損害賠償請求が認められるのはどんなケース? 弁護士に依頼するメリットとは
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平成31年4月、インターネット掲示板に個人情報が書き込まれ精神的苦痛を受けたとして、宮城県の20代女性が損害賠償を求めた訴訟で、仙台地裁は投稿した東京都の男性に約230万円の賠償命令を出しました。
同じように、何らかの被害を受け損害賠償請求をしたいとお考えの方もいることでしょう。ケースによっては、弁護士への相談を検討していらっしゃるかもしれません。しかし実際に依頼となると費用が発生します。その前に、まずはご自身の状況において損害賠償請求が認める可能性があるのか、確認しておきたいものです。
今回は、損害賠償請求の概要と損害賠償請求が認められる可能性について、仙台オフィスの弁護士が具体例を交えながら解説します。
1、損害賠償請求とは
損害賠償請求は、不法行為や債務不履行によって被った損害について「金銭」で賠償を求めることをいいます。
不法行為とは、人の権利や利益を違法に侵害する行為です。たとえば痴漢、暴行、窃盗、詐欺、不貞行為、婚約破棄など、日常生活の中でもさまざまな場面で問題になります。
また債務不履行とは、契約によって発生した義務を守らないことです。たとえば、お金を借りたのに返済期日までに返さなかったり、約束した商品の納入日に商品が間に合わなかったりということなどが挙げられます。
2、損害賠償と慰謝料の違い
「損害賠償=慰謝料」と認識されがちです。しかし慰謝料は損害賠償の項目の一部であり、損害賠償の全てではないということを理解しておきましょう。
慰謝料とは、精神的苦痛を金銭で表したもので、後遺症を負った苦痛や家族を失った苦痛などが様々なものが該当します。
よく芸能ニュースで「不倫の慰謝料1億円請求」などと報道されることもあり、慰謝料は青天井だと思われがちです。しかし、実際には苦痛の程度や行為の様態、当事者の社会的地位や経済状況など、さまざまな要素を考慮して判断されます。
芸能人の場合は知名度や経済力があるため、高額の慰謝料請求が認められるケースもありますが、一般的には過去の裁判例を元にしたおおよその相場で落ち着くことが多いです。
3、損害賠償請求できるのはどんなとき?
そもそも損害賠償請求とはどんなときに請求できるのかご存じでしょうか。その対象と具体的なケースを解説しましょう。
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(1)損害賠償請求となる主として3つの項目
損害賠償請求の対象となるものは、主として大きく3つに分けることができます。
●現実に発生した損害
治療費、通院時の交通費、介護費用、壊れた物の修理費などです。これらを「積極損害」といいます。
●将来得られたはずの収入
死亡、怪我、後遺症などで働けなくなったとき、本来であれば働いて得られたであろう賃金や報酬などが該当します。これらを「消極損害」といいます。
●不法行為を受けたことによる精神的苦痛
前述した慰謝料に当たります。 -
(2)損害賠償請求が認められる具体的なケース
たとえば次のような場面です。
- 客の喧嘩が原因で、店の物を壊された
- 居住者による煙草の不始末が原因で、保有物件が火事になった
- 悪ふざけで突き飛ばされ、怪我を負わされた
- 配偶者の不貞行為によって、精神的苦痛を与えられた
4、損害賠償請求が認められないのはどんなとき?
損害賠償請求はどのようなケースでもできるわけではありません。損害賠償請求ができないケースについて、具体例を交え解説しましょう。
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(1)損害がない
実際に損害が発生していなければ、損害賠償請求は認められません。
たとえば商品の納入が間に合わなかったという場合、取引先から怒られることはあっても、営業や利益などに影響がなければ、実際生じた損害がないと判断される可能性があります。 -
(2)相当因果関係がない
損害と債務不履行や不法行為の因果関係がなければ、損害賠償の対象にはなりません。
たとえば嫌っていた上司が病気で亡くなった場合、日ごろから「早く死んでほしい」などと思っていても、亡くなった原因は病気ですから因果関係はありません。そのため、損害賠償請求は認められません。 -
(3)故意または過失などがない
損害は故意や過失などによって生じている必要があります。
たとえば台風や地震などで受けた損害は人の故意や過失などによるものではありませんので、通常は損害賠償請求が認められません。
ただし、元々安全性を欠いていた建物や塀などが自然災害によって崩れ、怪我を負ったような場合には、建物や塀の管理者に対する損害賠償請求が認められることあります。 -
(4)違法性がない
行為に違法性がないとして、損害賠償請求が認められないときがあります。
たとえば、ナイフを持って襲いかかってきた相手に対し、自らの身を守ろうと抵抗した結果怪我をさせたような場合です。この場合は刑法上、民法上ともに正当防衛が認められる可能性があり、相手から損害賠償請求が認められないケースが想定されます。 -
(5)損害賠償請求が認められない可能性がある具体的なケース
損害賠償請求が認められない可能性があるケースには、具体的には次のようなものがあります。
- スポーツの試合中の怪我
- 大雨による商品配達の遅延
- もらい火による家屋の焼失
とはいえ、上記のケースが必ずしも損害賠償請求が認められないわけではありません。
たとえば、スポーツ中の怪我や死亡に関しては、ルールの遵守が大前提です。通常予測できないような危険行為をしたり、競技で使う道具を違法に改造していたりといった場合は、損害賠償請求が認められる可能性が高いといえるでしょう。
損害賠償請求が認められるか否かは個々の案件によって変わってきますので、一律にこうとは言い切れない部分があります。自分の場合は認められるのかを知りたい場合、損害賠償請求に詳しい弁護士などに相談するとよいでしょう。
5、損害賠償請求を弁護士に依頼する4つのメリット
これらの条件をふまえたうえで損害賠償請求をしたいとお考えであれば、早い段階で弁護士に依頼することをおすすめします。なぜなら、弁護士を頼ると次のようなメリットがあるからです。
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(1)賠償金の増額に期待できる
法律に精通した弁護士を通じて示談交渉することで、賠償金の増額が期待できます。特に交通事故などで保険会社を通し示談交渉をする場合、保険会社はできるだけ低い額で決着したいため、提示額が裁判基準より少ないことが多々あります。しかし、個人の力で賠償金を請求するのは簡単ではありません。適切な額の賠償を受けるためには、相場を知り交渉に慣れた弁護士へ依頼するのが良いでしょう。
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(2)交渉や手続きがスムーズ
損害賠償請求には時効がある点も考慮しなければなりません。しかし自ら示談交渉や裁判を起こすには、膨大な時間や労力を要します。相手方が素直に応じてくれればよいのですが、金額でもめることや相手が示談交渉のテーブルにすらつかないこともあります。
また、多数の資料を元におこなう損害の算定は複雑で、一般の方では難しいでしょう。それらを弁護士に任せれば、訴訟手続きもスムーズに行うことができ、時間や費用を効率よく使うことができるでしょう。 -
(3)精神的苦痛が軽減される
被害者が加害者とやり取りすると、どうしても事件や事故のことを思い出してしまいます。加害者側は賠償金の額を下げるため、被害者の落ち度を主張するなど交渉が難航することがありますので、精神的苦痛を感じることもあるでしょう。
それらの交渉を第三者である弁護士に一任することで、精神的ストレスを軽減できるのは大きなメリットでしょう。
6、まとめ
今回は損害賠償請求の概要や、請求が認められやすいケース、認められずらいケースを中心に解説しました。損害賠償請求を個人の力だけでおこなうのは、労力や精神的な負担を考えてもおすすめしません。可能な限り弁護士を頼る方がよいでしょう。そもそも損害賠償請求ができるか分からないという方にも、ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスの弁護士が法的観点からアドバイスします。初回相談料は無料ですので、損害賠償請求をお考えであればお気軽にお問い合わせください。
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