【前編】離婚するときの財産分与、 どちらかに借金がある場合はどうすればいいのか

2019年04月25日
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【前編】離婚するときの財産分与、 どちらかに借金がある場合はどうすればいいのか

仙台市の統計によると、平成28年の離婚件数は1752件でした。離婚の理由はさまざまですが、理由のひとつに借金問題をはらんでいるケースは少なくありません。離婚の際は夫婦の共有の財産を分割する「財産分与」が行われますが、借金がある場合はどうなるのでしょうか。

そこで、今回は財産分与の際の借金の取り扱いについて、仙台オフィスの弁護士が解説します。

1、財産分与とは

  1. (1)財産分与の概要

    財産分与とは、夫婦が離婚をする際に、婚姻期間中に夫婦が協力して作り上げた財産をそれぞれに分配することをいいます。財産は、預貯金や現金、土地や不動産、車などです。夫婦の共有名義ではなく、夫や妻どちらかの名義であっても財産分与の対象となります。専業主婦(夫)であっても財産を分割して受け取ることができます。

    財産分与の対象となるのは、結婚期間中に夫婦で築いた財産の身に限られます。したがって、結婚前から持っているものやそれぞれの親から譲り受けた土地やお金などは、基本的に該当しません。

  2. (2)財産分与の種類

    財産分与は下記の4種類があります。

    ●清算的財産分与
    結婚期間中に築いた夫婦の共有財産を、一定の割合で分割することを清算的財産分与と呼びます。離婚の際の財産分与のほとんどが清算的財産分与です。

    ●慰謝料的財産分与
    夫か妻のどちらかが浮気などの離婚原因を作った場合、その相手方が請求する精神的苦痛としての慰謝料的意味合いを持つ財産分与です。

    ●扶養的財産分与
    夫婦のどちらかが高齢者や就労不可の状態などで、離婚をすることで将来の生活が苦しくなる場合、生計を維持するために離婚後も一定期間の間、相手方に支払うことを目的とした財産分与の形式をいいます。結婚によって、専業主婦になり働いていない期間が長かった専業主婦も請求することができる可能性があります。

    ●過去の婚姻費用の清算としての財産分与
    婚姻費用とは、夫婦の生活を維持するために必要なお金のことです。夫婦が婚姻している間はお互いに扶養義務があるため、婚姻費用が不当に支払われていなかった場合は未払い分の金額を財産分与に含めることがあります。

  3. (3)財産分与の流れ(清算的財産分与)

    婚姻期間中に築いたすべての財産や共有物(通帳や不動産、車など)をリストアップし、金銭に換算するといくらぐらいになるのか、見積もりを取るなどして総合計の金額を算出します。分配の割合は、原則として、どちらかが専業主婦(夫)であっても2分の1です。慰謝料財産分与や扶養的財産分与なども考慮して、4対6や、3対7などの割合になることも一応ありえます。

    金銭などは決められた割合に沿って分配すればよいのですが、不動産などはどちらかの名義に変更することがあります。不動産について、どちらかの単独名義とし、相手方はその代償として金銭を支払うことも多いです。離婚の際に、全部売却して現金を分割することもよくあります。

  4. (4)財産金額の基準日

    財産分与の対象となる財産は、使ったり、給与等で増えたりするため増減します。土地や有価証券の価格も、日々変動しています。

    したがって、一般的には離婚が成立した日を基準日として財産分与の対象となる資産の総額を計算することが多いです。ただし、離婚成立前に別居期間がある場合は、別居開始日が基準となることもあります。

2、財産分与の対象となる借金、ならない借金

これまではプラスの財産を分配することについて説明しました。では、マイナスの財産つまりはローンなどの借金はどうなるのでしょうか? ここではローンなどの借金の財産分与について解説します。

  1. (1)民法での定義

    民法では夫婦の借金ついて、次のように規定しています。

    「夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りではない」(民法第761条)

    つまり、夫婦の共有財産にはプラスだけでなくマイナスの財産(借金)も含まれるのです。

    夫婦のどちらかが結婚してから別居開始までに負った借金は財産分与の対象とされ、両者に返済の義務が発生する可能性があります。

  2. (2)財産分与の対象となる借金

    ここで注目すべき言葉が、民法第761条の条文に記載されている「日常の家事に関して」という箇所です。つまり、「借金の理由が夫婦の生活を維持するために必要なものだったかどうか」が非常に重要なポイントとなります。

    したがって、夫婦や家族が生活を営んでいく上で必要と判断して借り入れたものに関しては、基本的に財産分与の対象となります。

    • 住宅ローン
    • 教育ローン
    • 自動車ローン
    • 生活費が足りず、埋め合わせるために借り入れた借金
  3. (3)財産分与の対象とならない借金

    財産分与の対象とならない可能性のある借金は、度が過ぎたギャンブルや遊興費のために借りたものです。また、結婚前からの借金も基本的に財産分与の対象にはなりません。

    後編では、財産分与の進め方や方法、弁護士に依頼するメリットについて、仙台オフィスの弁護士が解説します。

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