交通事故に遭ったら診断書は必須! 全治日数の意味や診断書を入手しない場合のデメリットとは
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宮城県警はホームページで、過去10年間の仙台市内における交通事故の推移が公開されています。同資料によると、令和2年の交通事故件数は2146件で、平成23年から10年間のなかで一番少ない件数となりました。コロナ禍による外出自粛の影響とも言われています。
ただ、依然として交通事故が多数発生していることに変わりありません。交通事故で怪我をした際は、通常、医療機関から「診断書」の交付を受けることになります。診断書にはどのような内容が記載されており、どのように活用されるものなのでしょうか?
このコラムでは、交通事故における「診断書」の内容や役割について、仙台オフィスの弁護士が解説します。
1、交通事故における「診断書」とは
交通事故に遭い怪我を負ってしまった場合は、医療機関で治療や検査を受けたうえで「診断書」の交付を受けることになります。
まずは、診断書の意義や記載内容をみていきましょう。
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(1)「診断書」とは
診断書とは、病気や怪我の診察にあたった医師が作成する証明書です。
医師法第20条の規定によって、自ら診察をした医師のみに作成が許されます。
また、医師法第19条2項の定めによれば、診察を受けた患者から、診断書交付の請求があった場合、診察をした医師は交付を拒否できません。 -
(2)診断書の内容
診断書の様式にはさまざまなものがあります。保険会社に提出するための診断書として、通常、自賠責様式の診断書が作成されます。
自賠責様式の診断書には次の内容が記載されています。- 傷病者
患者の住所、氏名、生年月日を記載することで患者がどこの誰なのかを特定します。 - 傷病名
医学上認められる傷病の名称が記載されます。 - 治療開始日
当該病院にて治療を開始した日付が記載されます。 - 治癒または治癒見込みの日
傷病が治癒・完治した日、または治癒の見込み日を記載しますが、事故直後は治癒の見込みが立たないため、記載されることはまれです。 - 症状の経過・治療の内容および今後の見通し
受傷日(通常ですと事故発生日)のほか、患者の自覚症状や客観的な所見としての他覚症状、治療内容、手術内容などが詳しく記載されます。 - 主たる検査所見
レントゲンや磁気共鳴画像装置(MRI)等の検査が実施された場合は検査名と結果が記載されています。 - 初診時の意識障害
初診段階での意識障害の有無が記載されます。意識障害があった場合は意識レベルの程度(JCS、GCS)や意識障害が生じていた日数・時間もあわせて記載されます。 - 既往症および既存障害
いわゆる「持病」や、事故前からすでに生じていた障害の有無およびその内容が記載されます。症状と交通事故の因果関係を証明する重要な部分です。 - 後遺障害の有無について
後遺障害とは、これ以上治療を続けても改善が見込めない段階において、残ってしまった症状のことを言います。当該事故による後遺障害の有無について、あり・なし・未定のいずれかが記載されます。治療中は「未定」とされるケースが多いでしょう。 - 入院治療
入院日数および具体的に入院していた期間が記載されます。 - 通院治療
通院実日数(実際に通院した日数)および通院していた期間が記載されます。 - ギプス固定期間
骨折部位などをギプスで固定していた期間が記載されます。あわせて固定具の種類が記載されることもあります。 - 付添看護を要した期間
付添看護を必要とした期間が記載されます。医師の判断において付添看護を要した期間が記載されるため、付添看護費を請求する際、有力な証拠となります。 - 診断日
今後の診断について、治癒・継続・転医・中止・死亡の区別が記載されます。また、そのように診断した日付も記載されます。 - 末尾
「上記のとおり診断いたします。」として、診断書の作成日、医療機関の所在地と名称、医師の氏名が記載されます。医師の診断を証明する重要な部分です。
- 傷病者
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(3)「全治日数」とは
診断書の「症状の経過・治療の内容および今後の見通し」の欄には、症状や治療の経過に加えて今後の見通しとして「全治日数」が記載されることもあります。
警察署に提出する診断書には、「全治2週間」と記載されることが多いです。
診断書を作成した医師によって、「全治●日」、「全治日数◯日」、「加療◯日を要する」等表現が異なります。
実は、診断書に記載される全治日数は、必ずしも治療に要する期間を限定するものではありません。
各種の提出先に向けて、医師が大まかな診断結果を証明しているに過ぎず、診断書上の全治日数を超えて治療を受けたとしても問題はありませんし、相手方保険会社が全治日数を超えたからと言って、即治療費を打ち切ることもあまりありません。
2、診断書の提出先
医師から交付された診断書は「交通事故によって負傷した」こと証明するために利用されます。
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(1)事故を担当した警察署
事故が起きたという事実を証明する交通事故証明書は、「人身事故」と「物件事故(物損事故)」の2つに分類されます。
人身事故とは死傷者が存在する事故であり、物件事故とは死傷者が存在しない事故です。
物件事故として扱われてしまうと、警察署にて実況見分調書といった事故状況について詳細に記載された書類が作成されず、事故状況に関する客観的資料が乏しくなってしまうばかりか、加害者側から本件事故で怪我などしていない、怪我をしていても軽微なのではないかと主張されかねません。
交通事故が人身事故として扱われるためには交通事故の処理をした警察署に対して、診断書の提出が必要です。
警察署への診断書の提出期限に関して、法律などによる特段の定めがありません。ただし、事故の発生から日数が経過してしまうと事故と負傷の因果関係が認められにくくなってしまうので、事故発生から10日前後を目安にできるだけ早い段階で病医療機関を受診し、診断書を提出する必要があります。 -
(2)加害者側の保険会社
交通事故の被害に遭った場合は、事故の加害者や加害車両の保有者が契約している保険会社に保険金を請求しますが、治療費や慰謝料等の保険金の請求に際しても診断書が必要となります。
加害者側の保険会社は、契約者が起こした交通事故について当事者に代わって賠償を果たす役割を負っています。医師の診断内容は賠償金を決定するうえでも重要な判断材料となるので、必ず診断書の提出を求められるでしょう。 -
(3)その他
交通事故によって怪我をしたことで、会社を休んだり、遅刻・早退をしたりする必要がある場合に、ご自身の勤務先から診断書の提出を求められることもあります。
また、ご自身で加入されている保険の契約内容によっては、加害者側の保険会社に請求する賠償金とは別に、保険金を受け取ることができます。その際に、ご自身の保険会社から診断書の提出が求められることもあります。
3、診断書を入手しなかった場合のデメリットと解決策
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(1)物件事故扱いになってしまう
交通事故で怪我をしたからと言って、医療機関を受診しなければ、診断書を入手できず、警察署に診断書を提出することができません。
そうなりますと、物件事故扱いになってしまいます。
物件事故扱いになってしまった場合は、先ほど述べた通り、怪我の存在を否定されたり、怪我が軽微だと主張され、治療費や慰謝料等十分な補償が得られなくなってしまったりする可能性があります。 -
(2)人身事故証明書入手不能理由書での対応
何らかのやむを得ない理由により、警察署へ診断書を提出することができなかった場合には、人身事故としての交通事故証明書の代わりに、保険会社に対して事故の内容や証明書を入手できない理由などを記入した「人身事故証明書入手不能理由書」の提出に代えることで対応が可能です。
とはいえ、人身事故証明書入手不能理由書による対応では、保険会社も「なぜ人身事故としての届け出をしなかったのか」という点に注目します。
負傷程度が軽かったなどと判断されてしまい十分な保険金が支払われないケースも少なくないので、可能な限り早期に医療機関を受診し、診断書を取得したうえで、速やかに警察署に診断書を提出するのが賢明です。
4、後遺障害が残ってしまった場合
交通事故によって後遺障害が残ってしまったのに、事故当初に医療機関を受診せず、事故から相当期間経過後初めて受診した場合、事故以外の原因による怪我なのではないかと疑われ、事故と怪我との因果関係が否定されかねません。
そうなると、後遺障害が残ったとしても、事故と後遺障害との因果関係も否定されてしまいます。
事故後、できるだけ早く医療機関を受診しましょう。
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(1)弁護士に相談する
後遺障害が残ってしまった場合には、後遺障害の認定を受けるために、「自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書」を医師に作成していただく必要があります。
後遺障害の有無、程度を認定する機関は基本的に、提出された書面を見て後遺障害の有無や程度を判断するため、必要な検査をしているか、自覚症状や障害内容の増悪・緩解の見通しなど、後遺障害診断書の内容がいかに充実しているかといったことが重要なポイントになってきます。
しかしながら、交通事故の被害者をあまり診察しておらず、どのような検査をする必要があるのか、何をどこに書いたらいいのか分からない医療機関も少なくありません。
被害者の方が適切な後遺障害等級の認定を受けられるよう、弁護士に相談し、サポートを受けることで、実態に即した適切な後遺障害等級認定が期待できます。 -
(2)充実した賠償額の獲得を目指す
後遺障害が残ってしまった場合、自賠責保険から、定額の保険金が支給されますが、それだけでなく、加害者側に後遺障害慰謝料や逸失利益等を請求することが可能です。
後遺障害慰謝料や逸失利益について、加害者側の保険会社によっては、自賠責保険からの保険金で十分だとの主張や、独自の基準で低い金額を提示されることも少なくありません。
より充実した賠償額を獲得するには、これまでに同様の事例で裁判所が認めてきた、いわゆる裁判所基準の適用を目指すのが得策です。
弁護士が代理人として裁判所基準による交渉を展開することで、より充実した賠償額の獲得が期待できます。もし加害者側の保険会社がこれに応じなかった場合でも、必要に応じて裁判へと移行することで賠償額の増額につなげることができるでしょう。
5、まとめ
医師が作成する「診断書」は、交通事故の被害による負傷の程度を証明するために活用されます。慰謝料などの賠償額の決定や後遺障害等級の認定において重要な資料となるため、交通事故により怪我を負ってしまったら必ず速やかに医療機関を受診したうえで医師に診断書の作成を求めましょう。
もし診断書を入手できない事情があった場合でも、保険会社との交渉次第では事情を説明すれば保険金請求は可能ですが、保険金・賠償金が減額されてしまうおそれもあります。
適切な保険金・賠償額の獲得を目指すなら、弁護士に交渉を一任するのが賢明です。
交通事故の被害に遭って負傷してしまい、十分な保険金・賠償額の獲得を目指すなら、交通事故トラブルの解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所 仙台オフィスにお任せください。
事故直後は負傷程度が軽いと思っていたので医療機関を受診せず診断書を得られなかった、警察には物件事故として届け出をしていたといったケースでもあきらめる必要はありません。
その他、交通事故の後遺障害等級認定結果に不満を感じている方も、お気軽にベリーベスト法律事務所 仙台オフィスへご相談ください。
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