チケット転売で逮捕されたら? 弁護士が解説する不正転売禁止法と対処法

2019年06月18日
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チケット転売で逮捕されたら? 弁護士が解説する不正転売禁止法と対処法

平成31年4月、仙台市出身のフィギュアスケート選手・羽生結弦さんの五輪連覇を記念した仙台市営地下鉄の1日乗車券が発売されると、ネットオークションでは高値での転売が相次ぎニュースとなりました。
近年ではフリマアプリなどの利用者も増え、軽い気持ちでチケットを転売してしまったという方が身近にいるかもしれません。もし身内がチケット転売で逮捕されてしまったら、これからどうなるのか、家族として何かできることはないかと心配されるでしょう。とはいえ、友人や知人への相談もしづらいものです。
以前より問題になっているこのような転売問題に対し、令和元年6月14日より新たに「チケット不正転売禁止法」が施行されます。
この記事では、家族がチケット転売で逮捕されてしまった場合、どのような法律に違反するのか、家族としてできることについて仙台オフィスの弁護士が解説します。

1、チケット不正転売禁止法が成立

令和元年6月14日より「チケット不正転売禁止法」が施行され、チケットの高額転売が規制されることになりました。
以前よりチケット転売はインターネットを中心に行われており、最近では人気アイドルのコンサートチケットやお笑い芸人のライブチケットなどを中心に、高値で転売されるようになっていました。人気のあるチケットを一部の人や業者が買い占めると、一般のファンが正規の価格でチケットを入手するのは困難となり、転売サイトを利用して高値で購入せざるをえない状況を生み出してしまいます。このような状況を問題視したコンサートやスポーツイベントの主催者から、チケット転売を規制する法律の制定を求める声が上がっていました。可決された背景には、東京オリンピックの開催までにチケット転売を規制する法律を成立させたいという政府の考えもあったようです。

2、どこからが違法なのか?

それでは、どのようなことがチケット不正転売禁止法で違法とされているのかを解説します。

  1. (1)どんなチケットが規制対象となる?

    チケット不正転売禁止法の規制対象となるチケットは、明確に規定されています。
    日本国内で開催されるコンサートやイベントなどのチケットが対象で、不特定多数の人々に対して見せたり聴かせたりする、映画や演芸、芸術、スポーツなどの興行に関するチケットであることが明記されています。
    他には、以下のような条件も挙げられています。

    • 興行主やチケットの販売業者が、興行主の同意のない有償譲渡を禁止する旨をチケットに書いてあること
    • 開催される日時がチケットに書いてあること
    • 入場できる人の名前や連絡先が書いてあること
    • 座席が指定されて、チケットに書いてあること


    これらの条件などがそろえば、チケット不正転売禁止法の規制対象になります。

  2. (2)どんなことをしたら違法になるのか?

    チケット不正転売禁止法では、以下の2つの行為をした場合に違法と定めてあります。

    ・不正転売
    興行主に断りなく、販売価格を超える価格でチケットを転売することです。

    ・不正転売のための仕入れ
    不正転売を目的として行うため、チケットを譲り受けることです。

    上記の行為をした場合の罰則は、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金または併科となります。

3、チケット転売により逮捕されたケース

チケット不正転売禁止法は成立したばかりですが、チケット転売は既存の法律に違反するとして逮捕されたケースもあります。その事例をご紹介しましょう。

  1. (1)古物営業法違反で逮捕された事例

    平成28年、アイドルグループ・嵐のコンサートチケットを定価の約1.6倍という高値で転売した香川県の女性が古物営業法違反の疑いで逮捕されました。この他にも自分で購入したチケットをオークションサイトで転売し、1年半の間に約1000万円以上の売上があったそうです。
    転売されるチケットは古物、つまり中古品に分類されます。コンサートやイベントのチケットを繰り返し転売しているとかなりの金額になりますが、この事例では古物商の届出をしていなかったことが逮捕の決め手となりました。 このように、古物商の免許を持たず繰り返し転売を行うと、古物営業法違反で逮捕される可能性があるでしょう。なお、古物商として許可を得て営業していれば古物営業法違反にはなりませんが、別の法律に違反するケースがあるので注意してください。

  2. (2)迷惑防止条例違反で逮捕された事例

    平成29年、人気グループ・EXILEのコンサートチケットをコンビニで大量に購入した東京都の男性が、東京都迷惑防止条例違反の疑いで逮捕されました。この事例では、大量購入の目的が転売であることが逮捕の決め手となっています。

  3. (3)詐欺罪で逮捕された事例

    平成29年、人気バンド・サカナクションの電子チケットを転売目的で購入し、転売サイトにて高額で転売した和歌山県の男性が詐欺罪の疑いで検挙されました。男性は、転売行為を繰り返し、3年間で約6000万円を売り上げていたといいます。
    この事例のように、チケット販売元に転売の目的を隠してチケットを仕入れると、刑法の詐欺罪にあたることがあります。詐欺罪は10年以下の懲役刑で処罰されます。

4、チケット転売で逮捕されたら、弁護士に依頼するべき?

チケット転売をして逮捕されてしまったら、ここまでご紹介したような罪に問われ、懲役刑などの重い罰を受けるケースもあります。
もし家族が逮捕されてしまったとき、少しでも量刑を軽くするためには、弁護士の力を借りたほうがよいでしょう。逮捕後、できるだけ早い段階で弁護士へ相談することをおすすめします。

5、まとめ

不正にチケットを転売すると、成立したばかりのチケット不正転売禁止法だけでなく、既存の法律に基づいて逮捕される場合もあります。
身内がチケット転売で逮捕されてしまったら、誰でも動揺するでしょう。初犯での懲役刑や、執行猶予が付かず実刑になるケースもあります。身内のために何かできることはないかとお考えの方は、早めに弁護士に相談してください。
ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスの弁護士が、家族の方も安心できるよう、全力でサポートいたします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています