民事事件とはどのような事件? 刑事事件との違いや具体例について弁護士が解説
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- 民事事件とは
司法統計によりますと、平成29年の仙台高等裁判所管内では民事事件が3万2468件、刑事事件が4398件それぞれ新規に受けられています。この数字の中には、民事、刑事事件両方で当事者になった人もいるかもしれません。
せっかく刑事事件が終わったのに、今度は民事事件の被告……。このような話は、大いにありえます。ただし、民事事件において、和解による裁判の終了、あるいは裁判前の示談によって回避することも可能です。
そこで、民事事件についての基礎知識を説明するとともに、刑事事件との根本的な違いを明らかにしておきましょう。さらに、被害者から民事事件で訴えられることを避ける方法について、ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスの弁護士が解説します。
1、民事事件とは?
民事事件の法的な定義とは、権利関係などについての主張をめぐり、裁判や調停において私人同士が争うことです。裁判所が関与する民事事件とは、以下のとおり実にさまざまな種類があります。
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(1)民事訴訟事件(通常訴訟)
通常訴訟ともいわれる民事訴訟事件とは、私人間の法律上の争いについて原告の申し立てによって提起され、裁判所が対立当事者の主張などをもとに事実を認定し、法律的判断に基づき解決を図る手続きを指します。
「私人間の法律上の争い」とは、「私人」、つまりは国家や公共的な立場は関係なく、一般的には個人(もしくは法人)同士で起こった争いを指します。民事訴訟事件の手続きは、民事訴訟法で規定されています。
裁判における民事訴訟事件の特徴は、裁判所による紛争処理手続きであるという点にあります。このため、原告・被告ともに当事者としての権利は十分保障され、裁判所は民法や商法などの実体法を適用し、慎重に審理を行うことになるでしょう。 -
(2)民事訴訟事件(略式訴訟)
略式訴訟とは、民事訴訟事件の一種です。事件の性質上、訴訟に必要な適性・公平要求を満たしながら合理的で迅速な事件処理を目指すものです。略式訴訟には、主に手形小切手訴訟、督促事件などがあります。
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(3)強制執行事件
強制執行とは、確定判決やそれと同一の法的効力を有するものがあるにもかかわらず債務者が義務を履行しない場合に行われる手続きです。債権者の申し立てに基づき裁判所などの国家機関が関与して強制的に債権者の権利を満たします。
たとえば、裁判の結果1000万円支払えという和解の成立や確定判決が出ているのに債務者がその支払いを履行しない場合、債権者は執行機関に強制執行を申し立て、執行機関は債務者の財産を差し押さえたうえでこれを金銭に換価し、債権者に配当することになります。
強制執行事件の手続きは、民事執行法に規定されています。なお、抵当権など担保権実行の手続きについても、強制執行手続とともに民事執行手続のひとつとして民事執行法第181条から第195条に規定されています。 -
(4)調停事件
民事調停法に規定される調停は日本特有の制度といわれており、商事事件や労働事件から相続や離婚などの家事事件に至るまで、幅広く活用されています。調停の特徴は、判決ではなく、裁判官または調停委員とよばれる人の仲介を通して、あくまで当事者間の話し合いにより相互に譲歩し合意することによって当事者間の争いを解決する点にあります。調停が成立すれば調停事項が調書に記載され、裁判上の和解と同一の効力を有することになります。
なお、離婚事件など一部の事件については、裁判の前に必ず調停を経なければならない「調停前置主義」が採用されています。 -
(5)特定調停事件
特定調停事件の申立ができる者は、金銭債務を負う方のうち、以下の状態にある「特定債務者」です。
- 支払い不能に陥るおそれがある
- 事業の継続に支障をきたさずに債務を弁済することが困難
- 債務超過に陥る可能性のある法人
特定調停は、このように経済的に破綻するおそれがある債務者の経済的再生を進めるために、債権者との利害関係の調整を図ることを目的としています。
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(6)破産事件
破産手続の目的は、破産法の規定に基づき債務者の財産がすべての債権者の権利を完全に満足させることができない場合に、債務者の財産を債権者間で平等に分配することにあります。債権者、債務者などにより破産が申し立てられ裁判所に適当と認められると、裁判所は破産宣告を出し、債務者が破産手続の費用すら工面できない場合などを除いて、破産管財人を選任します。破産管財人は、裁判所の監督のもと、破産者の資産を清算し、金銭に換えて債権者に分配することになります。
それでも債務が残った場合は、破産者の責任を免除するという「免責制度」があります。地方裁判所は、破産者の申し立てによって適当と認める場合は、「免責許可決定」を出します。 -
(7)民事再生事件
民事再生手続きの目的は、経済的に困っている債務者と債権者の間の民事上の権利関係を適切に調整し、債務者の経済生活や事業の再生を図ることです。民事再生事件は民事再生法に規定されています。この法律は個人または法人を問わず、再建型倒産処理手続きを目指す特別法といえます。
2、民事訴訟事件の終了事由とは?
民事訴訟事件でもっとも典型的な終了事由は、裁判所による判決などです。裁判所は、判決に向けて、証拠調べなどを行い原告の請求が「認められる」もしくは「認められない」との心証を得るまでにくると、最終的に判決を下します。
このとき、当事者の一方または双方が判決に不満であれば、第一審が簡易裁判所であれば地方裁判所に、第一審が地方裁判所であれば高等裁判所に控訴することができます。さらに、控訴審が地方裁判所であれば高等裁判所、控訴審が高等裁判所であれば最高裁判所に上告が可能であり、第三審の高等裁判所の判決に対しては、憲法問題がある場合には、例外的に最高裁判所に上訴することができます。
ただし、手形小切手訴訟や少額訴訟については、判決に対して控訴することが認められません。判決に不服の場合は異議の申し立てを行い、通常の訴訟に移行することで争うことになります。また、督促事件についても債務者が督促に異議がある場合は督促異議を申し立て、地方裁判所または簡易裁判所の訴訟手続きに移行します。
民事事件は、裁判所が出す判決だけで終わるわけではありません。原告・被告の当事者双方が対立しているお互いの主張を譲歩し合意することができれば、裁判所からの判決が出される前であっても「和解」という形で終了することがあります。和解は、裁判所が原告・被告に働きかけることも多く、実際に数多くの民事訴訟事件が和解により終結しています。
このほか、民事事件は、原告からの訴えの取り下げなどによっても終了します。
3、民事事件と刑事事件の違いとは?
以下のように、民事事件と刑事事件は、それぞれ内容が大きく異なります。
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(1)目的と内容
●民事事件……私人間の争いを解決すること
●刑事事件……国家が罪を犯した私人の処罰を決めること -
(2)当事者(呼び方)
●民事事件……訴える方(原告)・訴えられる方(被告)はともに私人
●刑事事件……訴える方は検察官、訴えられる方は被告人 -
(3)裁判の提起
●民事事件……基本的には誰でも可能
●刑事事件……検察官だけしかできない -
(4)和解による解決
●民事事件……ある
●刑事事件……被害者との示談による解決はあるが、検察官との和解はない -
(5)判決が出ると?
●民事事件……請求棄却でなければ、強制力のある民事執行手続きが可能になることがほとんど
●刑事事件……有罪判決であれば刑罰が科される
4、刑事事件が終わったのに、民事事件になることはある?
民事事件と刑事事件は事件としてまったく別の性質を有しています。したがって、民事事件と刑事事件の両方で訴えられるケースは十分にありえます。
たとえば、相手に暴力をふるいケガを負わせると、事件の重大性によっては暴行罪や傷害罪という刑事事件として立件され、刑事裁判にかけられることも考えられます。裁判の結果有罪となり、その刑を終えたとしても今度は被害者から損害賠償の支払いを求める裁判を提起されることもあるのです。これは不起訴処分になった場合でも同様です。
民法第724条では、不法行為に対する損害賠償の請求を3年と定めています。この期間内であれば、基本的には、刑事裁判の被告人になることと同時あるいは前後して民事裁判の被告になることも当然ありえるのです。
5、弁護士に相談したほうがよい理由とは?
もし、刑事事件が終わったのに今度は被害者から民事事件で訴えられそうになった場合は、できるだけ早いうちに弁護士に相談することをおすすめします。
被害者の感情次第では、加害者であるあなた自身が交渉をすることは難しいと考えられます。その点、交渉成立に経験と実績を持つ弁護士に依頼すれば、弁護士が被害者の心情を踏まえた示談交渉を行うことで、あなたは民事事件の被告にならなくてもすむことが期待できます。
また、仮に民事事件の被告となってしまった場合でも、弁護士はあなたの代理人として和解条件など少しでもあなたにとってよい結果を目指した弁護活動を行います。
6、まとめ
あなたが民事事件における被告、刑事事件の被告人になりうるような、裁判になる前に、できるかぎり相手方と示談等を成立させておきたい場合はもちろん、裁判になってしまった場合、弁護士はあなたの心強いパートナーとなります。
もし被害者から訴えられそうになった場合などは、お早めにベリーベスト法律事務所 仙台オフィスまでご相談ください。あなたのために、ベストを尽くします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています