配偶者が不貞行為! 離婚しないで慰謝料を請求するのは可能?

2019年04月26日
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配偶者が不貞行為! 離婚しないで慰謝料を請求するのは可能?

仙台市における平成29年の婚姻件数は5904件であることに対し、離婚件数は1763件でした。単年度だけでみると、婚姻件数約3件に対して約1件が離婚していることになります。

配偶者の不貞行為、性格があわない、配偶者からの暴力がある、生活費の浪費などの金銭問題……。離婚に至る原因はさまざまなものがあるでしょう。しかし、このような離婚原因が明らかに配偶者にあったとしても、さまざまな理由からあえて離婚しないことを選ぶ人は確実に存在します。

ところで、離婚原因のなかには配偶者だけでなく第三者が関与するものがあります。そのひとつが不貞行為、つまり不倫です。もしあなたの配偶者に不倫が発覚した場合、あなたは配偶者および不倫相手に対して慰謝料を請求することができます。しかし、あなたが配偶者と離婚せず婚姻関係を継続することを選んだ場合、あえて配偶者には慰謝料を請求せず不倫相手だけ請求したいとお考えになるかもしれません。

不倫という不法行為に対して、このような慰謝料の請求はそもそも可能なのでしょうか? 可能だとしたら、どのような点に注意して、どのように請求することが好ましいのか、ご存じでしょうか。ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスの弁護士が解説します。

1、離婚しなくても慰謝料請求は可能か?

配偶者に不倫が発覚すると、それを機に離婚に至る夫婦は多いものです。しかし、子どものことや今後の生計などを考慮すると、離婚することはかえって合理的ではないという結論に至ることがあると思います。そこで、たとえ今後の生活のために配偶者は許すとしても、不倫相手には配偶者との手切れや慰謝料の請求などしかるべき対応をしたいとお考えになるのは、当然のことでしょう。

不倫は、民法第709条に定めた不法行為に該当するものとして、配偶者以外の異性と肉体関係を持つことをいいます。不倫によって自分の配偶者および不倫相手の配偶者に対して精神的苦痛を与えた場合、不倫した人には民法第710条の規定により精神的苦痛を受けた人に対して損害賠償つまり慰謝料を支払う義務が生じます。別の言い方をしますと、配偶者の不倫によって精神的苦痛を受けた人は、配偶者および不倫相手に慰謝料を請求することができるのです。
ところで、配偶者による不倫は民法第770条における「裁判上の離婚事由」のひとつに該当します。しかし、不倫に対する慰謝料を請求することについては、配偶者と離婚することを要件と定める法律・判例は存在しません。したがって、配偶者と離婚をしなくても不倫という不法行為に対して慰謝料を請求することが可能なのです。

2、慰謝料請求の相手は、配偶者・不倫相手の両方、あるいはいずれかでも可能

不倫とは、配偶者と不貞行為の相手方による「共同不法行為」です。つまり、不倫については配偶者だけでなく不倫相手も悪いと考えるわけです。

実際に民法第719条では、共同不法行為をした当事者に対して「連帯してその損害を賠償する責任を負う」と定めています。したがって、不倫に対する慰謝料は配偶者と不倫相手の両方に支払う義務があるのです。

そうすると、慰謝料の請求については不倫相手だけでなく離婚せずに婚姻関係を継続すると決めた配偶者に対しても行わなければならないというように感じてしまうかもしれません。

しかし、決してそのようなことはありません。不倫にかぎらず、慰謝料を請求すること自体は精神的損害を受けたとされる人の任意です。したがって、慰謝料は不倫相手のみに請求し、配偶者には請求しないことも可能なのです。
そもそも離婚しない配偶者から慰謝料をもらったとしても、今後も継続する家計単位で考えれば、あまり意味がありません。むしろ配偶者には慰謝料を請求しないほうが、今後の円満な家族関係構築のために有効という見方もできます。

3、離婚しない場合の慰謝料の相場と決定方法について

不倫相手に慰謝料を請求することは、不倫行為により受けた精神的損害に対する賠償としての手段だけでなく、今後の配偶者と不倫相手の関係を絶つうえで有効です。あなたの確固たる権利と意思を知らしめる手段として必要と判断した場合は、不倫相手に対して慰謝料を請求すべきでしょう。

具体的な相場ですが、不倫に対する慰謝料の金額は、法律で具体的な基準が定められているわけではありません。したがって、当事者間による話し合いを含めたケース・バイ・ケースで決まることが現状です。

なお、もし裁判などで慰謝料の金額が争われた場合は、以下のような事情が考慮されます。

  • 配偶者や不倫相手の収入、資産状況、社会的地位など
  • 不倫関係にあった期間および頻度
  • 不倫に至るまでの夫婦関係
  • 不倫に至った原因
  • 配偶者の不倫を原因とする別居の有無
  • 不倫が原因で受けた精神的損害または財産的損害の程度

4、不倫相手に慰謝料を請求する手順

  1. (1)証拠を集める

    配偶者が不倫を告白していても、それを不倫相手が否定すれば慰謝料を請求する話が進みにくくなります。不倫相手に事実を認めさせたうえで慰謝料を請求するためには、「証拠」が何よりも重要です。

    証拠については、不貞行為のを客観的に示すものが決定的になると考えられます。
    配偶者と不倫相手との間に肉体関係があったことを示す証拠物としては、メール、SNS、通話の録音、手紙、写真、動画など、さまざまなものが考えられます。このような証拠をどのくらい集められるかがポイントです。

  2. (2)書面で請求する

    不倫相手に慰謝料を請求する最初の手段は書面、特に「内容証明郵便」がよいでしょう。

    内容証明郵便は、送付された相手方に対して特段の法的効力を持つものではありません。しかし、内容証明郵便はあなたが送付した事実および慰謝料請求の内容を、日本郵便に証明してもらうことができます。このため、あなたが慰謝料請求の意思表示をした事実について、不倫相手との水掛け論を防ぐ効果が期待できます。

  3. (3)調停や裁判に移行する

    慰謝料請求に不倫相手が応じようとしないのであれば、調停や裁判への移行が選択肢になります。

    調停では、男女2名の調停委員を介して慰謝料について話し合いを行います。調停では不倫相手と顔を合わせずに冷静な話し合いが期待できます。調停で折り合いが付かない場合、決着を付けるためには、裁判に移行することになります。費用と期間は相応にかかると見込んでおくべきでしょう。

    なお、慰謝料請求を争う裁判では、あなたや不倫相手の心情以上に証拠にもとづいた法的な確かさや過去の判例など法的な側面がより重視されます。また、手続きや書面の作成は難しく、法廷においても専門的な知識と経験を有することから、弁護士に依頼するようにしてください。

5、慰謝料の請求で注意しておくべきこと

  1. (1)時効に注意

    民法第724条によりますと、あなたが不倫行為を知ったときから3年間経過すると慰謝料を請求する権利が時効となり消滅してしまいます。

    もっとも、時効になる前にあなたが不倫相手に対し内容証明郵便で慰謝料の支払いを請求し、かつ6ヶ月以内に訴訟を提起などをしていた場合は、時効を中断することができます。

  2. (2)不倫相手による求償権の行使に注意

    先述のとおり、不倫とは配偶者と不倫相手による共同不法行為であり、あなたが慰謝料を請求した場合に支払う義務を負うのは両者です。

    たとえば、あなたが配偶者には慰謝料を請求せず不倫相手のみに慰謝料を請求し、請求に応じた不倫相手が慰謝料を支払ったとしましょう。

    このケースでは、本来は、あなたの配偶者も負うべき慰謝料を不倫相手が余分に支払ったとも解釈できます。そこで不倫相手は、本来配偶者が支払うべき慰謝料相当額について、共同して不法行為をした配偶者に対して請求することができます。これが求償権です。

    不倫相手による、あなたの配偶者への求償権の行使は、不倫の二次的なトラブルとして生じやすいものです。したがって、慰謝料の支払いによって不倫相手と和解する場合は、配偶者に対して求償権を行使しない旨の確認書などを不倫相手から取得しておくことが望ましいでしょう。

6、まとめ

配偶者の不倫相手に対する慰謝料の請求は、証拠集めに難航したり感情面や事実関係の争いなどが複雑に絡み合ったりするケースが多々あります。自分ひとりで進めることは非常に負担が大きく困難を伴うことでしょう。

もしあなたが配偶者の不倫相手に慰謝料を請求することを検討しているのであれば、できるだけ早く、ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスで相談してください。男女関係の問題解決に豊富な実績と経験のある弁護士が、法的なアドバイスはもちろんのこと、あなたの代理人として不倫相手との交渉や調停・裁判のやり取りを行うなど、あなたをサポートするためにベストを尽くします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています