仙台の共働き夫婦が離婚するときに知っておくべき財産分与
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仙台市内の共働き世帯の割合は42.7%だったと発表しています。また、夫のみの就業率も年々減っており、共働き夫婦が徐々に増えてきていることが伺えます。
このように、仙台市で暮らす世帯のほぼ半数が共働き夫婦だともいえる宮城県ですが、万が一、離婚に至る場合はどのように財産分与を行えばよいのかをご存じでしょうか。離婚の際に問題となる「財産分与」について、弁護士が解説します。
1、財産分与とは何?
財産分与とは、夫婦の共同財産を分ける行為です。財産分与に名義は関係なく「結婚期間に夫婦で協力して増やした財産」が対象となります。よって、「自分名義の口座に入っているから全部自分のもの」というわけにはいきません。
また、「結婚期間」というのも重要なポイントになります。なお、夫や妻が独身時代に個人で貯蓄していたお金や購入した車、不動産、また、結婚後でもどちらかが相続を受けた財産などは財産分与の対象外となることが多い点に注意が必要です。
財産分与の際に気をつけることは「隠し財産」です。相手が秘密の口座や不動産などを所有している可能性を考慮して、郵送物などを確認してみましょう。定期預金や定期積金の場合、年に数回残高を知らせるハガキが来ることがありますし、不動産の場合は、固定資産税の通知書などが送付されてきます。
認められた権利をしっかりと主張するために、相手の財産を徹底的に洗い出すことが重要です。
2、財産分与の対象となるものとは?
財産分与の対象は「結婚期間中に夫婦で協力して増やした財産」です。具体的には以下のものが財産分与の対象となります。
- 現金
- 預貯金
- 不動産
- 自動車
- 生活用品
- 家具家電
- 美術品
- 婚姻後に購入した有価証券
- 婚姻後に購入した債券
- 婚姻後に購入した各種暗号通貨(仮想通貨)
- 生命保険解約返戻金
- 退職金
- 住宅ローン
- 自動車ローン
- 生活費等の借金
これらの動産・不動産・現金預貯金等が財産分与の対象となり、最終的には「結婚期間中に増えたもの」を分けることになります。
注意しなければならないのは、プラスの財産だけでなく借金も財産分与の対象になる点でしょう。ただし、どちらか一方の過度なギャンブルや無駄遣いなどによる借金などは、対象外になることがあります。また、老後に受け取れる年金も、「年金分割」とよって、妻も受け取ることができます。
では、財産分与の対象外となるものも確認しておきましょう。
- 結婚前にためていたお金
- 結婚前から所有していた家具や家電
- どちらかが親族から相続した財産
「結婚前」に取得したものは、原則は、財産分与の対象外となるものです。つまり、債券や有価証券などは「婚姻前に購入したもの」であれば、前述のとおり財産分与の対象にはなりません。
また、それぞれの親から相続したお金なども財産分与の対象外となるので、注意しましょう。
3、共働き夫婦の財産分与割合は?
共働き夫婦の場合、妻が専業主婦の場合と比較すると妻が共有財産の増加に大きく貢献していることが多いものです。しかし、それでも財産分与は5:5で分けることが多い傾向にあります。
ただ、これは裁判になった場合なので、裁判によらず話し合いや調停で、お互いに自由に決定することは可能です。それぞれにお互いの貢献度に理解がある場合は「夫4:妻6」といった財産分与も可能となります。
ただ、交渉がうまくいかなければ訴訟となり、原則5:5が適用されてしまいますので、協議(話し合い)や調停の場で、うまく話をまとめる必要があるでしょう。協議や調停で財産分与の割合を有利にかつスピーディーに進めたければ、早い段階で弁護士に相談して交渉を依頼することをおすすめします。
なお、現金や預貯金は簡単に分けることができます。しかし、動産や不動産等は半分にすることは難しいものです。最終的には換金したり、同程度の動産不動産を分配したりすることで均等にすることになります。これからも住んでいる家に住み続けたいなどの理由があるときは、互いに納得できるような分割方法を提案する必要があるでしょう。
4、夫婦別財布の共働き夫婦の財産分与はどうなる
共働きの夫婦は、夫婦別会計制度を導入して、お互いの資産にはノータッチというパターンもあるでしょう。しかし、それでも結婚中に増えた分は財産分与の対象となります。
結婚前に「夫婦別財布にすること、離婚時にも財産分与の対象にしないこと」などの契約を、特別に別途締結していれば、財産分与の対象にはなりません。しかし、多くのケースでそこまで対応していることはほとんどないと考えられます。したがって、多くの共働き夫婦が、離婚の際、財産分与を行うことになるでしょう。
状況によっては、あなたが貯蓄に集中し、パートナーは散財するばかりだったということもあるかもしれません。その場合は、財産を等しく分けることは納得がいかないこともあるでしょう。ケース・バイ・ケースではありますが、原則、裁判になれば財産分与の対象外と認められる可能性は極めて低いといえます。
ただし、協議や調停でお互いが納得すれば「それぞれの預貯金は財産分与の対象としない」と取り決めることはできます。
5、家の財産分与はどうなる?
結婚期間中に購入したものであれば、家も財産分与の対象となります。夫名義でも妻名義でも他の財産と同様に5:5で分けるのが原則です。ただし、夫や妻が独身時代に、購入したものは財産分与の対象とならないことが多いのでご注意ください。原則として、結婚期間に購入したものが財産分与の対象となります。
所有する家に住宅ローンの残債がなければ、家を売却したお金を5:5にわけてもよいでしょう。片方が家を取得し、もう片方は家以外の同等の資産を受け取ることも可能です。話し合いや調停で、「家は妻子に譲る」などと穏便に決まれば均等に分けなくても問題ありません。
6、財産分与の手順とは
財産分与は、離婚と同時に行うのが一般的です。離婚が成立してから決めることができないことはありませんが、離婚した日から2年で財産分与ができなくなってしまいます。そもそも離婚が成立すると話し合いが難しくなるケースが少なくありません。放置しすぎないように気をつけましょう。
財産分与を協議(話し合い)で決定する場合と、調停で決める場合とでは必要な書類や手順が多少異なります。
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(1)協議(話し合い)で決める場合
財産分与の話し合いをスタートするとき、真っ先にやるべきことで、もっとも重要なことが「双方の財産の特定」です。それぞれの、財産をリストアップしておきましょう。後から金額に誤差が出ないようにするために、預貯金通帳や証券口座の総資産など、金額が明確にわかるものを用意しておくと安心です。
相手に隠し財産がないかどうか念入りに確認しましょう。すべての財産が把握できたら、機械的に5:5でわけてもよいですし、それぞれの事情を考慮して「家は妻、車と株は夫」というように臨機応変にわけても問題ありません。 -
(2)調停で決める場合
離婚調停の場で、財産分与を決める場合は調停の申立書とともに財産目録も提出しなければなりません。その他離婚調停のために必要な書類がありますので、合わせて用意しておきましょう。
調停では、調停員にそれぞれが事情を説明し、調停員が財産分与を含めた和解案を提示してくれますので、お互いが納得いくようであれば離婚が成立し、財産分与も滞りなく行われます。
7、まとめ
財産分与の手続き、交渉は簡単なように思うかもしれません。しかし実際に始めてみると、もめてしまうケースも多々あります。まず財産の洗い出しに時間がかかりますし、割合などもスムーズに決まりません。特に共働き夫婦の場合は、妻側が「割合を高くしてほしい」という要望を持つケースも少なくないでしょう。
協議や調停の場合は、一般的な5:5という割合にこだわらず交渉が可能となります。最終的には合意できれば問題ないためです。状況に適した財産分与交渉を行いたい場合は、離婚問題に対応した経験が豊富な弁護士に相談することをおすすめします。
ひとりでは気付かなかった権利や財産についてもアドバイスを受けられることもあります。より良い条件で財産分与に臨むことができるでしょう。
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