。つまり、明け渡しを命ずる判決が確定すれば、被告(賃借人)は賃貸物件の居室から立ち退かなければなりません。
判決が確定したにもかかわらず、賃借人が立ち退きを拒否する場合には、裁判所に明け渡しの強制執行を申し立てましょう。
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(1)裁判所に強制執行を申し立てる
強制執行とは、訴訟などで確定した権利を強制的に実現するための手続きです。
明け渡し訴訟で勝訴した賃貸人は、確定判決を債務名義として、不動産の所在地を管轄する地方裁判所に強制執行を申し立てることができます(民事執行法第22条第1号)。 -
(2)明け渡しの強制執行の流れ
明け渡しの強制執行は、次のような流れで進行します。
① 強制執行の申し立て
不動産の所在地を管轄する地方裁判所に、確定判決などの必要書類を提出して強制執行を申し立てます。
② 明け渡しの催告
強制執行の申し立てが裁判所に受理されると、まずは執行官が賃借人に対して、期限を定めて「明け渡しの催告」を行います。明け渡しの期限は原則として、催告日から1か月間です(民事執行法第168条の2 第1項・第2項)。
③ 明け渡しの断行
期限が到来しても、賃借人が賃貸物件の居室から退去しない場合、執行官が主導して明け渡しを断行します。具体的には、開錠・鍵交換・荷物の搬出などを行うことになります。
これらの作業を行う業者は、強制執行の申立人(賃貸人)が手配しなければなりません。
なお、業者への依頼費用が発生した場合、その費用は後に賃借人や連帯保証人へ請求可能です(民事執行法第42条第1項)。
明け渡しの断行後、執行官からオーナー(賃貸人)に新しい鍵が交付され、強制執行の手続きは完了です。
4、建物明け渡しに関するトラブルを弁護士に相談するべき理由
マンション・アパートの居室から賃借人の退去を求める明け渡し訴訟は、専門的な対応が必要になるうえ、長期間に及ぶケースも少なくありません。
そのため、弁護士を代理人として明け渡し訴訟を提起することをおすすめします。
法律の専門家である弁護士であれば、明け渡し訴訟の対応もスムーズに行うことができます。煩雑な訴訟手続きへの対応や相手との交渉を弁護士に一任すれば、大きなストレスを感じることなく明け渡しを実現できる可能性が高くなるでしょう。
賃借人の問題行動を発見し、明け渡し訴訟の提起を検討している賃貸物件オーナーの方は、ぜひ弁護士にご相談ください。
5、まとめ
建物の賃貸借契約を解除した後、賃借人が自発的に立ち退かない場合には、裁判所に明け渡し訴訟を提起する必要があります。
ベリーベスト法律事務所では、土地・建物の明け渡しに関する地主・オーナー様からのご相談を随時受け付けております。建物明渡請求訴訟は、解決までのスピードが重要ですが、ベリーベスト法律事務所は多くの解決実績があるため、さまざまなケースに迅速、柔軟に対応することが可能です。
不動産の明け渡しを求めたい地主・オーナーの方は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。
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