再逮捕とは? 逮捕は何度でも可能なのかを仙台オフィスの弁護士が解説
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- 再逮捕とは
平成31年4月、仙台北警察署が特殊詐欺の受け子として18歳の少年を再逮捕したというニュースが流れました。
こういった報道を聞くと、まるで警察は「逮捕した犯人を再び逮捕して不当に身柄拘束を続けるものだ」という誤解を抱いてしまう方も多いでしょう。
もしかすると、無限に逮捕を繰り返していつまでも身柄拘束が続いてしまうのではないかと不安になるかもしれません。
本コラムでは「再逮捕」がどのような手続きなのか、再逮捕されるケースとはどのような場合なのかを解説していきます。
再逮捕を防ぎ、早期に身柄解放を目指すための手法も紹介します。
1、再逮捕とは?
ニュースなどで耳にすることも多い「再逮捕」ですが、いったいどのような手続きなのでしょうか?
まずは「再逮捕とはなにか?」について解説します。
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(1)再逮捕の意味
再逮捕とは、すでに何らかの犯罪で逮捕されて勾留状態となっている被疑者を釈放した直後に、余罪によって逮捕する手続きであると一般的には理解されています。
逮捕されると、警察の捜査の後、48時間以内に検察官に送致されます。その後、24時間以内に検察官による起訴・不起訴の判断がおこなわれますが、多くのケースで24時間では判断できず、勾留請求がなされます。勾留は、延長を含めて最長20日間にわたるため、逮捕から換算すると、最長23日間の身柄拘束が認められます。
つまり、捜査機関はこの最大23日間のうちに被疑者を有罪に問える証拠を集める必要があるわけです。ところが、すべての事件について23日間のうちに捜査が遂げられるわけではありません。
そこで、再び被疑者の身柄を拘束するために、勾留が満期を迎えるタイミングで再び逮捕して、身柄拘束を続けます。この2回目の逮捕が、俗にいう再逮捕と呼ばれています。 -
(2)「逮捕・勾留の一回性の原則」の存在
法律で明確に規定されているわけではありませんが、逮捕・勾留に関しては「逮捕・勾留の一回性の原則」という概念があります。
同じ事件で何度も逮捕・勾留が繰り返されてしまうと、逮捕や勾留に関する厳密な制限が無意味なものとなり、被疑者の人権が強く侵されてしまいます。
そこで「逮捕・勾留の一回性の原則」に基づき、同一の事件における逮捕・勾留は1回のみとされているのです。
逮捕・勾留の一回性の原則には、次のふたつの概念が含まれています。
●一罪一逮捕・一勾留の原則
同一の事件において、同時に2以上の逮捕・勾留はできない
●再逮捕・再勾留の原則
同一の事件において、時を異にして逮捕・勾留を繰り返すことはできない
この原則に基づけば、ある事件について勾留期間が終了した時に、再び同じ事件を理由にして逮捕することはできません。
2、再逮捕されるケース
実際に再逮捕がおこなわれるのはどのようなケースなのでしょうか?
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(1)余罪が絡んで捜査に時間がかかる場合
ある事件で逮捕されて、取り調べの過程で余罪が判明した場合、または最初の逮捕の段階で、すでに余罪の存在が疑われている場合には、再逮捕によって捜査できる期間を延長することがあります。
たとえば、被害者としてAさんとBさんの2名が確認されている詐欺事件の場合、まず被害者Aさんの事件で逮捕し、勾留期間が満期を迎えると同時に被害者Bさんの事件で逮捕するといった手法が用いられます。
この手法を用いれば、最長で46日間の身柄拘束が可能となります。 -
(2)事実を否認している場合
被疑者の取り調べでは、厳しく証拠を突きつけられることになりますが、それでも「やっていない」と否認することは可能です。
重大事件の公判が開かれたというニュースでは、被疑者が一貫して事実を否認しているというケースも珍しくありません。
また、被疑者には、取り調べの前に「供述拒否権の告知」がおこなわれます。
自身にとって不都合なこと、言いたくないことは無理に供述する必要はないという、いわゆる「黙秘権」が存在することの告知であり、被疑者に認められた重要な権利です。
ところが、証拠が明らかな事件で否認を続けている、重要な事実について黙秘を貫くといった対応を続けていると、さらに事実を究明する時間を稼ぐために、余罪で再逮捕されることもあります。
3、再逮捕の流れ
再逮捕はどのような流れでおこなわれるのでしょうか?
また、再逮捕を受けた後はどのような刑事手続きを受けるのでしょう?
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(1)再逮捕はどのようなシチュエーションでおこなわれるか?
多くのケースにおいて、再逮捕は第一の事件の勾留が満期を迎える日におこなわれます。
勾留期間が満期となると、「晴れて自由になる」と喜んだのもつかの間、取調室に案内され、第二事件に関する逮捕状を提示され、再逮捕されることがあります。
「警察署を出ようとしたところで再逮捕」と解説されることもありますが、警察署の出入り口付近は免許更新の手続きなど来客が多く、衆人環視の中で逮捕されるという無用な人権侵害を防ぐため、任意で取調室に同行させて再逮捕が執行されることが多いです。
釈放を聞いて喜んだところに再び逮捕状が提示されることもあるため、再逮捕を受けた被疑者の精神的ショックは計りしれません。 -
(2)再逮捕を受けた後の流れ
再逮捕を受けると、再び逮捕後の手続きが始まります。
すでに第一事件で手続きを受けていますが、第一事件と第二事件以後は「別の事件」として取り扱われるため、逮捕手続きが省略されることはありません。
警察による逮捕後、取り調べを受けて48時間以内に検察官に送致されます。
送致を受けた検察官は、24時間以内に勾留請求すべきかどうかを判断します。
検察官は、身柄拘束の延長を求めるため、裁判所に対して勾留請求をおこない、これが認められると原則10日間、最長で20日間の身柄拘束が再び始まります。
勾留請求が却下されることは、少ないでしょう。
勾留が期限を迎えるまでに、検察官は起訴・不起訴の判断を決定します。
起訴されれば刑事裁判を待つためさらに勾留され、不起訴となれば釈放されます。
4、再逮捕は何回まで? 無限に再逮捕できるのか?
ご自身や家族が、余罪の絡む事件で逮捕されると「いったい何回まで再逮捕されるのか?」と不安になるでしょう。
再逮捕は何回まで可能なのでしょうか?
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(1)理論上は事件の数だけ再逮捕できる
再逮捕の回数については、法律による規定がありません。
つまり、理論上では同一事件でない限り、事件の数だけ再逮捕が可能となります。
回数の制限はないため、たとえば、連続窃盗犯のように100件の事件を起こしていれば、99回の再逮捕を繰り返すことも理論上は可能です。 -
(2)実務上は4~5回になることもある
「事件の数だけ再逮捕できる」と説明しましたが、実務上、無用に再逮捕を繰り返すわけにはいきません。
ただし、余罪が多数におよぶ事件では、再逮捕は4~5回になるケースもあります。
なお、連続窃盗犯、広域にわたる特殊詐欺事件のように、同じ犯罪行為を多数の被害者に対してしていた場合、被害者や状況が異なるだけで、同じような内容の捜査が繰り返されることになります。
複数の事件をひとつひとつ捜査して送致することは時間の無駄になるばかりか、刑事裁判の判断が遅れてしまいます。
そのため捜査機関は、再逮捕後の捜査で多数の余罪を取りまとめて「余罪送致」をおこなうこともあります。
5、再逮捕を回避したい! 弁護士に依頼するメリット
再逮捕を受けると、たとえ覚悟していたとしても強い精神的ショックを受けてしまいます。
勾留期間が長引けば社会生活への復帰も難しくなるため、何としてでも再逮捕は回避したいところでしょう。
再逮捕を回避するためには、弁護士に依頼するのが良策となります。
弁護士に依頼し、第二事件以降の被害者との示談を進めることで、再逮捕の理由を少なくすることが期待できることもあります。また、第一事件で逮捕されている間に、更生に向けた取り組みや家族による監視などを約束させることで、再逮捕の必要性がないことを訴えることもあります。
不当な再逮捕であると考えられる場合は、勾留理由開示請求、準抗告、勾留取消請求など身柄釈放に向けてとりうる活動もありますが、これらの手続きには弁護士のサポートが必要不可欠です。
家族が逮捕されてしまったので再逮捕を防ぎたい、再逮捕された家族の身柄釈放を希望している方は、早急に弁護士に相談しましょう。
6、まとめ
用語だけを聞くと誤解してしまう方が多い「再逮捕」ですが、基本的にはふたつ以上の罪を犯さない限り再逮捕されることはありません。
ただし、常習の万引きや特殊詐欺グループの一員などとして逮捕された場合は、再逮捕される可能性は否定できません。
ご家族が再逮捕されてしまった、または逮捕されたご家族に余罪があり再逮捕されるおそれがあるといったお悩みを抱えている方は、ぜひベリーベスト法律事務所 仙台オフィスまでご相談ください。刑事事件の解決実績が豊富な弁護士が、再逮捕の回避やご家族の身柄釈放に向けて強力にサポートいたします。
再逮捕を防ぐために、第一事件で逮捕・勾留を受けている間に第二事件以降について示談を進めることも考えられます。時間との勝負になるので、ぜひお早めにベリーベスト法律事務所 仙台オフィスまでご相談ください。
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