生活費がもらえないのは私のせい? 経済的DVを理由に夫と離婚する方法
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仙台市の発表によると、平成30年に仙台市で成立した離婚件数は1763件でした。1日あたり、4.83件の夫婦が離婚している計算になります。さらに、平成29年の司法統計によると、仙台家庭裁判所で受け付けた婚姻関係の事件は1281件と多くの夫婦が離婚問題でもめているという事実が浮き彫りになります。
ご主人が生活費を渡してくれない、働くと嫌な顔をされるなどの悩みを抱えていて、離婚を検討されている方もいるでしょう。この場合、あなたのせいではなく、経済的DVを受けている可能性があります。本コラムでは、夫の経済的DVを理由にした離婚について解説します。新しい明日を迎えるため、ぜひ参考にしてください。
1、経済的DVってなに?
経済的DV(ドメスティック・バイオレンス)とは、法的な用語ではありませんが、一般的に相手の経済的な自由を奪い、制約を強いる行為を指します。
適切な生活していくうえで必要な費用を所持することを著しく制限され、経済的自由を奪われた側は、行動などさまざまな面で制限を受けるため、最終的に精神的なダメージを受ける可能性があります。
主に生計を基にする夫婦や親子間などで起こることが多く、具体的には以下のような行為が経済的DVに該当します。
- 生活費を一切渡さない。
- 生活費をごく少額しか渡さず生活ができない
- お金を自由に使うことを認めない
経済的DVの被害に遭う方の多くが、専業主婦や育児休業中、介護中など、何らかの理由で働けない状況に陥っている女性です。場合によっては、働くことを制限されているケースもあります。自分でお金を稼ぐことができないため、夫の収入に頼らざるを得ないのに、支払ってもらえずに借金をしてしまうことも少なくありません。
生活費を渡さない夫は、経済的DVだけでなく、意識せずモラハラ行為に及んでいるケースも少なくないようです。その場合は、妻側は被害者の意識なく、虐げられた生活を送ることになります。
2、経済的DVを理由に離婚できるの?
経済的DVについては証拠があれば、裁判でも離婚が認められることがあります。そもそも、夫婦には「扶養義務」があります。結婚している期間は、配偶者を経済的に養わなければならないとされています。妻が専業主婦であれば、夫が妻に自分と同等の生活を送れるように生活費を支払わなければなりません。つまり、生活費を渡さないことは「扶養義務」に違反していることになります。
民法では、相手方が離婚に合意しない場合であっても裁判などを通じて法的に離婚が認められる条件を規定しています。そのうちのひとつが「悪意の遺棄」です。扶養義務違反は、悪意の遺棄に該当しうる行為なのです。
双方が離婚を同意すれば離婚は可能ですが、片方が同意しない場合は法的に離婚が認められる理由が必要になります。経済的DVは、法的に離婚が認められる「悪意の遺棄」に該当し離婚が認められる可能性があります。
3、慰謝料と婚姻費用が請求可能! その方法とは
悪意の遺棄に該当するような経済的DVがある場合は、離婚できるだけでなく慰謝料請求や婚姻費用の請求が可能です。
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(1)慰謝料とは? どうやって請求する?
慰謝料とは、不法行為によって受けた精神的損害等を賠償するものです。経済的DVは、夫婦の扶養義務を果たさない不法行為と考えられ慰謝料請求が認められることがあります。
ただし、証拠を確保した方が良いです。証拠を集めたら相手に請求し、拒否されたら裁判所での解決を検討します。離婚時にはそのほかにも請求可能なお金があるため、話し合いの段階から弁護士に相談しておくことをおすすめします。 -
(2)婚姻費用とは? 婚姻費用分担請求の方法
婚姻費用とは、夫婦が負担する生活費のことを指します。妻が専業主婦の場合や夫に比べて収入が低い場合は、妻が夫に請求します。同居・別居を問わず受け取ることができるお金です。
婚姻費用も慰謝料と同様に、直接配偶者に請求できます。ただし、直接請求して支払ってくれるぐらいであれば経済的DVの状態に陥ることはないでしょう。話し合いによる請求が難しいときは、家庭裁判所に「婚姻費用分担調停」を申し立てることで、調停員が間に入って話し合いを進めることができます。調停で合意できなければ、裁判所に判断をあおぐことになります。
婚姻費用は、相場的な「算定表」が存在します。裁判所が公表しているもので、夫婦の収入や子どもの有無、年齢などによって機械的に算出されるものです。たとえば夫が年収500万円のサラリーマン、妻が専業主婦で無収入、子どもがいない、というケースの婚姻費用は月額6万円から8万円程です。
なお、過去の婚姻費用については、認められないケースも多いようです。ただし、財産分与の際に、婚姻費用を考慮して分割がなされることがあります。したがって、長期間にわたって生活費が支払われていない方は、その記録をきちんと保管しておきましょう。
4、経済的DVを理由に離婚するための3ステップ
経済的DVを理由に離婚するためには、下記の3ステップを経なければなりません。弁護士に依頼することであなた自身の精神的な負担が軽減できるケースが多いでしょう。
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(1)経済的DVの証拠を確保する
まずは、配偶者に対して離婚の意思を話す前に、経済的DVが行われていたことがわかる証拠を用意してください。相手が話し合いで離婚に応じなければ、離婚を認める法的な根拠が必要になります。
経済的DVは悪意の遺棄に該当する可能性があり、証拠があれば裁判所により離婚を認められるケースがあります。証拠は、慰謝料請求などのためにも必須となりますし、あなたの正当性を証明するためにも収集しましょう。
証拠の具体例がこちらです。- 生活費の振り込みが途絶えた銀行通帳の写し
- わずかなお金でやりくりしていたことがわかる家計簿
- 日々の生活の様子ややりくりについて記録した日記
- 生活費のための借金の明細
- 夫が生活費を支払わないことを明言している暴言などのボイスレコーダー
経済的DV被害を受けている場合は、ご自身で行動することは難しいことでしょう。弁護士などに委任することでサポートできることがあります。
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(2)配偶者に離婚の意思を告げる
証拠の収集が完了したら、配偶者に離婚したい旨とその理由を告げましょう。
重要なのは「証拠を集めてから告げること」です。経済的DVを理由に離婚する場合、相手が応じない限り、証拠がなければ慰謝料請求だけでなく、離婚自体も認められない可能性があります。
離婚の意思を伝える前に、証拠を集めなければ、相手があなたの離婚の意思を察知した時点で、証拠を握られないよう動かれてしまう可能性があります。したがって、必ず証拠集めが完了してから離婚の意思を伝えてください。
恐怖のあまり請求できないという方、勇気が出ない方はひとりで悩まず弁護士に交渉を一任しましょう。離婚の交渉を進めてもらえます。 -
(3)話し合いができなければ調停から訴訟へ
話し合いで離婚が成立しなければ、調停に移行した方が良いでしょう。調停とは家庭裁判所で調停員に仲介してもらい、話し合う手続きです。双方が顔を合わせることなく話し合いを進めるだけでなく、合意に至れば法的に拘束力がある書類を作成してもらえます。
調停で離婚が成立しなければ、訴訟に移行させて離婚を求めることがあります。調停でも訴訟でも、法的に離婚に値する理由があるかどうかが重要ですので、確実な証拠が求められます。調停や訴訟では、弁護士に一任するケースが多いです。
5、経済的DVでも忘れてはいけない財産分与のこと
経済的DVを理由に離婚を望む方の多くが、離婚後の生活や経済面のことまで考えられないケースがほとんどです。しかし、離婚の際には慰謝料などだけでなく、「財産分与」でまとまったお金を受け取ることができます。
配偶者に一定の収入があり、預貯金や有価証券等の資産などがあれば、基本的に、財産分与によって結婚後築き上げられた財産の2分の1が認められることが多いです。
財産分与は、慰謝料請求や婚姻費用請求とともに請求しておきましょう。また、財産分与の割合は原則2分の1ですが、経済的DVが認められればそれを考慮した割合になる可能性もあります。
財産分与の対象となるのは、結婚期間中に増えた夫婦の共有財産です。現金、預貯金、有価証券や、不動産、退職金などが代表的な共有財産にあたります。財産分与では、対象財産の把握が重要となりますので、経済的DVの証拠集めと同時に、財産分与の対象となる財産の把握に努めましょう。
ご主人の預貯金がある金融機関や、証券会社などを確認しておくとスムーズです。もし調査が難しい場合は、弁護士に一任することを検討してください。
6、まとめ
生活費を渡さないなどの経済的DVは、法定離婚事由のうち、悪意の遺棄に該当するとみなされる可能性もあります。証拠を確保して、離婚や慰謝料などを求めていきましょう。また、たとえ名義が相手のものであろうと、財産を分割して受け取れる可能性があります。
世知辛い話ではありますが、離婚後、新生活を軌道に乗せるまではまとまったお金は欠かせません。ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスでは経済的DVを受けていて適切に離婚したい方へ、状況に適したアドバイスを行います。なお、仙台オフィスには女性弁護士も在籍しています。女性弁護士ならではの視点で、不安を解消できるよう親身にお話を伺います。
新たな生活を着実に歩み始めるためにも、まずはご相談ください。
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