離婚時の金銭問題! トラブルにならないためにも知っておきたいこと

2023年08月10日
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離婚時の金銭問題! トラブルにならないためにも知っておきたいこと

仙台市役所が公表する「保険統計年報 令和4年版」によると、令和3年の仙台市内での離婚件数は、1505件でした。年齢でみると、男性・女性ともに30代での離婚がもっとも多くなっています。

離婚時には、慰謝料、財産分与、養育費、婚姻費用、年金分割などお金に関する取り決めが必要です。特に、共働きで生活に余裕がある夫婦は、離婚時の財産給付も高額になる傾向にあるため、きちんと話し合いをしなければ、金銭問題をめぐってトラブルになる可能性もあります。

本コラムでは、離婚時にトラブルになりやすい金銭問題とその対処法について、ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスの弁護士が解説します。

1、離婚時に問題になりやすい金銭問題

離婚時には、離婚をするかどうか以外にも、以下のような項目を取り決める必要があります。

  • 慰謝料
  • 財産分与
  • 養育費
  • 婚姻費用
  • 年金分割


このような金銭問題は、離婚後の生活を左右する可能性があるほど重要な問題であるため、焦らずにじっくりと話し合って取り決めをすることが大切です。特に、共働きで生活に余裕のある夫婦や熟年夫婦が離婚するケースでは、夫婦それぞれの財産も多くなることから、離婚時の財産給付が高額になる傾向があります。

後悔なく離婚するためにも、それぞれの離婚条件を取り決める際のポイントや注意点などを確認しながら話し合いを進めていくようにしましょう。

2、慰謝料を請求できる(される)ケース

離婚慰謝料は、どのような場合に請求することができるのでしょうか。基礎知識とともに、解説します。

  1. (1)離婚慰謝料とは

    離婚慰謝料とは、離婚によって生じる精神的苦痛を慰める目的で支払われるお金のことをいいます。離婚によって精神的苦痛を被った方は、離婚に至る原因を作りだした配偶者(有責配偶者)に対して、慰謝料を請求することが可能です。

    「離婚すれば慰謝料をもらえる」「女性だから慰謝料を受け取れる」などと考えている方が多いですが、離婚慰謝料は離婚のとき、当然のように発生するものではなく、女性だから慰謝料を支払ってもらえるというわけでもありません。あくまでも、配偶者に有責な事情がある場合に限って認められるお金です。

  2. (2)離婚慰謝料が発生する具体的なケース

    離婚慰謝料は、離婚に至る原因を作りだした配偶者に対して請求することができます。具体的なケースを4つ見ていきましょう。

    ① 不貞行為
    不貞行為とは、配偶者以外の異性との間で性的関係を持つことです。いわゆる、不倫と呼ばれる関係が不貞行為にあたります。

    不貞行為をした配偶者は有責配偶者となり、有責配偶者には慰謝料を請求することが可能です。ただし、慰謝料を請求するためには、配偶者が不倫をした(配偶者以外と肉体関係を持った)という証拠が必要になります。

    <不貞行為の証拠になるものの例>
    • 配偶者と不倫相手がラブホテルに出入りする写真や動画
    • 配偶者と不倫相手が性交渉をしているところを撮影した写真や動画
    • 肉体関係があったと推測できるメッセージのやり取り
    • 探偵事務所の調査報告書


    ② DV
    配偶者から殴る、蹴る、物を投げつけられるといった身体的な暴力を受けた場合、DVをした配偶者は有責配偶者となりますので、慰謝料を請求することができます。
    DVによる慰謝料請求の際にも、その事実があったという証拠が必要です。

    <DVの証拠になるものの例>
    • DVを受けている状況を撮影した写真や動画
    • DVによる怪我の診断書
    • DVの被害を受けていたことをまとめた日記


    ③ モラハラ
    モラハラとは、言葉や態度による精神的な嫌がらせ行為のことです。モラハラは、DVのように直接暴力を受けているわけではありせんので、被害を証明するのが難しいという問題があります。

    モラハラを理由に慰謝料を請求する場合には、モラハラの状況を録画や録音するなどして、証拠を集めるようにしましょう。

    ④ 悪意の遺棄
    悪意の遺棄とは、夫婦の基本的な義務である同居・協力・扶助義務を正当な理由なく放棄することをいいます。

    <悪意の遺棄に該当することの例>
    • 配偶者に生活費を渡さない
    • 同居している配偶者を家から追い出す
    • 不倫相手と一緒に生活して自宅に戻らない

3、夫婦の共同財産を分ける「財産分与」

財産分与とは、どのような制度なのでしょうか。財産分与の基本について説明します。

  1. (1)財産分与とは

    財産分与(清算的財産分与)とは、婚姻期間中に築いた夫婦の財産を離婚時に清算する制度のことをいいます。

    財産分与には、清算的財産分与以外にも扶養的財産分与と慰謝料的財産分与がありますが、財産分与の中心になるのは清算的財産分与ですので、こちらを押さえておけば問題ないでしょう。

    財産分与の対象になるものは、夫婦の協力関係によって維持・形成した財産(共有財産)となります。夫婦の協力関係とは無関係な、婚姻前の預貯金や相続した財産などについては、特有財産にあたり、財産分与の対象外です。

    財産分与は、夫婦の財産形成、維持に対する貢献度に応じて財産を分けることになりますが、基本的には貢献度は等しいものと考えられています。そのため、財産分与の割合は、2分の1が原則です。

  2. (2)財産分与をする場合の注意点

    以下のようなケースで財産分与をする場合には、注意が必要です。

    ① 住宅ローンがあるマイホームを保有している
    婚姻期間中に購入した自宅を所有している場合には、名義を問わず、基本的には財産分与の対象財産に含まれます。また、自宅を購入する際に住宅ローンを組んでいた場合には、住宅ローンの残額も財産分与で考慮しなければなりません。

    その際には、自宅の評価額と住宅ローンの残額との関係に注意が必要です。
    自宅の評価額が住宅ローンの残額を上回る場合(アンダーローン)には、財産分与の対象になりますが、自宅の評価額が住宅ローンの残額を下回る場合(オーバーローン)には、財産分与の対象外となります。

    また、住宅ローンを借りる際に、どちらかが保証人や連帯保証人になっていた場合には、その処理も考えていかなければなりません。

    ② 離婚後に財産分与をする
    財産分与は、離婚後であっても行うことができます。しかし、財産分与には、離婚から2年という除斥期間がありますので、離婚後に財産分与をする場合には、除斥期間内に行わなければなりません。

    除斥期間が経過してしまうと、財産分与を請求する権利が失われてしまうため、注意が必要です。

    ③ 財産隠しの疑いがある
    財産分与をするときは、まずはお互いの名義財産を開示しあって、財産分与の対象となる財産をリストアップしていきます。相手がすべての財産を開示せずに、財産を隠している疑いがある場合には、そのまま財産分与を進めるのではなく、しっかりと財産調査を行う必要があります。

    財産調査を行うには、弁護士会照会や裁判所の調査嘱託という方法がありますので、財産隠しの疑いがある場合には、弁護士に依頼して適切な調査を進めていきましょう。

4、家族形態、状況に応じて決めておきたいお金のこと

慰謝料、財産分与以外にも、家族形態や状況に応じて、以下のようなお金の取り決めが必要になります。

  1. (1)養育費

    養育費とは、子どもが経済的・社会的に自立するまでに必要となる生活費や教育費などの費用のことをいいます。

    夫婦に子どもがいる場合には、親権者をどちらにするのかだけでなく養育費の金額や支払い方法、支払期間などを取り決めることが必要です。

    養育費の金額が決まらない場合、裁判所が公表している養育費算定表を利用すれば、スムーズに話し合いを進めることができる可能性があります。

  2. (2)婚姻費用

    婚姻費用とは、夫婦が婚姻生活を維持していくために必要になる費用のことです。

    通常は、夫婦が別居した場合に、収入の多い方から少ない方に対して婚姻費用が支払われることになります。共働き夫婦であったとしても、収入に差があったり、子どもがいたりするケースでは、婚姻費用の取り決めが必要です。

    婚姻費用の金額が決まらない場合には、養育費と同様に、裁判所が公表している婚姻費用算定表を利用するとよいでしょう。

  3. (3)年金分割

    年金分割とは、離婚時に夫婦の婚姻期間中の厚生年金の保険料納付記録を分割する制度です。年金分割をすることで、厚生年金の計算の元になる報酬額の記録が分割されるため、将来もらえる年金を増やすことができる可能性があります。

    年金分割は、離婚をした日から2年という期限がありますので、年金分割をする場合には、期限内に手続きをするようにしましょう。

5、まとめ

離婚時の金銭問題は、夫婦でしっかりと話し合っておきたい項目ですが、お金が絡んでくるため、もめやすい内容でもあり、注意が必要です。

夫婦の話し合いで解決することが難しいときは、弁護士のサポートを受けることによって、スムーズかつ納得いく条件で離婚できる可能性が高くなります。

離婚時の金銭問題でお困りの方は、ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスまでお気軽にご相談ください。離婚問題の経験豊富な弁護士が、親身になってサポートいたします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています