束縛が激しい配偶者と離婚したい! 束縛を理由に離婚は認められる?
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仙台市が公表している統計によると、平成29年中の仙台市における離婚件数は1763件でした。数年間の離婚件数をみるとおおむね1700件前後で推移しており、毎年多くの夫婦がさまざまな理由をかかえて離婚にいたっていることがわかります。
離婚の主な原因は、夫婦が男女としての愛情を維持できなくなってしまうケースが多いでしょう。しかし、中には、あり余るほどの愛情があるにもかかわらず離婚してしまうケースもあります。たとえば、強い束縛などがあげられます。当初は、「愛されている」とポジティブに考えられていても、度を越した束縛が続くと離婚を考えることもあるでしょう。
浮気や夫婦の関係が破綻しているというわけではなく、強い束縛だけを理由に離婚することはできるのでしょうか? また、束縛をする配偶者から離婚を拒まれた場合、離婚する方法はあるのでしょうか?
ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスの弁護士が解説します。
1、束縛が激しい人の心理
夫婦だけでなく、交際中の男女間でも「束縛が激しい」と感じることがあります。個人差はあるものの、束縛も度を超すと非常に不自由で不快なものになるでしょう。
では、具体的にどのような行為が強い束縛にあたるのでしょうか。また、離婚を考えるほどに強い束縛をする人とは、どのような心理なのでしょうか。
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(1)配偶者を束縛するケース
配偶者への強い束縛としては、次のようなケースが考えられます。
●居場所や行動を完全に把握される
まるで24時間の行動監視を受けているかのように「誰とどこにいるのか」の報告を求められるケースでは「束縛されている」と非常に不快を感じることが多いでしょう。中には、常に居場所を監視できるスマートフォンのアプリをインストールされるケースもあります。
●外出や会合を制限される
旧友との外出や勤務先の会合などへの出席を制限され、常に監視下におかれることも不快な束縛として挙げられるでしょう。
●門限に厳しい
ある程度の門限を決めることは、家事や家族の団らんを守るためにも大切なことです。ただし、勤務先や外出先からの門限が異常に厳しく、周囲に迷惑をかけてしまうような事態もめずらしくなくなれば、やはり強い束縛といえるでしょう。
●異性との関わりを断絶させられる
夫婦には貞操を守る義務がありますが、異性との関わりのすべてが不貞だという考えは少し乱暴かもしれません。たとえば、勤務先の上司・同僚などの異性であっても「関わってはいけない」と束縛されれば、円滑な人間関係を築くことさえできません。携帯電話・スマートフォンをチェックされ、異性の連絡先などがあればデータ削除を強いるといったケースもあります。 -
(2)束縛をする人の心理
では、束縛している本人はどのような心理状態に陥っているのでしょうか? 一般的には、下記のような心理状態であることが多いと考えられています。
- 過去にパートナーから浮気をされた経験があり、トラウマ(心的外傷)になっている
- 自分自身に自信がなく、配偶者が自分に興味を失うのを恐れている
- 配偶者のことを心から信用できていない
- 配偶者をほかの異性に奪われるのが怖い
強い束縛を強いるケースと心理を照らしみると、配偶者に対する悪意があるようには感じられません。むしろ、配偶者への愛情が強すぎたり、配偶者を手放したくなかったりする心理が強くはたらいているといえます。
2、「束縛」は離婚の理由として認められるのか?
離婚については、「夫婦関係を解消する」という相互の意思があれば、通常離婚できます。
しかし、離婚すること自体が争われている訴訟において、「離婚の理由」が争われることがありますが、「束縛」は離婚の理由として認められるのでしょうか?
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(1)法定離婚事由とは?
一般的によく知られている「離婚理由として認められる条件」は、民法第770条に定められた条件を指しています。次に挙げる5つの条件を「法定離婚事由」といい、裁判で離婚の可否が争われる場合は下記のいずれかに該当する必要があります。
- 配偶者に不貞行為があったとき
- 配偶者から悪意で遺棄されたとき
- 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
- 配偶者が強度の精神障害にかかり、回復の見込みがないとき
- その他、婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
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(2)束縛が激しいことは法定離婚事由に基本的にはあたらない
法定離婚事由にあたる5つの条件をみる限り「配偶者の束縛が激しい」ことが直接の原因となることはありません。
「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するかは、婚姻関係が修復可能であるかどうかが重視されます。具体的には、例えば次のような事実が要素として考慮される可能性があるでしょう。- 暴力や暴言、侮辱などが存在していたこと
- セックスレスなどの性の不一致や性的異常があったこと
- ほかの親族との不和があったこと
- 宗教上の対立が存在したこと
- ギャンブルなどの浪費癖で生活が圧迫される状況があったこと
- 犯罪行為で服役中であること
- 長期にわたって別居中であること
実際に離婚が認められるケースでは、上記事実などを総合的に考慮して「婚姻を継続し難い重大な事由」があるのか判断ことが多く、過度の愛情表現として束縛されることがあっただけでは、ただちに離婚事由があるとは認められないと考えられます。
3、束縛が激しい配偶者と離婚するための手続き
束縛が激しい配偶者と離婚したいと考えていても、法定離婚事由にあたらない場合は「離婚が認められない」と落胆するかもしれません。しかし、離婚する方法がないわけではありません。
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(1)協議離婚をすすめる
民法第770条に規定されている法定離婚事由は、あくまでも裁判によって離婚の可否が問われる場合に検討される条件です。つまり、裁判で離婚の可否を問われない限り、夫婦双方が離婚に同意すれば、どのような理由であっても離婚は可能だといえます。
離婚は、夫婦の双方が「夫婦関係を解消する」という意思を持ち、離婚届を提出するという形式的な要件のみで成立します。いわゆる話し合いによって離婚する「協議離婚」であれば、法定離婚事由に該当しなくても離婚することができるのです。 -
(2)DV・ハラスメントを理由に離婚する
激しい束縛をさらに詳しくみれば、DVやハラスメント行為などが隠れている場合があります。
たとえば、帰宅時間が遅くなると暴力を振るわれる、生活を維持するために必要な金銭を渡さないといったケースは、DVと呼ばれる配偶者暴力や「経済的DV」と呼ばれる威圧的な行為として評価されることがあります。
また、近年では、精神的な虐待はモラルハラスメント、いわゆる「モラハラ」が離婚事由として認められる事例が増えています。
長期的・継続的なモラハラによって心神の不調をきたしてしまうケースでは、特に離婚事由として認められる可能性があるといえるでしょう。
4、激しい束縛を理由とした離婚で弁護士のサポートが必要な理由
束縛が激しい配偶者との離婚では、「愛想が尽きた」「ほかの異性のことが気になる」「不倫している」といった悪意がないため、相手が離婚を受けいれるかどうかが争点となります。
このようなケースでは、弁護士のサポートを受けるべきでしょう。
離婚したいと考えた場合、離婚を納得してもらうだけではなく、慰謝料や養育費などを取り決めるという問題もあります。しかし、束縛が強い相手の場合、話し合いをすることすら困難になることがあります。弁護士に、あなたの代理人として交渉してもらうと良いでしょう。
その他、弁護士のサポートがあれば、激しい束縛の背景に隠されたDVやハラスメントを見つけだし、法定離婚事由として主張できる可能性があります。自分自身では被害を受けていると感じていなくても、第三者である弁護士からみれば明らかなDV・ハラスメントであるケースも珍しくありません。
束縛が激しい配偶者との離婚においては、弁護士によるサポートが非常に心強く感じるでしょう。
また、DVやハラスメントを受けているケースに限らず、離婚に向けて考えているときは精神的な負担がとても大きくなります。特に、「悪意や浮気が理由ではない」という状況は、離婚したいと考えることにすら一種の罪悪感のようなものを抱いてしまうこと方もいらっしゃるでしょう。精神的に追いつめられてしまい、不利な条件のまま離婚に踏み切ってしまうケースも少なくありません。
ひとりで悩み苦しまず、問題解決のために手を尽くしてくれる弁護士に相談することで、解決の糸口を探すことをおすすめします。
5、まとめ
配偶者から激しい束縛を受けており、離婚を考えているという方は、まずは束縛がただちには離婚理由にならないということを知っておきましょう。ただし、DVやハラスメントが存在する場合は、離婚理由として認められるケースがあり、また、協議離婚であれば離婚することは可能です。
激しい束縛を理由に離婚したいと考えている方は、まずは弁護士に相談して現状を整理し、具体的なアドバイスを受けることをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスでは、さまざまな離婚問題にお悩みの方をサポートするために弁護士相談を受け付けています。
強い束縛を受けているので離婚したい、離婚を切り出したが配偶者に拒まれたなどのケースでは、離婚問題の解決実績が豊富な弁護士が強力にサポートします。
束縛を受けているため離婚したいとお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスまでお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています