離婚時に慰謝料や財産分与として家をもらえる? 注意するべき点

2022年08月16日
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離婚時に慰謝料や財産分与として家をもらえる? 注意するべき点

仙台市が公表している『仙台市統計書(令和3年版)』によると、令和2年に仙台市内で離婚を選択した夫婦は、男女共に30代から40代に集中していることがわかります。

30代~40代は、子育てや住宅ローンのことなどを考え、マイホーム購入を検討する夫婦が多い年代でもあります。しかし、夢だったマイホームが、離婚にあたってはトラブルの種になることもあるので注意が必要です。

今回は、離婚時に家をもらうことはできるのか、また家をもらう場合の注意点について、ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスの弁護士が解説します。

1、離婚時に家をもらうことはできる?

離婚をする場合、マイホームは財産分与の対象になるので、どちらか一方が家をもらうということも可能です。

家をもらう方法としては、財産分与や慰謝料、養育費としてもらう方法が考えられますが、個別具体的な状況に応じてどのような方法が最適であるかを考えていく必要があるでしょう。
また、マイホームを購入する際には住宅ローンを利用するのが一般的ですが、住宅ローンの取り扱いにも注意が必要です。そのほかにも、家の名義の問題や税金の問題などもあります。

家をもらいたいと考えている場合には、これらの問題が解決できるのか、抜け漏れがないようひとつずつ整理して考えていくことが大切です。

2、財産分与として家をもらう

離婚時に家をもらう方法としては、財産分与を利用するのが一般的です。

  1. (1)財産分与とは

    財産分与とは、婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産を離婚時に清算する制度のことをいいます。

    財産分与は、夫婦の資産形成・維持に対する貢献度に応じて、夫婦の共有財産を分ける制度ですが、婚姻生活中の財産形成・維持に対する貢献度は、基本的には等しいと考えられています。そのため、たとえば一方は収入を得ておらず専業で家事に従事(専業主婦・主夫)していたとしても、2分の1の割合で財産分与を受けることができるのが原則です。

  2. (2)財産分与の対象となる財産

    財産分与の対象となるのは、あくまでも婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産部分です。このような財産のことを「共有財産」といいます。
    これに対して、独身期間中に築いた財産や親からの相続などによって得た財産については、「特有財産」といい、財産分与の対象にはなりません。たとえば、親からの相続によって得た土地、独身期間に貯めたお金で購入した家などは財産分与の対象ではないので、注意が必要です

    ただし、婚姻前に購入した家であっても、婚姻期間中に住宅ローンの支払いをしていたものについては、夫婦の協力があったものと評価することができるので、婚姻期間中の住宅ローン支払額に相当する部分は、原則として財産分与の対象に含まれると考えられます。

  3. (3)財産分与の方法

    家は、現金や預貯金などの財産とは異なり物理的に分割することができません。家を財産分与する場合には、どのような方法があるのかを確認していきましょう。

    ① 現物分割
    現物分割とは、家をどちらか一方が譲り受け、もう一方は、それ以外の財産を譲り受けるという分割方法です。

    たとえば、評価額1000万円の家と1000万円の現金がある場合に、家を妻がもらい、現金を夫がもらうという方法が現物分割です。
    現物分割は、実際にある財産を夫婦間で振り分けるだけなので、非常に簡単な方法です。しかし、家の評価額に相当する財産がない場合には、公平な分割は困難となるので、家以外にも財産がある夫婦でないと利用することができません。

    ② 代償分割
    代償分割とは、現物分割をすることができない場合に、家をもらう配偶者が他方の配偶者に対して、自分の財産から一定額の金銭を支払うという分割方法です。

    たとえば、評価額1000万円の家のみが財産分与の対象である場合に、家をもらう妻が自分の財産から夫に500万円を支払うという方法です。
    代償分割をするには、家をもらう方に代償金を支払うだけの資力が必要となりますので、十分な資力がなければ利用するのは難しいでしょう。

    ③ 換価(かんか)分割
    換価分割とは、家を売却して、その売却代金を分けるという分割方法です。
    現物分割や代償分割ができない場合は有効な手段となりますが、家を売却することになるので、家をもらうことはできなくなります。

    また、オーバーローン(不動産の売却費用では、ローンが完済できない状態)の場合は、売却してもローン返済が残るため注意が必要です

3、慰謝料の代わりに家をもらう

配偶者に慰謝料を請求したいと考えている場合は、離婚時に支払われる慰謝料の代わりに、家をもらうという方法も検討できます。

  1. (1)離婚慰謝料とは

    離婚慰謝料とは、精神的苦痛に対して離婚時に支払われる金銭のことをいいます。
    不貞行為(不倫)や暴力など、配偶者が離婚に至る直接的な原因を作った場合には、原因をつくった側に対して離婚時に慰謝料を請求することができます。

    ただし、離婚慰謝料は相手方配偶者に有責な事情があることが要件となるので、性格の不一致による離婚など、どちらの側にも明確な非がないような場合には離婚慰謝料を請求することはできません。

  2. (2)慰謝料の代わりに家をもらう方法

    慰謝料というと現金で支払われるものだと思う方も多いかもしれませんが、慰謝料の支払い方法は現金に限定されているわけではありません。そのため、慰謝料として現金ではなく家をもらうということも可能です。

    もっとも、慰謝料の金額は、具体的なケースによって異なってきますが、50万円から300万円程度であることが一般的です。そのため、家の評価額が慰謝料を大きく上回っているというケースでは、慰謝料の代わりに家を要求したとしても、相手がそれに応じてくれない可能性があります。

    また、仮にそのようなケースで家をもらうことができたとしても、慰謝料として相当な金額を上回る部分については、贈与があったものとみなされて、贈与税の課税対象となるおそれがあります。家の評価額によっては、家をもらう側に高額な贈与税が課税されるというリスクが生じることも考慮する必要があるでしょう。

4、養育費として家をもらうことは可能?

子どもがいる家庭の場合、離婚時には養育費についても取り決める必要があります。養育費は子どもの養育のために支払われる金銭ですが、養育費の代わりに家をもらうということは可能なのでしょうか。

  1. (1)養育費の一括払いとして家をもらう方法

    養育費の支払い方法としては、『毎月〇万円を×歳まで支払う』といった形で、毎月払いとするのが一般的な方法です。しかし、養育費の支払い義務者の資力に不安がある場合などには、毎月払いではなく一括払いを行うこともあります。支払方法としては、金銭で支払う方法以外に、代物弁済として家を渡すという方法も可能です。

    たとえば、0歳の子どもの養育費として毎月5万円を20年間支払っていくとすると、合計で1200万円もの金額になります。家の評価額が1200万円である場合には、養育費の支払い義務者が家を渡すということで養育費の一括払いに充てるということもできます。
    ただし、養育費を一括で支払ってもらう場合には、贈与税が課税される可能性がありますので注意が必要です。

  2. (2)住宅ローンと養育費を相殺する方法

    夫名義の家に離婚後も妻と子どもが住み、夫は家を出ていくということがあります。
    このようなケースで住宅ローンが残っている場合には、家に住むことになった妻がローンを支払っていくという方法のほか、毎月の養育費の支払い額と住宅ローンの支払額を相殺し、夫がローンを支払い続けるという選択肢もあります。

    ただし、この方法は住宅ローンの支払い義務者である夫が住宅ローンの支払いを滞納した場合、家が競売にかけられてしまうというリスクがあります。また、住宅ローンを完済後の自宅名義の問題や将来の相続問題などが生じる可能性もあることを念頭にいれてくおくべきでしょう。

5、離婚時に家をもらう場合の注意点

双方の折り合いがつき、離婚時に家をもらえることになった場合は、どのような点に注意するべきなのでしょうか。

  1. (1)家の名義

    財産分与で家をもらう場合、婚姻期間中に購入した家であれば夫婦の共有財産となるため、夫婦どちらの名義であっても大きな問題にはなりません。

    ただし、家の購入時に親から資金援助を受けており、親との共有名義となっているといったケースでは注意が必要です。共有持分の譲渡を受けるなどして共有関係の解消をしておかなければ、将来、家を売却する際などにスムーズに手続きが進まないおそれがあります。
    まずは、家の名義が誰になっているのかを、しっかりと確認しておくようにしましょう。

  2. (2)住宅ローン

    離婚したとしても、住宅ローンの支払い義務者が引き続き家に住むという場合、問題はありませんが、住宅ローンの支払い義務者が家を出ていくという場合には、金融機関との調整が必要になります。

    住宅ローンを利用する際に、住宅ローンの支払い義務者が家に住み続けることが条件となっていた場合、義務者が家をでていくことは契約違反となってしまう可能性があります。また、家の名義を変更する際には金融機関の同意を得ることが条件となっているケースもあります。この場合、金融機関に無断で名義変更を行ってしまうと契約違反として一括返済を求められるリスクもあります。

    なお、住宅ローンの利用時に夫が主債務者、妻が連帯保証人となっているような場合、離婚をしたからといって連帯保証人から外れるわけではありません。このような場合も金融機関との調整が必要になることを覚えておきましょう。

  3. (3)税金

    財産分与は、離婚後の生活保障や夫婦の財産関係の清算を目的とした給付です。そのため、原則として、たとえ家をもらったとしても贈与税がかかることはありません。

    ただし、財産分与以外の名目で家をもらった場合は、前述したように課税対象となる可能性があります。
    家をもらいたいと考えている場合は、税金も加味しながら検討することが大切です。

6、まとめ

離婚時に家をもらう方法としては、財産分与、慰謝料、養育費など、状況に応じたいくつかの方法を選択できますが、やはり財産分与という形式を採るのが最も一般的な方法であるといえます。
財産分与の方法は、基本的には夫婦間の話し合いによって決めることになるため、納得できる財産を確保するためには、財産分与に詳しい弁護士のサポートを得ることをおすすめします。

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