転売したものが盗品だったら犯罪になる?仙台の弁護士が解説
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平成31年の1月から4月にかけて仙台市南部ではタイヤの盗難被害が多発し、仙台南署管内では注意が促されていました。盗まれたタイヤは自動車用品店やインターネットなどで転売されるケースが多いとみられますが、購入する側も盗品と見抜くのは難しいでしょう。
転売者が自ら品物を盗んだ場合はもちろん窃盗罪となりますが、盗品と知らずに転売してしまった場合も犯罪となるのでしょうか。
今回は、「転売を代行したところ実は盗品だった」というケースにおいて罪に問われるのか、問われるとしたらどのような罪名になるのか、仙台オフィスの弁護士が解説します。
1、そもそも転売は違法なのか?
人気商品や限定グッズの販売で早朝から並び、転売目的で大量の品物を買っていく様は、揶揄交じりに「転売屋(転売ヤー)」などと呼ばれます。転売やそれにともなう買い占めを迷惑行為だとする向きもありますが、法律の問題とマナーの問題は分けて考えましょう。
刑法には罪刑法定主義という考え方があります。ある行為を犯罪として処罰するためには、あらかじめ犯罪行為の内容と刑罰を明確に法律で定めておかなければならないとする原則で、これにより人々の行動の自由が保障されるのです。
したがって、転売も、法律などで明確に規制されていない限り、犯罪とはなりません。
2、法律や条例で規制される転売行為
転売行為には、様々な規制があります。具体的にどのような内容か、詳しく解説していきましょう。
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(1)条例による規制
各都道府県の定める迷惑行為防止条例の多くは、公共の場所でのダフ屋行為を規制しています。ダフ屋行為とは「札」を逆読みした隠語の「ダフ」に由来する名称であり、チケットなどを転売する行為のことです。
宮城県の迷惑行為防止条例でも「入場券等」の不当な転売を規制しており(第9条)、「6月以下の懲役」または「50万円以下の罰金」という罰則を定めています(第17条第1項第2号)。さらに、転売が常習行為だった場合は「1年以下の懲役」または「100万円以下の罰金」と罰則が重くなります(第17条第2項)。 -
(2)古物営業法による規制
古物営業法第3条によれば、日本国内で古物を営業として転売をする場合、都道府県公安委員会の古物商許可を取らなければなりません。
古物とは、以下のように定義されています。- 一度使用されたもの
- 使用されなくとも使用目的で取引されたもの
- これらふたつに幾分の手入れをしたもの
例えば、チケットや商品券、切手などです。
同法第31条には罰則が規定されており、無許可での古物営業は「3年以下の懲役」または「100万円以下の罰金」に処せられます。 -
(3)商標法による規制
商標法では、ブランド品の偽物の販売やブランドロゴの不正使用などを商標権侵害として規制しています。偽物だと知りながらブランド品の偽物を転売した場合も同様に商標権侵害となりえます。
偽物だと知らなかったのであれば、故意がないために犯罪は成立しません。しかし何度も繰り返し転売していた場合、故意があったと認定される可能性があります。
商標法侵害の罰則は商標法78条で規定されており、「10年以下の懲役」か「1000万円以下の罰金」または「これらの併科」というかなり重いものです。 -
(4)酒税法による規制
酒税法第9条第1項では、酒類の販売業を営む場合に税務署長から販売業免許を受けなければならない旨が定められています。したがって、酒類販売業者として酒類を転売するなら免許が必要です。
酒税法第56条第1項第1号では、無免許での酒類の販売に対して、「1年以下の懲役」または「50万円以下の罰金」を科しています。
3、転売したものが盗品だったら?
転売行為自体が法的に問題なかったとしても、転売したものが実は盗品だったという場合もあります。知らなかったとしても、転売したものが盗品だった場合には何らかの犯罪となるのでしょうか。
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(1)盗品だと知っていて転売したとき
まず、盗品であることを転売者が承知していた場合は、盗品等無償譲受罪(刑法第256条第1項)もしくは盗品等有償譲受罪・有償処分あっせん罪(同条第2項)、あるいは窃盗罪(刑法第235条)の共犯などが成立する可能性があります。
盗品等譲受罪の罰則について、無償で盗品を譲り受けた場合は「3年以下の懲役」、有償で譲り受けたり処分のあっせん(転売)をしたりした場合は「10年以下の懲役」及び「50万円以下の罰金」となります。
また、窃盗罪の罰則は「10年以下の懲役」または「50万円以下の罰金」が科せられます。 -
(2)盗品だと知らずに転売したとき
盗品であることを知らなければ、原則として罪に問われることはありません。ただし、状況から考えて明らかに盗品だと判断できるような場合、「知らなかった」という弁解が通用しないこともあるため、注意が必要です。
4、まとめ
今回は、転売に関する規制と、盗品の転売についてご説明しました。
個人でインターネットなどを通じて手軽に転売を行うこともできるようになり、副業やお小遣い稼ぎとして取り組んでいる方もいるでしょう。
しかし、規制されている品物や盗品を扱ってしまった場合、刑事罰を受けることもあります。
転売をしようとする場合は、転売行為自体が条例や法律において問題ないか、転売する品物に問題がないか、気を配らなければなりません。無免許での転売や盗品の転売は、それぞれ罰則も定められており、厳しく責任が追及されます。思わぬトラブルに巻き込まれないよう、事前にしっかりと確認しておきましょう。
もし転売行為によるトラブルに巻き込まれたのであれば、ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスの弁護士までご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています