法定相続人ではない嫁は寄与分の権利者になれる? 仙台オフィスの弁護士が解説

2019年05月27日
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法定相続人ではない嫁は寄与分の権利者になれる? 仙台オフィスの弁護士が解説

仙台市が発表している仙台市統計書(平成30年版)によると、平成30年の1年間において仙台家庭裁判所で行われた「遺産分割調停」は328件あったことがわかっています。相続問題は時に大きなトラブルへ成長してしまい、調停や審判、裁判に至るまで争うケースが少なくありません。

相続が発生した際、被相続人の遺産を相続できるのは、配偶者と血のつながりのある子どもや親などが対象となります。原則として、被相続人の血族ではない人がたとえ被相続人に特別な寄与があったとしても、相続の対象にはならないとされてきました。そのため、たとえば被相続人の長男の嫁が私財や時間をなげうって介護に従事したとしても、相続発生時には自らの寄与分を主張することもできなかったのです。

しかし、ついに40年ぶりに相続法が改正され、このような不公平が改善されるのです。たとえ、血のつながりがなくても「特別寄与料」として財産の分配を請求できるようになります。

ここでは、被相続人を起点とした寄与分の権利者の範囲と寄与分の算出方法、改正される相続法の内容について、詳しくご紹介します。

1、寄与分とは

「寄与分」とは、被相続人の財産の維持、または増加のために特別な貢献をした相続人に、他の相続人との間で実質的な均衡を保つため、その分財産を相続させることをいいます。
被相続人との身分関係に基づいて通常期待されるような程度を超えるような無償での寄与行為があり、その寄与行為により被相続人の遺産が維持され又は増加したと言えなければ、基本的に寄与行為とは認められません。

一般的に、寄与行為は次の5つに大別されます。
しかし、実際この中の一つだけ認められるというよりも、どれかとの組み合わせによることが多いです。

  1. (1)家業従事型

    被相続人が営んでいた事業に、労務を提供したことをいいます。主に農家や商家、家族経営の病院の医師などが、これにあたります。

  2. (2)財産出資型

    被相続人の事業に対して、金銭を給付したケースをいいます。
    たとえば、被相続人の事業継続が困難なときに、当該相続人が金銭を援助したなどの行為が、これにあたります。
    会社に対する資金提供の場合でも、被相続人と会社が極めて密着した関係にあり、相続人の援助と資産の確保との間に明確な関連がある場合には、寄与分が認められる可能性があります。

  3. (3)療養看護型

    被相続人の療養看護、介護等に従事した場合に認められる寄与行為を言います。
    健康な被相続人に対する家事援助は、基本的に療養看護型の寄与行為とは認められません。被相続人が療養看護を必要とする程度の病状であったことが必要になります。

  4. (4)扶養型

    被相続人の扶養を行い、被相続人が生活費等の支出を免れたため、財産が維持され又は増加したとしたケースで認められる寄与分です。

  5. (5)財産管理型

    被相続人の不動産の賃貸管理や建物の修繕など、被相続人の財産の管理・維持をしたことをいいます。

2、寄与分額の算出方法

寄与行為があったときの寄与分額の計算方法をご紹介します。

たとえば、被相続人である母親Aを、娘Bが4年にわたって献身的に介護をしてきたとします。Aの死後、兄Cと妹Dの3人の兄妹で遺産分割協議をするにあたり、Bが寄与分の請求を主張した場合、Bにはどれくらいの寄与分が認められるでしょうか。

このケースでは、先ほど紹介した(3)療養看護型の寄与が認められる可能性があります。

療養看護型の評価は、以下の計算式で算出します。

職業的付添人の日当額×療養看護日数×裁量的割合(※)
※ここでいう裁量的割合とは、被相続人との身分関係や被相続人の健康状態、専従性の有無や療養看護にいたった経緯を考慮して判断されます。


仮に日当額を5840円、裁量的割合を0.6として、Bの寄与分額を算出してみましょう。

5840円×1460日(365日×4年)×0.6=511万5840円


BはCとDに対し、寄与分額511万5840円を請求すると良いでしょう。

3、相続分の算出方法

被相続人が残した遺産総額から、当該相続人の寄与分額を差し引いてから遺産分割することになります。

先の例で、Aに3000万円の遺産があった場合、Bの特別寄与料511万5840円を差し引いた金額が相続できる財産となります。

3000万円-511万5840円=2488万4160円


この2488万4160円を、B、C、Dの3人で分割します。

2488万4160円÷3=829万4720円


CとDの相続分は829万4720円です。Bはこれに寄与分額を加算した金額が相続分となります。

829万4720円+511万5840円=1341万0560円


ただし、ここで紹介した計算式は、あくまで寄与分に焦点をあてて算出した金額です。実際に療養看護をすると、介護施設の利用料や介護用品の購入など、被相続人の介護のために出費した費用も遺産分割協議の際に考慮される可能性があります。これらの領収書はすべて保管しておくとよいでしょう。

4、法改正で「特別寄与料」の請求権が創設される

これまでは、被相続人の財産を相続できるのは法定相続人に限定されてきました。

上記の例でいえば、兄Cの妻Eが、被相続人に対して献身的に介護を続けてきたという事実があります。しかし、これまでは、実際に療育看護を行っていたEは、法律上何も得ることができません。そこで、不公平だという指摘があり、たびたび議論が繰り返されてきました。

平成30年の相続法の改正では、相続人以外の者の貢献を考慮するための方策として、法定相続人でなくても特別な寄与があった場合は「特別寄与料」を請求できるようになりました。

つまり、法改正後はAと血のつながりのない兄Cの嫁であるEであっても、特別な寄与貢献があったものとされ、寄与料を請求できるようになるのです。本件は、令和元年7月1日以降、改正相続法が適用されることになります。

5、まとめ

被相続人に対して特別な寄与があった場合は、他の相続人に対して寄与行為があったことを申し出なければなりません。遺産分割協議で話がまとまればよいのですが、ここで話がまとまらない場合は調停や裁判で争うことになります。

寄与分額の算出方法は、被相続人に対する貢献度や被相続人のために実際に出費した金額など、考慮すべき事情はさまざまです。自分の寄与行為はどれくらいの寄与分額になるのか知りたい方や、改正された相続法の詳細を知りたい方は、弁護士に相談することをおすすめします。

寄与分や相続の権利者同士で起こる相続トラブルにつながりそうなときや、もめてしまったときは、ベリーベスト法律事務所・仙台オフィスへお問い合わせください。相続問題に対応した経験が豊富な弁護士が、寄与分の請求を含めて実情に適した遺産分割となるように尽力します。

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