未成年の息子が知らずに詐欺に巻き込まれたらどうなる?
- 財産事件
- 詐欺
- 知らなかった
平成30年の警察白書の統計資料内にある少年の罪種別検挙人員の推移をみると、近年詐欺罪による検挙率が増加していることが分かります。平成31年4月には仙台北署が18歳の無職の少年を再逮捕しています。これはまず、他の者が市職員などを名乗り医療費の還付のためにキャッシュカードを交換すると虚偽の連絡をし、銀行員を装った少年が無職の高齢女性からキャッシュカード2枚を奪った事件です。
このように、複数の犯人グループがそれぞれの役割を持つ詐欺を、特殊詐欺といいます。全員が目的を共有し、相手をだまそうと自覚を持って行っている場合もありますが、荷物の受け渡しをするアルバイトをしただけという、はっきりとした自覚がなく、未成年が犯罪に巻き込まれたというケースも増えています。
もし、未成年の少年が事情を知らずに行った行為が詐欺事件に加担する結果になってしまった場合、「知らなかった」で済まされるのでしょうか。それとも罪に問われることになるのかについて、仙台オフィスの弁護士が解説します。
1、詐欺罪とは
詐欺罪といえば、近年よく耳にする振り込め詐欺などがまず思いつくかもしれません。しかし、詐欺の手口には種類が多く、結婚詐欺や保険金詐欺などもその手口の一種でしょう。
刑法第246条に規定されている「詐欺罪」を簡単に説明すると、他人をだまし、その結果、だました相手から財産などを奪うことを指します。
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(1)詐欺罪に問われる要件
詐欺罪に問われるには、以下4つの流れが立証されている必要があります。
●欺罔(ぎもう)行為
難しい言葉ですが、要は相手をだます・欺く行為があったかどうかがポイントです。
●錯誤(さくご)
相手がウソを信じ込んでいる状態を指します。
●財物の処分
錯誤によって相手が自ら財産をさしだす行為を指します。
●財産の移転
結果として被害者の財産が加害者に移転することです。
言葉が難しいので、例に挙げて考えてみましょう。詐欺罪に該当する可能性がある行為は、被害者の財産を搾取するという目的を持ち被害者に対してウソをつき、相手を信用させて金品などを渡す必要があると信じ込ませ、金品を自ら差し出させ、結果、うそをついた者が受け取る……、という一連の行為が詐欺となります。
なお、詐欺行為を加害者が故意に行っている、だまそうとして行っているかどうかも重要な争点となります。また、一連の行為に関連性があるかどうかというのも、詐欺罪が成立するポイントとなります。 -
(2)詐欺罪の罰則
詐欺罪の罰則は非常に重く、罰金刑が存在しません。初犯であったとしても10年以下の懲役刑に科されることとなります。ただし被害額が少ない、悪質性が低い、被害者との示談が成立している場合などは、執行猶予がつくこともあるでしょう。
ただし、初犯であっても、詐欺事件を複数回にわたって起こしており、それぞれ起訴される場合は併合罪として刑期が1.5倍になり、最長15年になります。
さらには詐欺が未遂に終わった場合も、刑法第250条の規定によって罪に問われます。詐欺を遂げた場合よりも刑罰は軽くなることがありますが、詐欺罪自体に罰金刑が設けられていないため、必ず懲役刑が下されてしまいます。
2、詐欺とは知らなかった場合は罪にならない?
詐欺には相手をだまして財物を交付させようとする故意が必要です。しかし、自分が加担した行為が詐欺とは知らなかったと主張しても、罪に問われないとは断言できません。
高額な報酬や、偽名を使うことなどを指示された場合、ただの便利屋やバイク便としての仕事を請け負っていたという認識の裏には、どこか怪しいとか犯罪の臭いがするという意識があるものです。客観的に見て不自然な点を十分に認識できる状況であれば、「知らなかった」という本人の証言だけでは無罪と判断される可能性は低いでしょう。
3、未成年が詐欺罪で逮捕された後の流れ
次に、14歳以上の未成年が詐欺罪で逮捕された後の流れについて解説します。
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(1)逮捕の種類
逮捕には、現行犯逮捕と通常逮捕というものがあります。
●現行犯逮捕
犯行に及んでいる最中、もしくは直後に逮捕されるケースです。目撃した一般人や警察によって身柄が拘束されます。
●通常逮捕
逮捕状によって後日逮捕されるケースです。被害届などが出され、それに基づいて警察が捜査した結果、容疑者として身柄を拘束されます。 -
(2)逮捕
詐欺行為にかかわった方が14歳以上の場合、成人同様に逮捕され、身柄が拘束されます。逮捕から48時間以内の警察による取り調べを受け、検察官に送致されます。検察官に送致された場合は24時間以内に、身柄をさらに拘束するかどうかが判断されます。
つまり、14歳以上になると逮捕されれば最長72時間は自宅に帰ることができません。身柄を拘束されている間は、ご両親であっても自由に面会できず、連絡を取ることも許されません。 -
(3)勾留
検察官への送致の後、さらに10日間、最長20日間身柄を勾留するか、もしくは勾留の請求に代えて観護措置請求がなされます。
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(4)少年審判
少年事件は原則すべて家庭裁判所に送られ、審判をする必要があるかどうか判断されます。少年の状況に応じて保護処分決定や少年院送致、不処分などの判断が下されます。殺人などの重大事件を起こしていたなどのケースでは、保護観察処分等よりも刑罰を科するのが相当と判断され、事件を検察官に送致する場合もあります。
4、未成年による詐欺事件で弁護士に依頼するメリット
前述したように、未成年であっても14歳以上であれば警察などにより逮捕されます。また、最大72時間は家族であっても面会はできませんし、学校に通うこともできません。また、逮捕の事実が学校に知られることで何らかの処分を受けることも考えられます。
そこで、詐欺事件でお子さんが逮捕され場合は、早急に弁護士に相談することをおすすめします。逮捕されてからの最長72時間は、ご家族でもお子さんと連絡を取ることができず、不安になってやってもいない犯行を自白してしまうかもしれません。しかし弁護士であれば自由に接見し、状況を確認し、取り調べに対するアドバイスをしてもらえます。
また、少年審判になった場合も、付添人としての弁護士の立ち会いがあれば、将来を視野に入れた寛大な処分をしてもらえる可能性が高まります。付添人は、意見を訴えることが許されている立場です。刑事事件における弁護人と同様、将来に及ぼす影響の範囲を最小限にとどめるよう、働きかけることができます。
さらには、学校などにも働きかけ、少年の社会復帰のために環境を整えることや、被害者との示談交渉なども任せることができます。
5、まとめ
詐欺罪は有罪になると初犯でも懲役刑が科せられる重大な犯罪です。故意が認められなくても、昨今、オレオレ詐欺などがニュースで話題になっていることもあり、客観的に考えて「知らなかったはずはない」と評価されて、有罪となるケースも見受けられます。
その結果、詐欺に加担しているというはっきりとした認識はないまでも、詐欺行為の一部を担ってしまった未成年の逮捕が増えています。お子さんがもしかしたら詐欺に巻き込まれているかもしれないという不安がある方は、ベリーベスト法律事務所仙台オフィスまで、早急にご相談ください。
将来あるお子さんの未来が傷つかないように、詐欺事件に対応した実績が豊富な弁護士が全力でサポートします。
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