保釈の条件とは? 逮捕・起訴された家族を保釈するための方法を解説

2020年05月22日
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保釈の条件とは? 逮捕・起訴された家族を保釈するための方法を解説

仙台弁護士会のホームページでは、犯罪事件の被疑者として逮捕された方の権利を守るための当番弁護士制度について解説するページを設けています。
同サイトにも「保釈されれば身柄拘束が解かれます」との説明があるとおり、保釈が認められた場合には、たとえ刑事裁判が終了していなくても一時的に自由が得られます。

「保釈」という用語は、ニュースで紹介される大事件などでも登場する機会が多い印象がありますが、正しい意味や運用について理解している方は少ないでしょう。
ただし、ご家族が逮捕されてしまった方は、保釈が認められるにはどのような条件が付されるのか、条件に違反した場合はどのような処分を受けるのかなどを知っておく必要があります。

本コラムでは「保釈」について、ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスの弁護士が解説します。

1、保釈とは? 定義と目的を解説

まずは「保釈」がどのような制度なのか、定義や目的などの基本的な事項を解説していきましょう。

  1. (1)保釈とは?

    保釈とは、検察官によって刑事裁判を提起する「起訴」を受けた被告人を、条件付きで一時的に釈放する制度です。

    刑事裁判においては、根幹に「無罪の推定」という概念が存在します。
    無罪の推定とは、マスコミなどでは「推定無罪の原則」とも呼ばれており、刑事裁判で有罪判決を受けない限りは犯罪者として取り扱われない、という意味を持っています。

    被告人であることを理由に仕事を失う、学校を退学になるなどの不利益を受けるべきではないため、被告人の利益を守る目的で保釈制度が存在しているのです。

  2. (2)保釈を請求できる人

    保釈を請求できるのは、主に次の人たちです。

    • 被告人本人
    • 選任を受けた弁護士
    • 被告人の父母・配偶者・兄弟姉妹
    • 被告人の保佐人


    いまだ選任を受けていない弁護士や、内縁関係にある人、婚約者や恋人、友人・知人などは保釈請求の権利がないため注意が必要です。

  3. (3)保釈請求ができるタイミング

    保釈が請求できるタイミングは、起訴されてからです。
    通常は、起訴を受けた段階ですぐに保釈を請求し、翌日には裁判所が許可、または却下の判断を下します。

2、保釈には3つの種類がある

保釈には「なぜ一時的にでも身柄解放を認められるのか」という理由に照らして、3つの種類があります。
保釈の種類について解説しましょう。

  1. (1)当然の権利として与えられる「権利保釈」

    被告人には、保釈請求が当然の権利として与えられています。

    当然の権利に基づいて保釈を請求した場合は「権利保釈」と呼ばれます。
    権利保釈は、次の条件をクリアした場合にのみ認められます。

    ●重罪ではない
    死刑、無期または法定刑の下限が1年以上である「短期1年以上」の懲役・禁錮にあたる罪を犯したわけではないことを指します。

    ●過去に重大な有罪判決を受けていない
    死刑、無期または、法定刑の上限が10年以上となる「長期10年以上」の懲役・禁錮が科せられる罪で、有罪判決を受けた経歴がないことを指します。

    懲役が10年の場合は、懲役10年以上に含まれます。つまり、「10年以下の懲役」が規定されている窃盗罪や詐欺罪もこれに含まれます。

    ●常習ではない
    長期3年以上の懲役・禁錮にあたる罪を、繰り返した場合は常習とみなされます。

    ●証拠隠滅のおそれがない
    身柄拘束が解かれている間に、裁判に必要な証拠を隠滅するおそれがある場合は権利保釈が認められません。

    ●被害者・証人に対して危害を加えるおそれがない
    公判維持のため、被害者や証人に接触して危害を加えるおそれがないと認められる必要があります

    ●氏名または住所が明らかである
    氏名や住所が不明の場合、裁判に関する通知ができないばかりか、逃走を容易にしてしまうため保釈が認められません。

  2. (2)さまざまな事情を考慮される「裁量保釈」

    権利保釈の条件に合致しない場合でも、裁判所の裁量において保釈が認められるのが「裁量保釈」です。
    裁判官は自由な心証によって判断する権限を持っているため、裁量について法的な規定は存在しませんが、一般的には次の事項が判断の材料になるといわれています。

    • 犯罪の性質や情状
    • 被告人の経歴や行状、性質、前科、健康状態、家族関係など
    • 公判の進行状況
  3. (3)裁判所の判断で認められる「職権保釈」

    捜査機関の都合などによって不当に長い勾留を受けたなど、被告人が不利益を受けていた場合に、裁判所の判断で保釈を認めることを「職権保釈」いいます。

3、保釈金は高額になる?

ニュースなどでおなじみの「保釈金」は、数千万円や数億円といった巨額の保釈金が発生したケースばかりでしょう。

一時的な身柄解放のためには、とてつもない高額な保釈金を支払う必要があるのでしょうか?

  1. (1)保釈金の相場

    保釈金といえば、莫大(ばくだい)な金額になるものとイメージしている方が多いかもしれませんが、被告人の資産などが特段高額という事情がなく、執行猶予がみこまれるようなケースの相場は、150万~300万円の間だといわれています。
    ただし、保釈金は被告人が逃亡しないための担保であり、被告人の財力などによって変動します。
    決して安い金額ではありませんが、報道で見聞きするものと比較すれば現実的な金額だと感じるはずです。

  2. (2)保釈金は没収されるのか?

    保釈金は、いわば「担保」です。
    保釈の条件を破らない限り、刑事裁判で有罪判決を受けても被告人に返還されます。

    ただし、保釈の条件を破った場合は「没取(ぼっしゅ)」と呼ばれる手続きによって、保釈金の一部または全部が国庫に帰属されます。
    つまり、保釈の条件を破ると、事実上は国に没収されると考えておけば間違いありません。

  3. (3)保釈金が用意できない場合の対処法

    保釈金は、基本的に現金で一括納付する必要があります。
    しかも、銀行などの金融機関は保釈金を支払うための融資はおこなわないため、事実上、自己資産のみで対応する状態になります。
    たとえ相場が150~300万円程度だとしても、誰もが容易に用立てられるわけではないでしょう。

    保釈金の用意に困った場合は、一般社団法人日本保釈支援協会のサポートを受けるという方法があります。
    弁護士を中心に設立された組織で、最大500万円までの保釈金の立て替えが可能です。

4、保釈の申請方法

保釈の申請は、保釈請求書を裁判所に提出するという方法が採られます。

保釈請求書は、保釈を請求できる人に該当すれば、誰でも可能です。
ただし、保釈請求書を受理した裁判所は、事件を起訴した検察官から意見を聴取したうえで保釈の可否を決定します。保釈を実現するには、裁判官へのはたらきかけが重要となります。

弁護士に一任して保釈請求を代行してもらうのが、保釈を認められる可能性が高まると考えておきましょう。

5、保釈条件に違反するとどうなる?

無事に保釈が認められても、保釈の条件に違反してしまうと不利益な処分を受けることになります。

  1. (1)保釈の条件

    保釈された場合は、裁判所から召喚を受けたときは必ず定められた日時に出頭しなければならならい(出頭できない正当な理由があれば、前もって、その理由を明らかにして、届け出なければならない)といった条件が付されます。
    また、出頭を確保するため、住居の制限を受けることもあります。

    その他、下記のような条件があります。

    • 住居の変更は、書面で裁判所に対して申し出て許可を受けなければならない
    • 被害者等事件関係者に対して直接(または弁護人を除く他の者を介して)接触しない
    • 逃げ隠れをしたり、証拠隠滅と思われるような行為をしたりしてはならない
    • 海外旅行又は3日以上の旅行をする場合には、前もって、裁判所に申し出て、許可を受けなければならない
  2. (2)条件に違反した場合の処分

    保釈とは、条件付きの釈放であり、身柄拘束の決定である「勾留」の効果がなくなっているわけではなく、あくまでも条件付きの自由です。
    条件に違反すると保釈が取り消され、再び身柄拘束を受けてしまう可能性があります。また、保釈保証金を支払っている場合は没収される可能性があります。

6、家族を保釈してもらいたい! 残されたご家族ができること

もし、ご家族が逮捕・起訴されてしまったら、なんとしてでも保釈を認めてもらい、一日でも早く、自由を取り戻してあげたいと考えるでしょう。
残されたご家族が、保釈の実現に向けてできることを紹介します。

  1. (1)早い段階で保釈金を用立てておく

    保釈請求をおこない、保釈可能との判断が下されても、保釈金を予納しない限り保釈されません。
    ご家族が逮捕されてしまったら、起訴される場合を想定して早めに保釈金を用立てる準備をしておくべきでしょう。

    親類縁者に援助を求める、会社の共済から貸し付けを受けるなどの方法でも、即日で現金が用意できるわけではありません。
    できるだけ早い段階で保釈金の用意に動き出すことが肝心です。

  2. (2)信頼できる弁護士に依頼する

    保釈請求をおこなうと、裁判官は保釈の可否を検討する際に、検察官に対して意見を求めます。
    保釈しても逃亡や証拠隠滅のおそれがないことをアピールすれば、保釈が認められる可能性が高まります。裁判官にはたらきかけるためには、弁護士が必須です。
    ご家族が逮捕されてしまった段階で、早めに信頼できる弁護士に相談し、事件の弁護を依頼するのが良策でしょう。

    また、たとえ保釈が認められなくても、保釈が認められなかったことに対する異議申し立てが可能ですが、この手続きにも弁護士の存在は必須です。

    保釈を実現するためには、刑事事件の取り扱い実績が豊富な弁護士のサポートを受けることをおすすめします。

7、まとめ

ご家族が逮捕・起訴されてしまえば、きたるべき刑事裁判を前にしてもやはり「少しでも自由にしてあげたい」と考えるのが当然です。
保釈が認められれば、一定の条件が課せられるものの日常生活に復帰できます。
残されたご家族としては、保釈のチャンスを逃さないためにも、できるだけ早い段階で保釈請求に向けた準備を進めておくべきでしょう。

ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスでは、刑事事件の弁護実績が豊富な弁護士が、ご家族が逮捕・起訴されてしまい保釈を検討している方を、強力にバックアップします。
保釈請求を成功させるには、弁護士のサポートが必須です。逮捕・起訴されたご家族の保釈を目指すときは、ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスまでご相談ください。

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