子どもがいない夫婦の相続人は? 優先順位や気をつけるポイントを弁護士が解説
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平成27年度の国勢調査で、仙台市における夫婦ふたりだけの世帯は、全体の17.6%を占めていると発表されました。子どもがいない夫婦の割合は年々増えており、今後相続のトラブルにつながる可能性も高くなっています。
この記事では、子どもがいない夫婦における相続の仕組みや気をつけたいポイントについて、仙台オフィスの弁護士が解説します。
1、子どもがいない場合の法定相続人
相続の制度は民法で決められており、配偶者は常に相続人とされています。また、子どもも相続人にあたりますので、子どもがいる場合は配偶者と子どもで相続することになります。
しかし、子どもがいない夫婦の場合、配偶者以外の相続人に注意しなければなりません。
子どもがいない場合、配偶者の次に相続が優先されるのは、直系尊属である父母や祖父母です。さらに、直系尊属がいない場合は兄弟姉妹、次いで姪や甥と順位が続きます。
たとえば、ある夫婦のケースを考えてみましょう。夫が亡くなった場合、子どもがいない夫婦の財産は、配偶者である妻のほかに次の順番で相続人となります。
- 夫の父母が生きている......夫の父母
- 夫の父母は亡くなっており、夫の祖父母が生きている......夫の祖父母
- 夫の父母も祖父母も亡くなっており、夫の兄弟姉妹がいる......夫の兄弟姉妹
さらに、夫の兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合でも、兄弟姉妹のだれかに子どもがいれば、その子どもは「代襲相続」となり相続人にあたるのです。
2、子どもがいない場合の法定相続分
子どもがいない夫婦でどちらかが亡くなった場合、配偶者は自分以外の相続人に納得がいかないことがあるかもしれません。
こうした気持ちにも配慮し、相続の割合においては差がつけられています。これを「法定相続分」といいます。
では、先ほどの事例に即して、具体的な金額についてみていきましょう。
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(1)夫の両親が健在の場合
亡くなった夫の両親が生きている場合、妻と、夫の両親は、2対1の割合で相続することになります。
たとえば、6000万円の財産が残っている場合は、妻が4000万円相続でき、夫の父と母がそれぞれ1000万円ずつ相続します。
このとき、財産に預貯金などの現金がある場合は、短期に精算できるかもしれません。しかし現金がないような場合は、不動産などを売却するなどしなければならなくなります。
妻にとって財産が自宅しかない場合、この自宅を売却して、夫の父母に1000万円ずつ渡さなければならないという事態も起こり得ます。 -
(2)夫の親がどちらか健在の場合
夫の親が片方だけ健在という場合でも、妻と夫の親との割合は2対1という数値になります。
先ほどの相続例で考えてみますと、財産である6000万円のうち、夫の親はひとりで2000万円を受け取る権利があるということです。 -
(3)夫の両親が死亡、祖父母が健在の場合
夫の両親が死亡している場合、健在であれば祖父母も相続の対象となります。
この場合、妻と、夫の祖父母の相続割合は2対1です。 -
(4)夫の両親・祖父母は死亡しているが、兄弟姉妹がいる場合
夫の父母も祖父母も亡くなっているけれど、兄弟姉妹が健在の場合は、その兄弟姉妹が相続人にあたります。ただし妻と、夫の兄弟姉妹の割合は、3対1となります。
財産が6000万円の場合、妻が4500万円、夫の兄弟姉妹は1500万円を相続する権利があるということです。
一方で、兄に子どもがいる場合は逆のパターンも想定しておくとよいでしょう。
夫が亡くなったときは、妻と、夫の兄が相続できます。しかし、夫の兄も既に亡くなっていた場合には、その子どもが相続人となります。
3、法定相続分は絶対に守らないといけない?
子どもがいない夫婦の場合は、父母や祖父母、兄弟姉妹などが相続人と決められています。そのため、夫婦ふたりだけでがんばって築き上げた財産であっても、妻がひとりで相続することができなくなってしまうのです。
このような相続の決まりは、絶対に守らなければならないのでしょうか。
答えとしては、絶対というわけではありません。
相続人の間で遺産分割についての協議を行うことができ、協議の結果によって分割することができるからです。
妻が夫の両親やその兄弟姉妹など、他の相続人と交渉をして合意を得られれば、法定相続の割合と異なる決着をつけることができます。また、あらかじめ配偶者にすべて相続させるといった遺言を作っておくのも良いでしょう。
ただし、遺留分という制度があります。
これは、法律で定められている相続分の一定割合まで、権利を主張できるという制度です。そのため、たとえ遺言書があっても遺留分を主張されれば、その分の財産を渡さなければならない可能性が高いです。
もっとも、遺留分は夫の兄弟姉妹にはありません。子どもがおらず、夫の両親や祖父母がすでに亡くなっているような場合、遺言があれば、基本的に妻はすべて相続できます。
4、遺産分割協議は弁護士への相談がおすすめ
相続には金銭が絡むので、普段穏やかな人でも豹変することがあります。
特に子どもがいない場合、相続に近親者が直接関わってくるため、相続が円満に終わらないこともあります。
そのため、弁護士など第三者に介入してもらい、冷静に遺産分割協議を進めることをおすすめします。遺言書の種類や作成における不安についても適切なアドバイスを受けることができ、トラブルなく相続問題の解決が目指せるでしょう。
5、まとめ
子どもがいない夫婦の場合、亡くなった配偶者の親や兄弟姉妹なども相続人になりうるため、相続争いに発展することが珍しくありません。
遺産分割協議を進める、遺言書を作成しておくなどいくつか対策方法が考えられますが、当事者だけでは対応が難しいでしょう。不要な相続争いを避けるためにも、専門家である弁護士を頼ることをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスの弁護士も力を尽くします。相続問題でお困りであればご連絡ください。
ご注意ください
「遺留分減殺請求」は民法改正(2019年7月1日施行)により「遺留分侵害額請求」へ名称変更、および、制度内容も変更となりました。
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