トラブルが多発! サブリース契約の特徴と契約上の注意点を弁護士が解説
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仙台市は令和2年3月時点で人口109万人以上を誇る、東北地方で最大の都市です。
不動産市場も活発で、土地・建物の売買は周囲の地域と比べると非常に盛んだといえます。
不動産の相続が発生する場面では、土地活用や不動産投資など、さまざまなセールスを受けることになるでしょう。
最近、不動産投資の形態として耳にする機会が増えたのが「サブリース契約」です。
不動産投資のリスクを抑えて安定した収入が得られるほか、相続税対策にも効果があるといった触れ込みですすめられています。
たしかに、不動産投資・不動産経営の経験がない方にとっては魅力的に聞こえる部分が多いサブリース契約ですが、実はトラブルも頻発しています。
本コラムでは、ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスの弁護士が「サブリース契約」について解説しながら、サブリース契約の特徴やメリット・デメリット、契約上の注意点などを紹介していきます。
1、サブリース契約とは? 特徴や種類を解説
耳にしたことはあっても、詳細はわからないという方も多い「サブリース契約」とは、いったいどのような契約なのでしょうか?
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(1)サブリース契約とは
サブリース契約を一言でいうと「転貸借」という意味になります。
不動産の業界では「転貸し」とも呼ばれます。
通常、アパートや貸家などの賃貸物件は、不動産会社を仲介にオーナーが入居者と賃貸借契約を結びます。不動産会社はあくまでも仲介する立場で、賃貸借契約はオーナーと入居者が結ぶ形態です。
サブリース契約では、オーナーが物件を貸す相手は「サブリース業者」と呼ばれる会社です。
そして、入居者に物件を貸すのもサブリース業者です。
つまり、サブリース契約では、賃貸事業を営むサブリース業者に物件を賃貸することになります。 -
(2)サブリース契約の種類
サブリース契約には種類があります。
まず、大きくわけるとサブリース業者には2つの系統があります。- 建築工事を受注する目的でサブリース契約を提供する建設会社やハウスメーカー
- 家賃収入を得る目的でサブリース契約を提供する不動産会社
もともとサブリース契約は不動産会社が提案するケースが主でしたが、最近では土地活用を名目に建設会社・ハウスメーカー系の業者がサブリース契約をセットで提案するケースが増えています。
「現在の住宅を取り壊して、サブリース契約でマンション経営をしませんか? 」といった提案は、前者の建設会社・ハウスメーカー系に多くみられるセールストークです。
また、ひと口にサブリース契約といっても契約内容には種類があります。
●賃料固定型
オーナーに支払われる賃料を固定する契約形態です。
不動産市場の影響を受けにくく、家賃収入が安定し、収支計画が立てやすくなるというメリットがありますが、賃料の相場が上がっても家賃収入の増額は期待できません。
●実質賃料連動型
周辺の家賃相場に連動して、賃料が変動する契約形態です。
相場と連動して一定比率が支払われるため、将来的に増収が期待できます。ただし、相場が下落した場合も連動するため、減収になるリスクが伴います。
2、サブリース契約のメリットとデメリット
一般的には、低リスクで不動産経営が可能になるという認識が強いサブリース契約ですが、実際のところはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?
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(1)手軽に不動産経営をはじめられる
サブリース契約における最大のメリットは、これまでに経験がない方でも手軽に不動産経営がはじめられるという点です。
不動産経営でもっとも大きなリスクは「空室」と「滞納」です。
大切な家賃収入が得られなくなり、予定していた返済計画にも支障をきたす危険な状態だといえます。
ところが、サブリース契約では入居者の有無にかかわらず、オーナーはサブリース業者との賃貸借契約を結ぶため、空室・滞納の影響を受けません。
また、不動産経営は管理業務が多く、オーナーが自己管理するとなると多大な労力が必要となります。サブリース契約では管理業務をすべてサブリース業者に一任するため、管理業務の手間がなくなるというメリットがあります。入居者の入居・退去における契約の手間もなくなり、シンプルな不動産経営が可能になります。 -
(2)家賃収入は自己経営よりも安い
サブリース契約の最大のデメリットは「家賃収入が安くなる」という点です。
サブリース業者に転貸する契約形態ですから、中間マージンとしてサブリース業者の取り分が差し引かれるかたちになります。
また、敷金・礼金・更新料なども入居者がサブリース業者に支払うことになるため、オーナーの手にはわたりません。
もし、サブリース業者が敷金を預かったまま倒産した場合、敷金分を取り戻すのは困難となり、物件の修繕費用などはオーナーの自己負担になる可能性があります。
さらに、サブリース契約の場合、入居者の審査はサブリース業者がおこなうことがあります。
オーナーの意向にそぐわない希望者だったとしても、入居率を高めたいという事情があるサブリース業者は入居を認めることがあるのです。
入居者の制限を考えている方にとっては、サブリース契約はおすすめできないでしょう。
3、サブリース契約の代表的なトラブル事例
サブリース契約は、不動産経営が未経験でも気軽に参入できるというメリットがありますが、当初の試算どおりに経営できず、トラブルになる事例も少なくありません。
トラブルに発展する代表的な事例が「初期費用が回収できず経営困難に陥った」というケースです。
サブリース契約には、契約期間中の家賃が保証されているという魅力があります。
これこそが未経験でも不動産経営が可能とする理由ですが、ここに大きな落とし穴があることに気づかないオーナーが多いのも事実です。
空室でもサブリース契約なら一定の家賃収入が得られますが、空室時の賃料は入居時よりも安く設定されています。当初の予想を裏切って空室が続く場合、必要経費を差し引くと、すずめの涙程度しか得られないというケースも少なくありません。
また、ほとんどのサブリース契約では2年ごとに家賃の見直しがおこなわれ、2年ごとにサブリースの賃料が減額されることが多いでしょう。しかし、入居者がサブリース業者に支払う家賃は変わりません。つまり、契約の見直しを理由にオーナーの収入はどんどん減少し、サブリース業者の収入が増えていくのです。
サブリース契約には、ここで挙げたような「当初の予定とは違う」「サブリース業者の利益が優先」といった契約トラブルが多いため、しっかりと契約内容を確認するべきでしょう。
4、サブリース契約を解約する方法
サブリース契約で不動産経営をはじめてみたまでは良くても、サブリース業者から聞かされていた話と違うため、解約を考えることも予想されます。
しかし、サブリース契約におけるサブリース業者は、不動産物件の借り主の立場です。
借地借家法の保護によって貸主よりも強い立場に置かれているので、オーナーからの一方的な解約は容易ではありません。
サブリース契約を解約するには、サブリース業者に対して「立ち退き」を求めることになります。
ただし、不動産物件の貸主が借り主に対して立ち退きを要求する場合にはそれ相応の理由が必要で、単に「もうからない」「気に入らない」などの理由では容易に認められません。
これを「正当事由」といい、正当事由がない限りは貸主の思いどおりに立ち退きをさせることはできないことがあるのです。
正当事由を盾にサブリース契約の解約が認められるのは、サブリース業者に背信的行為があった場合と基本的には限られます。
背信的行為とは、貸主と借り主の信頼関係を破綻させるほどの重大な契約違反を指します。
数回の賃料不払いなどでは「信頼関係が破綻した」とまでは評価されないため、よほどの重大な契約違反が存在する場合にのみ認められると考えておきましょう。
正当事由が見当たらない場合でも、サブリース業者との交渉で解約の合意が得られれば解約は可能です。
ただし、サブリース業者が素直に解約に応じるケースは珍しいとも思えます。違約金などの名目で、解約に合意が得られるだけの多額の金銭支払いをもって和解に持ち込むことになることもあるでしょう。
5、サブリースのトラブルを回避する4つのポイント
サブリース契約に関するトラブルが続出していますが、サブリース契約を結ぶ際に注意しておきたい4つのポイントを、解説しておきましょう。
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(1)家賃保証額が周辺の家賃相場とかけ離れていないか?
家賃保証がサブリース契約の最大の魅力です。
サブリース業者が提案している家賃保証額は、一般的に周辺の家賃相場の8~9割程度が妥当だといわれており、これを下回ると収益化どころか経営そのものが困難になる可能性があります。
建設予定地の周辺の家賃相場をしっかりと調べて、相場とかけ離れた家賃保証額になっていないかをチェックしましょう。 -
(2)免責期間が長すぎないか?
サブリース契約には「免責期間」が設けられることがあります。
簡単にいえば、免責期間中は家賃保証が得られず、入居者から支払われる家賃はまるごとサブリース業者の懐に入ります。
免責期間は、新築時や入居者の退去時に発生することがありますが、この期間が3か月以上になるとローン返済などに影響がでることが予想されます。免責期間は1~2か月以内に抑えるべきなので、契約書をしっかりと確認することをおすすめします。 -
(3)原状回復や修繕の費用は誰が負担するのか?
入居者が退去した際には、室内の清掃や修繕などによる「原状回復」が必要です。原状回復をしないと、新規の入居者は期待できません。
また、マンション・アパートは10年~15年ごとに大規模修繕工事を施してメンテナンスをしないと、建物の寿命が短くなってしまいます。
原状回復や大規模修繕にかかる費用は、オーナーが全額負担するのか、サブリース業者が一部を負担してくれるのかも忘れずにチェックしておきましょう。
原状回復や修繕の際に「サブリース業者が指定する業者が施工する」といった条件が付されていると、相場よりも高い工事になるおそれがあるので要注意です。 -
(4)解約条件が著しく不利なものでないか?
サブリース契約では、解約の際はオーナー側が著しく不利な条件を負う契約になっていることがあります。
解約の予告期間が6か月を越えている、違約金が異常に高額である、入居者から預かった敷金は移譲されないなど、過度にオーナーの負担が重い契約になっていないかを確認しておきましょう。
6、まとめ
サブリース契約は、
相続した土地・建物を活用したい、不動産の相続税対策をしておきたいといったニーズが広まっているため、これまでに不動産経営の経験がない方でも手軽に参入できるという強みがあります。
ただし、試算どおりに収益化できなかった場合でも容易には解約できず、解約のためには著しく不利な条件を飲まざるを得ないというケースも珍しくありません。
サブリース契約を解約したい、サブリース契約を結ぶ予定だが不安が残る……。このようなお悩みを抱えている方は、まずは弁護士へご相談ください。弁護士は、日常生活に潜む法的なトラブルを解決に導く専門家です。
ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスへご相談いただければ、サブリース契約をはじめとした、不動産の賃貸借契約にまつわるトラブルの解決実績が豊富な弁護士が、全力でサポートします。
これからサブリース契約を検討しているという場合は、著しく不利な条件になっていないか契約条件などをチェックし、公平な条件になるようアドバイスします。
サブリース契約の解約に関するご相談、契約内容のチェックは、ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスにお任せください。ご連絡、お待ちしています。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています