軽犯罪法違反とは? 該当する行為や罰則・逮捕後の流れについて
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令和4年10月、ハロウィーン当日に多くの通行人が往来する仙台駅前で、打ち上げ花火をした少年が「軽犯罪法違反」の疑いで書類送検されました。
軽犯罪法という名称から、軽微な行為を犯罪ととらえていることは想像できますが、実際にどのような行為が軽犯罪法に違反するのでしょうか。もしかすると、これくらいで……と思っている行為も、有罪となれば前科がつくことになります。
そこで、軽犯罪法とはどのような行為を禁止する法令で、違反して検挙された場合はどのような罰を受けるのか、ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスの弁護士が解説します。
1、軽犯罪法違反とは? 該当する行為と実例
軽犯罪法とは、軽微な秩序違反行為に対して拘留、科料という刑罰を科す法律です。
軽犯罪法第1条には33種類の行為が禁止行為として挙げられていますが、もしかしたら「こんな行為も犯罪になるのか」と驚く方もいるかもしれません。
いくつかの行為について、実際の事例に照らして紹介していきましょう。
他人が実際に住んでいる、管理している建物に侵入した場合は刑法の建造物等侵入罪に該当します。
たとえば、サバイバルゲームや肝試しなどで廃校や廃屋に侵入すると、1号の違反となりえます。
・正当な理由がなくて合かぎ、のみ、ガラス切りその他他人の邸宅または建物に侵入するのに使用されるような器具を隠して携帯していた者(3号)
建物に侵入して行われる犯罪の防止を目的とする「特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律(通称:ピッキング防止法)」に該当しない侵入を禁止しているのが3号です。
平成29年2月に懐中電灯を隠し持っていた男が、軽犯罪法違反で逮捕されたという報道がありました。確かに「隠し持っている」と逮捕される可能性はありますが、業務上で利用するなどの正当な理由があれば、持ち歩いていたとしても問題ありません。
・虚構の犯罪又は災害の事実を公務員に申し出た者(16号)
冒頭で紹介した事件のように、虚偽の犯罪や火災などの災害を警察などに通報すると、軽犯罪法違反に問われることがあります。
虚偽の風説を流布し、または偽計を用い、あるいは威力を用いて人の業務を妨害するのであれば、刑法の業務妨害罪に問われることもあるでしょう。
・正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者(23号)
いわゆる「のぞき」も軽犯罪法違反として取り締まりを受けることがあります。たとえ該当の場所が無人であっても、23号に規定されている場所をひそかにのぞき見れば罪に問われる可能性があるでしょう。
なお、のぞきを目的に他人の家や敷地に立ち入ったときは、建造物等侵入罪が適用されることもあります。
・みだりに他人の家屋その他の工作物にはり札をし、若しくは他人の看板、禁札その他の標示物を取り除き、又はこれらの工作物若しくは標示物を汚した者(33号)
無許可のポスター掲示や、いわゆる「落書き行為」などを禁止しているのが33号です。ただし、軽犯罪法にも該当するものの、他の法律や条例に違反したとして検挙されてしまう場合もあります。
たとえば、令和元年5月には、児童の安全確保のために公共の道路に停止線を模した白線をスプレーで書いた男性が道路交通法検挙されたという報道がありました。そのほかにも、落書きなどは器物損壊等罪として逮捕されてしまう可能性もあります。
2、軽犯罪法違反の罰則
軽犯罪法が禁止している33種類の行為に該当した場合は、拘留または科料に処されます。
1日以上30日未満、刑事施設で拘置される刑罰です。懲役や禁錮と同じく「自由刑」と呼ばれる刑罰の中でもっとも軽いものだと考えればよいでしょう。
・科料(かりょう)
1000円以上1万円未満の財産刑です。意味合いは罰金と同じですが、その中でも金額が低い刑罰です。
拘留と科料は、数年間も刑務所で服役したり、数十万円の罰金を科されたりすることに比べれば、軽い刑罰だと感じるでしょう。
ただし、たとえ拘留や科料であったとしても刑罰であることに変わりはなく、もし有罪となれば前科がつくことになります。事件の内容によっては報道されることもあるため、刑罰が軽いという部分だけで軽視することがあってはなりません。
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3、軽犯罪法違反と逮捕
軽犯罪法違反というと、取り調べは受けても逮捕されないという印象があるかもしれません。しかし、「100%逮捕されない」とは言い切れないのです。
そもそも「逮捕」とは、やむを得ず身柄の拘束を行う措置のひとつです。住所が不明な場合や、警察からの連絡に応じず出頭の求めに応じない場合などは、身柄拘束を受けることもあります。
以下では、万が一逮捕されてしまった場合における刑事手続きの流れと、身柄の拘束を受けない場合における刑事手続きの流れについて解説します。
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(1)逮捕後の流れ
通常逮捕の場合、逮捕状を持った警察が自宅などに現れて、警察署で最大48時間拘束を受けます。次に、検察官へ送致されて最大24時間拘束を受けます。
そして、さらに取り調べが必要だと判断された場合、検察官により勾留の請求がなされます。裁判官により勾留が認められれば、原則10日間、延長してさらに10日間、最大で20日の身柄拘束を受けることになります。
その後、起訴された場合は刑事裁判が行われ、判決によって刑罰が下されます。
これが一般的な刑事手続きの流れです。 -
(2)軽犯罪法違反でも逮捕される?
軽犯罪法違反の罰則は拘留または科料であるため、刑事訴訟法第199条と217条の規定に従って、犯人の住居や氏名が明らかでない、または任意の出頭に応じない、逃亡のおそれがあるなどの状況がない限り、逮捕されません。
犯行現場を確認されても、住居や氏名を名乗らない、警察からの出頭の求めを無視するなどの対応をしない限り、逮捕されることは少ないでしょう。逮捕されず、在宅事件扱いとして任意捜査を受けることになれば、日常生活を送りながら捜査に応じることになります。
また、軽犯罪違反に該当する行為は、犯罪行為であっても実害はわずかであることが多いです。逮捕された場合でも、長期間の身柄拘束は必要ないと判断され、勾留されないこともあるでしょう。
さらに、実際の刑事裁判で審理されることも少なく、ほとんどが正式な裁判を開かない「略式起訴」によって裁かれることになります。 -
(3)弁護士に相談したほうがいい?
前述したように、軽犯罪法に違反してもよほどの対応をしない限り逮捕されることは少なく、有罪となった場合でも軽い刑罰で済まされることが多いです。
しかし、警察官に対して住居や氏名を名乗らない、出頭の求めを無視するなどの対応をしていれば、逮捕されることも考えられます。逮捕された場合は、最大23日間もの身体拘束を受ける可能性があり、裁判になることも考えられます。
いずれにしても最終的に起訴され、有罪になれば、刑罰を受けることになります。つまり「前科」がつくため、軽視できるものではないでしょう。軽い罪などと思わず、早期解決のためには迅速に弁護士に相談するようにしましょう。
4、まとめ
何気ない行為が実は犯罪行為となってしまうことがあります。また、軽犯罪法だけでなく、その他の犯罪と判断される可能性もあるでしょう。対応を誤ると、身柄の拘束を受けてしまったり、前科がついてしまったりする結果にもなりかねません。
ご自身の行為が軽犯罪法違反に該当するのではないかと不安を抱えている方は、ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスへご相談ください。ご自身の行為が処罰の対象となるのかどうかはもちろん、被害者や関係者との示談交渉を進めるなど、なるべく穏便な解決を目指して弁護士がサポートします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています