結婚20年以上の夫婦が離婚! 妻が知っておくべき財産分与や年金分割
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「結婚して20年以上連れ添ってきたが、離婚して新たな生活をスタートさせたい」
そう思っても、離婚後の生活に不安を感じ、行動に移せない方も少なくないものでしょう。
仙台市の統計によると、平成30年には市内で1697組の夫婦が離婚したとされています。そのうち、夫婦ともに40歳以上で離婚した件数は696組で、全体の約40%を占めます。長年連れ添った夫婦の離婚が多いことが推測できる結果といえます。
長期間におよんだ結婚生活を解消するときには、財産分与や年金分割などで得られるお金の見通しを立てておくことが重要です。
本コラムでは、婚姻期間20年以上の夫婦が離婚した場合の、財産分与や年金などについて、ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスの弁護士が解説します。
1、結婚20年以上の夫婦が離婚するときに知っておきたいこと
結婚20年以上の夫婦が離婚する場合は、次のようなポイントを押さえておくと良いでしょう。
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(1)財産分与が高額になる可能性がある
結婚20年以上の夫婦は、多くの場合、婚姻期間の短い夫婦よりも資産を持っています。
「子どものために」、「老後のために」と貯蓄をしてきたほか、資産として家を持っているケースも少なくないでしょう。
こういった事情から、財産分与の金額が高額になる可能性があります。早く離婚したいからといって、一時的な感情で「財産はいらない」などと権利を放棄すると、後悔が残ることになるので注意が必要です。 -
(2)退職金も財産分与の対象になりうる
見落としがちな財産分与の対象として、退職金があります。
すでに夫が退職金を受け取っている場合に、当該退職金が財産分与の対象となることは争いがありません。しかしながら、夫が在職中である場合は、退職金が退職時に給付される金銭等であるため、いまだこれが支給されていない段階で財産分与の対象となるかが問題となります。
たとえば、勤続年数が数年で、退職金支給基準も満たしていない場合は、将来退職金を受け取る可能性が低いので、財産分与の対象とならない可能性が高いでしょう。他方で、勤続30年以上で、あと数年で退職金を受け取ることができる場合には、財産分与の対象となる可能性が高いといえます。
次に、退職金をどのように分与するのかという点ですが、さまざまな考え方があります。
たとえば、離婚時に任意に退職すれば支給される退職金額を計算できる場合には、この額を財産分与の対象とすることが考えられるでしょう。そして、財産分与の対象となるのは、婚姻期間中に「当事者双方がその協力によって得た財産」(民法第768条3項)ですから、退職金も、婚姻期間に応じて分与されることになります。
たとえば、婚姻期間10年の夫婦で、夫が勤続20年で、離婚時に800万円の退職金を受け取ることができる事例を考えます。この事例で、退職金を分与額は、次のように算出できます。
800万円×(10年/20年)÷2=200万円 -
(3)年金分割を請求できる
熟年離婚の場合、どのぐらい年金がもらえるかは切実な問題となります。
現在は、離婚時に年金の分割を請求できる制度があります。年金分割を請求するかしないかによって、受け取れる年金の額が大きく変わる可能性があります。また請求できる期間に期限があるので、注意が必要です。 -
(4)離婚後マイホームをどうするか決めておく
結婚生活が長くなれば、家を持ち、月々住宅ローンの返済をしているケースもあるでしょう。財産分与は、プラスの財産だけでなく住宅ローンなどのマイナスの財産も考慮して行われます。
住宅ローンが残っている場合は、家を売却するのか、そのまま一方が住み続けるのかなど、メリット・デメリットを考慮し、見通しを立てた上で判断した方が良いことを知っておきましょう。 -
(5)税金に注意する
離婚に際して受け取る「婚姻費用」「財産分与」「慰謝料」などには、原則として贈与税や所得税がかからないとされます。これは、もともとあった夫婦の財産を分けるだけで、新たに財産を取得するわけではないと考えるためです。
しかし、財産分与という名目であっても、不相当に多額の財産であるとった場合は、課税される可能性があるため注意が必要です。
2、結婚20年以上|専業主婦(主夫)の財産分与はどうなる?
結婚してから、専業主婦(主夫)として家庭を支えてきた方にとっては、離婚後、就職し満足できる収入をすぐに得ることは難しいものです。
そのため「財産分与をどの程度受けられるか」は、特に重要な問題です。
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(1)財産分与とは
財産分与とは、結婚している間に夫婦で築いてきた財産を清算し、それぞれに分けることをいいます。
財産分与の対象になる財産は、婚姻中にためたお金や購入したマイホーム、有価証券などです。財産の名義が夫婦のどちらになっているかは問題になりません。実質的に夫婦の財産といえれば、財産分与の対象になります。
なお、住宅ローンや借金などのマイナスの財産も、基本的には対象になります。 -
(2)割合は原則2分の1ずつ
財産を分けるときには、「対象財産をどのような割合で分けるか」が問題になります。
専業主婦(主夫)の方は、実質的な収入は配偶者が仕事で得ているので、ご自身の割合が低いと思われていることも少なくありません。
しかし、現在の財産分与の割合は、原則として2分の1ずつと定められています。これは、専業主婦(主夫)であっても変わりません。
ただし例外的に、「夫婦の一方の努力や能力で高額な資産が形成されていた場合」などには、2分の1の割合で分配されないこともあります。こういったケースでは、財産を築くことにどのぐらい貢献したかが基準になります。
3、熟年離婚では年金分割が特に大切
結婚20年以上であれば、「老後の生活を支える年金がどの程度もらえるか」も気になることでしょう。
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(1)年金の仕組み
年金には、20歳~60歳までの全国民が加入対象となる「国民年金(基礎年金)」があります。配偶者の扶養に入っている専業主婦(主夫)の方も、原則として第3号被保険者として同年金に加入しています。基本的に国民年金(基礎年金)は、どの方も支払いを受けることができます。
ただし国民年金によって受給できる金額は、多くの方にとって十分とはいいがたいものでしょう。しかし配偶者が「厚生年金」に加入している場合には、「年金分割」を請求することで、より多くの年金を受給する権利を得られる可能性があります。 -
(2)年金分割とは
年金分割の対象になる「厚生年金」には、民間企業で働く方や公務員、教職員として働く方が加入しています。基礎年金に加えて、報酬比例部分を上乗せして支払うことにより、将来加入者に手厚い保証をする仕組みです。
厚生年金の納付実績を夫婦が共同で収めたものとして、結婚していた期間など一定の条件に応じて夫婦で分け合うことにできるのが「年金分割」の制度です。
たとえば、会社員の夫と専業主婦の妻が離婚するケースで考えていきます。
このようなケースでは、国民年金(=基礎年金)に関しては夫婦それぞれ加入しており、その部分からの年金はお互いに受給できます。しかし、厚生年金については、妻は加入していません。そのため何もしなければ、被保険者になっていた夫のみが厚生年金を受給できることになります。
しかし、そもそも年金保険料は、婚姻期間中に夫婦が協力して支払ってきたものといえます。そのため離婚する際(または離婚した後に)「年金分割」を請求することによって、妻も、厚生年金を受け取れる仕組みが作られました。
なお年金分割は、離婚した日の翌日から起算して2年以内に請求しなければなりません。2年を経過すると、年金分割を請求できなくなるので注意が必要です。
4、結婚20年以上の夫婦の離婚は弁護士に相談を
結婚20年以上の夫婦が離婚する場合には、弁護士に相談することを検討すると良いでしょう。
婚姻期間が長くなれば、財産分与の金額が多くなることも予想されるほか、不動産などの評価額をどうするかといった問題が生じる可能性も考えられます。年金分割なども含め、離婚に際しては、決めておくべき事項が多岐にわたります。
そして、長年連れ添ってきたからこそいえないこと、要求しにくいこともあるかもしれません。
弁護士に相談することで、何を決めるべきなのか、どのような請求ができるのか、離婚をどのように勧めていけば良いのか、といった事柄に関して法的な助言を受けることができます。また、代理人として配偶者と交渉することも可能なので、要求や言い分も伝えやすくなり、精神的な負担を大幅に軽減できるでしょう。
離婚問題は、ひとりで抱えてしまうケースが少なくありません。結果として、離婚成立まで時間がかかってしまった、納得いく結果にならなかった、などのシコリを残すことになりかねません。新しい生活をすっきりとスタートさせるためにも、早い段階から弁護士のサポートを受けることをおすすめします。
5、まとめ
本コラムでは、婚姻期間20年以上の夫婦が離婚した場合の、財産分与や年金分割などについて解説しました。
結婚している期間が長ければ、それだけ夫婦の財産も増えますが、離婚にあたっては今後の生活を支える重要な資産になります。離婚することを優先にするあまり妥協してしまい、後々後悔する方も少なくありません。ぜひ、納得がいくまでしっかり話し合うようにしてください。
ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスは、離婚問題に積極的に取り組んでいます。仙台オフィスの弁護士が、しっかりと状況をヒアリングした上で、財産分与をはじめとする離婚問題を解決できるよう全力でサポートします。
ひとりで悩まず、ぜひご連絡ください。
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