遺産分割協議がまとまらない場合はどうすればいい? 解決策はある?
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仙台市における65歳以上の高齢人口比率は、平成27年度には21.3%でしたが、令和7年には25.9%まで上昇するとの推計が出されています。高齢化が進むことで大相続時代が到来するなどとも言われており、相続への関心も高まっています。
相続においては、遺産の具体的な分配について話し合う遺産分割協議を行う必要があります。しかし遺産分割協議でもめてしまい、相続税申告・納付が迫っているのに話がまとまらないといったことも少なくありません。
遺産分割協議がまとまらないとき、どのような解決策があるのでしょうか。
本コラムでは、遺産分割協議がまとまらないときの対処法について、ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスの弁護士が解説します。
1、遺産分割協議がまとまらないケース
次のような事情があるケースでは、遺産分割協議が難航してまとまらないことがあります。
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(1)兄弟姉妹が疎遠で協議ができない
遺産分割協議は、相続人全員が参加し内容に合意しなければ成立しません。
しかし、相続人同士が疎遠であったり、仲たがいしていたりするケースもあるでしょう。このような場合、連絡がとれない、感情的になって話し合いにならないなど、遺産分割協議がまとまらない可能性が高くなります。 -
(2)生前に財産をもらっている相続人がいる
被相続人が生前、一部の相続人だけに財産をわけていたような場合には、その分を「特別受益」として考慮したうえで、遺産分割が行われるのが原則です。しかし、「特別受益」をめぐって争いになることも少なくありません。
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(3)不動産などの処分をめぐって対立している
不動産や動産も、もめ事になりやすい財産です。
たとえば、相続人のひとりが相続財産の不動産を換価して売却代金を分割したいと思っていても、他の相続人は売却したくないと考えているといったケースです。
相続開始後から不動産は、基本的には相続人の共有になるので、相続人が複数いる場合、ひとりの意思で勝手に売却することはできません。 -
(4)分割しにくい財産がある
遺言書が残されていないときは、法定相続分に従って法定相続人が相続するのが原則です。しかし遺産には、現金だけでなく土地や建物といった分割しにくいものも含まれます。これらの遺産を、法定相続分どおりにきっちりと分割することは難しいものです。
このような場合、協議がまとまらないケースがあります。
2、遺産分割協議がまとまらないときの対処法
遺産分割協議がまとまらないときの対処法としては、主に次の二つの方法があります。
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(1)弁護士に相談する
遺産分割がまとまらないときには、法律の専門家である弁護士に相談して解決を図る方法があります。弁護士が代理人として介入することで、当事者間の話し合いで解決できることも少なくありません。
弁護士は遺産分割協議がまとまらないときだけでなく、その前提となる相続人の確定や遺産の調査などにおいてもサポートが可能です。
相続にまつわる全体像を把握できるので、遺産分割協議がまとまらない理由を客観的かつ的確に分析することができ、問題解決にむけて適切なアプローチをとることができます。 -
(2)家庭裁判所に調停・審判による解決
調停や審判は、遺産分割について共同相続人間で協議ができないときや、話し合いがつかないときに家庭裁判所へ申し立てすることができます。
具体的には、相続人のうちのひとり、または数人が他の相続人全員を相手方として家庭裁判所に遺産分割調停や審判を申し立てて行います。なお、調停を経ずに審判を申し立てることもできますが、裁判所の判断で調停に回されることが多いです。
3、遺産分割調停はどのように進められる?
では、家庭裁判所における遺産分割調停は、どのように進んでいくのでしょうか。具体的に確認していきましょう。
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(1)調停の申し立て
遺産分割調停は、共同相続人と包括受遺者(包括的に承継する遺贈を受けた人)、相続分譲受人(法定相続人から相続分を譲渡された人)は申立人になれます。数名で申し立てることも可能ですが、申立人以外の相続人全員を相手方とする必要があります。
調停の申し立ては、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に行います。しかし相続人同士が合意しているような場合には、他の家庭裁判所に申し立てることも可能です。
申し立ての際には、申立書のほか、被相続人1人あたり1200円の収入印紙と相手方などへの連絡用郵便切手、戸籍謄本や遺産内容を示す資料なども必要です。 -
(2)調停期日
申し立てが受理されると、裁判所が調停期日を決定し当事者を呼び出します。調停期日には、裁判官と調停委員で構成される調停委員会が、各当事者の主張を聞きます。調停委員会は、解決案などを提示しながら話し合いを進め、合意を目指します。
なお、遺産分割調停は法廷で行われるわけではないので、内容が公開されることはありません。 -
(3)調停成立・不成立
調停で当事者双方が合意できれば、調停は成立し調停調書が作成されます。調停調書には判決と同等の効力があるので、合意した内容で遺産分割が実行されない場合などには強制執行することも可能です。
一方、調停においても合意に至らなかった場合や、調停に相手が出席しない場合などは、調停不成立となり、通常審判手続きに進みます。 -
(4)審判・即時抗告
審判では、裁判官が調停の内容などを加味した上で、判断を示すことになります。
審判が確定すれば審判調書が作成され、判決同様の執行力を持ちます。審判結果に不服がある場合には、相続人は高等裁判所に即時抗告することもできます。
4、弁護士に相談するメリットとは?
前述したように、遺産分割協議がまとまらないときは弁護士に相談することも、対策案のひとつといえます。では、弁護士に相談することで、どのようなメリットを得られるのでしょうか。
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(1)代理人として協議をしてもらえる
弁護士は代理人として活動ができるので、遺産分割協議に参加し、他の相続人と交渉することが可能です。もめている相続人と顔を合わさずに済むので、精神的な負担を大きく軽減できるでしょう。また、第三者が間に立つことで、冷静に話し合いが進むことが期待できる点や、自身の主張を忖度せずに伝えることができる点も依頼するメリットといえます。
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(2)手続き関係を一任できる
遺産分割協議では遺産分割協議書の作成が、調停や審判になった場合は、家庭裁判所に提出する書類の作成などが必要になります。多くの方にとって初めて対応することになるこれらの準備は、時間と手間がかかるものです。
弁護士は、必要書類の作成や手続き等も対応することが可能です。
また、相続においては相続税などの税務面の知識も必要になります。税理士との連携も図ることができる弁護士に相談すれば、ワンストップで対応を依頼することができます。
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(3)調停や審判を有利に進められる
遺産分割協議がまとまらず調停や審判に移行したとき、個人で対応しようとしても、何をどのように主張するべきなのか、判断がつかないものです。また、相手側に弁護士がついている場合に、個人で対応しようとすると不利になる可能性が高まると言わざるを得ません。
弁護士がついていれば、ご依頼者の方にとって有利な結果に導けるよう、裁判所に認められやすい法的根拠を元にした主張や証拠、書類をそろえ、進めていくことが可能です。
5、まとめ
遺産分割協議がまとまらないときは、家庭裁判所の調停や審判を利用して解決を図ることができます。ただし、相続の場面では思わぬ問題が発生することも少なくないものです。
相続に関する問題を抱えたときは、早い段階で弁護士に相談するのが良いでしょう。弁護士は、遺産分割協議をはじめ、相続に関して幅広くサポートすることが可能です。
ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスの弁護士は、税理士とも連携をとりながら相続問題の解決に取り組んでいます。相続の手続きには期日が定められているものもあるので、早めの対応が必要です。おひとりで悩むことなく、ご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています