配偶者からのDVに苦しみ離婚を考えている場合にとるべき対応と準備
- 離婚
- DV
- 離婚
平成30年3月に厚生労働省が発表した、「男女間における暴力に関する調査」では、配偶者からの暴力を受けたことがあると答えた方は、女性では全体の31.3%、男性は19.9%にものぼることがわかりました。また、警察庁の発表によると、令和1年の配偶者からの暴力に関する相談件数は、8万2207件と、DV防止法が施行されてから最多件数だったそうです。
新型コロナウイルス感染症拡大に伴い自宅で過ごす時間が増えたことで、DVの増加や深刻化も懸念されています。仙台市配偶者暴力相談支援センターは、ホームページ上でDVに関する情報や相談窓口に関する情報を公開し、ひとりで抱えずに相談してほしいと呼びかけています。
本コラムでは、DVの被害に遭っていることが原因で離婚したいと考えている方に向けて、DVへの対処法や離婚へのステップについて、ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスの弁護士が解説します。
1、DV(ドメスティック・バイオレンス)とは?
DVとはドメスティック・バイオレンスの略語です。ドメスティックとは、家庭内という意味があるので、家庭内暴力と理解することができますが、日本では主に「配偶者や恋人など親密な関係にある人からの暴力」のことを、DVということが一般的になっています。
-
(1)DV防止法におけるDV加害者の定義
「DV防止法」という名称で知られる法律の正式名称は、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」です (以下、DV防止法)。
DV防止法第1条では、「配偶者」の定義を法律上の配偶者だけでなく、事実婚や離婚しているケースも含むとしています。つまり、婚姻届を出している夫婦間だけではなく、内縁関係にある場合や、離婚した後であってもDV防止法の適用を受けることになります。 -
(2)どのような行為がDVになる?
DVは、配偶者が殴る、蹴るなどの身体的な暴力が主なものであると考えられやすいですが、実際には暴力以外の行為もDVに該当する可能性があります。
具体的には、次のような行為はDVと認められる可能性があるでしょう。
●身体的暴力- 平手打ちをする
- ものを投げつける
- 首をしめる
- 髪をひっぱる
●性的暴力
- 性行為を強要する
- 避妊に協力しない
- 中絶を強要する
- 暴力的な性行為
- 性的な動画や画像を無理やり見せる
●精神的暴力
- 働くことを許さない
- 生活費を渡さない
- 人格を否定する言葉を浴びせる
- 怒鳴る
- 無視する
- 交友関係を制限する
- 人前で人格を否定したり命令したりする
- 大切なものを捨てる など
2、DV被害者の心理と陥りがちな思考
DVの被害者は、長く暴力を受け続けていることで正常な思考ができなくなり、その状態から抜け出すことが難しくなる傾向にあります。また暴力により怪我をするだけでなく、うつ病やPTSDといった精神疾患を発症する、アルコールや薬物乱用などにつながる可能性も指摘されています。
DVの被害を受けている方は、まずは自身の置かれている状態を把握した上で、何をすべきかを考えなければなりません。
-
(1)DV被害者の心理
DV被害者は、加害者との間に隷属関係や自己犠牲的な関係ができており、「自分さえ我慢すればいい」、「自分が悪い」などの思考に陥りやすく、自ら解決の糸口を見つけることが困難になる傾向があります。
また、夫から妻に対するDVの場合、「夫の収入がなければ生活ができない」という経済的な問題により夫から逃げることができずにいる方も少なくないようです。 -
(2)DVが被害者に与える影響
DVの被害者が受ける被害は、身体的な外傷だけにとどまらず、精神的DVによって心にも大きな傷を負います。
前述したPTSDとは、極端に強いストレスを体験したことにより発症する疾患です。暴力のシーンを繰り返し思い出してしまったり、苦痛がよみがえったりといった状況が続き、精神的に不安定になってしまいます。また、うつ病を発症するケースも少なくありません。
厚生労働省によると、シェルターに逃げてきた被害者のうち4割から6割がうつ病と診断され、3割から8割がPTSDと診断されています。
3、DVから逃れるために取るべき行動
DVの被害を受けている方は、まずは身の安全を確保し、正常に物事を判断できる環境に落ち着くことが大切です。その上で、離婚など次のステップを検討することが良いでしょう。
-
(1)安全な場所を確保する
DVの加害者から逃げるためには、まずは身の安全を守れる場所を確保する必要があります。身体的暴力を伴い身の危険を感じる場合は「警察署」、女性の場合は「婦人相談所」に相談することができます。仙台市の場合「宮城県女性相談センター」が窓口です。
その他、下記のような場所でも相談を受け付けています。- 仙台市配偶者暴力相談支援センター「女性への暴力相談電話」
- みやぎ夜間・休日DVほっとライン など
まずは状況を整理し、シェルターの利用、実家や友人宅に身を寄せるなど、どのような対応が最適かを相談の上で決めることが大切です。
-
(2)用意しておくと良いもの
命の危険がある場合は、持ち物よりも、まずは逃げ出すことが大切です。ただし、準備をできる余裕がある場合は、次のようなものをいつでも持ち出せるようにまとめておくと良いでしょう。
- 免許証などの本人確認書類
- 健康保険証
- 現金
- キャッシュカード
- 最低限の日用品
-
(3)DVの証拠を残しておく
DVを理由に離婚をする場合は、DVを証明する証拠が必要です。次のような証拠を残しておくことで、調停や裁判でも証拠として提示できる可能性があります。
- 怪我をした箇所の写真
- 病院の診断書
- DVが行われている最中の動画や音声データ
- DVの被害を記録した日記やメモ
- 公的機関への通報履歴・相談履歴
4、DV被害者が離婚するまでのステップ
DV被害者が離婚するためには、以下の段階を踏み、慎重に離婚までの準備をすすめると良いでしょう。
-
(1)弁護士への相談
DV加害者と被害者が、冷静に話し合うことは難しいと言わざるを得ません。そのため、弁護士を代理人にたて、離婚についての交渉を一任することをおすすめします。
DVが事実であることを証明できる証拠があれば、加害者に対して慰謝料を請求できる可能性もあります。その他、財産分与や養育費、婚姻費用の請求なども含めた一切の交渉を、弁護士は請け負うことが可能です。 -
(2)話し合い
まずは、離婚することや諸条件について、弁護士を介して交渉します。話し合いで合意できれば、合意内容を離婚協議書にまとめた上で離婚届を提出します。その際は、離婚協議書を執行認諾文言付き公正証書にしておくことが望ましいです。
-
(3)離婚調停
話し合いで諸条件が決まらない、離婚に応じてもらえないという場合は、離婚調停を検討します。
離婚調停とは、家庭裁判所で調停委員を介して行われる話し合いです。DVのように明確な離婚理由がある場合は、調停委員が加害者を説得してくれる可能性もあるでしょう。
調停で離婚や諸条件が決定すれば調停成立となります。調停調書が作成されますので、役所へ持参し、離婚届を提出すれば離婚が成立します。 -
(4)離婚訴訟
調停不成立となった場合は、訴訟の提起を検討します。
裁判では、明確な離婚理由が求められますので、DVの証拠は必須です。DVの被害を受けていたことが第三者にも証明できる証拠があれば、離婚が認められる可能性が高まると考えられます。
5、仙台市の公的支援
DV被害者にとって、離婚後の生活は重大な関心事項です。離婚後に生活が成り立たなければ加害者から逃げ出すことができないと考える方も少なくありません。仙台市ではDV被害者に対して以下のような支援制度を用意しています。
- 仙台市営住宅の入居に関する優遇処置
- 就業、自立に向けた支援
- ひとり親家庭自立支援教育訓練給付金 など
また、子どもがいる場合は、加害者に対して養育費の支払いを求めることもできますので、弁護士にご相談ください。
6、まとめ
DVの被害者にとって、加害者から逃げることは心理的にも物理的にも非常に難しく、すぐに実行できるものではありません。しかしながら、何も行動を起こさなければ現状は変わりません。現在、DVの被害を受けており離婚を考えている方は、できるだけ早く加害者の元から離れ、離婚に向けた準備をすすめてください。弁護士にご相談いただければ、加害者である配偶者と、顔をあわせることなく離婚成立に向けて話し合いをすすめることが可能です。慰謝料請求はもちろんのこと、養育費、財産分与の請求や交渉もしっかりと行うことができます。
ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスでは、DVの被害に遭っており離婚を考えている方からのご相談を受け付けております。女性弁護士も在籍していますので、女性特有のお悩みについても、安心してご相談いただけます。
肉体的にも精神的にも不安な状況から1日でも早く脱し、新しいスタートをきることができるよう、親身になってお話を伺い最適な対処法をアドバイスしますので、まずはご連絡ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています