贈賄罪(ぞうわいざい)とは? 構成要件と賄賂に関する罰則

2024年08月28日
  • 財産事件
  • 贈賄罪
贈賄罪(ぞうわいざい)とは? 構成要件と賄賂に関する罰則

公務員の不正事案は、明るみに出れば大々的に報じられます。

そのなかでも、賄賂の問題は受け取る側に着目されがちですが、その背景には賄賂を贈る側が必ず存在しています。公務員に賄賂を贈る行為、公務員が賄賂を受け取る行為は、法律によって厳しく規制されているため、逮捕・刑罰を受けるおそれが非常に高いものです。

本コラムでは、公務員に賄賂を贈った場合に成立する「贈賄罪」に注目しながら、贈賄罪が成立する要件や「収賄罪」との関係、容疑をかけられて逮捕されてしまった場合の流れなど、ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスの弁護士が解説します。


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1、「賄賂(わいろ)」に関する犯罪|贈賄罪と収賄罪

刑法第25章には「汚職の罪」が規定されており、第197条から第198条の罪をまとめて「賄賂罪(わいろざい)」と呼びます。
賄賂に関する犯罪には「贈賄罪」と「収賄罪」があり、これらをあわせた呼び名が「贈収賄」です。贈賄罪と収賄罪は、処罰の対象とする主体や行為がそれぞれ異なります。

  1. (1)贈賄罪(ぞうわいざい)とは

    贈賄罪は、刑法第198条に規定されています。
    賄賂を『贈った側』を主体とする犯罪で、賄賂を贈ることで利益を享受した、または利益を得る目的で賄賂を贈ろうとした者を罰するものです。つまり、贈賄罪は公務員に賄賂を贈る、民間企業や民間人などを対象としています。
    賄賂に関する罪といえば、賄賂を受け取った側ばかりが注目されがちですが、賄賂を贈った側も厳しく罰せられるため注意が必要です。

    なお、賄賂にあたるものとして現金をイメージするかもしれませんが、刑法には賄賂の形態についての規定は存在しません。
    金銭に限らず、有価証券や飲食接待、スポーツやコンサートのチケットなどのほか、サービス利用に際して通常価格よりも特別な割引を適用するなども賄賂とみなされる可能性があります。

  2. (2)収賄罪(しゅうわいざい)とは

    収賄罪は、刑法第197条を基本とする犯罪です。
    賄賂を『収受した側』を主体とし、対象は公務員に限定されているため、賄賂を受け取った公務員を処罰するのが収賄罪です。

    収賄罪は、その態様によって罪名が変わります。

    ・ 受託収賄・事前収賄(刑法第197条2項)
    請託を受けて賄賂を収受した、または請託を受けて賄賂を収受したうえで公務員になった場合に成立する形態です。

    ・ 第三者供賄(刑法第197条の2)
    請託を受けて第三者に賄賂を供与させた場合に成立します。

    ・ 加重収賄・事後収賄(刑法第197条の3)
    賄賂を収受または、供与(要求、約束を含む)などさせたうえで公務員が不正な行為をはたらいた場合などは加重収賄に、公務員であった者が在職中に不正な行為をはたらいて退職後に賄賂を収受した場合は事後収賄が成立します。

    ・ あっせん収賄(刑法第197条の4)
    請託を受けて、ほかの公務員に職務上不正な行為をさせたことの報酬として賄賂を収受した場合に成立します。


    これらはいずれも、刑法第197条1項の罪を基本として加重するものです。ほかの加重類型と区別するために、基本となる贈賄罪のことを「単純収賄罪」と呼びます

2、贈賄罪・収賄罪の構成要件

贈賄罪・収賄罪が成立するための構成要件を確認しましょう。

  1. (1)贈賄罪の構成要件

    贈賄罪が成立するのは、次の3点を満たす場合です。

    • 贈賄の相手が公務員であること
    • 公務員への贈賄が職務に関していること
    • 行為として「供与・申し込み・約束」があること


    贈賄罪が成立するのは、贈賄の相手が公務員の場合のみで、かつその公務員が『職務に関している』ことが必要です
    たとえば利害関係のない公務員に対して金銭などを贈っても賄賂としての性質がなく、贈賄罪は成立しません。

    また、行為として実際に賄賂を贈ることを意味する「供与」や、賄賂を贈るので便宜を図ってほしいと求める「申し込み」、便宜を図ってくれれば賄賂を贈ると密約などを交わす「約束」のいずれかが必要です。

  2. (2)収賄罪の構成要件

    収賄罪が成立するための構成要件は3つです。

    • 公務員であること
    • 賄賂の目的が職務に関していること
    • 行為として「要求・約束」があること


    収賄罪は、公務員を主体とする犯罪です。
    つまり、公務員の身分にある者、あるいは事後収賄のように公務員であった者を処罰の対象としています。このような特定の身分にある者を構成要件とする犯罪を「身分犯」と呼びます。

    次に、賄賂の目的が職務に関していることも必要です。
    贈賄側との利害関係が存在し、その職務の特性から贈賄側に対して便宜を図ることが可能であれば職務に関しているといえます。

    行為としては「要求・約束」が必要です。
    便宜を図ることを条件に賄賂を要求する、または賄賂と引き換えに便宜を図ることを約束した場合は、収賄の実行行為があったものとみなされます。
    実際に不正行為をはたらいたかどうかの事実は問わず、要求・約束があった時点で収賄罪が成立します。

  3. (3)贈収賄が成立する場合の流れ

    贈収賄が成立する流れとしては、大きくわけて2つのパターンがあります。

    ・ 贈賄側が積極的にはたらきかけるパターン
    公共事業に参入している企業などが、便宜を図ってもらう目的で担当者に賄賂の供与・申し込み・約束をはたらきかけるパターンです。

    ・ 収賄側が積極的にはたらきかけるパターン
    公務員が入札企業などに対して賄賂を要求するパターンです。官製談合のように、発注機関側である公務員が特定の入札業者の便宜を図って予定価格を漏らすなどの事例では、収賄側からの賄賂要求が目立ちます。
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3、贈賄罪・収賄罪の罰則

贈賄罪・収賄罪は、特定の被害者が存在しない犯罪です。
ただし、公務の公平性が損なわれているという特性に着目すれば、広く国民・市民全体が被害者であるともいえる犯罪であるため、贈賄・収賄ともに厳しい刑罰が規定されています。

  1. (1)贈賄罪の罰則

    贈賄罪の法定刑は、3年以下の懲役または250万円以下の罰金です。
    収賄罪の罰則と比べると贈賄罪の処分は軽くなっており、3年で公訴時効を迎えるという特徴があります。

  2. (2)収賄罪の罰則

    収賄罪の罰則は、どの類型が適用されるのかによって変化します。

    • 単純収賄:5年以下の懲役
    • 受託収賄:7年以下の懲役
    • 事前収賄:5年以下の懲役
    • 第三者供賄:5年以下の懲役
    • 加重収賄:1年以上の有期懲役
    • 事後収賄:5年以下の懲役
    • あっせん収賄:5年以下の懲役


    また、収受した賄賂は基本的には没収となり、全部または一部を没収できない場合はその価額について追徴を受けます。

    ここで注目したいのが、どの類型が適用された場合でも収賄罪の公訴時効が5年であるという点です。
    贈賄罪の公訴時効は3年で先に時効を迎えるため、賄賂のやり取りがあった時点から3年~5年の間に発覚すれば、賄賂を受け取った公務員だけが処罰を受ける事態になります。

    この点は警察・検察官も重々承知しているところであり、贈賄側の公訴時効が完成するタイミングを待って捜査を進め、捜査協力を得ながら収賄側だけを立件するといった事例もめずらしくありません

4、贈賄・収賄の容疑で逮捕された場合の流れ

贈賄罪・収賄罪の容疑をかけられて逮捕された場合は、その後、どのような手続きを受けるのでしょうか。

  1. (1)逮捕後に送致される

    警察に贈収賄事件の被疑者として逮捕されると、警察署の留置場で身柄を拘束されたうえで、事件に関する取り調べがおこなわれます。逮捕から48時間以内を期限として検察官のもとへと送致され、検察官の段階でも取り調べを受けます。
    検察官は送致から24時間以内に身柄を釈放するか、さらなる取り調べのために勾留を請求するかを検討します。

    なお、この段階までの最大72時間は、家族であっても面会は認められません。面会を許されるのは、接見交通権が認められている弁護士だけです

  2. (2)勾留による身柄拘束を受ける

    裁判官が勾留を許可すると、原則10日間、延長請求によってさらに10日間の、合計最大20日間にわたる身柄拘束を受けます。
    勾留が決定した被疑者の身柄は警察に戻されて、検察官による指揮のもと、捜査機関による取り調べが続きます。

  3. (3)検察官が起訴・不起訴を判断する

    勾留が満期を迎える日までに、検察官は起訴・不起訴の最終判断を下します。

    刑事裁判によって罪を問うべきだと判断すれば起訴され、被告人として刑事裁判を受けることになります。被告人としての勾留は続き、保釈が認められない限りは身柄拘束が続くため、社会生活への影響は甚大なものになるでしょう。

    一方で、検察官が不起訴処分を下した場合は、刑事裁判は開かれません。
    不起訴処分が下された時点で釈放されるため、刑罰を受けることも、前科がついてしまうこともありません。

  4. (4)弁護士のサポートの必要性

    贈収賄事件の被疑者として逮捕された、または任意で取り調べを受けることになった場合は、ただちに弁護士に相談してサポートを求めましょう。

    特に、贈賄の疑いをかけられてしまった場合は、贈賄の事実があったのかが重要なポイントになります。
    贈賄の事実はなく、事実無根の容疑をかけられてしまった場合は、容疑を晴らすための具体的な供述や客観的な証拠が必要です。状況次第では、黙秘権を行使して自己に不都合な供述を避けるといった対応が有効になる場面もあるでしょう。

    贈収賄事件をはじめとする刑事事件の解決実績が豊富な弁護士に相談すれば、事件の内容を詳しく精査したうえで、認めるべき事実と否認するべき事実を正確に判断するなど、適切なアドバイスが得られます。

5、まとめ

会社や個人に便宜を図ってもらう目的で公務員に対して賄賂を贈る行為は、刑法の「贈賄罪」にあたります。賄賂を受け取った公務員側が注目されがちですが、賄賂を贈った側の会社・個人も厳しく罰せられるものと心得ておくべきです。

贈収賄事件は社会の耳目を集めやすく、逮捕されてしまえば会社名や個人名が公開されてしまうおそれもあるため、不利益を被ることは避けられません。

贈賄の容疑をかけられてしまい、逮捕・刑罰を回避したいと考えるなら、刑事事件の弁護実績が豊富なベリーベスト法律事務所 仙台オフィスにお任せください。迅速に対応し、最善の結果を得られるようサポートします。

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